仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

前回、戦争が本格的になる前に食い止めようと、アベンジたちは力を合わせ、進軍してきたリゲインや反逆者のジェスターたちと対峙する。そんな中で首領と戦う事になったアベンジはリジェクトウェポンを使用。やはり感情が抑えられなくなり暴走し、首領を殺す寸前に…

それではどうぞご覧ください。


第29話「首領はフューリアス」

 その場はとても静かだった。静か過ぎた。

 モグロウはその静かな場所で親友を見つめている。

 

 

「イ、イナゴ……」

 

「………」

 

 

 アベンジの渾身の一撃が首領の頭を潰し、殺してしまったかに思えた。

 しかし、アベンジの拳は首領の顔の横を捉え、その部分の地面が大きくヒビ割れただけである。

 

 

「─── い、やだっ!!」

 

「イナゴッ…!!」

 

「僕は… 誰も殺したくなんか、ないっ!!!」

 

 

 殺人も厭わない、寧ろそれを楽しんでやるようなリジェクトの能力を、アベンジは微かな理性だけで必死に耐える。

 そして隙を見せたアベンジを首領は残った力で蹴り飛ばし、ありったけの声でファングに引くように命じた。

 その声を聞いたファングは飛び起きてジェスターたちに引くように命じ、自分も動くだけでも精一杯なのだが、首領を抱えてその場を後にしようとする。

 

 

「…… イナゴ。お前は決して何も救えない。お前がしてきた事は全て無駄となる」

 

「え…?」

 

「近いうちに理由がわかる。私がここへ来たもう一つの狙いがそこにあるからな」

 

 

 首領はそう告げると、ファングに抱えられながらその姿を消した。

 そうして稲森は変身を解き、周りをぐるりと見渡す。その光景は散々な者であり、自分がやったのだと意識がおかしくなっていたとしてもわかる。

 それもそのはず。やったのは自分の意思なのだから。

 

 

「おい…」

 

「わかってるさモグロウ…… それにもう一つわかったことがあるんだ…」

 

「なんだよ…?」

 

「僕のせいだ。僕のせいで始まっちゃうんだ…」

 

「… 何が始まるんだよ! お前は人の為に戦って……!!」

 

「取り返しのつかない事をしたんだ… もう僕は守る事なんてできない… 最低な怪人だよ!!」

 

「この惨事もあいつらのせいだ!! お前は必死に戦った!! それを俺が1番よくわかってる!!」

 

「そうだけど違うんだ!!…… 僕は…… 何もわかってなかった!!」

 

「だからどうしたって──!!」

 

「僕のせいで戦争が始まるんだッ!!!────」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「んー…… これはかなりの痛手を負いましたね?」

 

「……ッ」

 

 

 何も言えないし、何も言い返すことができなかった。

 首領が引き連れた仲間のジェスターたちは壊滅的なダメージを与えられた。幹部であるスピーダやウェイトも手も足も出せない状態で、仲間たちはほぼ全滅と言っても過言ではない。

 班目はいつも通り笑っているが、彼の作り出したウィンプジェスターも戦闘では数の暴力という言葉がないほど、一瞬にして全滅させられてしまった。

 

 

「でも、これでいいんですよ。これで一応、私が言った通りの展開になりますから…… それはそれとして、まさかここまでのダメージを貰うとは思いませんでした。さすが稲森さんですね」

 

「……ッッッ!!!」

 

「おやおや…」

 

 

 班目は手を挙げて首領から少し距離を置く。当然だ。首領はここまでコケにされる程の痛手を負わされ、何もできないままに帰ってきた。

 この場で図星をつかれる事は、まさに自殺行為と言っていいだろう。彼の怒りのボルテージを上げるだけである。

 

 

「ですが、この調子で行くので有れば首領も動きやすいはずです」

 

「奴らは許さん… 確実に殺してくれよう…!!」

 

 

 あの時までは冷静でいられた首領ではあるが、やはり痛い所を突かれれば、流石の彼とて怒りを露わにするのは頷ける。

 そんな姿を見るファングの心情は悲しく辛いものがあった。自分を信じてくれる首領に何もできない自分に怒りも湧いた。

 

 

「…… おや」

 

 

 ファングの表情が濁っているのを見つけた班目は、これは頃合いだと思い、首領から離れてファングの元へと歩み寄る。

 近づくや否や、強烈な圧が班目に降りかかった。首領に対して無礼を働いているのだから当然である。

 

 

「何の用だ貴様ッ…!!!」

 

「そんなに怖い顔しないでもらえますか、ファングさん?」

 

「貴様と喋る事などない。失せろ」

 

「…… 首領のお役に立ちたいのではないですか?」

 

「貴様には関係の無いことだ」

 

「また、あのアベンジに負けますよ」

 

「───ッ!!!」

 

 

 まだ完全に再生できていない爪を班目の喉元に宛てがう。

 今にも殺す勢いのファングを気にも留めずに班目は淡々と話す。

 

