仮面ライダーアベンジ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

前回、それぞれの戦いが始まり、モグロウはストログタフジェスターと死闘を繰り広げていた。集合体と言えど凄まじい強さを誇るジェスターに大ダメージを与えられ、装甲が割れ出血し、絶体絶命の危機に落ちていた。が、モグロウの決死の覚悟によりストログタフジェスターを見事に撃破。しかし、モグロウはその結果、変身が解け力尽きてしまう。そして一方の班目は準備を開始していた…

それではどうぞご覧ください。


第43話「未来へアベンジャー」

 生物である以上、生きていく為には何かを犠牲にし、また何かを得ていかねばならない。

 だから人間が争うことは当然。なのに何故、人間より優れているというだけで怪人は人類の脅威となったのか。怪人はただ普通に暮らしたかっただけなのに。

 その考えをする怪人も一部というだけで、怪人もまた人類は弱者と見做し、世界を怪人の手によって支配しようとしていた。

 

 

「─── ん? なんだ?」

 

 

 ここにいる1人の人類を味方する怪人はただ一心に世界の平和を見据えて戦ってきた。

 

 

「おや、どうやら起動したようですね───」

 

 

 もう1人はそんな世界を元の争い合っていた形へ戻そうとする者。

 

 

「これはどこから…?」

 

「私が言うよりも見てもらった方が早いかと」

 

 

 すると、アベンジ達がいる地面が揺れ始め段々と盛り上がっていく。

 アベンジは咄嗟にその地面から離れると、そこから見上げるほど巨大な塔が出現し、キングはその光景に手をパチパチと叩く。

 

 

「素晴らしい…!! あぁ、いつ見ても美しいフォルムですねぇ!!」

 

「これは一体……!!?」

 

「稲森さん」

 

「ん────ッ!?」

 

 

 名前を呼ばれたアベンジはそちらの方向を見るが、その場にキングはおらず、気づいた時には背中を蹴られて吹き飛んでいた。

 

 

「うっ…!!」

 

「今は戦闘中です。よそ見をしてはいけません」

 

「くぅ…」

 

 

 別にズルいという訳ではないが、あんな物を見せられて振り向かない奴がいるか。

 それよりも本当にあの塔で一体何をするつもりなのだろう。見た目は何の変哲もない三角錐でこれといった特徴もない。

 

 

「…… ふむ。もう少し時間がかかりそうです」

 

「時間だって?」

 

「仕方がありませんので稲森さんと時間いっぱいまで戦わなければならないようですね。よろしいでしょうか?」

 

「… 何が目的だ」

 

「さぁ、なんでしょうね。見ればわかると言いましたが、これじゃあ見てもわかりませんね。この私にしか」

 

「お前が何をしようと僕が必ずそれを止める。絶対にッ!!」

 

「果たしてそう簡単に行くんでしょうか…」

 

「なんだと!!」

 

「ほら、こうしている間にも時間は迫っていきますよ。私は一向に構いませんけど」

 

「それならこの塔ごとお前を倒すだけだ。それでいいだろう?」

 

「んー… 掻い摘んでその通りです」

 

「なら、やってやるッ!!!」

 

 

 アベンジは深く構え、両脚にエネルギーを集中させキングに向かって跳ぶ────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 一方、エース達は完全となったキメイラ相手に苦戦を強いられ、クインによるエネルギー攻撃が全て吸収され倍にして返されている。

 

 

「ご、ごめん陽奈…… 私の力じゃ役に立たないよ…」

 

「そんなことは……」

 

 

 エースはクインに「そんな事はない」と言いたかったが、これに関しては本当に全ての技がエネルギー主体のクインにとってはかなりの天敵である。

 このキメイラを生み出した班目の策略の一つなのであろう。これが味方であったのならどれほど有能な男だったか。

 

 

「とにかく!! 楓は諦めずにそのまま続けて!!」

 

「でも…!!」

 

「いいからやる!!」

 

「は、はい!!」

 

 

