前回、モグロウに諭されたイナゴが仮面ライダーアベンジ リジェクトウェポンに変身し、仮面ライダーキングと戦うがその力の前に何もできずいた。しかし、そこへ陽奈達が駆けつけ、その場から逃走することに成功。陽奈の実家にて本当の敵を再確認した一向。一方で班目はファングにより死に、首領は再び復活するが──。
それではどうぞご覧ください。
再び戦争が起き始めた。
急にというかもしれないが、戦争は今に始まったわけではない。人も怪人も関係なく、一度争ったもの同士がそう易々とやめてくれるのだろうか。
既に犠牲者の数はどちらも含め数百人と出ている。
ここでやめればいいのにと誰もが思うだろうけれど、片方がやめれば、片方はそれを好機と見るだろう。戦いはいつだってそうなのだ。どこか少し気を抜いただけでいとも簡単に崩れてしまう。
「陽奈さんッ!! そっちは!!?」
「何で止めても止めても争いはじめるのよ!!」
「どうしよう…!! これじゃあ永遠の泥沼状態…!!」
「でも、止めるしかできねーんだぞ!! あーくそッ!!!」
首領を倒したといえど、怪人達にはファングという大きな存在。新たなる王が付いている。
一方で人間側は仮面ライダーという存在。それと彼らの心に大きな傷をつけたであろう首領が死んだという事なら、黙ってライダーに任せてもいないだろう。
いくら仮面ライダーが敵を薙ぎ倒そうと、彼らの心に刻まれた傷は深く、誰かがやったではなく自分たちがやったという事実がなければならない。
基本フォームはと変身したアベンジ、エース、クイン。そして怪人態へと変化したモグロウの4人は、全く止まる気配がない戦争のど真ん中で、人間と怪人達をギリギリ止めている状態だ。
「稲森ッ!! 私たちは人間なんとかするから怪人側止めなさい!!」
「はい!─── モグロウ行くよ!!」
アベンジに言われるとモグロウは頷き、怪人達を止めようと試みる。
だが、その直後にエースの悲鳴が辺りにこだまする。声を聞いてそちらを向けば、エースの上に何者かが馬乗り状態となっていた。
すぐにアベンジはエースの元へと向かおうとするとしたが、遮るようにキングが現れて道を塞がれてしまう。
「ファング…!!」
「…… エースの元へと向かおうというのか? イナゴ」
「陽奈さんの元へは行かせないんでしょう? なら、あなたをここで……」
「やめておけ。貴様は俺には敵わない」
「…ッ」
「それよりも貴様、あれを見てどう思う?」
キングはエースの方に指をさしてはいるが、きっとあれというのはエースの乗っている何かを指しているのだろうか。
「どうって… ただの怪人にしか……」
「ただの怪人… か。どうやら俺たちの上に君臨していた男もそれまでの力だったようだな」
「俺たちの上…?」
「そうだ。あれは─── ジェスター首領だ」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「陽奈ッ!?」
「なんなのよこいつッ…!!」
エースに跨る何かは、何の怪人で何を掛け合わせたらこんな醜い顔になってしまうのだろうかというほど、その怪人の見た目は非常に恐ろしく奇妙だ。
「邪魔ッ!!」
エースはそれを思いっきり跳ね除けて再び立ち上がり、次の攻撃に備えようとすると何か違和感を覚える。
その奇妙な生物からは、どことなく懐かしさを感じるのだ。
「エース……!?」
よく見なければわからなかったが、今こうしてまじまじと見るとそれが何者なのかがよくわかった。
その姿は非常に仮面ライダーエースに似ており、懐かしさの原因は見た目であるということがよくわかる。もう一つは動きだ。何度もこの目で見た動きだからこの化け物が誰であるのかもはっきりして来た。
信じたくはないが信じるしかない。
「父さん……」
それが何なのかはっきりとわかったエースは悲しむ。悲しんだが、そんな感情はすぐに吹き飛んで逆に怒りが身体の底から火山の噴火の如く爆発した。
「許さないッ……!!!!!」
「陽奈…」
