あらすじ
世界が平和になり、人間と怪人はお互いを理解し尊重し合い、新たな時代の幕を開けようとしていた。仮面ライダーエース事、羽畑 陽奈はいつも通り楓とのショッピングを楽しんでいると、突然自身の父であり初代エース月火が姿を現す。驚愕する陽奈の前に謎の怪人が現れ、楓はその怪人に身体を乗っ取られてしまった。ほぼ同時に現れた月火と怪人の関係とは…
それでは前編どうぞご覧ください。
仮面ライダーエース
栄須市は今日も平和であり、周りを見ても人間と怪人が言い争ったり暗かったりと、そんな昔の光景が嘘のように笑顔で溢れている。
そして今日は楓とのデートと、気分は上々の陽奈が向かうのはいつも通りのショッピングモール。
ここ以外選択肢はないのかと周りからは言われるだろう。否、稲森とモグロウに揃って言われたが、2人にとっては1番ここがお気に入りの場所であり、中には食材や服だけに留まらず、映画館やゲームセンター等時間を潰せるものがたくさんある。
しかし、2人の目当てはほとんどが服や食べ物で娯楽関係はあまり行ったことがないという、まさに美と食に関してはさすがと言わざるを得ないだろうか。
「さて、楓はまた遅れて…… あれ?」
「…… あ、陽奈ぁ〜」
楓は無邪気に手を振るっているが、なんと珍しい事だろう。
いつまであるなら陽奈が先に来ている事が当たり前で、その後、楓が数分遅れてやってくるという鉄板なのだが、この日ばかりは珍しく先に来ていたのだ。
「早いわね楓。そんなに今日楽しみだった?」
「うんうん! だって今回新作のデザートが出るってなったら居ても立っても居られなくって〜…」
「ふーん… なるほどね」
だから早かったのか。そういえば前にも食べ物に関しての新作やらは絶対にチェックを入れて先に来ている場合が何回かあったと陽奈は思い出す。
そして楓は陽奈を引っ張り早く早くと急かした。
「もうわかったから! 少し待つだけでしょ?」
「その少しがダメ! もっと早く行かなきゃ! 今日は陽奈が珍しく早く来たんだから急いで!!」
「わかったわよ…… ん? ちょっと! いつもは私の方が早いでしょ!」
「細かいことは食べてから! 行こ行こっ!」
この子は本当にどこか抜けているというか全部抜けている。だれか蓋を閉めて欲しいと思う。
陽奈は楓に引っ張られながらお目当てであるカフェに着いた。
やはり店員に優待席と言われたが流石に断った。あくまで仮面ライダーはオフであり、今は普通の一般女性である。少し待ってようやく席へと案内され着席する。
そしてメニュー表ともう1つ、1枚だけの期間限定やおすすめなどが書いてあるメニュー表を取り出し楓はお目当ての物に指を刺す。
「陽奈これこれ! コーヒーゼリームース! 絶対美味しいよねぇ〜」
「へぇ〜コーヒーゼリーをムースに… 面白いじゃない」
「すみませーん! 注文いいですかー!」
楓が店員を呼んで注文すると、彼女は足を揺らしてニコニコしながら待っている。まるで子供である。
「そんな楽しみだった?」
「もちろん! 絶対美味しいもん!」
「そ、私も楽しみになってきたわ」
暫くして注文したコーヒーゼリームースが到着した。名前の通り見た目はそのままコーヒーゼリームースである。
陽奈と楓は「いただきます」と会釈をし、スプーンで掬って食べ始める。
これは思っていた以上の美味しい。コーヒーのほろ苦い味はするが、ほんのり甘さもあって落ち着く香りだ。
「んー美味しいわね」
「あぁ… 来てよかったと切実に思う…!!」
「ホント来てよかった。これも楓のお陰かしら」
「そう! 私のお陰!」
「はいはい… ふふっ───」
そして陽奈はふと店の窓を見た。
すると、一瞬であったが黒い人影が見え顔を顰める。一瞬だったのでわからないが、とても懐かしくそれでいてどこかで見た事がある姿だった。
