前回、最悪な条件を突きつけられた稲森。期限まで残り1日となって、焦りを見せながら、気分を少しでも変えようと街へ駆り出す。その時、親友モグロウと出会い、再び真正面から話しをし、2人の大きかった溝は埋まり、実質的な仲直りを行うも、そんな中、2人の前に現れたのはスピーダとウェイトだった…
それではどうぞご覧ください。
「なにが逆襲よ!! 蹴散らすわよ、ウェイトちゃん!!」
「ふん…!!」
アベンジとモグロウを挟み込む形で、スピーダとウェイトは鬼気迫る表情で近づいてきた。
2対2で行われる戦い。1対1の戦いとは違い、仲間との連携を求められる。双方はもちろん連携であるならば、言葉を介さずとも、自然と相手の考えている事がわかり、すぐにそれを実行してみせるだろう。
「モグロウ!! 頼んだよ!!」
「任せろ!!」
モグロウが地面に穴を掘り、穴の中へと入り込む。一方のアベンジは2人が近づいてくる瞬間に高く跳び、2人の能力では到底捉えることのできない高さまで到達する。
能力による最高度まで到達するアベンジに対し、ウェイトは地面に手を突っ込んでコンクリートの塊を持ち上げる。
それをアベンジ目掛けて投げつけようとするが、ウェイトの足元が急になくなり、バランスを崩して穴にズッポリとハマってしまった。
「ちょっとウェイトちゃん! なにしてるのよ!」
「─── おい、よそ見すんなよ!!」
また穴が開いたと思えば、今度はスピーダがその穴にハマり、自慢の機動力が無力化されてしまった。
「ナイス、モグロウッ!!」
そしてアベンジはスピーダに向けて急降下し、最大高度からの飛び蹴りを放つと、勢いの乗った蹴りによってスピーダは後頭部から地面にめり込む。
そのスピーダを踏み台として、再び上空でくるりと一回転を決め、ウェイトの顔面に蹴りを浴びせようとした。
しかし、ウェイトの超パワーにより、蹴りが当たるより一瞬早く穴から投げ出して、両腕をクロスさせてアベンジの攻撃を防いで見せた。
「くっ…!!」
「…… 無駄だッ!!」
それからアベンジは脚を掴まれ、地面に叩きつけられ、凄まじく振り回された後に投げられる。まるで弾丸のようなスピードで壁に激突し、建物がガラガラと崩れて、瓦礫の下敷きとなってしまう。
すぐに助けに向かおうとするモグロウ。だが、いつの間にか抜け出してきたスピーダに、目に見えないほどのスピードで、四方八方から攻撃を受けてしまった。全く身動きが取れない状況となってしまった。
「むぐぅ…!!!」
「ほらほらどうしたの? モグロウちゃん!!」
やがて、スピーダの攻撃が終わったと思えば、目の前にウェイトの太く逞しい腕が現れ、モグロウの首に強力なラリアットが炸裂した。
吹き飛ばされたモグロウではあるが、何かのロープが彼の身体に絡みつく。
そのまま彼を繋いだロープは、彼を投げられた勢いのままに上空へと投げ飛ばす。
「ウェイトちゃん!!」
「…… わかっている…!!」
また地面からコンクリートをくり抜こうとするウェイトだが、ロープはウェイトとスピーダの脚に絡みつき、2人は不意を突かれ引っ張られてしまい倒れてしまう。
そのロープの正体はアベンジのダイブウェポンに搭載されている両腕の武器。両腕から放たれた鞭は、2人の脚に絡みつき、捕らえたまま全く離さない。
「むきぃーーーッ!!! もう許さねぇぞごらぁ!!!」
「…… こんなもの、引きちぎってくれる!!!」
すると、上空からドリルの様に回転したモグロウが急降下をしてきているのが見える。まともに喰らえば、例えウェイトの頑固な装甲だろうとダメージを受けるのは免れない。
ウェイトはダイブウェポンの鞭を引きちぎると、モグロウを迎え撃とうと身構える。
だが、その瞬間、ウェイトに何か大きなものが投げられバランスを崩してしまう。大きなもの。それはスピーダである。
「… スピーダッ…!?」
「がはっ…!!」
ダイブウェポンの鞭を引きちぎられた瞬間、トランスウェポンに変身したアベンジはスピーダを蹴り飛ばし、モグロウに気が向いているウェイトに喰らわせたのだ。
「モグロウッ!! これで決めよう!!」
「おうよ!!」
アベンジはトランスフィードの上部を押し、モグロウが2人に到達するタイミングに合わせて水平に必殺の飛び蹴りを放つ。
《GOODBYE!! トランスアベンジタイム!!》
