セッ〇スしたら爆発して死ぬ呪い   作:バリ茶

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サキュバスはまた今度になりました


パーティメンバー加入イベント【前編】

 

 

 どうやら俺からは、無条件で女性を発情させるフェロモンが肉体から発されているらしい。

 それもこの世界に来てから数ヵ月が経過したここ最近になって、より濃くより広範囲に広がるという嬉しくない進化を遂げているとのことだった。

 

 完全に死活問題なので二回目のヘルプを使って助言をもらったところ、それは常時発動してるわけではなく、時間経過のランダムであることが判明した。

 青城集団に襲われるまでの三ヶ月弱を生き残れたのは、まだフェロモン発生の回数が少なく効果範囲が狭かったおかげだったようだ。

 

 というわけで、発情フェロモン問題をカバーする為の道具を用意した。

 座って授業を受けている今の俺が付けている、この腕時計だ。

 名前はハツジョーくん。

 俺の体から発情フェロモンが発され始めると、この腕時計の時計盤が赤く点滅する仕組みになっている。

 これは一回限りの直接的な手助けということで、悪魔のクマからプレゼントされたものだ。

 ありがたく使わせてもらおう。

 

(まだ光ってないな……)

 

 今は4限目。この調子でいけば、なんとかお昼ご飯は平和に食べられそうだ。

 昼休みに発情フェロモンが発されてしまえば、俺だけでなく周囲の女子たちにも迷惑をかけてしまう。

 二日目に出てきたあの変態天使などと違って、暴走した青城や他のクラスメイトたちは、フェロモンに脳がやられただけであって、好きで発情しているわけじゃない。

 

 あのフェロモンで発情してしまうと自分が抑えられなくなり、その暴走状態に陥っている時の記憶もすべて残らないため、少女たちからすればいつの間にか知らない場所でスゲェ疲弊していたとかいう不可思議現象に巻き込まれている形になってしまう。

 

 これは俺だけじゃなく、彼女たちの為のケアでもあるのだ。

 幸いゲームの仕様上、授業中だけは絶対にフェロモンが出ないらしいので、今のうちに逃走経路を頭の中で組み立てておかねば。

 

「はい、じゃあ今日はここまで。

 明日までに42ページの設問終わらせとけよー」

 

 教師が教壇を降りると同時に、教室中にチャイムが鳴り響いた。

 各々クラスメイトたちは席を立ったり、弁当箱を広げるなどしている。

 そんないつも通りののどかな風景を眺めつつ、チラリと視線を腕時計に落としてみた。

 流石に授業が終わった瞬間からフェロモンが出るなんてことは無いだろうが、一応の確認だ。

 

 

 ──あっやべ。

 

 

「……ね、ねぇ。なんか主陣くんから良い匂いしない?」

「あれっ、アンタも? 私もなんかそんな気がしてて……」

「本能的にそそられるような……具体的に言うと下腹部の一部がものすっごくうずいちゃう様な、股の間のアレが大洪水起こしちゃって今すぐ襲いたくなるようなそんなえっちな匂いが──」

 

 逃げろーっ!!!

 

「ガタッ」

「まって主陣くん!!」

「もっと匂い嗅がせてぇ!」

 

 即座に教室をダイナミック退室し、床を転がりながら逃げ道を脳内で構築しつつ立ち上がって駆け出す。

 校内の外、つまり校庭などに出ると大勢に囲まれて逃げ場が無くなってしまう。

 この場合は分かれ道や階層が多い校舎内を逃げるべきだろう。

 

「すまないクラスメイトたち……!」

 

 発情させてしまって申し訳ない気持ちを抑え込んで前に進む。

 謝罪は後だ。今はとにかく逃げなければ。

 捕縛されたら最後、オラは本当に死んでしまう。やっべぇぞ。

 俺のクラスの教室は三階。

 この校舎は四階まであってその上が屋上だ。

 まずは上にも下にも道がある二階へ避難しよう。

 

「なっ、南の階段が封鎖されている! まさか既に他のクラスの女子たちも……!?」

 

 本来降りようと思っていた階段が、まるでゾンビのように溢れかえる女子たちで埋め尽くされていた。

 

「これマジか……? フェロモンが強化されただけで一気に無理ゲーになりやがった……」

 