「陽奈…? どうかした?」
「…… えっ、あ、いや… なんでもないわよ」
「ふーん…… あ、そうだ。この後は服見ようよ! ずっと遊び行けないし買い物行けないしでおしゃれに困っちゃって」
「いいわよ。付き合うわ」
「ふふーん」
あれは一体なんだったのだろうか。とりあえずこちらには何も害はないのだからそのままでもいいだろう。
それから2人は食べ終わってから服屋を点々と巡る。久しぶりの2人きりでコーデを楽しみながら店を回る。
前に稲森とモグロウを呼んだが、やはり2人はそういう事には乏しかった為、ほぼ2人のコーデに大忙しで自分の物を見る機会が少なかった。
「ま、これでいいかしら」
「似合うと思うよそれ」
「でしょ? じゃあ楓はこれを───」
楓が似合いそうな服を取り出して身体に合わせようとした陽奈は、また不意に横を見ると謎の黒い影がユラリと通った。
流石に2回目ともなれば怪しく思う。久々のショッピングをその何かに邪魔されてはたまらない。
「…… 楓。ちょっといい?」
「ん? どこ行くの陽奈?」
「少しここで待ってて!」
「あ、うん……?」
陽奈はその何かが行った方向に走っていくと屋上の駐車場へと出た。
駐車場には平日という事もあってほとんど車はなく、そこに1人目立つ黒い影が立っていた。
「あなたね。さっきからチラチラと私の視界に写ってくるのは…… 何が目的?」
「………」
「黙秘しててもいい事ないわよ。さっさと答えなさい。私はこれでも忙しい身なの」
「………」
「あっそう、いいわ。なら、その身体に直接聞いてやるだけなんだから────」
「── 久しぶりだな陽奈」
「えっ…?」
その人は陽奈がよく知る人物で誰よりも尊敬する人物だった。
見た目こそ醜い姿で誰なのかも判別できないが、陽奈にはその声から笑った顔からその人物が父であると気づく。
だが、そんな訳はないとすぐに身構えて否定する。
「嘘…… いえ、あなたは首領ね。まさか生きているとは思わなかったわ。何故私についてきたのかは知らないけど、また悪さするようなら私が許さないわよ」
「…… 首領だと思うか? 陽奈?」
「当然でしょ。声色は確かに父さんだけど、首領は父さんの身体を使って復活した。それなら声だって顔だって何もかも父さんのままに決まってる。私を騙してどうしたいの? 復讐?」
「はぁ…… わかった。こうしよう」
「え?」
「お前が小さい頃お漏らしをした話しをしようか」
「は…… はぁッ!!?」
「そうだなぁー… 1番面白かったのは父さんの布団で──」
「あ、あんた父さんの記憶を読んでわ、わわわ私の動揺した所を、おそ、襲うつもりでしょう!! そうはいかないわよこの変態っ!!!」
「… ふっ、ふふふっ…… ははははははっ!!」
「な、何がおかしいのよ!!」
「ふぅ…… 変わらないな陽奈」
「…… そんな… 嘘よ……」
父の笑顔を見た陽奈は否定していた筈なのに、何故か目から涙がポロポロと溢れてきた。止まらない涙を服の袖で拭っていると、月火はそっと近づき陽奈を優しく抱きしめる。
その光景は化け物と人間であるが、彼らをよく知る人物であるなら、ただの父と娘の幸せそうな光景が見えて来る筈だ。
「父さん…… 会いたかった…!! 本当に… 会いたかった…!!」
「お前には辛い思いをさせたな… 悪かった。陽奈がどれほど辛かったのか、この世界が壊れていく様を見て身に染みるほどわかったよ。俺がもう少ししっかりしていればこんな事にはならなかった筈なのに……」
「いいのよ父さん。こうして平和になったんだから」
「稲森くんやモグロウくん。それに楓ちゃんも、皆んなが陽奈に寄り添ってくれたお陰でお前はお前の道を見つけることができた。本当に皆んなには感謝してしきれないなぁ… ははっ」
