多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第31話 十傑集その5

 新西暦186年8月7日 極東方面 第二新東京市

 

 

 AWOOOOOOOOOO!!

 

 

 昼過ぎの午後の都市に、獣の咆哮が響き渡る。

 同時、空中から街の各所に降り立ったムゲ兵の駆るゼイ・ファーとドル・ファー目掛けて躍りかかる白い影があった。

 レイデンシャフト・クリンゲ

 レーベン専用近接戦闘仕様特機型アインストである。

 持ち前の運動性能を活かし、三角飛びで接近してその爪と牙、体表のブレードエッジで装甲を易々と引き裂いていく。

 これが普通の市街地ならば足場にされたビルが絶対に砕けるのだが、生憎と此処は対使徒迎撃殲滅都市たる第二新東京市である。

 今現在地表に展開しているビルは内部に民間の会社やテナントが入って武装していなくとも、その構造は戦乱に耐え得るよう設計された装甲ビル群である。

 即ち、エヴァや使徒の戦闘でも易々と壊れる事はない。

 それを持ち前の身軽さで足場とし、スラスターを吹かすよりも遥かに自在な機動を行うレーベンの空間認識力と機動センスの何と高い事か。

 しかし、今の彼女にはそれを誇る様な情緒はない。

 嘗て故郷を滅ぼした連中と同様の、民間人であろうと躊躇いなく攻撃を加える侵略者を前にして、彼女は完全に激情に呑まれていた。

 故に、それを現す刃はその激情のまま振るわれる。

 

 『いたぞ、全機攻撃!』

 

 ドル・ファーの部隊が味方機を易々と撃破していく見慣れぬ敵機に対し、仲間の仇討ちだとミサイルを発射する。

 しかし、それらは一瞬で消えたレイデンシャフト・クリンゲの残像を貫くだけで終わる。

 生体由来の高い反応速度と運動性の高さを活かして、一瞬で死角に潜り込まれたのだ。

 ひゅん、とツインワイヤーテールが翻り、次の瞬間には先端のブレードで斬り裂かれてドル・ファー部隊は壊滅していた。

 

 『くそ、これ以上好きにさせるな!』

 

 何機かのゼイ・ファーが集まり、一斉射撃で仕留めようと二門のビームランチャーとミサイルを撃とうとするも…

 

 『さくさく、さくさく…いきますの。』

 『へいへい隙だらけですよー!』

 

 だが、そんな彼らはペルゼイン・リヒカイトの刀であるオニレンゲ、ゲニーセン・フリューゲルの近接用武装であるビームサーベルによって斬り裂かれ、何も出来ぬままに絶命する。

 

 『やーれやれ、縛りプレイは大変ですねぇ。』

 『でも、結構楽しい、ですわよ?』

 『まぁ民間人巻き込む訳にもいかないですからねー。』

 

 現在、三人は近接戦闘のみで第二新東京市に侵攻してきたムゲ帝国軍に対して遅滞戦闘を行っていた。

 民間人の避難が完了しないままに開始された戦闘により、現在も避難は終わっていない。

 故に民間人を戦闘に巻き込まないためにアトミラールが下した命令が、「近接武装のみを用いた遅滞戦闘を行いつつ、レーベンを援護せよ」という無茶苦茶な命令だった。

 

 『レーベンったら、あんなに楽しそうですもの。』

 『いや、あれは超怒って錯乱してるだけですよ。アルフィミィちゃんは真似しちゃダメですよ?』

 『そうですの?』

 『そうなんですよー。』

 

 幸いと言うべきか、レーベンが都市を縦横無尽に駆け回り、跳び回りながらムゲ兵を駆逐しているお陰で、時間稼ぎ自体は上手く行っている。

 ムゲの戦艦と機動兵器じゃ三次元立体機動を地表で行うレイデンシャフト・クリンゲを捕らえる事が出来ないためだ。

 これがエースとかならまた違うのだろうが、生憎とこの戦場にはいない様なので、下手するとレーベン一人の活躍で敵を駆逐してしまうかも知れない。

 

 (とは言え、敵さんもその程度は分かる筈なんですけどねー。)

 

 連邦軍と太陽系防衛用無人機動部隊によって散々に蹴散らされ続けた連中がその程度の事を分からない筈がない。

 一時的とは言え撤退し、その間に戦力の補充と地球の特機や高性能な機動兵器に対応可能な程度の兵器や戦術は揃えている筈だ、とフォアルデンは考えていた。

 実際、その想定は正鵠を射ていた。

 

 

 ……………

 

 

 同時刻 ジオフロント内部 NERV本部表層にて

 

 「どうした若造。流派東方不敗の門下ともあろう者がその程度か?」

 「く、ぞ……ッ!!」

 

 そこには地に両手足を付け、震えながら立ち上がろうとするドモンと、それを余裕綽々で見下ろすアルベルトの姿があった。

 当然の結果だった。

 師である東方不敗と長く渡り合い続けた十傑集たる衝撃のアルベルトとつい最近、漸くガンダムファイターとして実戦への参加を認められたドモンでは才能は兎も角として、積み上げてきた戦闘経験と鍛錬の量が違い過ぎる。

 

 「中々楽しませてもらった。本来なら止めを刺す所だが、新手も来る様だ。今日の所はここまでにしておいてやろう。」

 「ま、待て!」

 「若造、次に会うまではもう少し腕を磨いておくがいい!」

 

