こんな序盤で詰むわけにはいかないので、俺は迷うことなく一回目のヘルプを使った。
結果として出てきた最適解は『落ちてくる天使を打ち返す』というもので、俺は自宅にあったフライパンを使って、落下してくる変態天使を天界へと打ち返してやった。帰れてよかったね。
ここまでで分かった事だが、どうやら爆死して残機を失った場合、その原因となったイベントが発生する前の時間まで遡るらしい。
このゲームの仕様を理解しつつ、その後無事学園に到着した俺だったが、そこには次なる試練が待ち構えていた。
「キミはボクとエッチしたくな~る……その淫乱極太チ〇ポでボクを滅茶苦茶にブチ犯したくな~る……」
椅子に縛り付けられた俺の前では、白衣を着たロリっ娘が紐に括りつけた五円玉を振っている。
これはおそらく催眠術。
目の前で振り子を持っている女は、俺を性奴隷にしようとしているのだ。
許せん。あの天使といいこのロリっ娘といい、相手に同意を取るという考えが浮かばないのだろうか。
「やめるんだロリっ娘!」
「ろっ、ロリじゃないですけど!?」
「どう見てもロリだろうが!
ここは小学生が入っていい学園じゃないぞ!」
「小学生じゃないし! ぼくはキミより上の学年だよ!
言うなれば合法ロリだよ!」
この嘘つきめ、強情な……。
確かに「二十歳なんですけど」とか平気で言う小学生は見た事があるけど、まさかそれに似た事をする小学生に出くわすとは思わなんだ。
なんにしてもヤバイ。
残機の事もあるけど、なにより相手がまずい。
さっきの天使は同年代くらいでおっぱいも大きかったが、目の前のこいつはどう見ても小学校高学年。
甘く見ても中学一年くらいだ。
そんな歳の女の子相手にセックスなんて──
「チックショウ離しやがれぇ!
もし本当にセックスしたらお前は耐えられない!
俺の高校生にしては割と大きめなイチモツを、小学生のお前が受け止めきれるわけがないんだ!
死ぬぞ!! 最初で最後のえっちになるぞ!!」
「だから年上なんだってば!
……ていうか、そんなの心配無用だし」
椅子に縛られている俺の膝上に跨る自称合法ロリ。
な、何をする気だ……!?
「ボク、いろんなおもちゃを使って慣らしてるもん。
きみのでっかい〇ンポだって平気さ」
「そういう問題じゃないでしょ……。
ていうか俺の気持ちも考慮してくださいよ。
俺はセックスなんてしたくないんだ」
ズボンの中央を触ってきやがるロリ先輩。
「そんなこと言って……ここ、大きくなってるよ?」
「アンタが触るからでしょうが! 生理現象だよ!
先輩なら後輩のドスケベしたくない気持ちも汲み取ってください……!」
「……そっか。きみはえっちがしたくないんだね?」
何度もそう言っているだろうに。
というか俺の話、一応はちゃんと聞いてたのか。
もしかすれば説得も可能か……?
「でも、問題ないよ」
ん?
「ほら、この五円玉を見てくれ。ゆーらゆーら……」
「なにっ、を……!」
「きみが今からするのは、ドスケベセックスじゃない。
ボクによる逆レイプでもない……」
頭がクラクラする。
こ、これは一体──!?
「ちっちゃい先輩オナホを使ったオナニーだっ♡
合法ロリオナホで自分勝手に射精するだけ♡
ただの自慰だからセックスじゃない……っ♡♡」
何を馬鹿なこと言ってるんだ?
そんな催眠を掛けようとしたところで俺には効かないし今すぐオナニーするだけだ。
おっ、丁度いいところにオナホが。
セックスしないよう、今のうちにオナニーで性欲を発散しとくか!
「ふふっ。いっぱい使ってね……っ♡」
何を笑ってるんですか先輩。
俺は今からオナニーするんですから、邪魔だけはしないでくださいね。
さーて、じゃあオナニー開始っ! …………あれっ?
