多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第30話 十傑集その4

 新西暦186年8月7日 極東方面 第二新東京市地下 NERV本部表層

 

 そこに展開していたのは、連絡を受けた首都防衛隊の内、迅速に展開可能だった戦力が既に布陣を終えていた。

 具体的にはジムⅡ一個小隊、ゲシュペンストmk-Ⅱ二個小隊+一機(ヤザン・ゴトランド不在)、そして対歩兵戦力として軍事用レイバー・ハンニバル一個小隊。

 これにエヴァ初号機並びジオフロント内部の各種砲台を加えた戦力が現在NERV本部表層の全戦力だった。

 

 『エヴァ初号機の離脱を確認!』

 『目標、衝撃のアルベルト、NERV本部表層到達まで20秒!』

 『予測進路表示、各機は準備を!』

 『到達まで後10秒!……5・4・3・2・1!』

 『攻撃開始!』

 

 ヘイズ2の号令の下、機動兵器全機とジオフロント内部の各砲台群が一斉に射撃を開始する。

 機関砲、ミサイル、ロケット、バズーカ、ビーム、レールガン、滑空砲、コイルガン。

 兵器の見本市の様な無数の攻撃が、たった一人の人間?を排除するために放たれる。

 

 『撃ち方止め、撃ち方止め!』

 『レイバー隊、接近して効果を確認せよ!』

 『了解。これより接近します。』

 

 宇宙戦艦すら撃破出来るだけの火力を投射したからには、死体すら残ってないだろうとレイバー隊の面々は思っていた。

 血の一滴、肉片の一つでも確認できれば十分だろう、とも。

 実際、攻撃により舞い上がった粉塵で視界は0、熱反応はそこかしこ、生体反応も感知できる様な状態ではない。

 これは歩兵を呼ぶべきか?

 それがレイバー隊員の最後の思考だった。

 視界の端、センサーが僅かな動体反応を拾った瞬間、彼らの意識は闇に消えた。

 

 どごごごごごんッ!!

 

 『ッ!?各機警戒!敵は健在だ!』

 

 一瞬、正に一瞬だった。

 亜光速戦闘対応仕様に改修されたヘイズ2のゲシュペンストmk-Ⅱ以外の機体では、その影を捉える事すら出来なかった。

 ヘイズ2もまた、自分が回避する事に精一杯で他へのフォローなんて回れない。

 そんな一瞬の内、ジオフロント内部のNERV本部表層へと展開していた機動兵器部隊は壊滅した。

 

 「何だ、精鋭と聞いていた割にはこの程度か?」

 

 スクラップと化した首都防衛隊の一部の上に立って、アルベルトはそう言った。

 

 『お前の様な人外は想定してないんだよ!』

 

 ヘイズ2はそう吐き捨てながら、プラズマカッターを構えた状態でじりり…と間合いを測る。

 まだ砲台群は健在だが、首都防衛隊の面々が無力化されたとは言え存命な今、同士討ちを避けるために撃つ事は出来ない。

 となれば、この場では接近戦がベターであり、それはヘイズ2にとっては得手とする距離だ。

 しかし…

 

 「どうした若造?そう止まっていては何も出来んぞ?」

 

 こんな出鱈目な存在が相手ではない場合、と付くが。

 

 『…僕が相手になります!リッパーさんはその隙に!』

 『な、馬鹿!?』

 

 態々注目を引いて遠ざけていたエヴァ初号機が前に出る。

 言っている事は的外れではないものの、そもそも未だ13歳のシンジに対人戦をさせないため、エヴァ初号機を撃破されないために注目を引いていたのだ。

 その気遣い自体は立派なものだが、今は悪手だった。

 

 「その意気や良し。だがな…」

 『う、わぁ!?』

 

 ドゴン!と言う轟音と共に、エヴァ初号機の身体が一瞬浮き上がった。

 ATフィールド越しに叩き込まれた一撃。

 フィールドで防ぎ切れなかった衝撃だけでエヴァ初号機の巨体を浮き上がらせたのだ。

 その事実に、ヘイズ2、フレッド・リッパーはゾッとした。

 

