仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

前回、ファングの出現により苦戦するアベンジたち。エースがクインを抑えてはいるが、アベンジたちの方は連戦ということもあり体力も限界であったその時、ジャックが現れその場から逃げ去ることに成功。それから班目よりリジェクトフィードを渡された稲森は再びファングの元へ。仮面ライダーアベンジ リジェクトウェポンへと変身し戦うのであった…

それではどうぞご覧ください。


第25話「犠牲がビター」

「すごい…… 力が溢れてくる!!」

 

「班目の言う俺を倒す為の力というやつか? それがどうした。貴様を殺せばどうという事はない!!」

 

 

 ファングはアベンジに近づき、爪で彼の身体を引き裂こうと振り被り、右肩から胴にかけて真っ二つに切り裂いた。

 ─── はずだった。

 しかし、ファングの爪は人体を切り裂くどころか、右肩にピタリと止まったままである。

 あり得ない。あの一撃は本気でこいつの身体を切り裂いてしまおう放った一撃。奴の全フォームで先程の一撃を何もせずに受けてみろ。豆腐を切るかの如く簡単に切れるはずだ。

 そう思っていたファングだったが、現実はこうである。アベンジのアーマー強度は、ファングの力より硬く強いという事。

 

 

「な、なんだッ…!!? 俺の爪が通らないだとッ!!?」

 

「すごい…!!─── これなら行けるッ!!!」

 

 

 そしてアベンジは爪を弾き飛ばすと、否、弾き飛ばしただけで爪を割って見せたのだ。とても鋭利で硬いあのファングの爪を。

 これには流石のファングも驚き、状況を呑めずに只々頭の中が真っ白くなるだけだった。

 

 

「馬鹿なッ!!!」

 

「はぁっ!!!」

 

 

 アベンジの放った右ストレートが決まる。

 なんという軽さだろう。あのファングが自ら放ったパンチで軽々と持ち上げ、いとも簡単に吹き飛ばした。

 初代エースにこそ地面に転がされたファングだったが、たったそれ一度だけの事だ。初代以外には、今まで一度足りとも地面に転がった事はない。

 だが、どうだ。今、目の前で不思議なことが起きている。

 

 

「まだまだぁ!!!」

 

 

 無様に転がったファングを追撃と、もう一撃顔面にパンチを捻じり込むようにして放つアベンジ。

 2人… いや、3人でも歯が立たないほどの強者だったファング。

 それも今は過去形だ。彼はこうして自分より格下だと思っていた相手に、無様に地面へと転がり、追い討ちを喰らい、何もできずにニ撃も喰らわされた。

 たったそれだけの攻撃に、ファングは既に自分の身体の限界を感じている。

 

 

「こんな……ッ!!! こんな格下にッ!!! こんな格下に負けるのか俺はぁッ!!!!!」

 

 

 止まらない。止められない。

 アベンジはこのリジェクトフィードを使えば、身体のどこかしらに大きな損害が発生するんじゃないかと思っていた。

 しかし、それはただの思い過ごしに過ぎなかった。不思議と心地よい。身体のどこにも異常はなく、それどころか気持ちがいいのだ。

 

 

「………ッ!!!」

 

 

 ── 力が溢れる。力が漏れ出す。

 リジェクトウェポンになってから、妙だが心が安らいでいくのがわかる。

 何故こんなにも心地が良く、とても清々しいのだろうか。生物を殴り、蹴り、それをただ思うがままにやるだけで、こんなに晴れ晴れとした気分になるんだろう。

 

 

「ははっ…」

 

 

 不思議なほど笑顔になる。顔が引き攣る。楽しい。

 そう思っていないはず… そう思っている。思ってしまっている。暴力を楽しんでしまっている。

 

 

「ちっ…!!」

 

 

 すると、ファングは折れてない方の爪にエネルギーを全集中させ、アベンジ殺意を込めて切り裂いた。

 この一撃により少しだが、隙と間合いを取ることに成功し、一時距離を取る。

 

 

「班目… 余計な事を…… これが俺を倒す為の力? ふん、確かにそうだな。だが、ここで俺がそう簡単に終わると思うか? 無駄だっ!! 俺は首領の右腕として貴様を… アベンジッ!!! 貴様を殺す!!!」

 

「殺す……」

 

「……ッなんだ… この虫は…… どこから出てきた…?」

 

 

