仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

前回、リジェクトの一件から変身に対して恐怖や拒絶を起こし、アベンジドライバーからしばらく離れていた。一方の陽奈は世界の条約を変える為、1人奮闘していると、そこに楓が現れる。楓を救う為、世界を救う為、陽奈は決意を固めて親友との戦いに挑む…

それではどうぞご覧ください。


第27話「親友とゴーホーム」

 仮面ライダーエース 羽畑 陽奈の今の気分は最高に良く、そしてこの上なく最悪な気分である。

 スーパーハードウェポンの暴走の気配は不思議な事にまるでない。その気分で見るなら最高だ。暴走フォームを克服したというのだろう。多少ぴりりとするくらいで、それ以外には異常なし。

 ただ、エースが最悪な気分となっているのはそこではない。

 

 

「……ッ!!!」

 

 

 理由はなんであれ、唯一無二の親友。仮面ライダークイン 青葉 楓を殴りつけている。これほど最悪な気分があるだろうか。

 こんなに力一杯に殴りつけている。自分の意思でこうやって。

 

 

「楓ッ!!!」

 

 

 これなら暴走していた方がマシと思えてきた。少なくともそちらの方が何倍もマシというだけで、自分のこの手で傷つけていることに変わりない。

 そしてエースの拳がもう一度顔面を捉えようとすると、クインの杖から火球が放たれる。至近距離なわけだから、まともに喰らい、エースの身体は炎に包まれて吹き飛ばされた。

 

 

「うぅ…!! この……!! やったわね!!!」

 

 

 近づいてくるエースに対し、クインは上空に杖を掲げると雷雲を作り出す。

 そこから一斉に雷が落ち、エースを何度も感電させて動きを封じつつダメージを与えていく。

 ただし、そんなものでエースが止まるはずがない。今のエースは暴走状態。ライダーとしてではなく、変身する陽奈の覚悟が突き動かす。

 エースは雷に打たれながらも、クインに近づいて杖を掴むと、当然雷に打たれている訳なのだから、必然的にクインも感電する。

 

 

「どぉ!? 痛いでしょ!? これ本当に凄く痛いんだからね!!」

 

 

 杖の取り合いが始まった。スペック上はクインの方が高い数値を叩き出してはいるが、エースの馬鹿力の前に杖を取り戻せない。

 クインは雷を消すと、エースを蹴り飛ばす為に杖を持ったまま蹴り飛ばす。いや、蹴り飛ばすことはできなかった。全く微動だにしない。

 

 

「まだまだ甘いわよ。力じゃ私には勝てなかったでしょ!!」

 

 

 そしてエースは杖を持ちながら、今度は逆に彼女を思いっきり蹴り飛ばした。腹部に大きな衝撃を喰らい、思わず手に持っていた杖を離してしまう。

 それからエースはその杖を遠くの方までぶん投げ、取り返そうとするクインの胸辺りにパンチで一撃喰らわせる。

 

 

「人形みたいになったあなたの動き本当に単調。全くそれが私のエースドライバーより性能が上? 班目も失敗したわね。私の方が断然強いじゃない」

 

「………」

 

「黙ってないでなんか言って。それくらいできるでしょ?」

 

「………」

 

 

 クインは向かっていく。武器もなにもないが、とにかくエースに向かう。

 

 

「楓」

 

 

 エースはクインを突き飛ばす。もちろん彼女は攻撃をして来ようとしていた。

 けれど、その攻撃はとてもわかりやすく、こうして簡単に避けて軽く突き飛ばせてしまう。

 そして何度も立ち上がる。

 

 

「もういいでしょ、楓」

 

 

 何度も何度も何度も。何回も何回も何回も。

 敵と見做した者を襲うだけの人形。違う。これは楓だ。

 

 

「楓ッ…!」

 

 

 そして再び立ち上がって襲いかかってきた時、エースの渾身の一撃がクインの左頬にめり込んだ。

 仮面が割れるほどの衝撃を与え、クインは吹き飛ばされてしまう。仮面割れしてしまうほどの威力で放ったパンチを受けたら、いくら回復の早いクインと言えどすぐには飛びかかってはこないはず。

 しかし、それは人間であったらの話しだ。クインは… 今の楓はただ動くだけ。どんな損傷を与えられようとも。

 

 

「…… 嫌」

 

「………」

 

「これ以上… あなたを傷つけるのは嫌ッ!!!」

 

 

 すると、なにを思ったのか。陽奈は彼女の前で変身を解いたのだ。

 それから陽奈は手を広げて彼女に近づいていく。この行為は異常であり、目の前にいるのは殺人も厭わない人形である。

 

 

「楓。私の事わからないの? あなたの親友よ」

 

「………」

 

「私たちずっと一緒だったじゃない!! どんな時でも一緒って約束したわよね!!? あなたを守るって!!?」

 

「………」

 

「楓ッ!!!」

 

「─────…… ナンデ」

 

「… え?」

 

「ナンデ、私ヲ裏切ッタッ……!!!」

 

「きゃぁっ!!」

 

 