 俺のフェロモンの拡散スピードがヤバすぎる。もう今までのようながむしゃらな逃げ方は通用しないかもしれない。

 とりあえず階段は降りることなくはそのまま通り過ぎ、廊下の最奥にある非常階段で二階へと向かうことにした。

 

「非常階段のゴールは女子たちが待ち構えてるのか……やっぱり、校舎に戻るしかない」

 

 階段から身を乗り出して下を見ることで状況を把握し、一気に二階まで駆け下りてから、再び校舎の中へと戻る。

 幸いにも二階の廊下は人が少ないようだ。

 数少ない男子生徒たちも女子の波に巻き込まれていないし、二階は全体的に落ち着いている。

 よし、このまま進んでどこかの空き教室に──

 

「っ!?」

 

 横から誰かが飛びかかってきた!

 

「ぉわっ、ぁ──いてっ!」

 

 バランスを崩して仰向けに転倒してしまう俺。

 不意打ちとはなんと卑怯な。

 いったいどこの誰だ……って!

 

「青城っ!?」

「つーかまーえたっ♡」

 

 突然不意打ちで押し倒してきた輩の正体は、先日俺をハメた青髪の少女こと青城だった。

 馬乗りになって更に手首まで拘束され、身動きが取れなくなってしまう。

 

「やめてくれ青城! きみは俺の特殊なフェロモンに当てられてるだけなんだ!

 ドスケベしたい今の気持ちは、きみの本心じゃない!」

「そんなことよりえっちしよ?」

「ぜんぜん聞いてねぇし……っ!」

 

 傍若無人で目がハートになっている青城を見ていると、彼女に殺された日の事が鮮明にフラッシュバックしてしまう。

 セックスを迫られ、死が直前に迫り来て、なにより肉体が爆散するあの感覚を思い出すだけで、胃の中のものを全部吐いてしまいそうだ。

 もはや痛みなんて次元を超越した、全身に走る不可思議な感覚。

 まるで内蔵が内側からどんどん溶解していって、体の肉が全て裏返しになってしまうような、耐えがたい苦痛と衝撃。

 もういやだ。

 二度と死にたくない。

 そう思った瞬間、体に力が入った。

 あまり乱暴はしたくないが、俺だって死ぬわけにはいかないのだ。

 青城には悪いけど、ここは思いきり突き飛ばしてでも──

 

「そこの二人! 主陣くんの腕を押さえて!」

「「了解っ!」」

「っ!?」

 

 青城に掴まれていた腕が上がりかけたと思ったら、彼女を振り払う間もなく増援の二人に手首と関節を拘束されてしまった。

 

「青城おまえ……!」

「ふふふ、私一人じゃ主陣くんに力で負けちゃうからね。

 あらかじ主陣くんのデカマラを餌に二人、私の後を付けさせてたんだ。

 ありがと、二人とも♡」

 

 ウィンクをする青城だが、俺を拘束している二人はそんなものには一瞥もくれず、目を血走らせて涎を垂らしながら、今にも俺を喰らわんとしている。

 

「はぁはぁチンポ!」

「デカチンポ!」

 

 完全に目がイっちゃってるわコレ。こわい……。

 

「ていうか青城お前、()()()()()って……!」

「うん、そうだよ? 主陣くんが教室を出てから、人を集めて事前に準備してたの。

 私はとにかくあなたの最強オス筋肉チンポとバトルがしたいから」

 

 あまりにも用意周到すぎる。孔明もびっくりだよ。

 

「ていうか女子高生が使うワードじゃないだろそれ……」

「私は女子高生じゃなくて女子学園生だよ」

「何が違うんだよ、それ」

「子供じゃないってこと」

「っ? おまえまだ高2だろ?」

「登場人物は全員18歳以上です」

 

 俺は17歳で未成年なんだよ離せェェェッ!!!

 

「ううぅ~~っ!」

「暴れないで!」

「うるせえ色情魔っ! 年下犯してマジ犯罪者になるつもりか!?」

「年下って考えたら興奮してきた」

 

 ダメだコイツ!

 

「ほら、まずはちゅーしましょ。んぢゅううぅ~~~っっっ」

「ぎゃあああぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇぇ───」

 

 

 もう駄目だ、おしまいだぁ……と観念した、その瞬間。

 

 

「っ!? なっ、なによこれ!?」

 

 俺たちの周囲に、突然モクモクと煙が発生し始めた。

 完全に視界を遮ってしまう濃度の煙幕が辺り一面に充満し、俺どころか青城や他の二人まで煙に翻弄されて咳きこむ。

 そのおかげなのか、腕を押さえていた拘束力が落ちた。

 

「ゲホッげほ! け、けむいぃ……っ!」

(今しかないっ!)