★
「──ハッ!?」
気がついたときには保健室のベッドの上。
俺は今まで、一体何を……。
「……ん。起きた」
「えっ?」
声が聞こえた方に首を向ける。そうしてようやく気がつく。
俺の傍らには、椅子に座ってジト目でこちらを見ているいる少女がいた。
黒髪のポニーテールで、目も黒色。
この抜きゲー染みた世界では霞んでしまいそうな程に、キャラクターとしての見た目の個性が薄い。
そんな普通の少女が、ただ無表情で、俺を見ている。
「き、きみは……?」
この世界の女の子は、総じて痴女か変態の属性が付与されている。
本当なら間近に女子がいる時点で、即座に逃げる算段を考えなければならない。
だが、目の前にいる無表情な少女からは、なぜか圧を感じない。
俺をターゲットにした瞬間、獲物を見つけた野獣のような目つきになるこの世界のヒロインたちと違って、主人公っぽくなっている俺を前にしてもこの少女は一切動かない。
「……私はあなたの隣のクラス。
空き教室で倒れていたから、保健室まで連れてきた」
「そっ、そっか……ありがとう。重かったでしょ、俺?」
「……ん」
「ぁ、うん……ごめん……」
本当に重かったらしい。申し訳ない。
……それにしても、彼女はずっと無表情だ。
眠そうな目つきで淡々と話すばかりで、いっさい感情が見えてこない。
だというのに、心の底から感じる、この安心感はいったい何なのだろうか?
まるで──
「じゃあ私、授業に戻るから」
俺の無事を確認して用が無くなったのか、無表情な少女は席を立つ。
礼を言う暇も、名前を聞く間もなく彼女は保健室を去ってしまった。
彼女はいったい何者だったのだろうか。
「……そういえば」
ふと、思い出した。
俺は確か、合法ロリ先輩の手によって催眠されていたはず。
空き教室で俺を見つけたということは、そこには先輩もいたのではないだろうか。
「もしかして……」
カーテンで仕切られている隣のベッドを覗き込むと。
「すぅ……すぅ、んん……ぅ」
あのロリ先輩が眠っていた。
もしかしなくてもあの無表情の女の子が運んでくれたのだろう。
俺と先輩の二人を運んでくれたあの少女には感謝しかない……が。
「二人とも気を失ってたってことは、そうなるくらいまで激しくヤッてたってことになる……けど」
そこまで理解したうえで、スマホを取り出す。
そして残機が表示される画面に目を通すと、そこには驚くべき情報が記されていた。
【残機×2】
「……残機が減ってない」
ぼそりと呟いた声が、窓から吹き抜ける暖かな風にかき消される。
俺と先輩は確かに催眠セックスをしたはずだ。
だが、残機が減っていないということは、つまりセックスをしなかったという証拠でもある……。
行為中の記憶が全くないため、判断が出来ない。
「先輩。先輩っ」
「んぅ……?」
寝ている先輩の肩を揺らして、夢うつつの状態から覚醒させる。
彼女には質問しなければならない。
いま、もっとも俺が必要としている情報を知るために。
「あれ、後輩くん……?」
「先輩おきてください」
「うーん……」
目を覚ましてくれた先輩が上体を起こす。
寝ぼけ眼を擦っていて、どうやらまだおねむのようだ。
しかしそんなことは関係ない。
一刻も早く問いたださなければ。
「俺に催眠を掛けましたよね。
先輩と俺って、あのままえっちしたんですか?」
「んぇ? ……ぅ、うん、そりゃもう、激しく。
本当にボクの事オナホみたいに使ってたよ。
四回くらい出したじゃないかな」
なんてこった! 俺は本当にロリと……!
「ロリじゃないよぅ……」
「うるせえです変態」
「うぐっ……や、ヤバいと思ったけど性欲が抑えられなくて」
「聞いてません。
今度また俺に催眠かけようとしたら、バリカンで髪の毛全部剃りますからね」
デコピンしとこ。
「あだっ。……ご、ごめんね……」
分かってくれたならそれでよい。
それより、これで俺が本当にロリ先輩と『セックスをした』という確証が得られた。
だというのに残機が減っていないということは──何かが起きている。
「バグか? それとも裏ワザ……?」
いくら考えても答えは出てこなかったが、俺の頭の中にはあの無表情な女の子の顔が浮かんでいた。
※催眠状態で本人が自慰だと認識していたのでセーフだった
サブタイトルでもネタバレしていきます