仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

前回、稲森はリジェクトウェポンの使用により最強の力を手に入れるが、その力は思考回路をもおかしくしてしまう。あのファングが手も足も出せぬほど完膚なきまでに倒される。が、自我を取り戻した稲森の隙をつき、ファングはその場から逃走した。楓も元に戻る気配もなく、班目の企みは進んでいく…

それではどうぞご覧ください。


第26話「決意のエース」

「楓にとってのヒーローって何?」

 

「なに〜? 陽奈は急に変なこと聞くね」

 

「ただ気になっただけ。特に深い意味なんてないわよ」

 

「う〜ん…… 陽奈みたいな人のことを言うんじゃないかな?」

 

「私? あなたが思うほど大したことはしてないと思うけど…」

 

「…… 陽奈ってさ。大体そういう変なこと言う時って悩みがある時だよね〜」

 

「悩み… まぁ、ないとは言わないわ…」

 

「ヒーローって悩み事が多いと思う。だってそれくらい抱え込んでるんだもん」

 

「それで?」

 

「だーかーら〜… 私にとってのヒーローはいつだって陽奈なの! もし私が悪い奴に絡まれたらすぐに助けてよ!」

 

「はいはい。こんな危なっかしい子を1人にしちゃいけないからね」

 

「なにそれー!もー!」

 

「ふふふっ───」

 

「ねぇ───……… どうして私を裏切ったの?」

 

「……えっ───」

 

 

 

 

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 ──── ここはどこだろう? 前にも来た事があるような…。

 陽奈はベットから起き上がり周りを見渡す。どうやらここは病院のベットのようだ。机の横にはバナナが置かれている。

 こうして変な夢を見る前、自分に何が起きたのかは粗方予想はつく。

 

 

「…… はぁ」

 

 

 またベットの上でこうして眠り、今どれだけの時間が経過したのだろう。

 スーパーハードウェポンに変身し、楓と戦い、その後の事がどうにも思い出せないが、きっと稲森かモグロウ辺りだ。

 それから陽奈はベットの横にあるバナナを一房千切り、剥いて食べ始めた。甘い。前食べたのと同じだ。

 しばらくすると、病室に誰かが入ってきた。

 

 

「どうも羽畑さん」

 

「稲森…… あんたも暇ね」

 

「ははっ、でも暇じゃないですよ。お金が無くて、そろそろ大家さんに追い出されそうで… 今は働く余裕もないほど戦う事ばかり。こうして少し時間が作れただけでも癒しです」

 

「なら、家で休んでなさいよ。私の見舞いになんか来ないで」

 

「そうは行きませんよ! 羽畑さんにはお世話になってるんですから、これくらいの事はやらないと!」

 

「…… ほんとバカね。あなたは…… で、私を運んできたのは稲森?」

 

「いえ、羽畑さんを運んだのはモグロウです」

 

「あのモグラ怪人が……」

 

「結構ギリギリだったそうですよ。スーパーハードウェポンが暴走仕掛けたところで駆けつけたって」

 

「………」

 

 

 そこまでの記憶はある。自分でもこのままでは暴走すると思っていた。あの状況で少し気を抜いてしまったのが間違いだった。

 それ以上の記憶は微塵も覚えていないが、どうやらモグロウに助けられ、その場からは何とか逃げられたようだ。大事ではなく本当に良かったと思ってる。

 しかし、稲盛の様子が先ほどから変である。

 陽奈は稲森の様子が不自然に感じ、それについて聞いてみた。

 

 

「ねぇ、あなた。何でさっきから笑ってないの?」

 

「え? いや、笑ってますよ…」

 

「顔が引き攣ってるし、元気を感じられない。あなたの方もなんかあったんでしょ?」

 

「……… えっと、実は────」

 

 

 稲森はあの裏側で何があったのか全てを話した。

 新たに使用したリジェクトウェポンによる影響で思考回路がおかしくなり、色んな人の犠牲から与えられる力。ファングには勝利したものの、そこで再認識した。戦う事への恐怖を。

 

 

「また同じように使用すれば、僕はどれだけの犠牲を払うのか…… 思考がぐちゃぐちゃになって殺戮を楽しむような… そんな奴になったんです。アベンジドライバーを見る度に怖くなるんです。あの時、生きている人たちが周りにいたら、僕は一体その人たちに何をしていたのかって……」

 

「班目もまたとんでもないの造ったわね… ホント何がしたいんだか。それで? もう変身したくないって言うの?」

 