 言うや否や、アルベルトは十傑集走りでその場を離脱、あっと言う間にジオフロントの壁面を駆け上がると地上へ繋がる通路へと姿を消した。

 

 「くっそぉぉぉ…!何も出来なかったというのか…!」

 『おおい、そこのガンダムファイター!無事か、無事なら応答しろ!』

 「ぬ…あぁ!こちらは無事だ!そっちはどうだ!」

 『お前のお陰で救助活動は終了した。が、こっちの部隊で動けるのは4機とエヴァ初号機だけだ。』

 

 完敗と言って良い大損害だった。

 NERV本部、そして首都防衛隊の双方がたった一人のノーマルな人間?によって壊滅的打撃を受けたのだ。

 使徒なんかよりも余程恐ろしい難敵だった。

 

 『上の第二新東京市にも敵、ムゲ帝国が襲来しているらしい。まだ動けるなら加勢を頼む。』

 「何!?分かった、加勢する!」

 『あ、あの!僕も行きます!』

 

 そこに声をかけてきたのが、今までアルベルトからのヘイトを稼がないように静かに事態を見守っていたエヴァ初号機だった。

 

 『こちらNERV本部作戦部長の葛城です!さっき通信を回復して第二新東京市の状況を把握、ムゲの襲撃を受けています!不明勢力の加勢で時間を稼げていますが民間人の避難はまだかかりそうです!』

 『ヘイズ2、了解した。が、こちらも壊滅に近い打撃を被っている。エヴァ初号機を対ムゲの戦闘に参加させたいが如何か?』

 『…シンジ君、いける?』

 『いけます。これ以上、好きになんてさせません。』

 

 苦悩の見えるミサトの問いに、シンジははっきりとYesと答えた。

 彼にとってもこの街は既に第二の生活の場であり、愛着もある。

 それを侵略者に好き勝手されるのは我慢ならなかった。

 

 『了解。機体を最寄りのハンガーに固定して、直ぐに出すわ』

 『はい!』

 『首都防衛隊は動ける機体は全て上に上がれ。市民の退避が完了するまで時間を稼ぐ!』

 『『『了解!!』』』

 

 こうして、第二新東京市の戦闘は次のステージへと進んだ。

 

 

 ……………

 

 

 『あら?』

 『どうしま…って下から?今更?』

 

 がうがう!暴れているレーベンを支援する二人もそれぞれ盾の様な眷属のオニボサツとブルーマリンも用いての近接戦闘をしていた時、何かに気付いた。

 

 『ロック1、2にヘイズ3。不具合があるなら言え。オレはヤザン隊長の様に優しくはないぞ。』

 『ロック1、問題無し。行けます!』

 『ロック2、大丈夫!任せてくださ~い!』

 『ヘイズ3、いつも通りお任せください。』

 『僕もお手伝いします。盾役なら大丈夫ですから。』

 『えぇ、期待してるからねシンジ君。』

 『よし、民間人の退避は完了しているな。各機攻撃開始!ただしあの不明機体には手を出すな。先ずはムゲ野郎の排除からだ!』

 『『『『了解!』』』』

 

 そして、この状況の変化を正確に読み取った者もいた。

 誰あろうアインスト4人娘のリーダー、元地球連邦軍のアトミラールである。

 

 『市民の避難完了と同時の残存戦力の展開…各員、オールウェポンズフリー。掃討戦を開始せよ。私も出る。』

 『だ、そうですよ?』

 『あら…それじゃ、開幕の花火を上げますわね?』

 『お、いいですねー。』

 

 その動きを、何とか通信回線を復旧したNERV本部はしっかりと感知していた。

 

 『第二新東京市上空に転移反応!これは…全長6km!?』

 『迎撃は!?』

 『無理です!敵の実体化が早過ぎます!』

 

 そして現れたのは、全長6kmを超える巨大な生体式の双胴戦艦だった。

 全体が独特な黒の艦体は所々に赤が差し、艦首の歯が特徴的なその巨大な艦は何処か旧世紀の水上艦艇にも似ている。

 しかし、搭載された多数の火砲と空中に浮いている事から、それが単なる置物でも骨董品でもなく、実用されている兵器である事を物語っている。

 

 『敵ムゲ艦隊に向け一斉射!第二新東京市に来た事を後悔させなさい!』

 『お出でませ大型ビームランチャー!弾幕はパワー、砲撃もパワー!』

 『その並び、頂きますの…。』

 

 グラウベンの三連装主砲が、ゲニーセン・フリューゲルの大型ビームランチャーが、ペルゼイン・リヒカイトのオニボサツ・ヨミジの光線が一斉に放たれ、ムゲ艦隊の中央へと突き刺さり、9隻中5隻を轟沈させる。

 そこからは唐突に始まった呉越同舟状態でありながら、卓越した指揮能力を持つアトミラールが首都防衛隊に合わせる形を取る事で連携に近い状態となり、破竹の進撃が始まる事となった。

 

 

 

 

 『間に合ったか!?』

 『『『『『遅いですよヤザン隊長!!』』』』』

 

 なお、反撃開始一分でヤザンが駆けつけてくれた。

 ムゲ兵が暴れ回る市街地を駆け抜け、何とか基地に到達した後も格納庫が損壊して仕方なかったとは言え、今回は余りに遅過ぎだった。

 




オチが付いた所でこの襲撃もそろそろ終わりが近いです。
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