仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。
もう最終回が迫っていると思うと本当に早いなーと思ってしまいます。

前回、戦争は止まらないどころか更にその激しさを増していた。最後に班目は死しても尚、この戦争を激化する為に人間には怪人のような力を、怪人には本能を目覚めさせるという薬を作り出して栄須市にばら撒いたのだった。一方のファングと稲森は一時的な休戦という形を取るが未だに問題は山積みである…

それではどうぞご覧ください


第35話「微かなホープ」

「── 稲森がファングに条件持ちかけて、それであいつが了承したのは予想外だったわ。まぁそのお陰でとりあえず怪人側は大人しくなるはずなのだろうけど……」

 

 

 稲森たちはあの後、一旦陽奈の家へと戻った。

 この戦争中にそうのんびりとはしていられないのだが、理由としては楓が変身解除する程のダメージを負ってしまったからだ。

 だからと言って稲森たちに休んでいる時間はない。この戦争が終わってもその先にはファングという王が待っている。

 

 

「陽奈さん、すみません… 何も考えずにやってしまって…」

 

「いいのよ。その何も考えないでやった結果が休戦。あいつに何言ったかは知らないけど、話し合いだけで休戦させたのは凄いことよ」

 

「でも… その代わりに僕が奴と1対1で決着をつけなきゃいけません。もし… もしも僕が負けてしまったらと思うと…」

 

「あんたねー… 自信持ちなさい!!」

 

「…っ!?」

 

「もちろんファングに勝つには今のあなたじゃ絶対無理よ。だけど何もやらずに負ける云々言ってても前には進めないわ。だから、それに向けてまず戦争を止めて、稲森にはリジェクト以上の力を手に入れてもらわなきゃ」

 

「リジェクト以上の…… でも、班目さんはもう…」

 

「班目…… もしかしたら」

 

「… どうしました?」

 

 

 陽奈は懐から数字の書かれた紙とカードキーを取り出すと、それらを稲森に渡す。

 

 

「これは?」

 

「研究所の10桁のパスコードとカードキーよ。あの班目だったら… あなたに何かを残しているかもしれない」

 

「陽奈さん…」

 

「行ってきなさい。戦争の件は私たちに任せて」

 

 

 すると、後ろから肩をポンと叩かれる。

 モグロウはニカッと笑ってから、稲森の背中をバシッと叩く。

 

 

「こっちは任せろ。お前はさっさと班目んとこの研究所行ってこい。偽りのキングをぶっ飛ばすぞ」

 

「モグロウ…!」

 

 

 そして布団を敷いて寝ていた楓も身体を引きずりながら出てきて、親指を突き立てて「任せて」と一言。

 稲森は大きく頷き、班目の研究所へと走り出した────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 栄須市の街中では戦争は更に激化していた。

 人々が怪人に対して引く事なくちぎっては投げの繰り返し。一方の怪人は引くどころかまるで獣のように人間に噛みつき、人間を餌というように貪り食う。

 あまりにも酷い光景に駆けつけた陽奈とモグロウは思わず息を呑む。

 

 

「おいおい… こんなの地獄じゃねーかよ…」

 

「楓がいればまた心強いんだけど… 今は仕方ないわ。とにかく全員止めるわよ!!」

 

「おう!!」

 

「変身ッ!!!」

《Let's try!! Let's call!! ビバ!! マスタースペイドエース!!》

 

 

 陽奈は仮面ライダーエース マスタースペイドウェポンへと変身すると、重力を操作して人間と怪人たちを地面に拘束する。

 マスタースペイドは重力を操作する能力だが、この大多数相手には流石に全てを止める事はできない。

 

 

「モグロウ!! そっち頼んだわよ!!」

 

「もう既に拘束済みだぜ!!」

 

 

 すると、人間と怪人たちの足元に穴が空き、そこへ下半身が綺麗にズッポリとハマってしまって身動きが取れないでいる。

 あの一瞬のうちに掘ったと考えると、かなりの技量と体力を持っているだろう。今までのモグロウとは明らかに動きが違った。

 

 

「… やるじゃない!」

 