 

「あなたには負けないで欲しいんですよ。その為なら私はこの知恵を使いましょう。力を授けます。それだけであなたは誰よりも強くなれる」

 

「くだらない事を…!!」

 

「このままでいいのなら、それで構いません。ですが、もし私の力が必要というのであれば、研究所にいらして下さい。それだけであなたは『百獣の王』となれる」

 

 

 そう言うと班目は何処かへと立ち去っていく。つくづく訳のわからない奴だ。

 ファングはその言葉を聞いて最初は馬鹿馬鹿しいと思っていた。だが、首領の為と思えば思うほど、不本意だが班目に頼るしかないのだと思ってしまう。

 

 

「… ふん」

 

 

 そしてファングは首領に一礼をすると、何かを決めたように何処かへと向かうのであった──。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 3日後、陽奈と楓は戦争を辞めるようにと人間側に説得を続けていた。

 あの一件以来、稲森がアベンジドライバーを手放してしまい、自室に引きこもってしまったのだ。陽奈たちが駆けつけた時には、既に彼は気を失って倒れていた。

 人も、怪人も自分の手で殺してしまったという事実。誰であろうと耐えられない。明確な殺意を持っていた訳でもなく、ただ楽しんでやってしまった。それが1番の原因でもある。

 更に人間たちはそれを見てしまった。怪人たちもそれを見た。自分たちだけの問題ではなくなってしまったのだ。

 

 

「…… もうなんのよ…」

 

「陽奈…」

 

「もし戦争なんて始めてみなさい。人間は全滅するわ。またあの悲劇が起こるだけ。繰り返すだけよ!!」

 

「稲森さんもあの状態だし… 私たち一体どうすればいいの……?」

 

「わからない… けど、何かしないと…!!」

 

「何か…… あれ?」

 

 

 突然、陽奈たちの前に何者かがふらりと現れた。

 陽奈はその者を見た瞬間、溜まっていた怒りが一気に溢れ出し、その者に掴みかかる。

 流石に楓がそこを必死に止めると何とかその場は落ち着いた。

 

 

「いきなり掴みかかってくるなんて… 陽奈さんも酷い人です」

 

「酷いのは誰よ!! あんたの顔なんて見たくもなかったわ!! 班目ッ!!!」

 

「落ち着いて下さいよ。私はあなたにこれを渡したくて」

 

 

 班目の手にはスペードのマークが描かれた大きめのアビリティズフィードが握られていた。

 それを渡そうとしてくるが、陽奈は班目の手を弾いてアビリティズフィードを地面に落とす。落とした物を班目が冷静に拾い上げ埃を払う。

 

 

「もう騙されないわよ」

 

「私も信用がなくなってしまったようですねぇ…」

 

「当たり前でしょ!! なんなのよそれ!! 今度はどんな副作用よ。また暴走とか!!? ふざけんじゃないわよ!!」

 

「まぁ待って下さい。今回は正真正銘何もありません」

 

「信じられる訳ないでしょ」

 

「困りましたねぇ…… これが無ければ今のあなたは戦力になりませんよ?」

 

「なんですって…!!」

 

「スーパーハードウェポンは暴走してこそ力を発揮した。ですが、今のあなたは想定外の克服をしてしまった。それでは本来の性能が発揮されません。だからもう、今のあなたに上はないんです。エースドライバーを造った私だからこそわかるんです」

 

「…… だから? それで私をどう利用するって訳?」

 

「ふむ… もう信じてはくれないでしょう。なら、私に考えがあります」

 

「何よ」

 

「─── 首領をここへ連れて来て差し上げますよ」

 

「は…? 何言ってるのあなた…」

 

「あなたの仇でもある彼を連れてくれば一時ではありますが信じてくれますよね?」

 

「馬鹿じゃないの? あなたみたいなの信用を失ってるはず!! 連れて来られる訳ないじゃない!!」

 

「では、また明日。あなたがこれを使ってくれると信じてますよ───」

 

 

 そう告げてから班目はその場から姿を消してしまった。

 陽奈は呆れたと首を振り、再び楓を連れて市民たちを説得し始める───。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「おーい、イナゴ。飯買ってきたぜ」

 

「…… ありがとう…」

 

 

 モグロウが稲森の住むアパートまで足を運び、買ってきたコンビニの弁当をテーブルに置く。

 今ではほとんど知れ渡ってしまった怪人の残虐性。アベンジの凶悪性。怪人はおちおち買い物できやしない。

 だからモグロウはフードを深く被り、見た目は怪しいが何とか買い物できるようにはしていた。偶にバレて暴力も振るわれた事もある。

 

 

「ごめん… モグロウ。僕がこんな風にならなかったら、君に迷惑を掛けずに済ませられたのに…」

 

「何言ってんだ。お前はもう十分やってくれただろう。陽奈も楓もそう言ってたぜ? とにかくイナゴ、お前はゆっくり休んで後は仮面ライダーに任せておけよ」

 

