前回、遂に稲森とファングの最後の決着が行われたが、仮面ライダーキングの圧倒的力を前に歯が立たないアベンジ。リジェクトの力すら及ばない無謀な戦いの最中、病院で安静にしていたモグロウの前にとある人物が現れる。その後、絶対絶命の稲森の前に現れたのはモグロウと稲森がかつて助け、世話になった2人の姿があった…
それではどうぞご覧ください。
「何でここに!?」
キングとの戦いの最中、絶対絶命のアベンジの元へと現れたのは元バイト先の店長、それからバートンに襲われ、崩れ行く病院の中から助け出した女の子。寝ているはずのモグロウの姿があった。
「どうしてモグロウも…ッ!!」
「何をよそ見している貴様」
そして再びキングの拳が迫るが、アベンジに向けて3人の声援が聞こえる。その声は怪人たちと合わさり微かに聞こえる程度であったけれど、アベンジにはしっかりと聞こえていた。
アベンジは迫る腕に脚を絡ませて思いっきり身体を捻ると、キングは少し態勢を崩れてしまう。
その隙にアベンジはキングを踏み台にして大きく距離を取ることに成功した。
「皆んなどうして……」
「話しは後にしようぜ!! ここにいる奴らは皆んなお前を応援しに来たんだよ!!」
「お兄ちゃん!! あの時、病院で助けてもらって嬉しかった!! 凄く嬉しかった!! だから今度は私がお兄ちゃんを助ける番!!」
少女の放った「助ける」という言葉にキングは笑う。
「… 何が助ける番だ。貴様らに何ができる? イナゴに全てを託し、傍観する事しかできない貴様らが奴に何を与えられる? 答えは無だ。ただ言葉を送るだけで生物が強くなるとでも? 貴様らは何故そんな根拠もない希望に縋り付くのか… 理解に苦しむな」
キングは辛辣に少女を貶すが、少女の瞳は輝きを失わず、目をキッとしてまるで怯まない姿勢を見せる。
そこで店長が横からキングは言い放つ。
「君には分からないだろう。私は稲森を雇い、彼の影響で店が潰れてしまったことをはっきりと言える」
「怪人のせいか。貴様ら人間はすぐに怪人が全てにおいて悪いと───」
「確かに彼のせいで店は潰れた。しかし、私はそれに対して後悔などしていないのだよ」
「なに?」
「稲森くんにもその時に伝えた。私が彼を雇ったのは彼が他の怪人とは違い、とても優しく澄んだ心を持った怪人だったからだ。私は彼のお陰で怪人の中にも彼のような心を持った怪人がいるんだと学び、考え直された。だから稲森くん。彼を止めてくれ。皆んなが幸せになる世界を作れるのは君しかいないんだ」
なんて馬鹿馬鹿しいのだろうか。戯言とはこの事だ。
しかし、人間たちは顔を見合わせ、何をするべきかと考え始めた。自分たちにできることとは何かと。
「あなたたち聞きなさい!!」
「陽奈…!?」
人間たちが鎮まる中で陽奈も彼らに負けじと声を張る。
「私はみんなに胸を張れるような事は何一つできてないわ… 怪人は敵だと決めつけて今まで何人も何人も倒してきた…… だから!! もうこれ以上誰も失いたくない!! だけど私じゃ何もできない!! お願い!! 最後まで稲森を応援して!! 最後まで希望を捨てないで!!」
「陽奈……… 稲森さんは陽奈も私も救ってくれた!! あの人は私たちに希望を与えてくれた!! そんな人を勝手に裏切ったらそれこそ私たち人間が最低よ!! 信じられないのはわかってる… 勝てそうにないっていうのもわかるよ…… だけど目の前でボロボロにされても立ち上がる稲森さんの覚悟を信じて!!」
陽奈も楓も声を張り上げ人間たちに声を掛ける。
それに対してキングは怒りを覚え、地面に向けて拳を振り下ろすと、地は割れてスタジアム全体を震わせた。
「… 喜べイナゴ。貴様を殺すのは一旦やめにしよう」
「え…?」
「死よりも恐ろしい苦痛を与え続けて殺してやろう!! 周りの雑魚どもが絶望する顔を見ながら、貴様の最後をこいつらに見せつけてくれる!!!」
そう言うと、キングは一瞬でアベンジの懐は潜り込み、顎を殴って身体を宙へと浮かし、アベンジの足首を掴んで地面へと叩きつける。
「苦しめッ!!!」
「うっ…!!!」
「貴様らが言う希望はここで断ち切れるッ!!!!!」
何度も地面へ叩きつけた後、アベンジの心臓部に渾身の一撃を叩き込んだ。
「かっ…… ハッ…ッッッ!!!」
そして吹き飛んだアベンジは地面を深く抉りながら壁にぶつかる。
誰もがそれを終わりだと感じた。誰もが絶望した。
「先ほどからのダメージを合わせれば、貴様の身体は既に限界だ… 人間を守る。怪人も守る。いつまでも夢を見ている貴様に現実を教えてやる!!」
だが、それでも諦めないアベンジとそれと同じように諦めない人間たちと親友。
「これが現実だッ!!!」
まだ諦めてはいけないと、アベンジは心の中で強く願う。
どれだけ力の差があろうと、どれだけ苦痛を与えられようと、今ここで引くわけにはいかない。自分の全てを持って戦う。ここが限界なんかじゃない。