「へっ、俺もお前らに置いてかれるのはごめんだ。俺の身体がバラバラになるまでやってやる!! 稲森だけじゃねぇ… 全員が笑っていける未来を取り戻す!!」

 

 

 そしてモグロウが次の穴を掘ろうとした時であった。

 その背後から人間に掴まれ首を締め上げられる。凄まじい握力で締められている為、モグロウの力でさえ全く解く事ができない。

 

 

「かっ……ぁっ…!!!」

 

「モグロウ!!」

 

 

 エースがモグロウの助けに入ろうとするが、怪人たちが彼女の前に立ちはだかる。

 

 

「あぁもう邪魔よッ!!!」

 

 

 皆が入り乱れているがために、モグロウを助けに入るものは誰1人としていない。誰から見ても絶体絶命の危機だ。

 けれどモグロウは誰も助けに来ない事など、とっくに理解はしていた。大乱戦の中で誰かに助けを求めるなんて、ましてや仲間は陽奈1人だけである。だから誰からも助けなど来るはずない。

 

 

「…… 稲森が新しい道作ってくれたんだ…」

 

 

 そしてモグロウは自分の首を掴んでいる両腕を掴み、思いっきり両側へ引っ張る。

 

 

「こんな所でぇ…!! 負けてられるかよぉぉぉぉぉっっっ!!!」

 

 

 それから人間を力一杯に投げ飛ばして他の人間たちもまとめて吹き飛ばした。

 

 

「戦争をやめさせてやるッ!!! それが俺たちの使命だッ!!!」

 

 

 稲森が必ず何かしてくれることを信じ、モグロウは再び乱戦の中に飛び込んでいく────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 稲森は班目の研究所の扉に、陽奈から受け取った10桁のパスワードを入れてカードキーを差し込む。

 研究所の扉が開いて奥へと進むと、当たり前だが部屋の中は真っ暗であり、机があるのだろうけど分からずに蹴ってしまう。

 

 

「電気… 電気……」

 

 

 物を伝いながらスイッチを探していると、何もそれといった物は触っていないはずだが、突然部屋の明かりがパッとついた。

 

 

「な、なんだ…!!?」

 

 

 班目が防犯で何かしら仕掛けてあるのかと思ったが、辺りを見渡してもそれらしい仕掛けはない。

 とりあえず危険はないと判断し、部屋の中を漁り始めた。

 しかし、班目がこの状況においての打開策を用意しているはずがない。現にそれっぽいものが見当たらないのだ。

 

 

「やっぱり班目さんは……」

 

 

 そもそも打開策という事自体がおかしい。

 誰がきっかけで戦争が激化したのか。誰のせいで人間も怪人も本能のままに殺し合いをするようになったのか。

 その原因が班目であるという事は百も承知だ。でも、ライダーシステムを創れるのは他でもない彼しかいないのが現実。

 今は彼に縋るしかないのだ。こんな皮肉な事があるだろうか。未来は彼の手にかかっている。

 

 

「─── あれ?」

 

 

 稲森はふと班目がよく使用していた机の方に目がいった。

 あそこはもう調べてあるはずなのだが、妙な違和感を覚えて机に向かう。

 

 

「……(そういえばここに来た時も変な違和感があったな…)」

 

 

 ここに来るまで当然ながら誰1人としてはいない。人がいないはそうだが、ついでに言えば物もない。

 班目の研究所と言えば片付いてるか片付いてないのか。とりあえず足の踏み場はある状態ではあったが、この場合においてはその物自体があまりにも少ないのだ。

 道具は最低限のものだけがあり、班目の机の上には何も置かれてはいない。以前なら試作品やらが大量に置かれていたはずだ。

 

 

「やっぱり… 机の上には何も───」

 

 

 稲森が机に指を走らせると、突然机の真ん中に模様が浮き出て、青白い光が溢れ出す。

 

 

「うわっ!!?」

 

 

 何かの罠かと思い身構えたが、その光はすぐに消え、机に恐る恐る近づいてみると、何も置かれてはいなかった机に見たこともないアビリティズフィードが置かれていた。

 

 

「これってアビリティズフィード!? 見た事ない形だ…… 班目さんが造ったんだろうけど……」

 

