前回、スピーダとウェイトをアベンジとモグロウコンビが見事に撃破し、その場をなんとか終えたが、追撃をするかのようにファングとクインが姿を表す。それに合わせてかエースも参戦し、現場はライダー怪人入り混じる戦いとなる。班目が何か考えているようだが、その詳細は未だに不明のまま。とにかく今はファングをどうにかするしかない…
それではどうぞご覧ください。
この世で最も恐ろしい生物は何かと聞かれれば、ここであるなら怪人のどれかになる事はまず間違いない。
そこらにいる蜘蛛や蛾など嫌いな人もいるだろう。ただ、怪人を目の当たりにして、その容姿を見れば恐怖しない他ない。
しかしだ。普段の生活に怪人がいたら、それはそれで慣れというものが起き、結局は怪人がどれほど恐ろしい見た目や声を発していても、慣れてしまえばどうってことはなくなる。ましてや人間に手を出せば殺される、なんで世界がここである。自分たちより格下がそこにいるという事実があるだけで、人間たちは皆強がり、怪人達を蔑んできた。
「さっきまでの威勢はどうした? 3人がかりでもこの程度とは… 冗談が過ぎる」
人間達が恐れ慄き、怪人達ですら恐れる存在。
それこそこのジェスター首領の右腕と呼ばれた怪人。全体的に見れば、特化した能力もなかったが、それを潰すかの如き豪腕、鋼のような肉体と、どんな装甲も切り裂く爪。
そして1番は威厳ある姿。誰しも一眼見て感じることが出来る強さの証────。
「これが…… ファングか…」
「モグロウ。貴様は我らを裏切り、血族の誇りまでも裏切った。貴様もその血族もその意味がわかっているはずだ」
「うっ…… そ、それでも… それでも俺は───!!」
「イナゴを取るという訳か。同族を天秤にかけてまで、そいつと地獄を見ようと言うのか?」
「イナゴは俺にとって家族だッ!!! 天秤? 知るかよ!!! 命を天秤にかけるなんてものは、そもそもおかしいんだよ!!! 俺にとって全部大切だッ!!! イナゴも… 俺の家族は、俺が守るッ!!!」」
「心意気だけで守れると思うな? 貴様が何をしようと、貴様の過去は変わらない。命が大切だというのなら、貴様はなぜあの時から首領を裏切らなかった? 笑わせるな。お前は口だけだ。口だけならいくらでも言える」
「それは……」
すると、モグロウの頭上を通り、ファングへと渾身の蹴りを浴びせる男が1人。
それは怒りに身を任せたキックだった。全体重を乗せ、確実に相手を倒そうとする彼の意思。アベンジの… 稲森の本気の一撃である。
流石のファングもこの衝撃を全て受け止めきれず、思わず苦痛の表情を浮かべてしまった。
「イナゴッ…!!」
「これ以上親友を侮辱することだけは許さない!!」
「事実を述べたまでだろう? 奴は戦争に参加している。それで何人もの命を奪った。それが今更人間を守るだと? これが笑わずにいられるか」
「確かにモグロウは参加してた。本当にそれは… ダメなことで、仕方がないと済む問題じゃない……… だけど、人間も怪人もやり直せる。生きている限り何回だって、何度だってやり直せるんだ!!」
「戯言を… この裏切り者どもがッ!!」
「だからモグロウ… もう犠牲になるとか、自分の命を捨てようなんて思わないでよ…… 生きて僕と償おう!!」
そう言ってアベンジはモグロウに手を差し伸べる。
親友の言葉を、稲森の言葉を聞いたモグロウは、彼の手をガシッと力強く握った後、アベンジの横へと並び立つ。
「悪いな親友…… ありがとうよ!!」
「いいって!! それじゃあ改めて行くよモグロ────!!?」
まるで歯が立たないファングに対し、2人が友情を更に固めあった直後、目の前に火球が放たれて吹き飛ばされた。
この間にもう1人の存在を忘れかけていたのに気づく。クインの存在だ。
いつの間にかファングは合図をしていたらしく、アベンジ達はそれに気づかずに攻撃を受けてしまったようだ。
「いてて……」
「何いい空気になってんのよ!! 相手は1人じゃないでしょう!? 気を緩めないで!!」
「…… ごめんなさい」
「とりあえずあんた達はファング。私は楓。いいわね?」
「わかりました!!」
再びクインによる火球が放たれ、アベンジ達はエースの言う通りにそれを避けてファングの元へと走り出す。
そんなエースはクインの攻撃を避けた同時に、スーパーハードフィードを取り出してエースドライバーにセットする。
また暴走してしまうのか。アベンジはエースを止めようとするが、彼女はなぜか余裕そうであった。
「心配は無用よ…… 楓。あなたを助けるために、私頑張るから!!」
《Come on!!》