「うん…… あ、そうだ。父さんはなんで生きてるの? それになんで私の所に来て… 挨拶だけじゃないんでしょ?」
「察しがいいな。さすが俺の娘だ」
すると、月火は陽奈に背を向け暫く口を閉じた。
父の寂しそうな背中を見た陽奈はなんとなくそれがただ事ではないと感じ取る。父がこれから言う言葉は絶対に聞きたくはなかった事だ。
そして月火は陽奈を見て口を開く。
「俺を消してくれ、陽奈───」
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「陽奈、遅いなぁ〜…」
一方の楓は陽奈が帰って来るのを30分ほど待っているが、待たされた事があまりない彼女は既にソワソワとし始めていた。
早く帰ってきて欲しいと願っていたが、流石にもう限界が来たようだ。
「… よし! じゃあ陽奈を探しに行こう!」
我慢できなくなった楓は陽奈が向かったと思われる方向に小走りで向かう。
─── それから楓は色んな店を回って探したが、陽奈を見つけることができずに途方に暮れていた。
「はぁ…… 陽奈どこぉ…」
ため息を吐きながらふとショッピングモールの屋上に行く階段を登る。ここだけは見てはいないが、まさかいないだろうという思いで、とりあえず屋上へと登ってみる。
屋上に近づいて来るにつれて、何かを叩く音が聞こえ始め、駆け足で登ってみるとそこには陽奈がエースに変身し、首領の成れの果てとなった化け物が戦っていたのだ。
「えぇ!? 陽奈ッ!?… と、首領!?」
2人はどうやら楓には気づいていない。状況は飲み込めないが、とりあえず加勢に入った方が良さそうだ。
楓はポーカドライバーを腰に巻きつけようとすると、何者かが背後から彼女の手を捻ってそれを止める。
「いたたっ!! あなた誰っ…!!?」
その何かは楓が聞いても何も答えない。
そして口を塞がれ声を出せず、完全に身動きも取れなくなり、楓はその何かによって拘束されてしまった。
「むぐぅー…!!」
「…………」
それはニヤッと笑い、陽奈たちの戦いをジッと見物し始めた───。
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陽奈は月火が言った言葉が最初何の事かさっぱりわからなかった。
自分を消してくれ?そう言ったのだろうか?
「ねぇ、父さん何言ってるの…? 冗談でしょ?」
「冗談に聞こえるか? 俺の目を見ろ。俺は本気だ」
「… 嫌よ」
「なに?」
「嫌に決まってるでしょ!!? あの時は首領だったからまだ… 父さんじゃなかったからなんとか出来たけど、今私の前にいるのは父さんなのよ!!? 父さん…… なんだよ?」
「そうだ。お前にやって欲しいんだ」
「なんで…… そんな……」
「俺は元々死んだ身だ。死んだ人間は生き返らない。こうして陽奈の成長を一目見れて、そして会話もできた。俺に思い残す事はない。醜くなった俺を…… 頼む陽奈。お前にしか頼めない事なんだ」
「……」
「これは俺であって俺じゃない。俺を… 解放してくれ」
陽奈は暫く黙っていたが、何かを決意したのか口を開く。
「─── なら、本気で私と戦って」
「戦うだって?」
「卒業試験みたいな感じよ。私がこれから本当に仮面ライダーエースとしてやっていけるか見て」
「それは構わないが……」
「…… 私、父さんと戦うのは嫌よ。だけどなんの抵抗もないまま倒すことなんてできない。だからせめて、父さんと本気で戦って終わらせたいの。まぁその… 私の過去との別れ的な…」
「陽奈…… 全く、さすが俺の娘だな。よし、わかった。お前がどれほど強くなったか。思いっきりぶつけてこい!!」
「えぇ!! 父さん!!」