「…… 僕も仮面ライダーだったんだ」

 

「…っ」

 

 

 これはやってしまったとモグロウは思った。

 稲森が仮面ライダーとして戦ったのは成り行きとはいえ、何をやってきたかという本質だけは、まさに彼の目標にする仮面ライダーそのものであったからだ。

 それがあのような悲劇を生むなんて想像もつかなかっただろう。いや、想像こそついていたが、この行動で戦争の引き金になるとは思わなかったはずだ。

 

 

「べ、別にお前が全部悪いなんて事はない。悪いのはリゲインの奴らだ。だろ?」

 

「リジェクトウェポンの副作用をわかっていながら使用した。この僕に責任がある。でも…… 僕はその罪をどうしたらいいかわからないんだ。どう償えばいいのかわからないんだ。もう戦争を止める手段がないかもしれない…」

 

「…… んなもんやってみなきゃわかんねーだろ!!? ダメだって決めつけて、なんの行動もしなかったらそれこそダメだろ!!?」

 

「でも…」

 

「でももこうもあるかよ!! お前は怪人だ。だけど、お前は人よりも誰よりも痛みがわかる男だ!! イナゴよ。俺はお前を信じてるから言ってるんだぜ。今、何をすべきかってのは俺もお前も最初からわかってる。やりたくもねぇ戦争を止めるんだ。俺だけじゃない皆んなでだ!!」

 

「できるのかな… 本当に…」

 

「できるさ。俺とイナゴならな」

 

「……… もう少し時間が欲しい」

 

「わかったよ。無理にとは言わねーさ。お前が考えられるくらいの時間を俺が作ってやる────」

 

 

 

 

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 それから後日、首領は怪人たちを引き連れ、栄須市に大量の軍勢で攻めてきたのだった。

 班目の言うことが確かだったとは言い難い。ただ、班目の言った通り明日のこの場所に首領が来たのは紛れもない事実。

 陽奈と楓はたった2人で首領たちの前へと立ちはだかる。

 

 

「首領。本当に来るとは思わなかったわ」

 

「思わなかった? 私の事を聞いて…… 班目ッ…!! 奴は私の怒りを買う事が得意らしい。だが、それは正しい行いだったと思うぞ… こうして因縁である仮面ライダーエースの子を殺す事ができるのだからなッ!!!」

 

「へぇ〜… 怪人のトップが班目の言いなりになってるなんて、首領って名も小汚くなったわね」

 

「なんだと…?」

 

「聞こえなかった? 私はあなたを汚いと言ったのよ。戦争なんて馬鹿みたいな事して、結局あなたは同じことの繰り返し。仮面ライダーに負けて終わるのよ」

 

「この小娘が…!!! いいだろう。殺してくれよう。貴様が泣き叫ぶところを私に見せろッ!!!」

 

「やってやるわよ見てなさいッ!!!」

 

「──── 待って陽奈ッ!!」

 

 

 首領と戦うと言ったところで楓が陽奈を静止する。

 流石の陽奈も楓の行動に腹が立ったのか怒鳴ろうとしたが、楓が震えて指を差した方向を見ると、その考えは吹き飛んで一気に顔が青ざめた。

 

 

「嘘でしょ……?」

 

「陽奈ァ……」

 

 

 その時、首領は大声で笑い始めた。

 これが班目の狙い通りなのだ。一度始まった事はもう止める事など不可能。

 

 

「人間というのは何と愚かなっ!! お前たちこそ誠の愚か者どもだ!!」

 

 

 陽奈たちの後ろにいるのは大勢の人間たち。

 各々が武器とは言えぬ武器を持ち、ジリジリと怪人たちの方へと歩み寄っていた。あまりにも無謀過ぎる装備。死に行くようなものである。

 陽奈は必死に静止させようと声を大にして説得に入った。が、それを聞く者は誰一人としていなかった。

 

 

「待って!! お願い、ダメッ!! これ以上行ったら皆んな死ぬのよッ!!?」

 

「もうごめんだッ!!! 俺たちは怪人を殺すッ!!」

「怪人なんてそもそもこの世に必要ないんだッ!!!」

「家族を殺された人間の力を思い知れぇ!!!」

「人間を舐めるな!!!」

「怪人どもぉぉぉぉ!!!!!」

 

「全員皆殺しだッ!!! 皆の者!!! 人間どもを殺せッ!!!」

 

 

 首領の声と共に怪人たちも、人間たちも走り出す。

 もう始まってしまった。もう誰にも止めることなんてできない。

 

 

「───…… あぁ、待ってましたよ。無謀過ぎる頭の悪い者たちの戦い…… さて、陽奈さん。あなたは私に何を見せてくれるんですかね?」

 

 

 ビルの屋上で班目は静かに笑い、フェンスを飛び越え陽奈たちの元へと落ちていく────。




戦争編本格的にスタートです。
怪人と人間の未来は……

次回、第30話「私がマスター」

次回もよろしくお願いします!!
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