「うおぉぉぉぉぉっっ!!!!!」
アベンジは拳を堅く握りしめ、再びキングへと向かって行こうと一歩踏み出した。
しかし、踏み出したら前へと進む筈なのに目の前にあったのは地面。地面に向けてアベンジは倒れてしまった。
どこに力を入れても身体を持ち上げるまでには至らない。
「う、嘘だッ…!!」
「当然だな。貴様の身体は疾うに限界を迎えていた。それが貴様のどこからか湧き出てくる無駄な力がその身体を動かした。つまり、どういうことか。俺の勝ちだという事だ」
「うぅ……」
「…… なに…?」
「ぐぅぅぅ…!!!」
それでもアベンジは立ち上がった。
そこにいた誰もが言葉を失い唖然としている。どこにそんな力が隠されているのか。どうすればそうやって自分に鞭打つことができるのだろうか。
彼は諦めていない。だからこそ陽奈、楓、モグロウ、稲森を信じる者たちの声が更に大きく響き渡る。
「稲森ッ!!!」
「稲森さんッ!!!」
「イナゴォッ!!!」
「お兄ちゃん!!!」
「稲森くんッ!!!」
5人の声援とアベンジの諦めない姿を見て、皆んなの想いが諦めかけていた周りの人々も突き動かした。
人間たちが皆揃って稲森を応援し始める。それだけではない。怪人側でも少数だが、人間達に続いて稲森を応援し始めたのだ。
「みんな……」
すると、アベンジの持っていたアビリティズフィードから光が漏れ出し始めた。
「これは… 研究所で見つけたアビリティズフィード…」
更にその光は次第に輝きを増していき、色が何もないグレーの状態から金色に色付いていく。
不思議な事に身体の傷が癒やされていくのに気づいた。なんて暖かいのだろうと思いつつ、アベンジは立ち上がりそれを構える。
「馬鹿な…… 何なんだこの光は…!! 何だそのアビリティズフィードはッ!!?」
「… 班目さんは今度、負の感情を力に変えようとしていた。だけど、それも失敗に終わったらしいです。今、このアビリティズフィードは人間達の諦めない心と善の心で満たされました!!」
「何を言っている…!!」
「これは皆んなが完成させた誰にも負けない力… 戦いを終わらせるための力です!!」
「それを使って戦況が変わるとでも? ならばやって見せろ!! 俺に食らわせろ!! 貴様がどれほどの力を持とうが関係ない!! 俺こそが王だッ!!!」
「なら、僕は──── みんなの"希望"となりますッ!!!」
アベンジはドライバーからトランス・リジェクトフィードを外し、新たにそれと同等の大きさを持つ「エスポワールジャンプフィード」を差し込むとそれから《Welcome!!エスポワール!!》という音が流れ出す。
今までの待機音とは別にもう一つ被さるように待機音が流れ始める。それはまるで未来を照らす光の様な明るい音をしていた。
そしてリジェクト同様にエスポワールジャンプフィードの上部を叩くと《tasty!!》という音と共に、白と金色の混ざったイナゴが何匹も現れ、アベンジの身体にまとわりついていく。
それはいつもとは違って噛み付くのではなく、ただ静かに止まって白いアーマーを形成していった。
白く金色に輝くアベンジ。仮面ライダーアベンジ エスポワールジャンプウェポンが誕生した。
《Jump over the wall of fate!!》
《I am an avenge, a person who keeps hope!!》
《START!! エスポワールアベンジ!!》
「皆んなに代わって── 逆襲だッ!!!」
「白色になった程度で───」
キングはすぐさまアベンジの懐へと入り込む。
「何ができるッ!!!」
アベンジを殴ったつもりのキングであったが、気がつくと壁にめり込んでいた。
その一瞬で何が起こったのか理解できず、頭が混乱した。
「な、何をした…?」
「あなたに殴られる前に攻撃したんです」
「がはっ… ば、馬鹿なッ……!!!」
誰もがその瞬間を目の当たりにし、更に声援は大きくなり、スタジアム全体を包み込む。
「認めん… こんな簡単に終わるなどッ!!!」
キングの装甲は150t以下を必ず無効化する仕様であったはずだ。
アベンジの何の変哲もない前蹴りを食らっただけにも関わらず、あの頑固な装甲を最も簡単に突き抜けダメージを与えた。
「はぁっ!!」
今度もただの回し蹴り。これくらいならば腕一本で凌いで見せると、前のキングであったのならそう考えるだろう。
しかし、この場合に至っては話しは別だ。
キングは咄嗟に両腕を使ってアベンジの回し蹴りを凌ごうと試みたが、それも無駄なのだと彼の攻撃を受けてよく理解した。
「なん… だとッ…!!?」
そしてキングはただの蹴りによってガードを崩され、その胸でまともに受けてしまった。
メリメリと音を立てながら、キングの身体は宙へと浮いて観客席まで吹き飛んでいく。受け身を取ろうとしてはいるものの、身体がまるでいう事を聞こうとはしない。
