多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
そして後半が以前ちょっとだけ出たある世界の話
なお、独自設定あり〼。
予選から決勝戦まで、その全てにおいてハルクは勝ち上がってきたダイノボット達と対戦し、それに勝利してきた。
即ち、スラージ、スラッグ、スナール、スワープ。
その誰もが無差別級格闘大会において殿堂入りを果たした歴代の戦士達であり、何れも劣らぬ古強者である。
武器を持たず、本来の持ち味の一部を殺していたとしても、その程度のハンデで勝てる相手ではない。
ただのハルクなら、今までのハルクなら、例え苦戦したとしても何れ立ち上がれぬ程のダメージを蓄積して敗北していただろう。
だが、今のハルクなら、今のブルースなら、今の二人なら、その不利を覆せるだけのものを持っていた。
ハルクが奮戦し、ブルースが最善を考え、辛うじて指先に引っかかった勝利を捥ぎ取る。
どの勝負も敗北が有り得た。
どの勝負も楽勝なんて有り得なかった。
それでも二人はボロボロになりながら決勝の舞台まで駆け抜けた。
威風堂々たる最初のチャンピオンの前に、二人三脚で辿り着いた。
満身創痍となりながら、普段の荒々しさなど感じさせない何処か落ちついた二人は、必勝の意思を込めてグリムロックを見据える。
「…快なり。」
ミシミシ、ビキビキと。
瓦礫だけとなった試合会場内が、両者からのプレッシャーによって物理的に震えている。
最早互いしか見えていない、最早勝敗などどうでも良い。
この目の前にいる得難い大敵を、己の力で叩きのめしたい。
怒りでもなく、殺意でもなく、ただ純粋な闘争心を握り締め、両者は一歩目から音速を超えて激突した。
試合時間は1時間、それで終わりが訪れた。
「えー残念ですが、今大会の決勝戦はドロー!ドローです!」
「いやー決着が付かなかったのは残念ですが、両者最後まで素晴らしい健闘でしたね。」
「これ、どうしてこうなったんですかねサウンドウェーブさん?」
「単にスタミナの問題でしょう。単純な膂力に関してはハルク選手が勝っていましたが、消耗した状態での戦闘経験や技量に関しては完全にグリムロック選手が上でした。」
「にも関わらずこの結果になったのが持久力によるものと言うのは…?」
「持久力というか、回復力ですね。グリムロック選手はそのポリシーか自分の傷を治し切らず、同時に体力も回復し切れてなかった。ハルク選手はそんな事はない訳ですが、我々と違って人類の回復力では休憩時間中に回復し切れません。結果、両者共に回復に難があった訳です。」
「もし、両選手が回復に問題なかった場合、どうなってましたかね?」
「そりゃ勿論戦闘続行ですよ。今回は試合会場になった再開発地区が更地になった上でその外にも被害が出ました。それよりも酷いとなると、ユニクロン様の装甲に傷が入る事態になってたんじゃないですかね。」
「うはぁ…そこまで戦闘が発展しなくて良かったと言うべきですかね。」
「まぁ次があるとしたら、今度は無人惑星上でやって頂きたいですね。」
ハルク&ブルースは再度入院、グリムロックは「偶には本格的なメンテナンス位受けなさい」とのユニクロン様の一言によりTF向け医療施設へと送られたのだった。
なお、3人とも「傷痕は残してくれ」と宣ったというが定かではない。
……………
TFと地球人類の交渉が始まってから一か月、遂に外交使節団は帰還した。
しかし、今度はTF側の外交官らを乗せて。
今度は国連や各国の外交の場で調整し、具体的な条約案を作成していくのだ。
「楽しかったね、トニー。」