 それからクインはキメイラに杖を向けて小さめの火球を連続で放つ。

 当然、エネルギーを吸収するキメイラの耐性の前に全て無力となって放出される。

 

 

「うっ…!!」

 

 

 キメイラの全身から放出された火は、近づいていたエースを包み込んで全身を燃やした。

 

 

「陽奈ッ!!」

 

「…… ッそこ気にしない!!」

 

 

 こんな炎如きに止められてたまるかと、エースは両手を翳してキメイラを地面に押し潰した。

 とてつもない重力負荷がキメイラに掛かり、指一本も動かせない状態となる。

 

 

「このままぁ…!!」

 

 

 マスタースペイドの前に流石に強化されたキメイラでも無力と化すのか。いや、最初はそう思うだろうなと班目ならば先を読んでいるはずだ。

 クインの対策をしているのであれば、もちろんエースの対策もしてある事は必然的と言えよう。

 

 

「な、なに…!?」

 

「陽奈これって…!!」

 

 

 なんとキメイラは凄まじい負荷を掛けられているのにも関わらず、ゆっくりとその場で立ち上がって見せた。

 当然エースは両手を翳してキメイラだけに集中し、重力をかけているはずだったのだが、そんなものは最初からされていなかったと言わんばかしにキメイラは立ったのだ。

 

 

「班目ね! あいつ本当に余計なことばっかりして!!」

 

「来るよッ!!」

 

 

 キメイラは深く構えたかと思うと、スピーダの脚力を活かして重力の範囲外から抜けエースとクインを蹴り飛ばす。

 

 

「くっ…!!」

 

「きゃぁっ!!」

 

 

 今度はウェイトの能力で両腕を丸太のように太くしてエース達をアッパーで打ち上げ、バートンの翼を背中に生やして空へと飛んだ。

 エースは空中から地面の瓦礫やらを空へと持ち上げ、自分とクインをその瓦礫で包むようにして固定する。

 次の攻撃がどのようなものかはわからないが、多少この即席で作った外壁で抑えられるだろうと思っていた。

 

 

「…… え?」

 

 

 だが、やはり4人の幹部を合成して作られた真のキメイラ。

 スイムの能力を使用して液状化し、簡単に外壁の隙間を通り抜けエース達の目の前に現れ、翼から無数の爆発する羽根を飛ばす。

 

 

「嘘でしょ…!!」

 

 

 至近距離から放たれた羽根を避ける事はできず、大量の羽根に飲まれて爆発し、エース達は空中からグラリと地面に向けて落ちた。

 地面へと落ちた2人は呻きながらもなんとか立ち上がり、キメイラの次の攻撃に備えようと構えたが、再び上空から爆発する羽根が雨のように降り注いできた。

 

 

「止まるって事知らないの!!?」

 

「う、うわわっ!!」

 

 

 エースは咄嗟に両手を空に構え、その一点にだけ集中して羽根を空中で止める事に成功した。

 しかし、留めたと言うだけであって、その後何本もの羽根が降り注いでくる為にキメイラに向けて放つ事ができないのだ。

 

 

「くぅぅぅぅ…!!!」

 

「陽奈……」

 

「大丈夫よ楓… 私がこれ全部返して隙作るから…!!」

 

「………」

 

 

 クインはその言葉を聞いてそれは違うと思った。

 この場合、自分が盾となってキメイラの隙を作れば、爆発する羽根を全てキメイラに向けて放つ事ができるはずだと。

 

 

「…… えっ、ちょっと楓どこに行くのよ!!」

 

 

 いつまでも彼女の背中を追いかけていくだけじゃダメなんだと。

 自分はなんだ?陽奈の後ろを追いかけているだけの奴なのか?いや、そんなわけが無い。今はそんなんじゃ無い。

 今の自分はそうだ────。

 

 

「私が隙を作るから!! 陽奈はそれ全部あいつにぶつけて!!」

 

「無茶よ楓ッ!!」

 

「無茶も承知でやる!! 仮面ライダーならそうするでしょ!!?」

 

