前回、怪人の少女の声を聞き、スーパーハードウェポンを抑えて変身を解除した陽奈。仲良く話す親友と怪人。その姿に憎悪が込み上げ、感情のままに攻撃を行い、建物が崩れ落ちて2人を飲み込んだ… かに思えたが、少女の手により陽奈は救われる。そしてその後、稲森と陽奈は出会い軽い和解をし、協力関係を結ぶが、2人の前に首領が現れ…
それではどうぞご覧ください。
第21話「初代がファーザー」
「父さん…?」
「くっ、ふふふっ…… あぁ、そうだ。お前の父。初代仮面ライダーエースである羽畑 月火だ」
首領が包帯を外して出てきた素顔は、今は亡き現エース羽畑 陽奈の父親。羽畑月火そのものだった。
骨格から何まで… いや、そうではない。素顔を見た陽奈の脳裏には父との思い出の数々が蘇る。鮮明に覚えている父の顔。
既に身体がそれが誰であるのか察した。間違いない。あれは父だ。
「… でも、でも嘘よッ!! 父はジェスター首領との戦いで死んじゃって… 遺体も見当たらなくて…… そんな、誰。あんたは誰なの!!?」
「何を言うか。私も、お前も今言ったはずだ。私が首領であり、この身体は羽畑 月火
「
「あぁ、そうだ」
たった一言だけでその場の空気が一気に変わったのを稲森は感じた。
先ほどまでの陽奈の微かな笑顔は消え失せ、そこにあるのは絶望した表情。完全に戦意喪失と言える。闘争心ならぬ逃走心。今の彼女は現実から目を背けたい気持ちで心が一杯なのだろう。
目の前にいるのは父の見た目をし、包帯でわからなかったが父の声をし、父のような偉大さを持つ。
この偉大さを感じるのも、首領のせいであるのだろうけれど、それでも誰がなんと言おうと目の前にいるのは死んでしまったはずの陽奈の父親だ。
「どういうこと…!! 説明しなさいよ!!」
「…… 数十年前の怪人と人間の間で起こした戦争。我々は理想の為、お前たちは現実の為に戦った。我々の軍勢は人間より遥かに強く、個々としても普通の人間では簡単に地に伏せる…… 弱い。弱過ぎる。そんな弱者の人間どもに憎きエースが姿を現した」
「そしてあなたを殺したはず…」
「知っての通り、私は殺された。初代エースの手によってな…… だが、私を殺す手前で、初代エースは1つ大きなミスを犯した」
「ミス……?」
「その身を完全に抹消しなかった事だ」
「… 相討ち。膨大なエネルギー同士のぶつかり合いで、あなたの身体… 私の父さんの身体も飲み込まれて死んだと言われてるわ。だから消えるではなく、消えていたのよ。なんで父さんの身体が残っているの? そんなのおかしいわ!!」
「私も消えるとは思った。肉体もエースとの戦いにより限界が来ていたからな。だからこそ私は乗り移ることにした」
「乗り移る…?」
「初代エースの肉体を器とし、私の魂だけを器に移す。本来であるなら私共々消滅してしまう。大きな賭けではあったが… 賭けは私の勝ちだった。1つとなった事で原型は無くなってしまった代わりに、初代エースの遺伝子と私の遺伝子はその場に残り、こうしてとある研究者によって復活を遂げられた」
「…っ班目…!!」
「裏切り者ではあるが、その腕は確かなものと信頼がある。それだけは認めておきたい所だな──── さて、話しが逸れたな。これからお前たち仮面ライダーに絶望を与えてやろう。私の苦しみを、私の怒りを、その身で存分に味わうといい」
すると、首領は懐から見たことのあるドライバーを取り出し、それを自らの腰に巻きつける。見たことがあるのは当然だ。目の前にいるのは首領であるが、身体は初代エースそのもの。
首領はまだ2人と真正面から戦える程の力まで回復はしていない。戦う為には強さを手に入れられ、更に変身者への負担が掛からない装甲を見に纏わなければならない。
だからこそこのドライバー。エースドライバーを元に設計された、首領の為の改良型エースドライバー。
それから首領は懐から、蛾のアビリティズフィード。元の色とは異なるダッシュフィードを取り出してドライバーに差し込む。
「変身」
仮面ライダーエースのように、ドライバーの側面を押し込むと、深紅の蛾の群れがヒラヒラと舞いながら首領の身体に留まっていく。
それらはアーマーへと変化を遂げる。しかし、エースのそれとは違い、赤く禍々しいフォルムの中にどこか美しさを感じる。
《Let's try エース!!》
「なに…… その姿っ!」
「お前がよく知る姿だろう。あぁ…… とても楽しみだ。お前が苦痛の声を上げて、私に助けを求める姿を想像すると、復活する前には感じられなかった甘美なる心地よさがこみ上げてくる…!!」
「許さない… 許さない……… 死んだはずの父さんを… 役目を終えた父さんをッ!! 許さない!! あんたを絶対倒すッ!!」