それから陽奈は腰にエースドライバーを巻き付け、ダッシュフィードを差し込んで構える。
「変身ッ!!!」
《Come on!!》
《Let's try エース!!》
「来いッ!! 陽奈ッ!!」
そして2人は同時に走り出し、凄まじい勢いで拳を打ちつけ合う。
初代エースと現代エースの戦いがここにて始まった。
「はぁぁぁっ!!」
「ふんっ!!」
エースは巧みに月火の攻撃を躱しながらエースガモスボウを取り出して、矢を放って距離を取り、背中から羽を展開して大空へと舞う。
空に行くと月火が追ってこない事に気づく。どうやら見た目こそエースに近いが飛ぶ機能は備わってはいないらしい。
これは好機とエースは上空から矢を放つ。
「やれやれ…
すると、月火は矢を紙一重で躱して脚部に力を込めていく。
次の瞬間、月火の脚が赤く染まったかと思うと、エースの目の前にまで跳躍して見せた。
「う、嘘でしょ…!?」
「俺の方がやはり身体能力は上のようだな!!」
「しまっ…!!」
そしてエースに向かって月火の強力なキックが浴びせられる。
あまりにも突然の事にエースは防御もできないまま食らってしまい、そのまま地面へと落下する。
「…… いったぁ… さすが父さんね」
「まだまだ現役で行けるな」
「ふふっ…… でも、負けないわよ!!」
エースと月火の激しい攻防戦の最中、急にパチパチと手を叩く音が聞こえ、2人は振り返る。
そういえばここが駐車場だという事を忘れていた。一般人が来てしまったのかと思ったがどうやら違うらしい。
「あなたは… って楓ッ!!?」
そこには楓が何者かに拘束され、拘束を解こうと抵抗している姿が見えた。
「あなたは一体誰よ!! 楓に何をするつもり!?」
「…… くくっ、いやはや面白い事になってますねぇ! 初代エースと現代エース。なんともスペシャルなマッチングではありませんか!」
「さっさと答えなさい!! じゃないと…」
「… と、どうなります? もしあなた方のどちらかでも動いたら、この子の首をちょんと刎ねて殺してしまっても構わないんですけども?」
「こいつ…!!」
「おっと申し遅れました。私の名は『ヴォルペ』。班目さんの実験体第1号でございます」
「班目の?」
「はい、班目さんの実験体でございます。第1号と言っても私しかいませんがね」
「その1号さんが何の用よ」
「班目さんは私に素晴らしいお力を授けてくれました。しかし… 彼は死んでしまった。彼の願いを叶える為、私は今一度戦争を引き起こそうと思うのです!!」
「は…?」
「その為には…… この方をいただきます」
すると、ヴォルペは拘束していた楓の口から身体を液体にようにしてぐにゅりと中に入っていく。
楓も中に入ってくる異物に苦しそうにもがいている。
「まずい…!! 陽奈ッ!!」
「わかってるわ!!」
これは思っている以上にまずい状況だと2人は判断し、ヴォルペに呑まれそうな楓の元へと走り出す。
だが、数十m離れた距離では間に合うはずもなく、楓の身体の中にヴォルペは自分を全て入れ終わった。
楓が自分の首を掴んで苦しそうに枯れた声で何かを言っているが、その声を聞き取る事はできず、次第に彼女は静かになってダランと腕を垂らす。
「楓…?」
「…ッ!! 離れろ陽奈ッ!!」
急に大人しくなった楓に、わかってはいるものの不意に近づこうとしてしまったエース。
何かを察しそれを止めようと月火が動き出した瞬間、楓の身体から触手のようなものが浮き出てきて2人を弾き飛ばした。
「こ、これは…!?」
すると、楓はポーカドライバーを取り出し腰に装着する。その時カードを取り出すわけだが、本来ハートの絵が描かれているのに対し、楓が取り出したのはハートが真っ二つに割れており、暗い紫色に変わっていたのだ。