観客席の怪人達は急いで退き、キングは落下し背中を着いた。
「ファング…… いえ、ファングさん。これでもう終わりにしましょう」
「認めん…!! 俺は、認めない…!!」
キングの装甲を見事に破って見せたエスポワールの強さの真髄は脚力にある。
今までアビリティズフィードの能力を発動する事により、それに対応した場所の威力や性能の上昇が見られるが、エスポワールに至っては発動すれば通常時より3倍の出力が発現可能となる。
ジャンプウェポンは名の通り跳躍力の向上のみであったが、エスポワールはキック力の向上も能力の一つ。
つまり、今のアベンジは一旦能力を発動させて仕舞えば、150tを軽く超える一撃を放つ事が可能となるのだ。
「決めてやれッ!!! イナゴッ!!!」
「稲森ッ!!!」
「稲森さんッ!!!」
「お兄ちゃんッ!!!」
「稲森くんッ!!!」
皆んなの声援を受け止め、アベンジは強靭的な脚力で空へと飛び跳ね、ドライバーの上部を叩いて片足に膨大なエネルギーを溜め始める。
キングもドライバーを閉じて開き、両腕にエネルギーを溜め、今までとは比にならない程の巨大な爪を創り出した。
「これで最後だッッ!!!!!」
「最後は貴様だッ!!! イナゴッッッ!!!!!」
衝突する凄まじいエネルギーのぶつかり合いに、スタジアム全体に衝撃が響き渡る。
だが、流石キングと言えよう。更に強化されたアベンジ相手に、腕からバキッと嫌な音を立ててはいるものの耐えて見せている。
「僕は負けないッ…!! 人間も怪人も皆んなが笑顔になれる時代を創るんだッ!!!!!」
「…… ッォォォオォォォォォォッッッ!!!!!」
客席からアベンジへのエールが、皆の想いがスタジアム全体に溢れた。
すると、その想いを受け取るかのように、アベンジの身体が更に光り輝き、脚部のエネルギーが大きく肥大し、キングの巨大な爪を破壊した。
「なッ…!!!」
「はぁぁぁ…… はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
《GOODBYE!! エスポワールアベンジタイム!!》
そしてキングはアベンジの必殺の蹴りの一撃をまともに喰らい、向こうの壁にめり込んで爆発し、変身が解除されて地面へと倒れた。
「勝った…… 勝ったぞ!! やりやがったぜあの野郎ッ!!!」
「ホントよくやってくれたわ… ありがとう、稲森」
「稲森さぁぁぁん!! やりましたねぇぇぇぇ!!」
「流石お兄ちゃん!!」
「君ならきっとやれると信じていたよ」
モグロウ、陽奈、楓、あの子や店長、それだけではなくスタジアム全体から稲森への拍手喝采。
ついにようやく終わるんだと、ようやく全てが終わったんだと思った。
「皆んな…… ありがとうございます!!!」
アベンジは皆に頭を下げると、更にスタジアム全体の声が大きく響き渡った。
「……? おい!!! イナゴ、後ろだっ!!!」
モグロウに言われたアベンジは後ろを振り向くと、腕を挙げてファングがゆっくりとこちらに向かって来ている。
その姿に戦闘態勢に入るのが普通であるが、アベンジは敢えて構えずにファングに向かう。
「…… 貴様、本当の馬鹿らしいな… 俺は貴様の不意をついて殺すかもしれんというのに…」
「もう終わった… それをあなたはわかってる筈です。だから僕を殺す気はないと踏みました」
「信じ過ぎだ…… だが、それもまたいいだろう。貴様の強さというのがその信じる… 優しさが力…… 俺には到底真似できん」
「ファングさんもあった筈です。だって昔のファングさんはもっと強かった」
「なに…?」
「首領に対する強い忠誠心。信じる心がファングさんの中にはありました。でも、今は復讐に囚われ、力に溺れてしまい、あなたは人が変わってしまった」
「…… ふん。知ったような口を…… だが、悪い気分ではない。今は不思議と落ち着いている。こんな気分は久方ぶりだ…… イナゴ、貴様がこの先どうしようと敗北した俺たちは何も言わん。もし、人間が再び俺たちを蔑むというのであればその時は… わかっているな」
「はい。でも、1人じゃはそんな大掛かりなことはできません… 僕たちで必ず皆んなが笑える世界にします」
「… 信じよう」
2人は強く握手を交わすとスタジアム全体に拍手が溢れる。
互いに認め合い、人間と怪人の長きに渡る戦争はこれにて閉幕した───。
── しかし、我々はまだ知らない。
これは一つの終わりで、次の始まりに過ぎないのだから───。
いつもよりちょっと多くなりましたが、これにて「戦争編」終了です!!
はい、おわかりの通り最終章入ります。やですけどね!
次回、「最後の思惑編」第38話「終了のシグナル」
最後まで頑張りナス!! 次回もよろしくお願いします!!
最終回まで残り── 6話