 辺りを見れば、先程変身時に出てきたイナゴの群れが、アベンジの背中から這い出てきている。

 そのイナゴはファングの爪で簡単に切り裂ける。あのリジェクトウェポンから出たモノとは思えないほど脆い。

 それらは群れとなし、そこら中に命尽きて倒れてしまっている人の元へと飛び乗り、身体中を覆い尽くすほど密集する。

 まるで獲物を喰らうかの如くわらわらと蠢き、養分を吸収し終えると、それらは纏まって管を創り、アベンジへと戻っていく。

 

 

「… 何をする気だ」

 

 

 イナゴ達が戻ってくると、アベンジの身体は満足感に浸された。

 また取り込みたい。また吸いたい。もっと欲しい。

 

 

「─── ファング……」

 

「…ッ!」

 

 

 あぁ、そうだ。こいつを喰えばもっと強くなれる────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「ふぅ… まぁ避難はこれくらいでいいか?」

 

 

 一方、モグロウは逃げ遅れた人々を助けつつ、陽奈の様子を見に行こうとしていたところであった。

 後ろで大きな爆発音が聞こえるが、きっとあれはリジェクトウェポンを使っているイナゴなんだろうと思う。心配なのは副作用。班目はそのままの事しか言っていないだろうけど、如何にもこうにもあいつを信じることはできない。

 とにかく、ファングを倒せるのは稲森しかいない。

 モグロウは戦闘する陽奈の元へと駆けつける────。

 

 ─── 身体が潰れそうになる。暴走する身体を抑えられるのも、そろそろ限界に近いと感じる。

 親友を力強く殴るのが、ほんとに嫌になる。こんな事なかったのに… いつからだろうね。

 

 

「もうやめなさいッ!! 楓ッ!!」

 

「………」

 

 

 エースは近距離重視の攻撃を行い、クインは遠距離重視の攻撃を行う。

 お互い攻撃手段が近距離と遠距離しか存在しない。エースガモスボウで対応してもいいのだが、火力が違い過ぎる。

 だからこうして親友を直接殴りにいくしかないのだ。

 

 

「黙ってないでなんか言いなさいよ!! 馬鹿ッ!!!」

 

 

 そしてエースはクインを再び殴ろうと、一気にその距離を縮める。

 しかし、既に杖にエネルギーを溜めていたクインは、近づいてきた瞬間、至近距離で火球を放つ。

 凄まじい爆発の中からエースは飛び出して地面に着地するも、身体がギチギチと締め付けられる。ここにきて限界か。

 

 

「はぁ… はぁ…… (このままだとまた暴走する。もう動けない… 楓を止められないまま終わるの…?)」

 

 

 少し気を緩めてしまったのが失敗だった。気張って耐えた暴走も疲労によって、変身を解く前にふっと記憶が無くなる。

 その瞬間、モグロウがエースのスーパーハードフィードを引き抜いた。様子がおかしいと思い、穴を掘って地面から不意に登場して外したのだ。

 変身が解けた陽奈は気を失い、モグロウにもたれ掛かる。クインはこちらに標準を合わせている。状況は最悪だ。

 

 

「あぁ、くそっ!! あとちょっと待てっ!! 2人分は掘れてないんだよ!!」

 

 

 クインが火球を発射する10秒前、モグロウの頬に冷たいものが流れてきた。

 これは自分のものではないと、一瞬でわかった。上から落ちてきたのだから雨かと思う。

 だが、それは雨ではない。涙である。陽奈は泣いていた。気を失ってはいるが、ずっと気を張っていた。ずっと親友を殴っていた。どれだけ苦しかったのだろう。

 その時、モグロウは目の色を変えて地面に爪を突き立てる。

 

 

「…………」

 

 

 そして、火球が発射された。そこに火柱が立ち、辺りを赤く照らす。

 光が収まると、そこにはモグロウの姿はなかった。大きな穴がぽっかりと空いており、陽奈諸共焼かれてしまったのだろうか───。

 

 

「─── ったく、危ねーよなぁ」

 

 

 しかし、モグロウは生きていた。もちろん陽奈も担ぎながら、片手で2人分の穴を掘って見事あの火球から逃れたのだ。

 

 

「女の涙見せられて、そんままそこで諦めてられるかよッ!!!」

 

 

 それからモグロウは全力で掘り進め、戦場からなんとか逃げて見せた。

 クインは仕留めたと思ったのか。それ以上の攻撃をせずにその場で待機する。まるで本当の人形になったかのような姿。

 その後ろからゆらりと現れる1つの影。もちろん言わずもがな班目である。

 

 