 

 なんだかよく分からないが、とにかくこれは好機。

 強く腕を振り払えば、女たちの拘束は拍子抜けするほどにあっさり解けた。

 俺はそのまま手を前に突き出し、馬乗りになっていた青城を突き飛ばす。

 

「きゃっ! お、女の子に手を上げるなんてサイテー!」

 

 さっきまで年下をブチ犯そうとしていた犯罪者予備軍が何か言っているが、そんなものは無視だ。

 とにかく今のうちに逃げなければ。

 

(でも周りが見えない! どっちがどっちだか分かんないし、煙で目ぇ痛いし……!)

 

 俺と戦っていた彼女たちが煙で怯んだということは、つまり俺にも煙の効力は及ぶ。

 目尻から涙を浮かばせながら、ともかく前へ踏み出──そうとした瞬間。

 

 

「こっち」

「うぉ──っ!?」

 

 何者かに手を引かれ、俺は走りながらその場を離脱した。 

 

 されるがままその相手に付いていけば、いつの間にか煙が晴れて、視界が明瞭になっていく。

 周囲を確認すると、今いる場所は階段の踊り場。

 壁にある階層表示を確認する。

 2F-3F とあるので、ここは二階と三階の間の踊り場のようだ。 

 そして目の前には、俺と手を繋いでいる、ゴーグルをつけた学生服の少女がいる。

 状況を鑑みるに、どうやら彼女が俺を助けてくれたらしい。

 日本人然とした黒く艶やかな髪のポニーテール。

 ゴーグルを首の下にずらしたことで見えた、伏し目がちで瞼が半分しか開いていない、いかにも眠そうな黒色の瞳。

 なによりまるでビスクドールのように、造形が整いすぎて人形染みている全く変わらない無表情なその顔に、俺は見覚えがあった。

 

「きみは……」

「久しぶり」

「あ、あぁ。久しぶり。……というか、助けてくれてありがとう」

「……ん」

 

 とても淡々として、悪く言えば不愛想なその態度を前にして、彼女に対して適切なコミュニケーションが取れているのか不安になってくる。

 彼女は以前、気絶した俺と催眠術使いのロリ先輩を保健室まで運んでくれた人だ。

 あれ以降滅多に顔を合わせることが出来ず、此方からアプローチを掛けようとすると、毎回エロイベントに邪魔されてしまっていた。 

 こうして顔を合わせるのは数ヵ月ぶり。 

 彼女の言う通り、本当に久しぶりだ。

 ……そういや名前すら知らない。

 

「了解」

「……へっ?」

「ついてきて」

「えっ、ちょっ」

 

 再び俺の手を握って先行する少女。

 向かう先は上の階のようだが。

 というか何で俺の事助けてくれるんだ。

 あと、どうして俺の間近にいるのに、フェロモンが効いてないんだ?

 

「あ、あの! 状況がよく分からないんだけど!」

「このまま止まってると、二十秒後に接敵する。

 三階は発情女子たちで渋滞してるから、一気に四階まで向かう」

「接敵って……」

 

 少女は少し先の予測や、階層の状況まで把握している。

 いったい何者なのか──それは分からないが、少なくとも今は彼女に協力してもらうことに決めた。

 このまま闇雲に逃げ回っても、先ほどの青城のように死角からの攻撃をされたら詰む。

 それに手を引いてくれているこの少女と違って、俺は階層ごとの状況把握が出来ていないため、逃げた先で集団に出くわしてゲームオーバーになる可能性も否定できない。

 

 ともかくここは彼女を信じる。

 青城という、この世界では比較的常識人だと思っていた人間に裏切られたばかりの昨日の今日で、またこの世界の住人に頼るなんて、おかしな話だとは思う。

 

 それでも、俺は人を信じることをやめたくない。

 この少女からは、助けるふりをしてどこかに連れ込んで俺を独占しようだとか、そんな邪な感情は見えてこない。

 ……そもそも無表情すぎて普通の感情すら見えないのだが、それはそれとして俺のフェロモンが効いていないのは一目で解るし、襲われる心配はないと思われる。

 