「これでぇ!!」
「最後だッ!!」
「「はぁぁぁ……… はあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」」
親友同士から放たれる最高の攻撃は、ウェイトとスピーダを纏めて吹き飛ばし、凄まじいダメージを与えられた彼らは、受け身も取れずに地面へと転がる。
「あ、ありえない…!! なんなのよあんた達ィ!!」
「当たり前ですよ。ね、モグロウ」
「…… おう!! 当たり前だぜ!!」
2人は親友。例え言葉を介さずとも、自然と身体が動いてしまう。既に2人の絆は、掟や過去に縛られないほど強く、絶対のものなのだ。
違う道を歩もうと、違う場所へ移ろうと、もう誰にも、何者にも砕く事はできない。
「いいの2人とも? イナゴちゃんとモグロウちゃんは、二度も首領を裏切ることになるのよ? 完全に逃げる事ができなくなるわ。あなた達がこの世で生きている限りね!」
「だからこそやるべき事は1つです」
アベンジはモグロウに顔を向け、お互い無言で頷き合い、スピーダの方に向き直す。
もう覚悟は決まった。やるべき事はただ1つだけ───。
「─── 僕は首領を止めます!!」
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この男に情などあるのか。いや、「ない」という方が適切だろう。
彼にとっての命は、自分の欲を満たすためだけの実験材料。別の言葉で表現するなら玩具と言った方が適切だ。
これまで手を貸してきた彼だが、それもこれも全ては計画のうち。
あの人間側の英雄、初代エース羽畑 月火。あの怪人側の首領までも、彼にとっては一つの布石。
「あぁ……… 早く見たいです。人間側のライダーと怪人側のライダーの覚醒…… 早くリジェクトフィードを渡さなくてはいけませんね」
班目はニヤリと笑い、研究所から外へ行こうとすると、急に背後から冷たい空気が流れた事に気がつく。
ヒヤリとしたそれにゆっくりと振り向き、粗方予想はついてたが、やはりそうだったと自分の勘の良さを心の中で褒める。
ジェスター首領がおいでになったようだ。
「どこへ行く? 班目よ」
「これはこれは首領。散歩へ行こうかと思いましてね? ずっと中で開発を進めていると、どうも腰が痛くなってしまいますので、日でも浴びようかと考え───」
「くだらない冗談はよせ。お前ならば、なぜ私がここへ来たのか察しがつくだろう」
「…… 始末をしに来た。ですよね?」
「当たり前だ。私が裏切り者を許さないという事は、ファングやその他のジェスター達から聞いているはずだ」
「それは許してもらえないでしょうかね?」
「貴様……」
目の前に首領が立ち、今にも殺してしまいそうな勢いにも関わらず、班目はいつも通りの冷静さで向かい合っていた。
これが普通のジェスターならまずありえない事だ。人間だろうと、それはありえない。
班目自身はなんの血の混ざりもない、純粋な人間である。なのにこれだ。側から見れば、これを人間というのは奇妙であり、何より恐ろしく不気味なものである。
「首領、お忘れではありませんか?」
「… なに?」
「私があなたを治し、私が復活させ、その肉体と首領に見合うエースドライバーを改良しました。復活直後のあなたの負担を軽減しようと、試行錯誤して僅か数日でエースドライバーを仕上げ、あなたの身体を戦闘可能な状態にまで修復したのです」
「その件については感謝はしよう。だか、その事と裏切りについては別だ。お前にはここで死んでもらうぞ」
「………… 命を握っていたとしても?」
「……? 一体何を言ってる?」
「あなたの命が、私の手元にあるとしたら? どうします?」
「貴様… それがどういう意味であるかわかっているのか?」
「わかるも何も事実を述べたまでですよ。首領」
「私に何をしたッ…!!!」
首領が班目の言う嘘のような話しにイラつき、先ほどまで極力抑えていた殺意が風船が割れたように弾け出した。
その周辺は淀んだ空気が張り詰め、リゲインの幹部達でさえこの場にいれば、すぐにでも気を失って倒れてしまうだろう。それぐらいの空気なのだ。
ただ、この男 班目は、平然としているではないか。全く表情を崩さず、いつも通りのニヤリとした憎たらしい顔で首領を見つめる。