陽奈も走りながらエースドライバーにダッシュフィードを差し込み、仮面ライダーエース ダッシュウェポンへと変身すると、首領の眉間目掛けてエースガモスボウから矢を放つ。
しかし、その程度の攻撃は指で簡単に弾かれてしまう。
「自分の父に対して容赦がないな」
「その声で喋るなぁッ!!!」
首領に向かって更にエースガモスボウによる攻撃を行う。
何度も打ち込み続けながら近づいていくが、首領はそれらを難なく指で弾き、近くまで走ってきたエースの首を掴んだ。
「くっ…!!」
「お前の矢はたった1本の指に弾き飛ばされた。そして矢はたったの1本も私の身体には当たっていない。この意味がわかるか? 初代エースの娘よ。お前は武器を使ったとしても、私の指1本にすら勝てないということだ」
「私の力は武器だけじゃない────!!」
そしてエースの視界は一瞬で地面に向けられ、気づいた時には地面に強く叩きつけられていた。
見た目は色が変わっただけの仮面ライダーエース。ただしその実態は元のエースの倍以上の力を有している。エースドライバーを作り出した班目による改良なのだから、当然と言えば当然の性能。
今のままではエースは勝てないと実感する。既に彼女がそう思った時には、その手にスーパーハードフィードが握られていた。
「どうせこのままやった所で、首領のあなたには勝てないわ。でも、ただで負けるわけにはいかない。少しでも傷つけてやるんだから…!!」
「ダメです! 羽畑さん…っ!!」
スーパーハードフィードを使おうとするエースを止めようと前に出る稲森。
だが、ファングの存在を忘れていた。目の前に巨大な爪が振り下ろされ、ギリギリな所でそれを躱す。
「ファングさん!」
「下がっていろ、と命令されたが、今は現エースとの戦いをお楽しみの最中。貴様の出る幕はないと判断した。邪魔をするな」
「なら、あなたを倒して羽畑さんを助けます…… 前の僕とは違いますよ。ファングさん」
「いいだろう。その力がどれほど成長したか。この俺に見せてみろ!」
「──── 変身ッ!!!」
稲森は仮面ライダーアベンジ トランスウェポンへと変身し、爪をこちらに構えて挑発するファングに飛びかかる。
溜めて放つ。トランスウェポンの能力は溜めてから放つ一撃が特徴的であるが、溜めるということは一定時間、隙が生まれる。何かしらのアクションを起こさない限りは、トランスウェポンの素の状態のままとなってしまう。
今、アベンジがファングを殴ろうが、蹴ろうが、素である状態の他ない。それによる攻撃は効果があるのか。
「…… こんなものか?」
「うわっ…!!」
ファングへの単純な攻撃は最早効果などなし。
その証拠にアベンジは、ファングに蹴りを弾き飛ばされた後、鋭利な爪による引っ掻き攻撃を喰らってしまう。
ジャンプウェポン等であったのなら、装甲ごと抉られていた筈。胸に浅い傷がつくだけで済んだ。
「あ、危なかった…」
「そのまま胸から腹にかけて大穴を作ってやろうと思ったが… 避ける事だけは上手くなったようだ。だが、それだけだ。それだけのほかない。前と違う部分があるとするなら、見た目が少し変わった程度だろうな」
「…… ありがとうございます、ファングさん」
「なに?」
「この1発が欲しかったんですよ。僕の身体が裂けるくらいの1発。あなたなら出してくれると思ってました」
「何を狙っているか知らないが、ここで貴様の始末を完了する!」
溜めるのは何も自分から湧き出るエネルギーだけじゃない。受けたダメージその分を、たった一箇所に、右拳に全力で込めて解き放つ。
その攻撃が強ければ強いほど、蓄積されたエネルギーの爆発的威力の解放は、例えファングであろうと怯むはずだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「なんだ…… ぐっ!!」
ファングは咄嗟に胸前で腕をクロスさせて拳を防ごうとする。
しかし、溜められた強力な一撃は、ファングの攻撃ダメージ+アベンジ自身のエネルギーから放たれた一撃。
最早、あのファングでさえもその破壊力には敵わなかった。防御は砕かれ、まともに食らうはずもない顔面へと、拳がめり込むように入る。
あまりの衝撃ファングは吹き飛ばされ、アベンジは手を痛そうに振るう。全力で放ち、その分殴った衝撃が腕に響く。流石首領の右腕と言わんばかしの硬さと強さだ。
現に殴られて吹き飛ばされたが、すぐに受け身を取ってから何事もなかったように平然と立ち上がる。
「やっぱりダメなのか…!!」
「班目から渡されたアビリティズフィードはその程度らしいな。それでも俺には敵わない。いくらお前が強くなろうとも、俺を超えることはできない」
「まだですッ!!」
まだ諦めきれないアベンジは、アベンジドライバーに装着されたトランスフィードの上部を押し、天高く飛び上がる。右脚に全エネルギーを集中させ、ファングの胸部目掛けて降下する。