「エースさん。あなたが班目さんにトドメを刺した…… 私は非常に不快に思っていますが、不快でもないんです」
「は…? どういうことよ」
「私自身が実験体にされた時、それは最早私は怪人としての誇りを捨てる事になります。それに班目さんのような方が何もなしに、私のような貧弱な怪人を弄りたがるはずがない」
「だったらどうして…」
「どんな理由であれ、彼は了承し私を強くしてくれた。もうヴォルペというジェスターは実験体1号という名になりました。不快点と言えばそこです。私が私でなくなった事…… ですが、そんな事もうどうだっていいんですよ。私はこうして強くなれた。それだけでいい…… では、始めましょうか」
そして楓に寄生したヴォルペはそのカードをポーカドライバーに差し込み、ドライバーの両側を持って構える。
「…… 変身ッ…!!」
掛け声と共にポーカドライバーを展開すると、クイン同様目の前にハートの絵柄が現れるが、ハートは真っ二つに割れてヴォルペを挟み込む。バキバキという音を立てながらアーマーが展開され、ヴォルペは新たな仮面ライダークインヘイトハートウェポンへと変身した。
「紫の… クイン…」
「くくくっ…… この姿、たまりませんねぇ」
美しさが際立つのクインとは違い、この紫色のクインは禍々しさはあるが、何処となく美がある。人を引き込んでしまいそうな美なのだ。
ファンタジー世界で悪の女王というのなら、まさにこのクインこそ当てはまる見た目をしている。
「それではまずは変身解除させましょう」
「変身解除…?」
その時、クインは杖を取り出し天へと掲げて雷雲を召喚する。
そして雷雲をとてつもない大きさまで成長させると、杖をクイッと傾けて凄まじい破壊力を持つ雷をエースと月火へと直撃させた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
ヴォルペの言った通り陽奈は変身解除まで追い込まれてしまった。
あまりの衝撃に膝をつくと、クインは追撃と杖の先に火球を溜め始める。
「それではエースさん…… 長い間お勤めご苦労様でした」
「くっ…!!」
火球が陽奈を簡単に包み込めるほど巨大になると、ヴォルペはニヤリと微笑み発射した。
陽奈は逃げることができない。どうにかして避けようにも身体に力が入らないし、この距離で避ける事などそもそも不可能だ。
頭の中で回避手段をその数秒間で考えいるものの、何を考えて間に合うはずがない。もうダメだと目を瞑る。
「──── え?」
そして火球が陽奈を包んで爆発し、ヴォルペはこれで燃え死んだと確信していた。
しかし、爆炎の中で立つ何かが見えた。先ほどあの女は立つことすらできなかったのにそんな事があるのか。これが人の意思の強さかと思っていたが、どうやらそれは陽奈ではないようだ。
「がはっ……!!!」
「父さん…… 父さんッ!!!」
父は自分を庇ったのだ。自分を守る為に父は火球をその身で受け止めた。
陽奈は父が倒れそうな所を何とか脚に力を入れて受け止める。
「そんな父さん…!!」
「陽奈… 無事か?」
あの火球を受けた月火の身体は焼け焦げ、見てわかる通りもう限界だろう。
ヴォルペはその姿を確認し、陽奈を殺せはしなかったが、それ以上に精神的なダメージを与えられたことに喜んだ。
「私はこれにて失礼しましょう。私を殺したければ栄須市の近くの森林へおいでください。そこで最終決戦という事で────」
そしてヴォルペは闇の中へと消えていった。
陽奈は月火を再び目線を移し、その姿に涙する。
「私なんか庇ったから…」
「お前の親友に人殺しなどさせてたまるか… それに俺の身体はもう限界だった」
「え…? それってどういうこと?」
「…… 元々俺の身体はボロボロだった。こんな化け物のような姿はただのツギハギだらけの人形に過ぎない…」