 『ぐ、ぅぅぅ…!』

 「おっと、危ない危ない。」

 

 苦し紛れに横に振るわれた腕を易々と回避し、アルベルトはATフィールドを抜かない程度の衝撃波を叩きつける。

 どうやら撃破するつもりはなく、本当に威力偵察だけのつもりだったらしい。

 

 『副隊長、我々に構わず撃ってください!』

 『く、そ…!ご丁寧に脱出装置も壊されてやがる…!』

 『こちらレイバー小隊、全機行動不能…!生存者は私だけです…!』

 

 徐々に生き残った人員から通信が入るが、迂闊な事は出来ない。

 今エヴァ初号機を相手に遊んでいるこの瞬間も、アルベルトの意識は自分から動いていない事をフレッドは理解していた。

 同時に、下手な動きをすれば一瞬で抵抗も出来ずに殺害される事も。

 

 (どうする…どうする!?)

 

 極度の緊張感の中、体表をドッと脂汗が流れていく。

 自分達の持つ手札ではどう足掻いても対応できないと、副隊長を任せられるだけあって状況判断能力も高いフレッドには既に理解できていた。

 

 

 「待てェッ!!」

 

 

 故に、状況を動かすのは第三者しかいない。

 

 「それ以上の非道、このオレが許さん!」

 「貴様…何奴!」

 

 気付けば、NERV本部のピラミッド状の構造物の上、そこに立ち、戦場全体を見下ろす者がいた。

 その男は特徴的な赤いマント、紅い鉢巻、そして背中に差した刀が何処までも異彩を放つものの、未だ十代後半程度の日系人だった。

 

 「オレの名はドモン・カッシュ!ガンダムファイターだ!」

 

 彼こそは先日、月から師匠たる東方不敗を追って地球に降りて来た若きガンダムファイターだった。

 

 「ははははは!中々の啖呵だな小僧!だが、この衝撃のアルベルトに敵うものかよ!」

 

 エヴァ初号機もヘイズ2も放置して、アルベルトは生きの良い獲物に対して空かさず衝撃波を放つ。

 が、そんな見え見えの攻撃をドモンはNERV本部の頂上より大きく跳躍して回避、着地と同時にアルベルトへと一瞬で踏み込み、背中の刀を抜いて切り掛かる。

 そこから先はもう、周囲の普通の人類の面々ではどうしようもない程に高度で高速な戦闘が開始され、手の出しようが無くなった。

 

 「その太刀筋……貴様、流派東方不敗の門下か!」

 「然り!我が師、東方不敗の教え、受けてみろ!」

 「ほざけ、若造がぁ!!」

 

 轟音と共に疾走、粉砕、斬断、爆散と、大凡の人類では出来ない様な破壊の惨状が刻まれていく。

 最早戦闘の趨勢は首都防衛隊並びNERV本部の面々では手の出せない所へと移っていた。

 

 『シンジ君、大丈夫!?』

 『あ、ゴトさんに横塚中尉達!無事だったんですね!』

 『えぇ、こっちは何とか。シンジ君こそ大丈夫?』

 『はい、こっちも何とかです。で、どうしますアレ?』

 

 アレというのは勿論十傑集とガンダムファイター二人の超人バトルである。

 

 『…私達に出来る事はもう無いわ。幸い、周辺の他のガンダムファイターもこちらに向かって来てくれているそうだから、今の内に撃破された機体からパイロットを救出するわ。シンジ君は今からトレーラーで持って来てくれるから、急いでケーブルの接続と武装を装備して待機って指令室の人達が言ってるわ。』

 『分かりました。直ぐに行きます。』

 

 地下の戦闘が続く中、周囲の面々もまた自分の出来る形で戦いへと加勢するのだった。

 その頃、地上では更に事態を混迷させる事態が発生しようとしていた。

 