《GOODBYE!! トランスアベンジタイム!!》
ファングもそれを向かい打つべく、両腕の爪に黒いエネルギーを纏わせ、巨大な爪に変化させると、突き刺すような形で前に出す。
2人の必殺技はぶつかり合い、その場に凄まじい爆発が引き起こされた。
「ぐはぁっ……!!」
「… ふん。手間をかけさせてくれたな………っ」
稲森の変身は解け、全ての力を使いきってしまったのか地面へと倒れてしまう。
一方のファングには、それほどのダメージは入っておらず平然としている…… ように見えたが、ただの我慢であった。アベンジの溜めて放った一撃により、やはり多少のダメージは入っていたようだ。
しかし、その次の必殺技の時に、ファングの方が強さは上だったようで弾き飛ばされた。いや、彼の緊急回避手段であったのだ。あのまま何もせずに真正面で受け止めていたら、いずれ直撃は避けられなかった。
アベンジはあの状況の中、ファングの油断で与えた腕へのダメージを見過ごしてはいなかった。胸部を狙えば、必然的にファングは爪を駆使して対処すると思ったからだ。そうすれば爪を砕いて突破できる推測していた。
「……… だが、私にはまだまだ及ばなかったようだ」
「うぅっ…!」
「終わりだ」
爪を振り上げて、稲森の首を切断しようとしたその時、変身の解けた陽奈が稲森の隣に投げ飛ばされる。
首領はファングの横に並び立つと、振り上げた爪を下ろすように促す。
「陽奈さん!!」
「イナゴよ。最強の一族の生き残り。私はお前たちにどれほどの傷を負わされたか思い出したくもない。それほどお前たちは強かった。だからこそ、ここで始末しておくことが重要だ……… しかし、お前たちを助けてやろうと思う」
「… 助ける?」
「条件を聞け。なに簡単な話しだ」
首領の掌を返したような言い方に、稲盛は戸惑う。
しかしその条件とは、稲盛にとって最悪な事に変わらない。再び最悪な結末へと向かう一歩だった────。
「───── イナゴ。お前はその女… 陽奈を殺し、そしてモグロウを殺せ。その2つを成し遂げて見せれば、お前を始末する事だけはやめてやろう」
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班目はモグロウと共に、研究室にいた。ただモグロウはその場にいるだけであり、作業をしているのは班目だけである。
彼がなにを造っているのか定かではないが、モグロウはなんとなく察しができてしまう。また親友にとっての地獄なのだと。
「モグロウさん。どうしました? 悲しそうな顔をして」
「当たり前だろうが、くそっ! 今度はそれでなにを企んでやがる? 俺の親友に指一本でも出したら許さねーぞ!!」
「またそれですか…… あなたこそ、あなた自身の大親友を殺そうとしてるじゃないですか」
「…っ!! そ、それは……」
「全く嫌な掟ですね〜。私だったら気でも狂ってしまいそうです」
「思ってもない事いいやがって───!!」
「─── はい、できました。いや〜、少々時間がかかってしまいましたが、間に合いました。いや、間に合ってるかわかりませんが、まぁ大丈夫でしょう」
「…… なんだよ。そのアビリティズフィード…」
モグロウは班目の手に握られたアビリティズフィードに、全身が鳥肌になりそうな寒気を感じた。これはダメだと、生物的本能がそう伝えてきたかのようだ。
そんな班目は、いつも通りのニヤニヤとした顔つきで、嫌な気が強いアビリティズフィードの説明を始める。
「このアビリティズフィードは、元々トランスフィードと合わせる事で真価を発揮する物でした…… が、少し稲森さんの成長具合が今ひとつ足らなかったので、渡しませんでしたけどね。まぁお陰で完全に調整できたので良しとします」
「おい!!」
「はいはい、わかってますよ… トランスフィードと合わせる事で真価を発揮すると言いましたが、それなりの条件はあります。強大な力にはデメリットがつきものですからね」
「デメリット?…… お前まさかイナゴを実験台にしようってんじゃ…」
「いや、違います。私的にはデメリットかどうかわかりませんが、本人は簡単にパワーアップできて、身体にもなにも影響はありません。私の中では最強の形態です…… 私の予想ではファングさんは軽く凌ぎます」
「なんだって…!!? 待てよ…… そのデメリットってなんだ。お前自身の話しをしてるんじゃないだろ? イナゴには何かあるんだろ?」
「えぇ、ありますよ。この『リジェクトフィード』は犠牲。人の犠牲により得る力──── 命を犠牲にするほど力を増す能力です」
すみません!遅れてしまいました!
今回こんな感じなんですけど、まぁいつもの如くオチを……はい。
では次回、第22話「友にペイン」
次回もよろしくお願いします!!