「つまり父さんが私の消して欲しいって頼んできたのは…」
「娘の手で死にたかった。いや、そもそも死んでいた人間、怪人かどうかもわからない化け物が生きててはいけない。命に対する冒涜だ」
「…… 違うわ」
「なに?」
「父さんは理由はどうあれ生きてた。それでいいじゃない… 生きてちゃダメなんて言わないでよ。私はまだずっと一緒にいたいのに…!!」
「陽奈…… ふっ、大きくなった。本当に… お前が俺の最後を見届けてくれるだけでも嬉しい」
「父さん……!!!」
「今は何故か苦しくないんだ。とても幸せな気持ちだ…… 陽奈。生まれてきてくれてありがとう。お前は俺の自慢の娘だ。だから… お前は今やれるべきことをやれ」
すると、月火は自分の身体に手をねじ込み、その身体から異物を取り出した。
それはマスタースペイドフィードと形は似ているが全く違うアビリティズフィードであった。
月火は陽奈にそれを託しニカッと笑う。
「愛してるぞ、陽奈」
「ねぇ… 父さん」
「なんだ?」
「私は仮面ライダーエース。父さんの娘だから」
「……… あぁ」
「愛してるわ… 父さん」
「あぁ、任せたぞ…… 陽奈───────」
そして月火の身体は砂のように崩れ、その場から跡形もなく消えてしまった。
陽奈は立ち上がり涙を拭うと目の色を変えた。それは憎しみの目ではなく、初代から受け取った二代目の意思を感じさせる決意を固めた目であった───。
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ここはかつて稲森と班目が死闘を繰り広げた場所である。所々にまだその時の傷跡が残ってはいるが、小さな木々が芽吹き始めているようだった。
その場にヴォルペは立っていた。
「……… 来ましたか」
ヴォルペは班目のようにニヤリと笑う。
何処となく奴に似ている。好都合だと陽奈は思う。
それから陽奈は真っ直ぐな瞳でヴォルペの前に佇む。
「おや? 自分の父親が死んだので泣き喚いているかと思いましたが… どうやら中々の精神力をお持ちだ!」
「黙りなさいこの狐…… あーあ、あんた見てたら虎の威を借る狐ってことわざを思い出したわ。その喋り方は班目のつもりかしら? やめときなさい。あいつは鬼才だったからいいけど、あんたがやるとただの馬鹿にしか見えないわよ」
「おやおや? 挑発ですか? 私がその程度で乗っかるとでも?」
「あらあら? もう反応しちゃったのかしら? 班目だったら『お褒めいただき光栄です』って簡単に流すわよ。真似するんだったらもう少しあいつの理解深めた方がいいと思うけど? まぁ無理よね。あんたみたい馬鹿じゃ───」
「… うるせーよ」
「え? なに? 聞こえなわよ〜」
「うるせぇって言ったんだよこの餓鬼ゃっ!!! てめぇみてぇな生意気な野郎は初めてだぜっ!!! てめぇが地面に頭を擦り付けて謝ったとしても殺すッ!!! 俺に泣いて詫びたとしても殺すッ!!! つまりてめぇをぶち殺すッ!!!」
「相手の優位に立ってる時だけ。語彙力皆無ね全く… ま、本性が出てやりやすくなったわ。楓を返してもらうから」
「やってみろこのど阿保が。この女は俺の一部。俺を倒せばこの女も死ぬ。親の次はお友達かお嬢ちゃんよぉ?」
「はいはい遠吠えはやめて。なんの勝算もなしに来るわけないじゃない」
「何だと?」
「
「何言ってんだお前?」
「……… 父さん。力を貸して…!!」
陽奈は腰にエースドライバーを装着すると、先ほど月火から託されたアビリティズフィード「ジョーカーフィード」を起動させる。
すると《切り札!! ジョーカー!!》という音声が流れ、それをアベンジドライバーに装着する。
《ジョーカー!! Open!!》
そして陽奈は構える。