「やぁ、どうも。楓さんはお元気でしょうか?」

 

「…………」

 

「まぁ当然ですか… しかし、あなたも簡単に堕ちてしまいましたね。陽奈さんがあの日、怪人を逃した頃ですかね。そこからあなたの心は揺らいだ。揺らいだ心はそう簡単には戻らない」

 

「…………」

 

「後は簡単です。あなたのポーカドライバーに搭載した電波を、変身するたびに流せばこの通り… 洗脳することは容易い。お陰で素晴らしいほど良く聞き、言われた事は必ずこなす…… あなたに託して正解でした。さて、ここからですね。さっさとファングさんと首領をあの2人が痛めつけてくれれば、そうすれば全て上手くいくんです」

 

 

 班目は不敵な笑みを浮かべながら、声に出して笑う。

 素晴らしいほど事が上手く進む。自分の才能に惚れてしまいそうになる。いや、既に惚れている。だから上手くいく。

 

 

「あぁ… 早く見てみたい─── 怪人と人間の生き残りをかけた戦争を……───」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 アベンジの拳が何度もファングの身体にめり込む。

 あり得ないほど強い。あり得ないほど恐ろしい。ファングにとってあり得ない現実が襲いかかる。

 

 

「…… 何が最強の民族だ!! この裏切り者がぁ…!!!

 

 

 なんて酷い現実だろう。とても痛い。とても苦しい。

 気づけば拳が目の前にある。次の瞬間には吹き飛ばされ、また再び前を見れば、そこにあるのは拳。

 

 

「…… はぁ…… はぁー………… ちっ!!」

 

 

 再びアベンジの背中からイナゴの群れが飛び出した。

 そこら中に倒れている人を包み込み、触手を生み出し、アベンジの元へと吸収される。

 

 

「…… なるほど。俺でも虫唾が走る能力だ……」

 

 

 戦いの中で犠牲となった人々。命を失ってしまった人たちが、僅かに残した生きていた頃の生命のエネルギー。

 そのエネルギーを啜るのがリジェクトウェポン。生きる為に誰もが持っている生命への執着。

 あらゆる犠牲を生む事で生み出される力。自らが生み出し、他人が生み出し、この世に必ず付き纏う犠牲。

 より強い力を求めるのであれば、それ相応の犠牲がつきものである。対価を支払う事。

 

 

「ファング…!!!」

 

 

 もっと強くなりたい。もっと誰かをぶちのめしたい。

 もっともっと犠牲を生みたい。犠牲は僕の力となって、犠牲は僕を更なる高みへと導いてくれる。

 ファングを殺して、喰らって、僕はもっと強くなる。

 

 

「ぐあぁぁぁあっ…… ぐぅッッ!!!!」

 

 

 ── 楽しい。楽しい。楽しい。

 

 

「これで!!!」

 

 

 これで犠牲者が増える。僕は強くなる。もっと強くなる。

 犠牲を増やそう。そうすればみんな救える。今より多くの人の命を救えるんだ。

 だからもっと犠牲を増やさなきゃいけない。僕が強くなる為に───────。

 

 

「─── え…?」

 

 

 ─── …… 僕は一体何を言ってるんだ?

 そう思ったアベンジはほんの少しの隙を見せた。ほんの少しの隙ではあったものの、そこはファング。隙を見逃さなかった。

 僅かに残った爪で、自分の中にあるエネルギーを全放出させてアベンジを吹き飛ばした。

 気がつけばそこにファングの姿はなく、そこら中にファングによって命を絶たれた人々が倒れている。

 そしてアベンジは思い出す。この人たちに自分が何をしていたのか。自分は一体何を口走っていたのか。

 

 

「う、うぅ…!!!」

 

 

 稲森はリジェクトフィードを引き抜いて、地面に膝をつき、頭を抱えて涙を溢す。

 自らが殺した訳ではない。それはわかっている。わかってはいるが、そうではない。自分はこの人たちを使()()()自らの力に変換していた。命を使()()()のだ。

 そして自分は何を思い、何を言っていたのか。暴力に快感を得ていた。楽しかった。こんなの自分ではない。

 

 

「何してるんだ僕はッ……!!!!!」

 

 

 リジェクトウェポン。それは最も容易く力を持つ事ができる強力な武器。

 ただしそれは、犠牲の上に成り立つ最強の力なのだ。




さぁもう25話目です。
この調子でいけば45話くらいで完結できそうです(またです)。

では次回、第26話「決意のエース」

次回もよろしくお願いします!!
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