 

 ……………

 

 

 同時刻、地上の第二新東京市では地下のジオフロント内部から断続的に響く振動と共に避難警報が発令され、先程から屋内退避並び付近のシェルターへの避難が始まっていた。

 

 「チィッ!コムギ、お前達は最寄りのシェルターに行け!」

 「ヤザンは!?」

 「基地に戻って機体に乗って出撃!それしかねぇ!」

 

 言うや否や、近くで避難を呼びかけるパトカーを捕まえ、ヤザンはその強面と連邦軍所属のIDカード等を活かし、あれよあれと言い包めてパトカーを首都防衛隊の基地へ向けて走り出させた。

 

 「で、どうしますアトミラールさん?」

 「…サンプルの回収は現状が不明なため保留。偵察用小型種を出すから、私達は急いでシェルターに向かうわよ。」

 「「「は~い(ですの)。」」」

 

 そんな訳で、三人は誘導灯と通信端末に表示されたナビに従って避難を開始しようとしたのだが、

 

 「あれ?」

 「お、どうしましたレーベンさん?」

 「何か沢山来ますわよ~?」

 「あ(察し)。」

 

 途端、第二新東京市の上空全域に転移反応が現れた。

 

 【Bi-Bi-!転移反応確認、転移反応確認!】

 【民間人の皆様は急ぎ最寄りのシェルターか格納型ビルへ退避してください!】

 【繰り返します。転移反応確認、転移反応確認!】

 【敵勢力からの襲撃です。急いで最寄りのシェルターか格納型ビルへ退避してください!】

 

 「走って!」

 

 真っ赤に光る警報とアトミラールの言葉とほぼ同時、上空にムゲ戦艦と大量のルド・ファーとゼイ・ファーが実体化した。

 本来ならば、実体化と同時に武装ビル群並び首都防衛隊等から迎撃が開始されるのだが、武装ビル群はNERV本部に指揮権限が一任されており、本部施設内に敵の侵攻を許してしまった今現在は事実上使用できない。

 首都防衛隊もまた、衝撃のアルベルトを叩くべく対人装備に換装して移動中であり、地上の一般市民にはあくまで屋内退避とシェルターへの避難指示のみだった。

 不幸にも(ムゲにとっては幸いにも)、この戦力の配置転換の隙間へと敵の転移による奇襲がぶっ刺さってしまったのである。

 謂わずもがな、出現と同時に街へと攻撃を開始したムゲ帝国軍に対し、騒ぎを聞きつけて展開していたものの地下に移動していなかった戦力はおり、反撃を開始していた。

 しかし、それらは防空担当のデストロイド部隊と旧式兵器に分類される61式戦車一個大隊のみであり、とてもではないが半生体メカであるゼイ・ファーや戦闘ヘリに近い特性を持ったルド・ファー、剰え宇宙も水中も行けるムゲ戦艦の相手をするには余りに非力だった。

 必死の応戦も空しく、彼らが壊滅するには30分とかからなかった。

 なお、デストロイドモンスター敷島スペシャルは出撃しておらず、基地の格納庫にいた上に砲撃で埋まったが無事だった模様。

 

 「あ あ あ」

 「っ、落ち着きなさいレーベン!」

 

 そして、市街地を、人々を蹂躙するムゲ帝国軍の光景を見て、レーベンはその動きを止め、小刻みに震えながら口からか細い声を漏らす。

 一年戦争当時、東欧に住まう彼女とその家族を、故郷の街を滅ぼしたジオン製MS部隊。

 そいつらによって刻まれたトラウマが、現在の第二新東京市を焼くムゲ帝国軍と重なる。

 

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

 

 精神の均衡を崩したレーベンはその心の上げる悲鳴のまま、新しい家族と自分を守るための鎧を呼び出す。

 レイデンシャフト・クリンゲ。

 激情の刃の意を持つ獣が如き鎧が、咆哮と共にムゲ帝国軍へと躍りかかった。

 

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