父の残したこの力で楓を救い出す。班目の残したものをこの手で倒す。世界の平和を守る為に。
想いを胸に陽奈は叫ぶ。
「変身ッッッ!!!!!」
エースドライバーの側面を押し腕を広げると、エースの身体にアーマーが装着されていく。
見た目はスーパーハードウェポンを白黒にし、禍々しさを強調しているかのように思えるが、この形態ではそう言った禍々しさを感じさせず、パーツは所々に刺々しくはなく、それでいてスマートで女性らしさがある。
《Come on!!》
《Let's try!! ジョーカーエース!!》
「行くわよ…… どっちがバカか教えてあげる」
「黙れッ!!!」
エースに突っ込んだヴォルペだったが、気づいた時にはエースに殴られていた。
「い、いつの前に…!!?」
「ほら、遅いわよ」
次の攻撃がいつ来てもいいようにと周囲を見渡すヴォルペ。
だが、そんな事をしようとエースは常に後ろへ立っている。凄まじい速度だ。
「後ろよ」
「えっ…… うぎゃっ!!」
エースの回し蹴りを食らわされたヴォルペは思わず地面に膝をつく。
実はこれはフェイク。ヴォルペはただやられたわけではない。あの攻撃は完全に楓を気にかけてのものだった。どうやらエースは本気で戦っていないらしい。
これはシメたとヴォルペは無防備にも手を広げてエースの元に歩み寄る。
「おい、ほらやってみろよ。俺を殺したいんだろ? あ?」
「……?」
「な、なんだよ。俺をぶっ飛ばしたいんだろ!?」
「…………? そうね。確かに」
「だけどお前は俺に攻撃はできない… お前が俺にタコ殴りにされるってなら話は別だが…… なっ!!?」
全て言い終える前にエースのパンチが顔面を捉えて吹き飛ばす。
今のは本気で殴ってきた。何なんだこの女は、この女の心配をしているんじゃないのか?とヴォルペは思う。
「ホントさっきまでのキャラ作りの方がよっぽど良かったわね。今じゃホントに弱いジェスターね」
「弱いジェスター…? だと?」
「えぇ、私が戦ってきた中でもダントツ」
その瞬間、ヴォルペの怒りは爆発した。
ヴォルペは杖を掲げて雷雲を呼び出した。雷雲は先ほどエース達が受けたものより更に大きい。
「これで終わりだ… エースゥッ!!! 俺が弱いだとふざけやがって!!! てめぇ絶対に殺してやるからなぁッ!!!!!」
「楓、待ってなさい。今からそいつ剥がすから」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」
そしてヴォルペの怒りの雷撃がエースに浴びせられる。
パッと見ただけでは直撃したであろう攻撃は、エースには何も当たってはおらず、寧ろそれを簡単に避けてヴォルペの元まで向かっていた。
「な、何だって…!!?」
それからエースは再びヴォルペを蹴り飛ばす。蹴り飛ばす瞬間、エースの足元からエネルギーが溢れたかと思うと、楓とヴォルペが2つに分かれてしまったのだ。
エースは気絶している楓を抱えて後退し、ソッと地面に下ろす。
「え、いや…… 何だこんなことにっ!!?」
「あんたどうせ何したって聞くから言っとくけど、私にもわからないわ」
「は…?」
「つまりは奇跡の力って奴よ」
「ふざけんなッ!!! この野郎調子乗りやがって…… そうだ、戦争を起こしてやる!!! 班目さんがやれなかった事を俺がッ!!!」
「あんたみたいな奴にできるわけないでしょ。それにもう…… いいでしょう。終わりよ」
「終わりだと? 終わらせてたまるか…… せっかくここまで来たんだ。お前を殺して必ず成功させてやるッ!!!」
「こっちのセリフよ。このクソ野郎ッ!!!」
それからエースはエースドライバーの側面部を押して上空高くへと舞い上がる。
ダッシュフィードのように白と黒の美しく巨大な羽を生やし、そのままヴォルペに向かって急降下する。