「あぁ、こんな童心に返って楽しんだのなんて随分久しぶりだったよ。」
「僕も、ハルクも、ここに来れて良かった。彼らに出会えて良かった。」
「随分良い顔をするようになったじゃないか。君を呼んだ甲斐があった。」
その面々の中には、当然ながらトニー・スタークとロバート・ブルース・バナー(&ハルク)の姿もあった。
「次はポッツとモーガンを連れて来るよ。」
「僕はどうしよっかな…。取り敢えず、アベンジャーズの皆は一度連れてきたいなぁ。」
本当ならもっといたい、騒ぎたい、研究したい。
だが、ここには人類の命運を賭けた外交のために来たのだ。
自分達がそれを邪魔してはいけない。
「また来よう、必ず。」
「あぁ。」
言葉少なに「次」を約束する。
世界を、宇宙を永劫に流離う大図書館。
叡智、文化、他愛もない思い出、美醜も貴賤も関係ない。
過ぎ去った栄華も、今まさに謳歌されている繁栄も、いずれ花咲く萌芽も、宇宙のあらゆる煌めきの欠片を集めて漂う宝石箱。
例え滅んでも、無意味な終末であったとしても、彼らはずっと覚えてくれる。
自分達の住まう地球も、自分達地球人もまた、例外ではない。
例え自分達が滅んでも、彼らはずっと覚えていてくれる。
ずっと僕らの死を偲んでくれる。
それはある意味で、とても幸福な事だった。
「さらば、ユニクロン。さらば、スター・オブ・カノープス。また会う日まで。」
「さようなら。また今度。」
こうして、彼らアベンジャーズの旅路は大きな転換点を迎える事となった。
………
…………
……………
………………
…………………
それは何時かの出来事だった。
忘れてしまった過去かもしれない。
覚えのない未来かもしれない。
ただ、確かなのは今ではない事だった。
太陽系の全てを超え、数十光年先ですら詳細な観測を可能とする超空間・エーテルレーダーやセンサー類を有してもなお観測し切れぬ宇宙の深淵。
本来なら星とエーテルの輝き、真空の闇しかない筈の空間。
そこは今、所狭しと密集した最早観測不可能な程の生命体によって満ち溢れていた。
宇宙怪獣、或いはSTMC。
このエーテル宇宙に住まう知的生命体の一種たる地球人類がそう名付けた、流浪するスカベンジャーにして宇宙の寿命を延ばさんとする者。
彼らは宇宙の熱的死を遠ざけるため、宇宙の熱量を消費する様々な生命体を葬ってきた。
知性があったのか、それとも消費を増やすものとして捨てたのか、それすらも定かではない。
分かっているのは、こいつらが自分達以外のあらゆる生命体に対して敵対行動を取り、殲滅し続けているという事だけ。
そんな連中が、宇宙を埋め尽くす程の物量で以て銀河中心領域から迫りつつあった。
「全艦隊、所定の配置に就きました。」
「うむ、ご苦労。」
それに対するは地球人類が宇宙人の技術と自分達のそれを融合・発展させたエーテル運用技術を土台とし、多くの戦役を経て進化し続けた地球帝国軍所属宇宙艦隊。
総勢6万隻を超え、前線基地化された太陽系12番目の惑星たる神無月星を出発し、迫り来る宇宙怪獣を撃滅すべく、味方艦隊との合流の時を今か今かと待っていた。
「右舷方向に多数のワープアウト反応!TF艦隊です!」
「おお、来てくれたか!」
本来なら、この宇宙に生まれた生命ではない彼らにこうまでして戦う義理はない。
それでも彼らはこの宇宙で出来た友人である地球人類を見放さず、今日まで同胞として共に戦い続けた。
だが、彼らの戦力の底を地球側は把握できなかった。
地球人類よりも優れた技術・軍事力・国力を持った永劫を流離う不老不死のTF。
彼らが事前に「全力を出す」事を告げたこの銀河中心殴り込み艦隊。
一体、どれ程の戦力がやってきたのだろうか?