「いや〜、流石に許しを乞う作戦は無理な方が99.9%くらいだったんですよね。そんな残りの成功確率が雀の涙の涙を掬うのでしたら、いっその事あなたの身体に細工しておいた方が手っ取り早いと思いました」
「何をしたと聞いているのだッ!!!!!」
「心臓部分に人工知能カプセルを埋め込んでます。私がポンッと手を叩けば、中に内蔵されている分離システムが、あなたの肉体と月火さんの肉体を分離させます。おぉっと、すぐに取り出さない方がいいですよ。少しでもそういう素振りを見せた瞬間から起動するようになってますから」
「貴様ァ…!!!!!」
「まぁまぁ、私はあくまで研究好きの一般人です。もう少しくらい長生きさせてくださいよ。そうした方がお互い……… ねぇ? 首領?」
ここまでが予想通りの展開。自分の才能が素晴らしく、この上なく恐ろしいと感じる。
そしてもう一つ。班目には首領以外にも手玉に取っている人物がいた。
人間と怪人のを、自分の手に委ねられているという、まるで支配者にでもなったかのような気分だ。
まぁ、彼にはそんな支配者と神だとかは一切興味ない。
「さぁて、そろそろ頃合いになりましたよ…… ただもう喋れませんよね」
「…………」
「人間も怪人もとても面白い。価値観が違うだけで争うことができる。こんな単純明白な素晴らしい生き物がいますか? モグロウさんが失敗したからこそ、あなたには頑張ってもらいたいんです。期待してますよ─────」
もう何も喋らず、ただ主に従う事しかできなくなった人形。人というのは簡単に弄れるし、簡単に壊せる。
それが彼女であり、そこに彼女はもういない。
「─── 楓さん」
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アベンジとモグロウは、スピーダとウェイトの2人が反撃できないうちにロープか何かで縛ろうとしていたが無理だと判断した。
なにせウェイトのパワーがあれば、簡単に引きちぎられてしまうという事実。鎖やら頑丈なものがあるなら少しは変わるだろう。結局の所ところ、手元にそんなものがなくて縛る事さえできない。
「モグロウ。どうしようか」
「いや、俺に聞かれてもよー…」
するとその時、背後から殺意を感じ、2人はそちらの方へ反射的に振り向くと、そこへ仮面ライダークインとファングが同時に現れた。
ファングの方は相変わらずの気迫であり、一方のクインの方はどこか冷たい。まるで何もない空っぽの箱のようだ。
「な、なんだろうな… 楓の方、いつもと違う気がするぜ…?」
「うん。前あった時と何かが……」
2人が戸惑っていると、急にファングが手を挙げる。手を挙げたと同時にクインは杖の先端からエネルギー弾を連続して発射した。
唐突な攻撃に反応しきれず、2人はそのまま被弾してしまう。
「………」
それから土煙が止むと、なんとそこには誰もいなかった。
流石の不意打ちの攻撃では十分なエネルギーは溜まってない。だから消し飛ぶくらいの威力はないはずだ。だが、さっきまでいたはずの2人は、亡骸どころかその存在すらどこにも見当たらない。
「──── 全く、あんた達は何してんのよ」
「す、すみません。羽畑さん……」
クイン達は上空から声が聞こえて上を見ると、アベンジ達を重そうに抱えて飛んでいる仮面ライダーエース ダッシュウェポンの姿があった。
そして2人分の重さに耐えきれず、徐々に降下して投げるように地面へ捨てる。
「ありがとうございます。羽畑さん」
「別に礼はいいわ。それより……」
どうやら陽奈も楓に何かあったと察しがついているようだ。
それならやるしかないと、エースは前に出る。2人もその横に並ぶようにして構える。
「… スピーダ、ウェイト。貴様らはそこで寝ていろ。こいつらの始末は俺がやる」
「ファングちゃんなら3人相手でもどうって事ないでしょうね! いやん、かっこいいわ!」
「黙れ… では、行くぞ。貴様らをここで始末する。ここで殺す!!」
連戦となるが仕方がない。ここでやらなきゃやられるだけだ。
意を決して、アベンジ達はファングに立ち向かう。
班目お前なんなんや。
そして次回めためたに言っていた新フォームです。また次回の次回になったり…ならなかったり…タイトル詐欺とか言わないで!!
次回、第24話「恐怖はリジェクト」
次回もよろしくお願いします!!