「見た目はもう父さんじゃないってわかるわ。これが首領なんだってね。だけど!!! 見た目は違えど、その動きはエース…… 父さんの動きッ!!! 一体命をなんだと思ってるの!!? 父さんをなんだと思ってるのよッ!!! 許さないッ!!! 許さないッ!!!!!」
エースは怒りの咆哮と共に、無様な姿となった首領。父に向かって走り出す。
それと同時に走り出した首領に蹴りを入れ、怯まず反撃をして来ようとも全く攻撃をやめない。最小限の動きと最大限の攻撃をしながら首領を翻弄していく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
戦闘するエースはそこでハッと気づいた。
今は戦争中なのだ。感情だけで動いてはいけない。何故ならこの声が人間の悲鳴であり、怪人たちの動きがより活発になって人間たちを食い殺そうとしていた。
そしてその逆も然り、一部の人間たちは怪人たちを素手で殴り飛ばしていた。ガタイのいい人間に関しては怪人を片手で持ち上げて地面に叩きつけている。
「え…? 何よこれ…」
「─── ッ!!? 陽奈危ないッ!!!」
首領から少し目を離したエースは、首領の手刀から放たれるエネルギーを帯びた突きを躱す事ができなかった。
それを一足先に気づいたクインが受け止め、エースを庇って大きく吹き飛ばされて変身が解ける。
「かはっ…!!」
「か、楓ぇぇぇぇぇぇッ!!!」
そしてエースたちがその光景を見て驚愕していたのに対し、アベンジとモグロウ。そしてファングでさえも目の前に起きている事柄に驚愕していた───。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
あの化け物が首領だとファングから伝えられたアベンジとモグロウだったが、どうやらそれよりも重大な事態が目の前で起きているようだった。
人間と怪人の戦争が始まり、こうして再び血で血を争う戦いになっている。確かにそうなのだ。そうではあるが違う。
これはまるで人間が怪人だ。人間が怪人と殴り合えるか? いや、そんな事ができるはずがない。力の差は先ほどの戦いで嫌というほどわかりきっていたはずなのだ。
「なんだと…? これはどういう事だ……?」
あのファングでさえも驚いていた。ファングもこれについては全く知らなかったのだ。
人間と怪人の戦争という理不尽な争いにファングは勝ちを確信していたに違いない。そうであったのは目に見えてわかる。
だが、この状況を見てどうだろうか。明らかに人間側が押して来ている。武器も何も持たずに、己の身一つだけで怪人と渡り合っているのだ。
「これは一体……」
「ファングさん。あなたも知らないんですか?」
「なんなんだこれは… こんな事があっていいのか? 俺たちの差は歴然だったはずだ」
「……… まさかッ!!」
「そんなはずはない!!! 班目は俺の手で殺したはずだッ!!!」
「ま、班目さんがッ!!? どういう事ですか!!?」
「死して尚も邪魔をするかァッ!!!…… 全員一度引けッ!!!」
ファングの一声に一部の怪人たちは素直に従おうとしたが、ある一定の部分だけは聞く耳を持とうとせず、人間たちを殺そうと飛びかかっていく。
人間たちは引くどころか追撃しようと試みている。普通の人間たちすらもだ。
「そんな…… ファングさん。班目さんを殺したってどういう事ですか。それが本当ならこの状況はなんです?」
「黙れ。俺が奴に関してわかることなどない。だが…… ただでは死ななかったというわけだな」
「ファングさん。提案があるんです」
「提案だと?」
アベンジは立ち去ろうとするファングに提案という訳の分からない事を言い出した。
モグロウもアベンジの言う提案とやらの話しで心当たりはない。一体何をするのだろうか。
「今、僕たちの目の前を見てください。人は死に、怪人も死に、どちらもただ命を失っていくだけの無駄な争いでしかありません。そして班目さんが死んだと言う事実が本当なら、これは班目さんが残した最後の悪あがきだと思うんです」
「…… 何が言いたい?」
「僕たちは手を組まなければならないという事です」
「貴様…… 馬鹿馬鹿しい。何故貴様と手を取り合うなどという考えを起こさねばならんのだ」