 クインは手を爪のように見立てて陽奈を引っ掻いた。陽奈の左頬には引っ掻き傷ができて血が垂れる。

 それでも陽奈は割れた仮面の下の楓を見つめ直し、再び距離を縮める。

 

 

「あなたとの約束はもう1つ。悪い怪人を1人残らず倒す事。楓にもう2度と怖い思いをさせたくない。小さい頃にした約束、今だったら守れるの!!」

 

「……… 怪人ハ、私カラ全テ奪ッタ… アナタハ、私トノ約束ヲ破ッタ…」

 

「楓… 怪人はいい人だっている。あなただってわかってるはずよ。稲森やモグロウ、あの子だって怪人だけど人間の為に頑張ってる。こんな仕打ちをされてと復讐しないで、私たちを助けてくれてるわ」

 

「………」

 

「復讐は復讐しか生まない。争い合ってたらいつまで経っても終わらないわ。ジェスターだけじゃない。私たちも変わらなきゃいけないの。未来へ進まなきゃいけないのよ!!」

 

「… 許サナイ…… 怪人モ……ミンナミンナ…!!」

 

「…… ごめんね、楓。私の事、本当に腹が立つし、ムカつくでしょ? でも、私はこれ以上あなたと戦うのは嫌。もう争い合うなんて嫌よ……!!… 楓と戦う事なんて…… 楓と一緒に行けない未来なんて嫌だ……」

 

 

 そしてクインは両手で陽奈の首を掴む。

 割れた仮面の下から睨みつけながら、徐々にその手に力を込める。

 

 

「あなたが決めて…… 私は楓に対して本当に酷いことをしたわ。約束は破るし、話しは聞かないし、最低な女。どうするのか… 楓が決めて…?」

 

「─────……… モウ戻レナイ……」

 

「えっ…」

 

「私ハ、陽奈ト帰レナイ所マデ来チャッタ……」

 

「楓… あなた自我が…!!」

 

「私ハ、結局黙サレタ…… 怪人ジャナクテ人間ニモ…… ソレニ私ハ殺シタ… アノ女ノ子モ……」

 

「あなたは殺してない!! だってジェスターの子は生きてるわ!!」

 

「エ…?」

 

「ちょっと前に目を覚ましたの。あんなに怖い思いしたあの子がなんて言ったと思う? 私の心配と楓の心配よ?」

 

「私ノ…」

 

「私たちはあんな子まで悪者扱いしてた…… 本当に酷いわ。もうジェスターとか人間とか関係ないの!! 善も悪もあるのが生き物よ!!」

 

「デモ…」

 

「お願い楓ッ!! 過去はどうやっても変えられない。けど、今から私たちが… 仮面ライダーなら変えられる!! 私たちで平和な世界を取り戻そう? 争いのないそんな世界を2人で!!」

 

「ウゥ…!!!」

 

 

 更にクインの手に力が入り、陽奈の首を締め上げていく。

 

 

「がはっ…!! あなたもわかるでしょ…? 殴るよりも、蹴るよりも、もっと痛くなる部分……」

 

「………ッッッ!!!」

 

「心が痛い… もう1人で苦しまないで…… 親友の私がいるから…!!! 楓…… 帰ろう… 一緒に…!!!」

 

 

 *****

 

「陽奈、これ美味しいね!」

「陽奈、どこ行く?」

「陽奈、この服とかどう?」

「陽奈、すっごい可愛いよねそれ!」

「約束だよ陽奈! 私たちどんな事があっても一緒だからね!」

 

「楓、食べ過ぎよ」

「楓、今日はここ行きましょ」

「楓、似合うわよ」

「楓、私もそう思う」

「約束よ楓。私はどんな事があってもあなたを守るから」

 

「陽奈は私の大親友だよ!」

 

「楓は私の大親友ね」

 

「喧嘩なんかした事ないもん!」

 

「あるわよ。たくさん」

 

「でも、暴力は振るった事ないよ」

 

「私も」

 

「もしそうなったら?」

 

「もしそうでもやりたくない」

 

「私もやだ」

 

「私も嫌」

 

「じゃあ…… もうやめよっか」

 

「そうね。もうやめましょ」

 

「…… ねぇ、陽奈」

 

「ん? なーに?」

 

「私の本当の約束、覚えてる?」

 

「あー… うん。覚えてる」

 

「もうこっちが正解だよね」

 

「そっちの方がいいわ」

 

「うん! じゃあこっちで!」

 

「えぇ、私もそっち───」

 

 

 *****

 

 

「──── 陽奈…」

 

「うん、帰ろう。本当の約束守らなきゃ…」

 

 

 いつしか楓の手は緩まり、陽奈に優しく抱きついていた。陽奈も彼女を優しく包む。

 2人の頬に涙が伝う。苦しい。悲しい。悔しい。

 そんな感情がぐるぐると頭の中を周っていた。だけど今は違う。今だけは違うのだ。

 

 

「『世界の平和を守る仮面ライダー』。誰1人も犠牲なんかしない真のヒーロー。それが私、仮面ライダーエース。羽畑 陽奈が約束した事」

 

「ごめんね…… ごめんね……!!」

 

「私もごめんね…… 楓の気持ちをよくわかった気になって… 楓をこんなに傷つけて…」

 