先ずは無数の艦隊がゲートアウトしてきた。
そのどれもが皆㎞単位のサイズを誇り、地球側の艦隊旗艦たる全長70kmを誇るヱルトリウムに匹敵する艦影が万単位で存在するのだ。
最も小型の艦艇ですらヱクセリオン級を超える10kmなのだから、そのサイズ差がよく分かる。
極め付けに次々とワープアウトしてくる艦の総数は、既に地球艦隊の倍を超え、今なお増大している。
「超巨大なワープアウト反応!質量測定不能です!」
管制官からの悲鳴にも似た言葉の直後、TF艦隊の中心に三つの巨大なワープゲートが展開される。
そこから出てきたのは地球の10倍はある巨大な機械の惑星、否、3体の超巨大なTFだ。
更にその周囲を護衛する様に直径120kmものサイズを誇るスター級機動要塞が9個もワープアウトしてくる。
圧倒的な強国であるTFをして、全力での艦隊運用だった。
「なんという事だ……TF達はこんなものを作れるのか、こんな巨大なものを、幾つも…。」
この巨大な機械の惑星達の名は改スター級戦略機動要塞、その一番艦から三番艦である。
かつてのスター級機動要塞がサイズの割に攻撃能力に欠ける(TF基準)とされた事、またもしもの時のユニクロンの代替としては不足するとして建造された。
嘗てのユニクロンとほぼ同サイズの130万kmかつ同等の機能を持ったこれらならば、例え地球側の艦隊が全滅しても宇宙怪獣に対抗可能だと判断されたのだ。
だが本来就役したばかりのこの三隻、出撃する予定はなかった。
なかったのだが、とあるお方の鶴の一声が響いてしまったのだ。
「少しでも手を抜いたら私が出ます。良いですね?」
現在、嘗てよりも成長して現在直径180万kmになろうかと言う御方のお声に、TFはやっぱり誰も逆らえなかったのである。
そして、デカいものに目を奪われがちだが、艦載機の方もガチ中のガチだった。
同盟関係であるディジットからの技術協力・共同研究によって開発された全長3mの「量産型ヴァルチャー」並びとある世界の火星にて収集した知識から誕生した全長10m程の指揮官機として「量産型オービタルフレーム」である。
そのどちらもが単騎で恒星を破壊可能、亜光速戦闘、超光速移動、限定的な時間制御を可能とするTF側の最新鋭戦闘用ボディである。
ちなみに武装の方もホーミングレーザーやハイパーノヴァキャノン、デストロイヤーガン等、超火力・超広範囲の武装を搭載している。
防御能力も従来通りの重力場・電磁バリア・粒子フィールドに加え、並行世界に無限に攻撃を逃す「次元連結防御システム」が漸く小型化できたので艦隊のみならずこちらにも搭載されている。
無論、撃墜されても従来通り中の人であるTFは新しいボディに交代して即時出撃可能となる。
そんな連中が300億も来ているのだ。
大抵の知的生命体による星間国家ならば確実に絶滅させられる規模なのだが、これでもまだ安心できないのが宇宙怪獣という存在である。
『失礼、遅れたようですな。こちらはTF特別派遣艦隊総司令官のメガトロンだ。パーティーにはまだ間に合いますかな?』
ニヒルな笑みとジョークを携えて通信を繋げてきたのは、総司令官を拝命したメガトロンだ。
今回の彼はユニクロンから全権を託され、派遣された艦隊の全てを使い潰してでも勝利せよと頼まれている。
ユニクロン様の言葉、それも頼みとなればそれは神の御言葉に等しい。
メガトロンだけでなく、艦隊構成員全員が士気旺盛の万全な状態だ。
また、三隻の改スター級の最上位アクセス権を与えられているため、今のメガトロンは歴史上のどんな戦略家、指揮官よりも優れた知識量と処理能力を持っているに等しい。
前に出て戦う事も出来るが、本分は頭脳労働担当でTF達においては宇宙艦隊草創期のメンバーの一人である彼ならば、と誰もが信頼して付いてきている。
「無論だとも。銀河中心殴り込み艦隊総司令官のタシロ・タツミだ。紳士的なエスコートを頼む。」
『任されました。必ずや勝利の美酒を。』
作戦は事前に決められていた通り、宇宙怪獣の巣窟たる銀河中心領域にて、このエーテル宇宙の地球にて長らく地球防衛並び地球人類との交流の任を担っていたスター級機動要塞17番艦スター・オブ・プトレマイオスを護送、後に内部の全エネルギーを解放並びその質量の全てをエネルギーへ変換する事で、ビッグバンを人為的に引き起こす。
それがこの合同艦隊たる「銀河中心殴り込み艦隊」の目的だった。
なお、近隣の銀河に知的生命体は発見されず、或いは宇宙怪獣に既に滅ぼされた後だったため、この作戦はTF側からも問題なく賛成された。
「では、銀河中心殴り込み艦隊全艦、全速前進!」
銀河の命運を賭けた大決戦の火蓋が、間もなく切られようとしていた。
いつもの草原で、ホラクロンがうたた寝をしている。
いつ目が覚めるかは分からない。
そもそも睡眠なんてしない存在の筈なのだが、どうして彼女は眠っているのか。
それすらもよく分かっていない。
ただ、彼女が見ている夢の内容だけは、しっかりと彼らのライブラリに記録されていた。