 

 アビリティズフィードにはその能力を模した動物の絵と特有の色で構成されていた。

 だが、このアビリティズフィードには色がなく、合体したリジェクトと同じぐらいの大きさであるにも関わらずとても軽い。

 まるで中身がない試作品かのような感じだ。

 

 

「…… 多分これだ。だけど班目さんはなぜこれを……」

 

 

 今は深く考えていても仕方がない。戦う2人の元は急がなければならない。

 稲森は謎のアビリティズフィードを懐にしまうと、急いで2人の元へと向かうのであった─────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 エースとモグロウは更に激化する戦争の中で戦い続けていたが、その多さから次第に体力も限界に近づいていた。

 

 

「モグロウ… あなたまだ戦える?」

 

「はぁ… はぁ…… 当たり前だ。こんな所で倒れるわけにはいかねーからな!」

 

 

 モグロウは暴れる怪人を捕まえて地面に倒す。

 すると、その怪人はモグロウを蹴り飛ばして罵声を浴びせる。

 

 

「お前怪人だろ!!? なんで人間なんて庇うんだよクソ野郎!!!」

 

「お、おい意識が…!!」

 

 

 全員が本能のまま動いていると思っていたが、どうやら違う奴もいるようだ。

 しかし、彼らの口から放たれる言葉は感謝でもなければ礼でもない。人間への憎しみ、怒り、裏切り者とそればかりだ。

 

 

「人間だけじゃねぇ!! お前ら怪人も庇ったんだよこっちは!!」

 

「知るかよッ!!! 俺は人間に息子を殺された!!! 見た目が違うってだけでよ!!?」

 

「それは人間側も同じ事だッ!!! 確かにあんたの所の息子さんの死は許せねぇ!!! だが、あんたも今それと同じことをしようとしてるんだぞ!!?」

 

「黙れ裏切り者!!!」

 

 

 怪人はモグロウを跳ね除けて再び人間の方へと向かっていく。

 一方のエースも人間たちを抑えつけていると、ある1人が叫ぶと同時に、呼応するように皆がエースに罵声を浴びせた。

 

 

「仮面ライダーのあんたはどっちの味方なんだよ!!? 人間じゃないのか!!?」

 

「人の味方だし、今は怪人の味方でもあるわ」

 

「ふざけんなッ!!! 何が仮面ライダーだっ!!! 何も守れないで正義のヒーローだとかふざけた事言ったんじゃねーよ!!」

 

「落ち着いて────!!!」

 

「落ち着けだと? 家族殺されて落ち着いてる奴がいるか!!! 俺たちは今… 何故だかはわからないけど凄い力を感じる…!!!」

「これで怪人共を殺してやるんだ!!!」

「そうよ!!! 怪人なんてこの世にいちゃいけないのよ!!!」

「そうだ!!! そうだ!!!」

 

 

 もう彼らには仮面ライダーの声すらも届かないのか。

 皆は2人の静止を聞かずに怪人たちと再び血で血を洗い始めた。

 

 

「人間ども!!! 死ねぇッ!!!」

 

「この世から怪人を潰せェェェ!!!」

 

「人間のせいで!!!」

 

「怪人のせいで!!!」

 

「殺せ!!!」

 

「殺せッ!!!」

 

「「「「「皆殺しだッッッ!!!!!」」」」」

 

 

 エースは止められないという現実を突きつけられ、心にあった鎖がついにブツッと千切れた。

 それからエースは膝から崩れ落ち、絶望した顔をしながら頭を抱える。

 

 

「もうダメなの…… 戦争は… 止められなかったの………?」

 

「………」

 

「ごめんね… 父さん… 楓…… 私がしっかりしてればこんな事には…」

 

「………ッ」

 

「私がもっと早く気づいていれば……!」

 

「──── ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああッッッ!!!!!」

 

 

 するとモグロウが天に向かって辺りに響き渡る程の咆哮をし、乱戦する中は1人で飛び込んだ。

 

 

「モグロウッ!!?」

 

 