「私も陽奈を傷つけて…… こんなにボロボロにして…!!」

 

「…… はい! もう泣かない! これからやる事たくさんあるんだから!」

 

「… でも、陽奈泣いてるよ…?」

 

「あっ…… う、うるさい! 楓はいつもそういう所ばかり見るんだから!」

 

「えへへっ…」

 

「全く… ふふっ」

 

「じゃあ… 帰る?」

 

「さ、帰りましょ。あなたも仮面ライダーになったんだから、しっかり働いてもらうわよ!」

 

「えぇー!!」

 

「えぇーじゃない!!」

 

 

 2人の顔から、心の底からの自然な笑顔が溢れる。

 そうして2人は互いに担ぎ担がれながら、その場を後にし、病院へと向かうのであった─────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 そして次の日、陽奈はボロボロではあったものの目立った怪我はなく、楓の方は時間は掛かったが、クインの自動回復能力のお陰もあってか。元の綺麗な状態へと戻っていた。

 他には楓のポーカドライバーに搭載されていた洗脳チップは何故か消えて無くなっていた。中身を知るはずない彼女たちにとってはその真相を知る事はないが、とにかくこれで洗脳による操作はなくなった。

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい…? やっぱりごめんなさい!」

 

「いいってもう… 俺も…… つーか俺があんな事しなけりゃ今頃……」

 

「でも、モグロウさんのせいじゃないです! それだけはわかります!…… ね〜陽奈」

 

「えぇ、まぁそうね…… お互いに悪いことしちゃった訳だし…」

 

「とにかく楓さんが戻ってきてくれてよかったです!」

 

 

 わちゃわちゃとしているが、病室には陽奈と楓の他に、稲森とモグロウも駆けつけていた。

 陽奈から連絡があると思えば、楓が帰ってきたと聞いて飛んできたのだ。稲森とモグロウは急いで病院へと駆けつけ、2人の様子を見にきた。

 お互い誤解や過ちを、直し、許し、これから最善の方法を見つけようとしている状態である。

 

 

「…… ごめんなさい、稲森」

 

「もういいですよ。モグロウの方はまだ言われてますけど…」

 

「あの子なりの反省よ…… でも、いくら謝っても足りないわ。何度も命を助けられて、楓も助けてもらって… 本当に謝罪と感謝でいっぱい」

 

「いや〜そんな事ないですよ。みんな無事でよかったですよ羽畑さん」

 

「─── で、いいわよ」

 

「え?」

 

「陽奈でいいわよ。特別に」

 

「…ッ! 陽奈さん!!」

 

「な、何よ。嬉しそうに… 気持ち悪いわね」

 

「やっと言えたので、嬉しくてつい…」

 

「…… 馬鹿じゃないの」

 

 

 ただ純粋に名前を言う稲森に対し、いや、その天然な感じが陽奈を照れさせた。下の名前を言われるだけでドキッと来るとは思わなかった。

 しかし、こうしている時間はない。陽奈は切り替えて本題へと入る。

 

 

「はいはい! 楓もモグロウもこっち向きなさい!」

 

「「はい」」

 

「…… 稲森はさっき話してわかってるだろうけど、この1週間ね。楓が来た以外、全くリゲインどころか、反逆側のジェスターまで動かないの。おかしいと思わない?」

 

「うん! 確かに思う!」

 

「楓はリゲインにいた時の記憶がないらしいから断定はできないけど……」

 

「ごめんね〜…」

 

「気にしないで…… で、私が思ってるのはリゲイン側はジェスターを動かして近いうちに人間側を襲うと思うの」

 

「…… つまりそれは簡単に言っちまうと──」

 

「戦争よ」

 

 

 病室内の空気が先ほどのポカポカとした温度が、とても低く寒くなったのを感じる。

「戦争」という言葉だけで、これから何が起こるのか予想がつく。

 

 

「陽奈さん。僕たちにできる事はただ一つです」

 

「えぇ、戦うしかない… それしか方法はないわ。1番最善で最優先。被害が1番出ない方法よ…… 大丈夫なの?」

 

「え? あぁ…… 僕は平気です」

 

「平気って顔じゃないけどね」

 

「とにかく大丈夫です!! やれます!!」

 

「無理しないでよ…… それじゃあそろそろ準備しないと。いつ来るかもわからないし──────」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 いつ来るはわからない。そう誰も未来なんてわからない。

 だから明日でも明後日でもない。今となる。今からが戦いの始まりなのだ。

 

 

「皆、行くぞ。我々の… ジェスターの力を人類に見せつけてやるのだッ!!!」

 

「「「「「オォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」」」」」

 

 

 と、いう事らしいので、稲森さん。陽奈さん。それから楓さんにモグロウさん。怪人と人間が入り混じる異質なチームでどういう結末を見せてくれるのでしょうか?

 怪人とジェスター。果たして勝つのは怪人か。人間か。

 

 

「戦争の始まりですねぇ…!!」




親友奪還編は以上となります…!!
そして次回より「戦争編」スタートです!!

次回、第28話「戦争のスタート」

次回もよろしくお願いします!!
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