前回、陽奈は父の姿をした首領に苦戦をしていたが、父との約束。そして過去を飛び越えて首領を見事に撃破成功しました。というのも束の間、その一部が何者かによって取られてしまう。一方の稲森は未だに傷が癒えずにいる所で、そんな中、稲森の所へリゲイン幹部2人が現れ、リゲインの本拠地に連れて行かれるとそこには…。
それではどうぞご覧ください。
「ファングさん……」
「ふっ… 少しの間だが、見ないうちに随分と弱々しくなった者だな」
「僕に何の用ですか」
稲森の目の前に立つファングの外観は前と変わらないはずなのに、この妙な威圧感は一体なんなのだろうか。
今までのファングとは違い、まるで別人であるかのような雰囲気を醸し出しているのだ。どう言ったところかと具体的には言えないが、ただ確かにそう感じられる。
「イナゴ。俺はライダーという名を聞くだけで腸が煮えくり返るほど、お前たちに殺意と憎悪が湧いてきた」
「……」
「… しかし、不本意ではあるが、お前達のおかげで仮面ライダーも良いものなんじゃないかと思い始めてきた。礼を言おう」
「あなたは何を企んでるんですか?」
「結論を言ってやる。俺は─── 仮面ライダーになった」
すると、ファングは自らの姿を変化させ始めた。
今まで1度足りたとも自分を変えようなどと思わなかっただろう彼だ。更に言えば、怪人として、首領の右腕として、どれだけの誇りと威厳を保とうとしていたか。
そんなファングが姿を変化させた事にも驚くが、何よりその姿が彼が最も嫌い、彼が最も憎悪する姿だった事に驚いた。
「……
先の戦争の戦いにおいてきっかけを作り出したジェスター。
それを仮面ライダーエースが防ぎ、ジェスター達に絶望を与え、もちろんジェスター達は怒り狂った事だろう。ただその全ての怒りを凌駕する程、怒りを露わにしていたのはファングだ。
そんな彼が人間の姿をするのは、彼が人間の法に堕ちたと思わざるを得ない。
「この姿、全く腹が立つ…… と、前の俺ならそういうか。自害を選ぶだろうな」
「… 何故、誰よりも人を嫌っていたあなたがその姿に…?」
「考え方を改めたと言おう。俺は人間を最底辺の下等生物だと認識していた。だが、それは俺自身が人間という種族を理解しようとしない浅はかな考えから起こった愚かな認識」
「なら、今は人間に対して……」
「言ったはずだ。不本意ではあるとな。だが、考えを改めたからといって俺の目的が変わるわけではない。俺の目的は人間を殺し、仮面ライダーをも潰す。その為なら手段は選ばん」
それからファングは人間の姿のまま、先程言った通り、仮面ライダーのキーアイテムであるドライバーを腰に巻きつける。
仮面ライダーになったいうのは本当だったようだが、彼の人間やライダーに向けられていた憎悪は、彼のプライドすらをも超え、このような結果となっだろう。
「変身しろ、イナゴ。俺と戦え。殺し合え」
「…… 嫌です」
「なに?」
「僕はもう変身したくないんです」
「何を言うかと思えば… さっさとしろ。お前の意見など聞いていない」
「… すみません。できません…」
「貴様ッ!!!」
うじうじとした態度に腹が立ったファングが稲森の胸ぐらを掴み上げ、スピーダとウェイトに稲森の身体からドライバーを取るよう命じる。
「おい、早くしろ」
「… あら?」
「どうしたスピーダ。さっさと取り出せ」
「ないのよ」
「ないだと?」
「…… アベンジドライバーがないのよ!!」
アベンジドライバーがないのだと、はっきりと言われたファングは稲森を投げ捨てる。
そして睨みつけながら、拳に力を込めて稲森の頬を殴りつける。
「どう言う事だ貴様ッ!!!」
「………」
敵対する組織に、しかもここまで連れてこられれるのならば、誰しも危険を感じて自分を守る為の道具を持つはずだ。
そもそも稲森を連れてくる過程でアベンジドライバーの所持を許可はしていていないが、所持する事自体へは何も言ってはいないはず。今日、リゲインへと連れて来たのは稲森と決着をつける為である。だからこそドライバーに関してはスピーダ達に何も言わぬように命令していたのだ。
「本当に戦わないつもりだったのか…」
「僕はもう誰も傷つけたくない…… リジェクトでどれほどの犠牲を出して、どれだけの人を… 怪人を…… だからもう戦いたくないんです。これ以上、悲惨な光景を見たくない!!」
「貴様ッ…!!!──── もういい。貴様には失望した。手段を選ばないとは言ったが、俺の目的は貴様をここで殺す事に変わりないからな」