 そしてモグロウは何を思ったか、その乱戦の中は1人飛び込み、人間が持っていたナイフを腹に受け、怪人が持っていた鋭い爪を腰に受けた。

 鋭い刃が貫通し、口から血を吐き、苦しみながらもその2人の武器をしっかりと握って天高く吠える。

 

 

「てめぇらぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!! いい加減にしやがれぇぇぇぇええぇぇぇえぇぇぇッッッ!!!!!」

 

 

 その場にいた全員が一瞬何も聞こえなくなるほどの咆哮を行うと、先ほどまでの争いはピタリと止まり、全員がモグロウの方へと向く。

 息を荒くしながらモグロウはその後も続ける。

 

 

「お前たちはどれくらいの命を無駄にすれば気が済むんだッ!!! これ以上、命を無くす意味はあるのか!!!? ねぇだろッ!!!? 家族を失った奴らの気持ちも大切な奴を目の前で殺されて、殺したくなるほどムカつくのはよくわかるッ!!! だからってお前ら全員が争っても、そいつらは生き返らないし、また同じように大切な奴らを失うだけだッ!!! お前たちだって本当はわかってんだろ!!? 今この戦争中に何人の命を失ったんだ!!? もう何人とかの話じゃねぇ!!! 数えられないほど死んでるんだよッ!!! お前たちはそれでも戦うのか? また失いたいのか? こんなに犠牲になってるのに、それでもお前たちは…… お前たちは戦い続けるのかよぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

 

 

 それはモグロウの魂からの叫びだった。

 全てを言い終えたモグロウは再び血を吐き、目の前が真っ白になって地面に倒れた。

 

 

「嘘でしょ…… モグロウッ…!!!」

 

 

 エースはモグロウへと近づくと、周りの人間や怪人たちは先ほどの血走った目ではなく悲しみの表情を浮かべていた。皆が彼女のために退く。

 そしてエースはモグロウを起こし、腹をみると深く突き刺さり貫通した所から血が流れている。出血多量。段々と力が抜けていくのがわかる。

 

 

「ちょっとしっかりしなさいよ…!!」

 

「はっ…… しっかりすんのはお前の方だ陽奈」

 

「え…?」

 

「しっかりしなきゃいけないんだろ…? だったらしっかり前見て戦争を止めてくれ…… 俺の声がみんなに届いたかは知らねー…… ただ、これで変わらなくてもお前たちがやってくれるはずだ……」

 

「馬鹿……!!」

 

 

 そして稲森もその場にようやく到着すると、モグロウの姿を見て声を抑えて凄まじい跳躍力で彼の元へと跳んだ。

 

 

「モグロウ…!!! やだ… やだよ……!!!」

 

「泣くな馬鹿野郎…… お前も陽奈みたいにしっかりしろよ」

 

「でも… こんなのって…!!!」

 

「大丈夫だ… お前なら…… お前たちならやれる… 後は頼んだぜ」

 

「モグロウ… モグロウ……!!!」

 

「笑ってろイナゴッ!! 親友が最後に残した爪痕…… 無駄にすんなよ────」

 

 

 そしてモグロウは最後に稲森の手を叩くと笑顔のまま力が抜ける。

 稲森はゆっくりと立ち上がり、涙を拭いて皆に言う。

 

 

「僕の大切な親友は馬鹿みたいな戦争で怪我をした…… もうわかるでしょう? これ以上争っても変わりません。こうして大切な人がいなくなる… そんなの皆んな望んでないはずです。だから… もうやめましょう。今の僕たちは手を取り合わなければならない。そうしなきゃ… 誰も笑ってなんかいられない!!!」

 

 

 稲森… そして何よりもモグロウの言葉を聞いた全員が武器を下ろした。

 すると、その場にいた人間と怪人たちの身体から毒素のようなものが抜け、稲森の持っていたアビリティズフィードに注がれる。

 そして取り出してみたが、特に変わった様子もないけれど少なからず悪い感じはしない。

 

 

「皆さん… ありがとうございます」

 

 

 こうして戦争は1人の叫びと共に終わりを告げたのだ────。




戦争が終わりました!!やりましたね!!
……はい。1人ちょっと……うん。
そして次はファングとの決着か…!

次回、第36話「王はエバー」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り── 8話
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