セッ〇スしたら爆発して死ぬ呪い   作:バリ茶

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今回はおとなしめの回です


前哨戦:淫夢

 

 

 

「……あ?」

 

 気がついたとき、俺は教室で一人佇んでいた。

 周囲には誰もいなくて、窓からは暖かい斜陽が差し込んでいる。

 黒板の上を見ると、時計の短い針は4を指していて、何故か秒針は止まっている。

 

「……なに、してたんだっけ」

 

 首を傾げた。いったいどうしてか、記憶があやふやだ。

 俺はさっきまで何をしていた?

 どうして夕方の教室の中で突っ立っている?

 訳の分からないままボーっと突っ立っていると、不意に教室の扉が開かれた。

 

「コウ」

 

 扉を開いた誰かが俺の名前を読んだ。

 

「……イン?」

 

 教室に入ってきたのは、黒髪をポニーテールにした、人形のように無表情な少女。

 インだ。

 俺と一緒に事故で死んでしまい、この世界では女になってしまった、俺の大切な親友だ。

 どうしてこの教室に?

 たしか、彼女のクラスは隣だったはずだ。

 

「コウ、何をしているの」

 

 淡々としていて、まるで感情の見えてこない声音で、彼女は問いかけてくる。

 俺は質問の答えに詰まった。

 自分がいま何をしているのか、自分自身でも分からないのだ。

 

「……わかんね」

 

 繕うことなく、ただ正直にそう答えると、インは緩慢な足取りで此方に向かって歩き始めた。

 無表情で、何を考えているか読めなくて、それでも迷いなく距離を詰めてくるその姿が不気味で、俺は怯む。

 立ち竦み、そのまま固まっていれば、いつの間にかインはすぐ目の前に立っていた。

 

「私を、待っていたの?」

 

 さぁ、どうだっただろうか。

 思い出せないが、そうだったかもしれない。

 突然死んで、妙な世界に転移して、いつもの日常が奪われて。

 数ヵ月もの間インと離れ離れになっていた俺は、確かに()のことを待っていたのかもしれない。

 

「でも、私は女になった。見た目も、喋り方も変わった。

 コウの知ってるインじゃない。私は、()()じゃない」

 

 確かにそうだ。人形のようだが、ただ綺麗なばかりで表情に乏しいこの少女を、俺は知らない。

 俺の知っているインは、こんな能面のように冷たい顔をした人間ではなかった。

 卑屈というか自虐気味で、目の下にはクマがあって。

 アニメやゲームの話ばかりしていて、姿勢が悪くていつも猫背で、ふへへっと怪しい笑い方をするような男だ。

 しかし意外と聞き上手で、俺が学校を休んだ時はノートを取ってくれたり、校内で見つけた落し物は毎回職員室に届けたりだとか、端的に言ってお人好しな男でもあった。

 そんな、一緒にいるといつも笑ってくれていた彼が、今は虚空を見つめる猫のように無表情な少女になっている。

 困惑していない、なんて言葉は言えなかった。

 それはきっとウソになる。

 俺は女になった親友を前にして──動揺していたのだ。

 

「私は……インじゃない?」

 

 真っ直ぐ俺を見つめながら、透き通るように綺麗な声色でそう問うた。

 

「……いや、お前はインだ」

「どうしてそう言えるの? なんで信じられるの?」

「お前が自分をインだと言ったから。俺は親友の言葉を疑ったりはしないよ」

 

 そう言って笑いかけてやると、インは目を伏せた。

 

「……信じて、くれるんだ」

「当たり前だろ? 俺の親友は、嘘だけはつかない」

 

 インがインだと言っているのならば、きっと彼女は本当にインなのだ。

 だから女になったところで、俺たちの友情は揺るがない。

 俺はインを信じているし、動揺したとしても、拒絶することは絶対にない。

 

「だから、お前もしっかり自分を信じろ。

 女になってもお前はお前だ」

「……」

「うぉっと……」

 

 励ましていたつもりなのだが、突然インが俺を抱きしめてきた。

 いったいどうし──あれ?

 

 いつの間にか、背中が床に付いている。

 俺がインを見上げている。

 インが俺を押し倒している。

 

 どうなってるんだ。何が起こっている。

 

「嬉しい、コウ」

「イン……?」

 

 停止した機械の如く無表情だった彼女の顔が、小さい微笑に変わっている。

 唇の端をわずかに上げて、俺を見下ろしながら怪しく微笑んでいる。

 

「こんな私でも、受け入れてくれるんだ」

「お、おう……」

「じゃあ、このまま『──くん』私に身を委ねて?」

 

 それはいったいどう意味だ?