《Let's try スーパーハード・ハード・ハード!! エース!!》
全身が軋む─── だけどもう大丈夫。
スーパーハードウェポンへとフォームチェンジしたエースだったが、この場合暴走してしまい、動くもの全てを破壊しようとするだろう。
しかし、楓を助けたいという気持ち、そして怪人の少女のような罪なき人を助けたいという想いが、あの暴走形態 スーパーハードウェポンを抑えつける。
「ぐぅぅぅぅッ!! あぁぁぁぁ…!!!!」
ただし、抑える負担は今までの倍にかかってくる。
元々このフォームは暴走させる為に造られた姿であり、通常抑えるどころか前のように暴走状態となるのが正常なのだ。
それでもエースはクインに向かう。軋む身体に更なる鞭を打ってでも、親友を救うために。
「楓ッ!!!」
「………─────」
──── 一方のアベンジたちは、ファングと2vs1という一見数で押す形ではあるが、実際には1vs1ですらない。
ファングにとってアベンジたちは餌。ただ動くだけの餌。ただの餌が百獣の王と呼ばれるライオンに勝てる訳がない。戦力差は彼らが1番理解できている。
「でも引くわけには…!!」
「いかねーよなぁ!!」
アベンジとモグロウによる左右からのダブルキック。
それを平然と手で受け止めて見せ、2人は軽く投げられると、ファングは爪で空を裂いて衝撃波を飛ばす。
ただの衝撃波のはずだが、ファングレベルになれば、これだけでもかなりのダメージが入る。
「うぐっ…!!」
「かはっ…!!?」
3人でも歯が立たなかったのに、2人だけとなったらただの遊び道具と化しているんじゃないだろうか。今のも本気ではなかったようだ。
倒れた2人にファングが近づいてきているのがわかる。トランスウェポンと言えど、もう流石に限界がきている。このままでは本当に始末されてしまう。
「ま、まずい…… 早く立たなきゃ……ッ!!!」
「そうは言ってもよ…… くそっ!!」
連戦による疲労もあってか、2人の身体には限界が来ていた。追い討ちのようにファングという規格外の人物が登場。
もうダメかと、内心思い始めてしまった時であった────。
「…… 何の用だ。班目ッ!!」
「あら、どうしましたか? ファングさん?」
アベンジたちの目の前に立っていたのは、仮面ライダージャックへと変身した班目であり、それを認識した頃にはジャックが2人を担いでいた。
まるで意味がわからない行動に、ファングはジャックに対して怒鳴り声をあげる。
「貴様ッ…… これがどういう事かわかってのことだろうな!!」
「わかってますよ。えぇ、とても」
「裏切り者共をどうするつもりだッ!!」
「本当は稲森さんだけでいいのですが…… まぁモグロウさんは稲森さんにとって必要なので連れて行きます」
「何故だと聞いているのだ班目ッ!!」
「理由?
「班目ェ!!!」
ファングが爪を掲げた瞬間、ジャックはアベンジたちを連れて、どこかへと消えていってしまった。
その行動が首領を裏切り… 侮辱していると取ったファングは、はらわたが煮えくり返る程の怒りのままにクインに命令する。
「エースを捕まえろ!! そして首領にお渡しするのだッ!! 俺は──── 奴らを殺すッ…!!!!!」
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「─── 班目さん…」
「あぁ、その通りです。ファングを倒す為の力をあなたに授けましょう」
「あのリジェクトフィードを渡すつもりなんだろ…」
「ん? やけに素直ですねモグロウさん? ファングは強いですから、そうなるのも仕方ない。これに頼るのは必然的と言えるでしょう」
ここは懐かしい廃工場。稲森が初めてアベンジドライバーを渡された場所である。
変身を解いた3人はここへ集まり、班目が早速リジェクトフィードを稲森に渡そうというところだ。
このアビリティズフィードに関しては、否定的だったり後ろ向きに考えていたモグロウではあるが、ファングとの戦いでもうこれに頼る以外に勝ち筋がないと思ったのだ。
「これが話しに聞いていた……」
「やはりモグロウさんから聞いてましたか。なら話しは早いです。リジェクトフィードは『犠牲』による強さ。誰でも構いませんが、縁が深い程、その力の大きさは計り知れないものとなってきます。まさに最強のアビリティズフィードです」
「…… 誰1人も『犠牲』にはしませんよ」
「あ…… まぁそれもいいですね。リジェクトの素の強さも今までの比ではありません。最も凶悪であり、最も凶暴。それがリジェクトウェポン。もう誰もあなたを止める事はできません…… 多分ですけど」
「多分って…」