そしてファングは、トランプのクラブが描かれたカードを取り出すと、先程巻きつけたドライバー《ポーカドライバー》に差し込む。差し込むと《クラブ!! ベット!!》と言う音声が流れる。
見た目はポーカドライバーではあるのだが、色合いは黒と緑で彩れたものに変更されており禍々しさが滲み出ていた。
そのドライバーの右側を掴み、左手の親指を自分に向けて首を切る仕草をする。
「変身」
掛け声と共にドライバーを外側へと引っ張ると、真ん中にクラブの記号が現れ、それと同時に大きなクラブの記号がファングの全身を包み込む。
そしてクラブは割れ、ファングの身体にアーマーを纏わせ仮面ライダーとしての姿を現した。
稲森はその姿を見ると、ニュースでやっていた通りの人物である事に気がついた。何故なら、その姿は誰がどう見ても自然と思ってしまうのだ。
まさしくそれは「王」であると───。
《let's call!! クラブキング!!》
「そ、その姿は…!!」
「── キング。仮面ライダーキングだ。俺にこそ相応しい絶対的な力」
「
今までのファングならば絶対に言わないだろう言葉。首領に誰よりも付き従い、誰よりも信頼されていた男だ。
今の彼がたったこれだけの事を呟いただけで、彼が彼ではないという訳の分からない考えが込み上げてくる。
「お前も察しているだろうが、この力を授けたのは班目だ。しかし… 奴が何を考えてようが俺には関係ない。俺はあいつを利用し、あいつは俺を利用する。そして行き着く先はどちらかがくたばるのみ。プライドなど最早どうでもいい。勝てば勝者。負ければ敗者。俺は弱肉強食のこの世界にどんな手を使ってでも勝利する!!!」
「ファングさん…」
「首領が死んだ事は知っている。最早それも過去の話し…… 今の王は誰だ? 俺こそが王だッ!!!」
「…ッ!!?」
稲森は殺気を感じると、咄嗟に身体が動いて部屋の隅まで跳んだ。
その瞬間、部屋全体が大きく揺れたかと思うと、地面が大きく割れ、天井もガラガラと崩れ始めた。
スピーダとウェイトも思わぬ事態であったのか。焦りながら現在リゲインにいる怪人達に避難命令を下す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ…!!!」
そしてリゲインはそのたった一撃放たれた拳で崩壊し、拠点であったであろうその場所は瓦礫の山が積み重なっていた────。
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「─── うっ… ん…」
あの崩壊から何とか怪我は避けられた稲森は、瓦礫を退けて周りを見渡す。
そこはリゲインであったはずの場所だが、今は形すら残ってはいない。キングのたった一撃の攻撃だけで崩壊してしまった。凄まじい力だった。
そんなキングは1人瓦礫の山に立っている。山の上に立つその姿は本当に王と呼べるほどの威厳を感じる。百獣の王。今の彼こそそれに相応しい。
だから稲森は一歩も動けなかった。それ程の威圧感が彼の身体にひしひしと伝わって来ているのだ。
「生きていたか。流石、最強の一族の1人と呼べるだろう。だが、死んでいた方がマシだったろう。貴様はこれより俺が喰い殺すのだからな」
「……(どうしよう… このままじゃ殺される…)」
しかし、稲森に後悔などない。今ここで殺されてしまうのは当然の事だからと思ってしまった。
自分自身の判断でアベンジドライバーを置き、親友であるモグロウにも否定的に対応してしまった。そして何より自分のせいで人も怪人も犠牲者としてしまった。
だから稲森は今置かれている状況は当然だと思っていたのだ。
「一度は避けたが、貴様…… 今、避ける気がないな? それどころか先ほどまで見えた怯えすら見えない。何を覚悟した?」
「…… 僕は人間と怪人の為に戦った… だけどそれはもう叶わないんです。守ろうとしていたのに、犠牲者を増やして、その犠牲者を餌にして…… こんな怪人にはもう何も守れない… これ以上、犠牲者を増やすのなら僕はもう…」
「死ぬ道を選ぶという訳か… ふんっ。それもまたいいだろう。貴様の苦しむ姿を見てやろうと思ったが、それでいいというのなら、貴様の心意気を称賛し一瞬で殺してやろう」
モグロウごめんね。僕が弱かったからこうなったんだ。
親友… また一緒に笑っていたかったよ───。
「死ね」
キングから放たれた強烈なパンチは稲森の胸を貫いた──── かに思えた。