「楓……」

 

「だって私──── 仮面ライダーだから!!!」

 

 

 クインはキメイラの攻撃を受けながらも突進し、杖を振り上げて思いっきりキメイラの顔面に振り下ろした。

 だが、その攻撃にもピクリとも動かないキメイラであったが、視界が一瞬遮られたのが失敗だった。

 その一瞬の隙をエースは見逃さず、留めていた羽根を全てキメイラに向けて放つ。

 

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

 

 全ての羽根が被弾し、大爆発を引き起こすと、キメイラは煙に紛れて地面へと落下して激突する。

 

 

「はぁ…… はぁ……」

 

 

 その姿を見ると、エースは息を荒くしながら腕を下ろす。

 ようやく終わったとボロボロになったクインがエースの元まで着くと一気に力が抜けて膝をつく。

 エースは急いでクインの元へと駆けつけるが、回復効果もあってかボロボロではあるが、肉体にはそれほどのダメージは入っていないようだった。

 

 

「終わったのかな…?」

 

「いや、まだわからない…」

 

 

 エース達が煙の中をジッと見ていると、その煙の中からユラリと動く影が一つ見えた。

 

 

「… いい加減にしてくれないかしら」

 

「まだ元気だって言うの!?」

 

 

 なんとキメイラはあの攻撃をまともに受けてまだ動いていた。

 所々損傷はあるようだが、それでも余裕で動けるほどの体力は十分にあるようだ。

 

 

「楓」

 

「なに?」

 

「今から全部、自分の持ってるものありったけ使うわよ」

 

「それって?」

 

「全力でぶっ飛ばすって事」

 

「でも、私の攻撃は通用しないし…」

 

「今の攻撃でよーくわかったわ。いい楓? 今からあなたは全力で技を当てて。私は全力であいつを止めるから」

 

「陽奈、どういう事?」

 

「いいからやるわよ!!」

 

「う、うん!!」

 

 

 訳のわからないクインであったが、エースに言われた通り杖から様々な属性を持つエネルギーをキメイラに向かって放ち始める。

 キメイラもそれらを避けるつもりはないのか立ち止まり、全ての攻撃をその身に受け続けた。

 エースはそんなキメイラを重力でその場に固定し、いつ動こうとしても指一本も動かせないようにかなりの負荷をかけ続ける。

 

 

「ひ、陽奈… アレ段々と色変わってない?」

 

「いいから!!」

 

「でも、あのままだととんでもないの来るよ…!!」

 

「わかってるわ… だからそれ以上のものを加えてやりなさい!!」

 

「それ以上の……」

 

 

 その言葉を聞いたクインは更にエネルギー攻撃を続ける。

 段々と赤くなるキメイラに2人はやはり焦ってはいるが、何故か内心はニヤリと笑っていた。

 

 

「もう少し…」

 

 

 更に全身が赤くなってきたキメイラはその場から動こうと試みるも、先程のとは比べ物にならないほどのエースの重力操作により動けないでいた。

 クインはキメイラが全身が赤くなっても攻撃を止めず、自分の限界までエネルギー弾を浴びせ続けた。

 

 

「─── そろそろね!! 楓!! 凄い1発食らわせちゃって!!」

 

「うん!!」

 

 

 エースの合図と共にクインは全エネルギーを杖の先に集め、それをレーザーのようにキメイラに向けて発射する。

 そのエネルギーを全て受け止めるキメイラであったが、全身からバキバキという音が聞こえ始めたかと思うと、様々な場所から今まで貯めたエネルギーがキメイラの意思とは関係なく漏れ出した。

 

 

「許容オーバー… 当然よね。あなたがどれだけエネルギーを吸収できたとしても、それを留めておく場所なんてその身体一つだけ。大量のエネルギーを注ぎ込んだら、あなたの身体は限界を超えて……」

 

「爆発するッ!!!」

 

 