 

「私が助かるには、コウと繋がらないといけない。

 最初は受け入れてくれるか不安だったけど『──ぃくん』コウが許してくれるのなら、私も安心」

 

 繋がるって──

 

「えっち、だよ。ごめんね、嫌だよね。

 私は元々男だし、そんな気持ちにはなれないよね。

 でも、私がんばるから。ちゃんとコウを気持ちよくさせられるよう、いっぱいご奉仕するから。

 

 だから、このまま私に流されて──」

 

 

 

 

『後輩くんっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ハッ!?」

 

 意識が覚醒した。咄嗟に跳びあがり、周囲を確認する。 

 ここは……俺の部屋?

 

「後輩君! あぁ、よかった!」

「……ロリ先輩?」

 

 ベッドに横たわっている俺の手を、式上先輩が小さな両手で握っている。

 

「ロリじゃないですけど! でもこの際どうでもいいや! 

 とにかく戻ってきてくれて安心したよぉ……!」

「コウ、よかった。起きてくれた」

 

 よく見ればインまでいる。

 なんだなんだ、こりゃ一体どういうことだ。

 

「すいません、なんかボーっとしてて……これ、どういう状況です?」

「お、覚えてないのかい? ぐぬぬ、あいつめ、なんて強力な催眠を……」

 

 えっ? え?

 

「コウは学校の帰り道でサキュバスに襲われた。

 それでそのサキュバスに眠らされて、さっきまでうなされてた」

「え──あっ」

 

 そこまで聞いてようやく、完全に俺の頭の中が目覚めた。

 

 

 たしか数日前から近所でサキュバスの目撃情報が出回っていて、うちの学校の男子たちも被害に遭っていたんだったか。

 具体的に言うとサキュバスに『淫夢』を見せられて、夢の中で搾精されまくって、意識が昏倒した状態になってしまうだとかなんとか。

 放っておくと俺にも魔の手が及びかねないため、逆にサキュバスをおびき寄せてやっつけてやろう、と考えたのが一昨日の話で。

 そしてサキュバスが俺に干渉したら淫夢を送っている魔力を逆探知して、最終的にヤツの居場所を突き止める機能を搭載した腕輪を付けたのが、今日のお昼のNLSの定例会議のときだ。

 

 まぁ、まさか式上先輩特製のサキュバス逆探知リングを身に着け、帰り道に「今夜は決戦だぜ……っ!」と意気込んでいたところを直接襲われるとは、夢にも思ってなかったが。

 不意打ちだったことと、サキュバスが直に俺へ淫夢の魔力を叩き込んだことが関係して、夢の中では記憶を忘却してしまい、さらにインに扮した淫魔に襲われかけたが……式上先輩の声で何とか目覚めることが出来たって感じだろうか。

 

「安心したまえ後輩君。直接叩き込まれた魔力だけど、しっかりサキュバスと繋がってたみたいだから、彼奴の居場所は逆探知できた!」

 

 改めて思うけど、このロリの技術力は一体どうなってるんだろう。

 

「ふふん。科学部の部長だからね!」

 

 科学部ってすげぇ。

 ……それにしてもあのサキュバス女、まさかインの姿で俺を篭絡しようとしてくるとは。

 露骨な誘惑には絶対負けないが、あんな風に自然を装う形で襲われたら流されてしまうのが、どうやら俺の弱点のようだ。

 今回は二人が俺を起こしてくれたから助かったが、これは俺の驕りが招いた失敗だ。

 もう一度気合を入れ直して、この世界との戦いに臨むことにしよう。

 

「コウ、だいじょうぶ?」

「あぁ……むしろ悪夢から解放されて絶好調なくらいだ。

 今すぐにでも出発しよう」

 

 心機一転の足掛かりとして、まずは見境なしのあの淫魔野郎をぶっ潰す。

 インの姿でエロいことしようとしやがったアイツには、必要以上にお灸をすえてやらねばなるまい。

 

「サキュバスはどうやって倒すの」

「フライパンでぶん殴る」

 

 天使にも有効だったし、たぶん一発頭をぶん殴ったりでもすれば勝てるだろう。

 覚悟しろよサキュバス女。

 今度はこっちのターンだぜ!

 

「NTR、出動だ!」

「おーっ!」

「おー……」

 

 




次回は直接対決(意味深)
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