不思議な事に稲森はそこからいなくなっており、キングの拳は胸を貫くのではなく、何もない空を切っていた。
キングは背後に気配を感じ、振り向くとそこには稲森を抱えたモグロウが息を荒くして膝をついていた。
「あっぶねぇ… あと少し遅れてたら俺も死んでだぜ…」
「モグロウ…!!? どうしてここに…」
「…… よし、イナゴ。ちょっと立てるか? そこに立ってくれ」
「え、うん…」
すると、モグロウは稲森をしっかりと立たせて深呼吸をし、笑っていた顔が鬼のような形相となって、稲森の頬を思いっきり殴り抜けた。
そして吹き飛んだ稲森は頬をさすりながら、モグロウの方を見て、頭の中で情報量を整理にする為に口を開けてポカーンと座り込む。
それから近づいて来たモグロウが胸ぐらを掴み怒鳴りつける。
「てめぇよッ!!! なに死のうとしてんだこの馬鹿野郎がッ!!!!!」
「モグロッ───」
「俺がどんだけ心配して、どんだけ我慢してたか知ってるか!!? 知らねぇよなぁ!!? だってこうやって… あいつが何かわからねーけど喰らおうとしてたんだからな!!!」
「ご、ごめん…」
「ごめんで済むなら仮面ライダーいらねーんだよ!!! お前は俺がいて、俺にはお前がいるそう言ったよな!!? だからよ…… ここでイナゴが死んだら俺はこの先、何をして笑えばいいんだよ…!!!」
「モグロウ…」
「… お前は俺の親友だ。自暴自棄になってこんな事すんなよ…… 誰よりもお前のことがわかってんのに、勝手に自己完結で終わりにしないでくれ…!!!」
「………」
「お前が犠牲にした奴らは戻って来ねぇし、全部が全部イナゴが悪い訳じゃねぇ。だからといってそれをあれこれ誰のせいにするのは責任逃れな気がする。だからだ。だから、それを償う為に今ある命を守ろう。俺だって、陽奈だって、楓だって手伝ってやる!! お前は1人じゃない!! 俺たちがついてるんだ!!」
「モグロウ…… 僕は────」
稲森が言いかけた途端、キングによる一撃がモグロウを襲った。
一足早く動けたモグロウではあったが、咄嗟に出した右腕で完全に防ぎ切る事は出来ずに、バキバキと嫌な音を鳴らせて吹き飛んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁっっ…!!!」
「モ、モグロォォォォォォッ!!!!」
「次は貴様の番だな。望み通り殺してやる」
そしてキングは拳にエネルギーを纏い、稲森の前に立ちはだかる。
「そうだ。僕は何をしていたんだ…… 身勝手過ぎた。身勝手に責任から逃れようとしてた。今やらなきゃいけない事はそうだッ!!! 僕は何だッ!!! 僕は───!!!」
「イナゴォォォォォォッッッ!!! 受け取れぇぇぇぇッッッ!!!」
モグロウは左腕で懐からアベンジドライバーを取り出すと、それを思いっきり稲森へと投げる。
それをさせまいとスピーダとウェイトがモグロウの前へと立って防ごうとする。
だが、稲森は驚異的なジャンプ力で跳び、アベンジドライバーを手に取ったと同時に、モグロウが片手で合体させたリジェクトフィードを投げると、稲森はドライバーの挿入口にリジェクトを差し込んで腰に巻きつけた。
「僕は──── 仮面ライダーだッ!!! 変身ッ!!!」
空中で仮面ライダーアベンジ リジェクトウェポンへと変身し、態勢を整えて着地する。
《《Put a flag on the mountain of sacrifice, I'm an avenge world revenge!!》
《START!! リジェクトアベンジ!!》
「もう拒絶なんてしない…… 僕は仮面ライダー。みんなを守るんだッ!!!」
「貴様…… スピーダ、ウェイト。手を出すな。代わりに貴様らはモグロウを殺れ」
キングに命令された2人はモグロウの元へ向かおうとするが、すぐさまアベンジが立ち塞がって2人を蹴り飛ばす。
誰もが恐れたリジェクト。最強にして最悪な力。だが、今のアベンジのその姿からはそんな負の感情を起こす気にはならない。
何故ならもうそんな心配はないからだ。
「ファングさん… いや、ファングッ!!! 僕はもう決めた。お前達を倒してみんなを守るッ!! それが仮面ライダーとしての僕の役目だからッ!!!」
「…… やはり撤回だ。仮面ライダーは心底腹が立つ…!!!」
「─── 皆んなに代わって逆襲だッ!!!!!」
稲森完全復ッ活!!!
しかしファング… 基キングに勝てるのか…?
次回、第33話「下克上でトップ」
次回もよろしくお願いします!!