「い、いえ、そんな事……」

 

「でも、あなたは再認識しちゃった訳でしょ? これが殺す為の道具であるって事」

 

「………」

 

「…… 私も最初は怪人なんて消えちゃえばいいって思ってた。この世から1匹残らずね。その為に私たちライダーがいるんだって…… でも、それは私たちがそう思っていただけで、実際はこうして倒さなくてもいい怪人もいる。誰よりも命を大切にするし、困ってる人がいたらそれが人でも助ける。そんな怪人もいる訳だし」

 

「羽畑さん…」

 

「父さんのやり方が全部が全部悪いとは言わない。実際、怪人は何もできない私たちに何をしたと思う? 奴隷よ? 家畜同然に扱われたのよ? 何人も死んだわ。それで許せる? 私だったら許せない」

 

「…… 確かにそう思います」

 

「─── だけどね? それは一部なのよ。一部がそうしただけで、他は何もしてないの。怪人は許さないわ。だけど全部なんて言ってたらいつまでも終わらない。こんなバカみたいな人間と怪人のいざこざもうごめんよ…… こんな条約が無ければいい」

 

「羽畑さん… それって」

 

「条約なんてものを撤廃するわ。これ以上… 犠牲は出したくない───」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 陽奈が条約を撤廃すると言って1週間、特に世界は変わったかと言われれば何も変わってはいない。

 そもそも陽奈が仮面ライダーだからと言って、世界を動かす程の大きさを持っているのかどうかだ。答えはないと言った方が適切だ。

 何故なら、それは初代エースとその時の状況が影響したのが大きい。条約は確かに初代エース月火が作り出したもの。

 ただ影響を与えた月火はこの世にはいないし、既にこの世界が条約に慣れてしまっているのが原因でもある。

 陽奈から連絡は来ないが、きっと失敗しているのだろう。一度始まったものは、そう簡単に切り替えられるはずがない。

 

 

「─── で、お前は最近不調でどうしたんだって言いたいけど… まぁ、わかってる。あれのせいだろ…」

 

 

 モグロウは申し訳なさそうに言っているが、モグロウは何も悪い事はしていない。

 あれリジェクトウェポンの事であり、稲森がリジェクトウェポンに変身してから、全くと言っていいほど仮面ライダーに変身していないのだ。

 当然だ。陽奈の元で勘づかれるほど、彼の精神はズタズタになっていた。

 ここまで戦い続けてきた疲労。同族を殺してしまった過ち。そして罪なき犠牲者を己の糧とする恐怖。

 

 

「ごめんね、モグロウ」

 

「おぉ、おい。謝んなよ。謝るのは俺の方さ…… お前がこうなるなんてわかってたのに、俺はあの時自分を犠牲にしろなんて言っちまって…… すまん」

 

「いや、いいんだよ。迷惑かけてるのは僕さ…… アベンジに変身するのが怖くなったなんて…」

 

「今はリゲインの方も、反逆側のジェスターも大人しいし、この1週間久々の休暇だと思えばいい。それにお前は戦わなくていいんだ。今は陽奈の奴が何とかしてくれてる。これが上手くいけば、少しは楽になると思うぜ」

 

「…… ホントにごめん。モグロウ…」

 

「イナゴ……」

 

 

 この休暇は稲森にとって心安まる事なんてないのは、モグロウもよくわかってはいるが、こう言うしかないのが現状だった。

 1週間どころか、彼は自分の為にも人の為に怪人の為に、何度自分を酷使し続けたのか考えただけでも心が痛む。

 

 

「… あー、しかしよ。リゲインの方はあんなにわちゃわちゃしてやがったのに、急に表に目立たなくなったよな? 一体何があったんだ…?」

 

「わからない。でも多分だけど、首領は待ってるんだと思う」

 

「待ってる? 何を?」

 

「この1週間は前置きだ。もうすぐ始まると思う。僕達が… いや、世界が気を抜いた瞬間が奴らの狙い目だ───」

 

 

 

 

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 稲森の言う通り、リゲインは反逆者のジェスター達を森の中の開けた場所に集め、首領による命令を今か今かと待っていた。

 そして首領が用意された台の上に立つと、この1週間待ち続けていた理由を話す。

 

 

「皆、よく集まってくれた。我々はこの1週間、どれほど待ち続けただろう!! ついに我々は明日の明朝ッ!! 人間どもに裁きを下すのだッ!!」

 