 そしてキメイラの身体は吸収できるエネルギーの許容範囲を超え、ついに爆発した。

 完全に動けなくなったキメイラを見て、エースとクインは互いに目を見て頷き合い、それぞれドライバーの側面と閉じて開き、必殺技の準備を完了させる。

 そして2人は同時に空へと飛び跳ね、互いの右足と左足を合わせてキメイラへと飛び蹴りを浴びせる。

 

《Thank you!! マスタースペイドエースライド!!》

《RAISE!! クインドロップ!!》

「「はぁぁぁぁっっ─── はぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」」

 

 

 キメイラに浴びせられた2つのエネルギーはキメイラの全身を包み込み、やがてそれは大爆発を引き起こす。

 そしてキメイラは強大なエネルギーの中、跡形もなく消し去ったのだ。

 

 

「……… さよなら。あなた達…」

 

「…… やったぁぁぁあ!!…っていうのはダメだね」

 

「いえ、やったでいいのよ。でも、キメイラにはちゃんと… ね?」

 

「うん… 本人達はこんな事望んでなかったのに…… またこんな事が起きないように班目を止めなくちゃ!!」

 

「えぇ、そのつもりよ。ところで稲森とモグロウはどうしたのかしら」

 

「そうだねあの2人はどうしたんだろ」

 

「とりあえずあっちの方に向かってみましょう」

 

「うん!!─────」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「か、硬いッ…!!?」

 

 

 アベンジの蹴りを浴びせた筈の塔は全くと言っていいほど微動だにしなかった。

 先ほどから何発も蹴りを浴びせてはいるのだが、そのどれもが全くの無力と化しているのだ。

 

 

「おやおや、さっき私とこの塔を同時に破壊するとか言っていたような… 言っていなかったような……」

 

「くっ… 黙れ!!」

 

「稲森さんも口が荒くなって来ましたねぇ…… 私にだけ冷たくはありませんか?」

 

「どの口が言うんだ!! お前のせいで一体どれだけの命が亡くなったと思ってるんだ!!」

 

「逆に言えば私のおかげでどれだけの命が救われたんでしょうね?」

 

「うっ… それは……」

 

「元々なにもできなかったあなた方にドライバーを造り譲ったのがこの私です。その間、そのドライバーで何人救いましたか? ファングさんとの決戦までにあなたは何人を笑顔にできました?」

 

「… その事については感謝してます。僕は仮面ライダーになれたから色んな人を救えて来た。それはよくわかってます… だけど!! 人を物のように扱うのは違う!! このドライバーを造ったからと言ってその罪が消える事はない!! そんなの逃げてるだけだ!!」

 

「いや全くその通りなんです。いやはや痛いところをついてくる」

 

「僕は止めるぞ…… 班目ッ!!」

 

「─── と、まぁ時間切れです」

 

「… え?」

 

「では、起動させていただきます」

 

 

 すると、塔の先から光が漏れ出したかと思うと、それは天に向かって射出される。

 やがてそれの周りを雲が螺旋状に回り出し、ゴゴゴという重い音が辺りに響き渡った。

 

 

「こ、これは……」

 

「カウントダウンです」

 

「カウントダウン?」

 

「この状態が続けばやがて地球を守る役割がある膜が剥がれます。その膜が剥がれれば地球は隕石を吸い寄せ…… 後はわかりますよね?」

 

「…ッ!!? お前の目的は戦争じゃないのか!!?」

 

「戦争ですよ。ですが、最も生物は自らの身が危険に晒されるとなれば生き残る為になんでもやります。そうなんでもです… つまりこの世界はどちらにしても滅ぶのです。私の手によるか彼らの手によるかで…」

 

「班目ぇ…!!!」

 

 

 キングは…班目はニヤリと微笑む。それはとても穏やかな顔であった。

 

 

「さぁ、稲森さん始めましょうか。本当に最後の戦いをッ…!!!」




班目による最後の秘策とは地球を破壊する事だった。
世界を守る為、仮面ライダーアベンジイナゴ事稲森の最後の戦いが始まる!!

次回、最終話「平和のピースサイン」

最後までよろしくお願いします!!

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