モグロウもアベンジを止めようとしたが、アベンジは全く引き下がる様子はない。
「あなたがどう思っているかはわかりません。ですが、今こうして目の前で起きている事をそのままにするなら、あなたはそれまでの怪人だったというわけですね」
「… 貴様、今なんと言った?」
「何度でも言います。ファングさん、あなたは目の前にいる同族の命も碌に助けられない愚かな怪人だと言ったんですよ」
その瞬間、ファングは硬く握った拳をアベンジに放つが、アベンジはそれを予測してすでに避けており、ギリギリのところで躱す事ができた。
「殺してやろう」
「僕もあなたとはそうならなければいけないと思います。けど、それは今じゃありません。本当に戦うのであれば、この事態を止める事が先決だと思います」
「それで俺になんのメリットがある? この戦争は一部の異常となった人間を殺せばいい事。たったそれだけやれば事が終わる。俺たちの勝ちだ」
「確かに戦争には勝ちますけど、班目さんには負けますよ」
「なに…?」
「あの班目さんです。あなたがこれをするあれをするとやっても、あの人は2手3手と先を読んでいるはずです。このまま戦争を続けて勝ったとしても、班目さんは必ず何かを仕掛けて来ていますよ? それを1番よくわかっているのはあなたでしょう!!」
「ぐっ…!!」
「どうしますか? このまま戦争を続ければファングさんは班目の思い通りに動いてしまう。それでもあなたは戦いますか?」
「───……… 条件がある」
「… はい」
「この戦いが終わった時、俺と1対1で戦え。代表戦だ。お前が負ければこの世界は俺が好きにする。俺が負けた時…… お前は好きにすればいい」
「ファングさん…!!」
「勘違いはするな。俺はあの班目の思い通りに動きたくはないだけだ。それだけは忘れるなよ」
「ありがとうございます!! ファングさん!!」
「しばらく俺は話しが聞ける怪人どもをかき集める。あの暴れている奴らは知らん。貴様らがなんとかしろ」
ファングは変身を解くと、一部の怪人たちだけを連れて何処かへと消え去った。
そしてアベンジは胸を押さえて粗い呼吸をし、少しずつ息を整えいく。流石のあの重圧を前にして普通でいられるはずがない。アベンジの必死の叫びだったというわけだ。
モグロウはアベンジの背中をさすりながら安堵する。
「はぁーーーー… マジで心臓止まるかと思ったぜ。良くやったよお前。あのファングを丸めやがった」
「班目さんの名前を聞いたら流石に受けるかなと思ったけどうまくいってよかったよ…… そして結局戦う事になるのも予想通りだけど、被害は少なくなりそう」
「…… だがよ」
「うん、休んでなんかいられない。あの人たちを止めないとね」
それからアベンジは達は混沌する戦争へと飛び込んでいく────。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「完成です」
班目は研究所にてとある物を開発していた。見た目からもわかる通りの毒々しい色の液体。
それを拳くらいの玉の中に注入し、栄須市にある1番高いビルの上へと持っていく。
「ファングさんはきっと私を殺す事でしょう。全くもって酷いお方だ。首領を使い捨ての兵としてあげても、あの方が私に対する怒りは変わらないでしょう。いっそ死んでしまうのならば最後にとっておきの物を置いていってあげましょうかね」
それから班目はその玉を握り潰すと、液体は空気に触れた途端に霧状となり、やがてそれは街全体を包み込むほど広がっていく。
目に見えないほど細かくなると、班目はニタリと微笑む。
「人間側が不利… そんな戦争つまらないでしょう? ねぇ、ファングさん…… 稲森さん」
─── そして再び起きた戦争。
その液体の効力は人間たちに怪人のような力を与え、怪人たちには本能を増幅させるというものであった。
しかし、これは彼らが戦えば戦うほど、肉体を破壊し、やがては朽ちてしまうという恐ろしい副作用も存在しているのだ────。
再び起きた戦争…!!止める事はできるのか!!?
次回、第35話「微かなホープ」
次回もよろしくお願いします!!
最終回まで残り── 9話