「「「オォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」」」

 

「では、諸君。準備を進めるように…」

 

 

 それから首領は台から降りると、ファングや幹部2人がその後ろをついていく。

 そして少し歩くと、その横で待っていたフードの男の手前で首領はピタリと止まる。

 男がフードを取ると、それが全員班目だと言う事を認識する。

 

 

「素晴らしい演説でしたよ、首領」

 

 

 パチパチとわざとらしく手を叩く班目に、首領は怒りを込み上げながらもグッと堪える。

 

 

「これでいいのだろう?」

 

「えぇ、1週間という期間は短いようで長いものです。その期間我々が何しなければ、油断というものが生まれてしまう。人間はそこら辺、退化しましたよ。危機感が全くない」

 

「…… お前の目的は何だ?」

 

「私の目的ですか? 前にも話したでしょう。人間と怪人の戦争ですよ」

 

「それがお前に何の利点がある? お前はどちらの側だ」

 

「どちらでもないです。私はただ見たいんですよ…… 月火さんも生きているなら止めたでしょうね。私を… ですが、もういない。とにかく私は見たい。どちらがこの世界に相応しいのか。その最後を」

 

「…………」

 

 

 特に何も言わないまま首領は幹部達を連れて消え去る。

 が、その場に1人ファングだけが残る。ファングは班目に何か言いたそうに睨みつけていたが、言っても無駄かとその場を後にした。

 そこに誰もいなくなると、班目は後ろにいた楓に静かに命令を下す。

 

 

「…… さて、そろそろ陽奈さんにも頑張っていただきますかね… 楓さん。陽奈さんを殺してください。この世界がどういう結末を迎えるのか… ふふっ、楽しみです」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 この国は変わらない。過去、ジェスターによって何人の命が犠牲となり、苦しんできたか。

 それはこの国を指揮する者も犠牲者の1人に該当するからである。父、月火が何を考えていたのか、その想いを聞く前に彼は逝ってしまったから陽奈にはわからない。

 でも、これだけはわかる。父は国を… 世界を人間とっての平和を常に考えていたという事。

 だけどそれは怪人にとっては人権なんてない。自分たちがされていたように、相手にも仕返しにとやっていたら、いつまで経っても平行線上のままである。

 

 

「私が変えなきゃ…」

 

 

 陽奈は世界を変えると決意を固め、正面に向き直る。彼女の前に立ちはだかるのは、彼女の親友である楓。

 周りは先の戦いで瓦礫があちらこちらに残っており、いつも親友と通っていたショッピングモールも今は静かに佇んでいるだけ。人はいない。いるのは陽奈と楓の2人のみ。

 

 

「あなたならここに来ると思ってたわ… このショッピングモール学生時代から来てたもんね。懐かしい」

 

「………」

 

「私が楓の服選んであげてる時、楓はお腹が空いた〜とか甘いの食べた〜いとか、全く食い意地張ってるって思った。最近はそんな事なくなったけど、大人になったってことかしらねー…… また行きたいわ。2人で一緒に」

 

「………」

《ポーカドライバー》

 

「今の楓に聞こえてるかわからない。だけど言わせて、ごめんね楓。あなたとの約束守れなくて…… でも、私は決めた。ジェスターのしてきた事はホントどうしようもないほど最低最悪よ。その最悪最低な事を、なんの罪もない善良なジェスターにまで仕返しする人間も最低最悪!! だから私はみんなを守る!! みんなが楽しく笑える明日を作る!! それがヒーロー…… 仮面ライダーとしての務めよ!!!」

《エースドライバー》

《大・暴・走!!》《スーパーハード!! Open!!》

 

《ハート!! ベット!!》

 

 

 2人はそれぞれ対応するアビリティズフィードとカードを差し込む。

 決意を込めたエースにはもう迷いはない。楓を救う為、世界を変える為、仮面ライダーエース。羽畑 陽奈は戦う。

 みんなのヒーローとして、仮面ライダーとして。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

《Come on!!》

《Let's try スーパーハード・ハード・ハード!! エース!!》

 

「………」

《Let's call!! ハートクイン!!》

 

「帰るわよ楓… 私と一緒にッ!!」

 

 

 いざ、親友を取り戻せ───!!




これで半分くらいです。
残すはもう半分。みんなの運命はいかに…!

次回、第27話「親友とゴーホーム」

次回もよろしくお願いします!!
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