《Thank you!! ジョーカーエースライド!!》
「これが正義の一撃だぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
「こんな… うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
ヴォルペは腕を前に出し抵抗しようとしたが、その行為は虚しく、エースのライダーキックが胸部に直撃し、ズルズルと押されながら壁に激突して爆散する。
「班目さんッ…!!! 俺も今そちらに向かいますから…!!!──────」
最後までヴォルペは班目の幻影を追い続け消えていった。
陽奈は変身を解除し、よろよろと地面に倒れ込む。このジョーカーウェポンかなりの力があるようで変身後の反動は息切れを起こす。
「はぁ… はぁ……… はぁー……」
「…… 陽奈」
「ん? あ、楓気がついた?」
「陽奈、これってどういう…」
「えっとね…… まぁ、いいじゃない。ぜーんぶ終わったわ」
「全部終わった?」
「えぇ、全部…────── やったわ、父さん」
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「陽奈ァッ!! 次あっち行こう!!」
「はいはい。わかったから待ってなさい」
「僕らはまだゆっくりしていてもいいですよ」
「あぁ、お前らの買い物長い事くらい知ってるからな」
あれから1週間。陽奈と楓、それから稲森とモグロウでショッピングモールで買い物をしていた。
もちろん男2人は被害者である。ただの荷物持ちだ。
「… ったくよ。男を何だと思ってるんだか。なぁ、イナゴ?」
「まぁまぁ…… でも」
「でも?」
「なんか陽奈さん凄くいい笑顔だなって」
「そうか? いつもと変わらねーだろ?」
「そうかな?」
「女なんて作れるからな。裏がこえ〜ぞ〜…」
「……… モグロウ」
「あ…… いってぇ!!?」
モグロウは陽奈ぶん殴られた。
稲森は自然にスッと距離を置く。
「何処が怖いのかしら?」
「全部だよちくしょう…」
「ふふっ」
そして陽奈は笑い、楓の手の振る方へと歩き出す。
「陽奈さん」
「ん? 何よ稲森」
「えっと…… その…」
「なによグジグジと… はっきり言いなさい!」
「えっ、あ、いや… 笑顔が可愛いですね」
「へっ…? あ、何よ急に!!」
「いやいや… 陽奈さん、何かありました? 表情が柔らかくなったもので…」
「…… んー、まぁ私にも色々あったのよ」
「色々?」
「そんなのどーでもいいでしょ! さ、次行くわよ次。楓が待ってるわ」
「はーい」
誰にでも忘れられない過去。引きずってしまう過去はある。
だけどいつまでもそれを想っていては前へは進めない。再び歩く為に一歩別の道へと進んでみればいい。
また新しい未来が待っている───。
「── 楽しく行きましょ。ね?」
そう言って陽奈はとびきりの笑顔を見せた───。
仮面ライダーエース The end
今回登場したヴォルペ。彼は名の通り狐のジェスターですが、ジェスターの中でもひ弱でした。同じ反逆者の怪人達からもお前は弱いなぁと罵倒の嵐。そんな中、班目に出会って彼は懇願します。自分を改造でもなんでもいいから強くしてくれと。班目はそれを了承し、彼に寄生する能力を埋め込むのでした。
そしてジョーカーウェポン。これどストレートに分離させる力を持ってます。こんなどストレートでいいのかって話ですけど、これも言ってしまえば月火の想いが創り出した奇跡の産物って訳です。
…という補足です。後書きって補足とかする時に使えばいいんじゃ…?(3作終わってからの悟り)
という事で次回は本当の最終回です!!
最後もよろしくお願いします!!