「止まって」

 

 廊下を走っていると、少女がいきなり足を止めた。

 そのまま彼女につられる形で、空き教室の影に隠れる。

 

「どうした?」

「前方の理科室で二人待ち伏せしてる」

「マジか……何で分かるんだ?」

 

 俺の質問に、少女は指で自分の耳をつつくことで答えた。

 よく見てみれば、彼女の左耳にはインカムであろう片耳イヤホンが装着されている。

 

「もしかして……誰かから指示を?」

「うん。もう一人味方がいる。

 ……よいしょっ」

 

 返事をしつつ、彼女はポケットから小型のラジコンを取り出した。

 車体の上には奇妙な装置が取り付けられている。

 

「それは?」

「囮用ラジコンカー、通称オトリくん。

 上にくっ付いてる投影装置で、(コウ)のホログラムを映しながら走行させることで敵を欺く」

「そりゃまた便利な──って」

 

 待て待て。

 いま、コウって言ったか?

 俺はコウ。名前が主陣鋼(しゅじんコウ)だ。

 この世界に来てからは、皆に苗字でしか呼ばれてなかったし、友達の中でも俺を下の名前で呼んでたやつは、たった一人しかいない。

 それに、この少女とは名前で呼ばれるほどの交流関係はなかったはずだ。

 

「きみ……俺の名前を知ってるのか?」

「詳しいことは後で話す。まずは避難を」

「……わかった」

 

 この際細かいことは後回しだ。

 今は無事に逃げ切ることが先決だろう。

 

「オトリくんを走らせるから、待ち伏せしてる二人がそっちに気を取られた隙に、背後を潜って一気に通り抜ける」

「了解だ。出るときは合図が欲しい」

「じゃあ、カウントダウンをするから。

 ゼロで出発」

 

 よし、ゼロで一気に駆け抜けるぞ。

 

「オトリくん、発進」

 

 少女が手を離すと、小型ラジコンカーが勢いよく廊下を爆走し始めた。

 そしてラジコンの上部に設置された投影装置から、走っている俺の姿を模したホログラムが映し出される。

 走る映像と車の速度を調整しながら、ラジコンが目の前の教室を通り過ぎると──

 

「おちんぽだァッ!!」

「そのおチンポは私のものよッ!!」

 

 獲物が釣れたようで、女子二人がラジコンに向かって吶喊していく。

 俺は別におちんぽでも何でもないのだが、ともかく全然ホログラムだってバレてない。

 煙幕といいラジコンといい、この少女の不思議な道具の数々はどれも優秀だ。

 オトリくんが頑張ってる今のうちに行くべきか。

 

「さん……にぃ……いち」

 

 そんなゆっくりカウントする意味ある?

 

「──ゼロ。ゼロッ、ぜろっ、ぜろ……っ!」

「なんでそんな連呼するの!?」

「いくよ。早く」

「ちょっ、待って! きみの行動を読めない俺が悪いのか!?」

 

 不思議っ娘であることが確定した少女を追いかけ、廊下を駆け抜ける。

 待ち伏せしていた女子たちは、教室の中に入ってグルグルしているラジコンに翻弄されているため、俺たちに気がつくことはないようだ。

 

 

「おーい! こっちこっちーっ!」

 

 

 すると、廊下の一番奥にある小さい準備室の扉が開き、そこから一人の女子が出てきて手を振ってきた。

 背丈はかなり低くて、袖が余っていて完全に体のサイズに合っていないブカブカの白衣を着ていて、童顔な顔立ちでめっちゃ目立つピンク色の髪をしたあの少女は──!

 

「ロリ先輩っ!?」

 

 思わず声に出た。

 彼女は以前、俺に催眠術をかけて性行為をさせたその人だ。

 あの時は何故か残機は減らなかったが──よく分からないけど今はいい。

 

「あの人がもう一人の味方なのか!」

「そう……っ。それで、あそこの……ぜぇっ、じゅ、準備室が、秘密基地……はぁっ」

 

 これまでの逃走でかなり体力を消費してしまっていたのか、息も絶え絶えな少女。

 明らかに彼女の走るスピードが落ちていたため、俺は少女の手を掴んで、ロリ先輩が手招きしている準備室へと突っ込んだのだった。

 

 




後編も多分すぐに上がります
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