「私も保障しかねます。なにぶん研究に終わりはないもので…… もしかしたらそれ以上のものが出来る… のかも、しれませんがね」
いつものようにニヤリと笑う班目を気味が悪く思いながらも、稲森達は再びファングの元へと戻ろうとすると、班目がマシンアベンジャーを呼び出す。
気が利いているのか… いや、班目は早く見たいのだろう。自分の開発したアビリティズフィードの性能を。ついでにファングが倒されるその姿を。
「では、健闘を祈りますよ」
「ありがとうございます─── あの」
「はい?」
「あなたは人間なんですか?」
「…… 酷い事を言いますね。私は人間ですよ? 今も昔も変わらずにね」
「あ、そうですか… すみません。では、行きます」
それから稲森は自動操縦でここまでやってきたマシンアベンジャーに跨り、ファングの元へと走り出す。
班目はその背中に軽く手を振ると、再びニヤリと笑い出す。今度は分かりやすいほどの不敵な笑顔を浮かべ。
「やれやれ。ついにそう聞かれてしまうとは…… ですが、あながち間違ってはいませんよ稲森さん。私は人間であり、
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凄まじい爆発音が街に響き渡り、現場へとアクセルを全開にしてたどり着いた稲森たち。
その光景はまさに酷いものであった。街は壊れて瓦礫の山と化し、人々は倒れ、苦しみ助けを呼び、思わず耳を塞いでしまおうと思うくらいである。
そして中心にはファングが立っていた。目があった途端に、今までとは比べ物にならないほどの殺意が身体を突き抜ける。
「モグロウ。街の人の避難と救出をお願い」
「わかってるぜ、イナゴ…… 無理すんなよ」
「無理はしないよ。無茶はするけどね」
「…… ったく、ほんとに気を付けろよな!!」
「うん!!」
モグロウに手を振って分かれた稲森は、ファングにゆっくりと近づいていく。
近づく度にピリピリとする感覚を受けつつも、歩むを止める事なく、深く息を吸ってファングの前へと立ち塞がる。
ある程度の距離まで来ると、気迫からかファングの姿がより大きく感じ、気を緩めでもしたら気を失ってしまいそうだ。
「来たか…… イナゴ…!!」
「スー…… ハー……… はい、来ました」
「貴様らは首領に背いただけでなく、今度は首領を倒すだと…? 舐めた口もいい加減にしろ。まずは貴様だ、イナゴ。貴様から始末するッ!!!」
「…… きっと大丈夫。大丈夫なはずだ!!」
それから稲森はアベンジドライバーを巻き付けてから、リジェクトフィードを取り出すと、続いてトランスフィードを取り出して合体させる。2つのアビリティズフィードを合体させた状態は、まるで怪獣が牙を剥き出して、正面を向いているかような造形をしている。
アベンジドライバーに合体させたリジェクト・トランスフィードを装着すると《Welcome!! リジェクト!!》という音声と共に待機音が鳴り始めた。
《Ambition comes true because of sacrifice!!》
アベンジドライバーを飲む混むかの如きリジェクトフィード。
稲森は右腕をトランス同様に、リジェクトフィードの上部のスイッチに手を置き、左腕を自分の顔の右横まで伸ばす。
「─── 変身ッッッ!!!!!」
《Tasty!!》
変身の掛け声の後、上部のスイッチを押し腕を開く。
すると、トランスと同じ霞んだイナゴの群れが出現し、アーマーを形成していくのかと思いきや、イナゴの群れはそこら中に力を失い倒れた人々の所へと飛んでいく。
1人1人に群れで止まると、群れが1匹の大きなイナゴへと変化して、倒れている人々のエネルギーを吸い始めた。
そして吸い取り続けるイナゴたちの身体から管が出現し、稲森の身体中に突き刺さる。
いつもなら痛みを生むはずのこの行為が、今回の場合はとても心地よく感じてしまった。身体に流れ込むエネルギーにうっとりとしてしまいそうになる程、それはとても暖かく安心ができるものであった。
それからイナゴの群れは鋭利な棘が身体中にびっしりと付いたアーマーを形成し、ついにアベンジは新たな力を宿す。
《Put a flag on the mountain of sacrifice, I'm an avenge world revenge!!》
《START!! リジェクトアベンジ!!》
仮面ライダーアベンジ リジェクトウェポンがここに誕生した。
ほんとすみません。ほんとすみません。
新フォーム先延ばしはわざとじゃないんです!!信じてくださいぃぃぃぃぃぃ!!!
次回、第25話「犠牲がビター」
次回もよろしくお願いします!!