多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年8月15日 地球 太平洋上にて
ソレを真っ先に発見したのは哨戒中のVF-01だった。
巨大な青い正八面体という海上ではサイズの割に目立たないが、センサー類にはばっちり映っているソレがゆっくりと太平洋上を極東方面に向かって進んでいた。
幸いな事に付近には船舶も島もなく、巨大な正八面体を遮る者も、また排除される者もいなかった。
『HQ、HQ!こちら哨戒中のハロー1、ボギーを発見!データを送る!』
『HQ了解。ボギーはエネルギーパターンから新種の使徒と認定。哨戒用の装備では火力が不足している。代わりに威力偵察用のVF部隊を向かわせる。それまで監視に徹せよ。』
『ハロー1、了解。』
だが、交代を待たずしてハロー1のIFFは消失、交代用VF部隊の到着まで5分という所だった。
『HQ、こちらグリーン小隊だ。目標の予測位置まで間も無くだ。…レーダーに感あり。当たりだ。』
『HQ了解。予定通り威力偵察を開始せよ。ただし、発見したハロー1が撃墜された事から対空能力を保有していると考えられるため、警戒されたし。』
『グリーン小隊了解。ヤバくなったら尻尾巻いて逃げさせてもらうよ。』
だが、グリーン小隊の警戒は想像を遥かに上回るラミエルの能力によって突破された。
『…!? 目標内部に高エネルギー反応を確認!グリーン小隊は警戒を!』
『洋上に使徒と思われるボギーを確認!これより威力偵察を試m』
そして、最初の一射でグリーン1が一瞬で蒸発した。
間もなく水平線を超え、目標を視認できるだろうという時に、超高精度の加粒子砲によって狙撃され、機体と共に消滅してしまった。
『全機ブレイク、ブレイク!目標は高威力・高精度の加粒子砲を保有!』
『た、隊長は!?グリーン1は!?』
『死亡した!これより指揮はグリーン2が継ぐ!各機は散開して撤退せよ!繰り返す、撤退せよ!確実にデータを持ち帰れ!』
『駄目だ、このままでは避けr』
だが、グリーン2の指示も空しく、グリーン3は撃墜された。
『クソッタレが!!』
グリーン2は吐き捨て、爆撃・海上攻撃用の装備の一切をパージ、少しでも良いから機体を軽量化し、一気に海域から離脱を開始する。
『! 目標、再び高エネルギー反応!』
『ブレイクフィールド展開!安全リミット解除!フルブーストッ!!』
HQからの警告と同時、グリーン2は何が何でも生き残るべく、機体を使い潰す事を覚悟して理論上の最大速度を叩き出す。
高度を出せば距離は取れるが、あの精度からして逃げ切れない。
故にグリーン2は海面スレスレを飛行する事に活路を見出した。
そして、僅かに蛇行し、不安定な軌跡を描きながら雷撃でもするかの様な海面スレスレを超々音速で飛翔する。
そのパイロットにすら分からない不安定な軌跡と海面に着弾した加粒子砲が大規模な水蒸気爆発を生み出した結果、更に機体を揺さぶられながらも更なる加速に成功した上、雲すら作る巨大な水蒸気によって視界を遮ってしまったラミエルは三度目の射撃をする事なく、必死に遁走するグリーン2を見逃すのだった。
この戦闘直後、グリーン2は撤退中に機体の制御を失い、海上に不時着するも、近くに来ていたガーリオン部隊に機体と共に回収された。
この戦闘以降、使徒への威力偵察は無人機を用いるのが通例となる。
回収されたグリーン2の機体に記録されていた一連の戦闘におけるデータは即座に連邦軍のサテライトリンクを経由して極東方面軍第二新東京市防衛部隊並びNERV本部へと届けられたのだった。
なお、グリーン2のVF-01はお釈迦になったが、整備班から怒られる事もなく、来週には新品のVF-01を受領する事となる。
……………
新西暦186年8月15日 第二新東京市 NERV本部にて
「と言う訳で、第五使徒は超高精度・高威力の加粒子砲を備えた移動要塞である事が判明しました。」
「完全に初見殺しだな。しかも分かってからも強いと来やがる。」
ミサトの言葉に、作戦部の会議室に呼ばれたヤザンが応える。
「で、何処で叩く?」
「第二新東京市まで招いて、と言いたい所だけど…。」
「止めとけ止めとけ。無人砲台を囮にしつつ本命で叩くつもりだろうが、この前のムゲの奇襲であちこちガタが来てる。その上、使徒を誘い込む?下手すると暴動が起きるぞ。」
ヤザンの言う事はもっともだった。
先のNERV本部への衝撃のアルベルトの強襲と第二新東京市のムゲ帝国の奇襲により、第二新東京市は大きな打撃を被った。
首都防衛隊とエヴァ初号機、アインスト4人娘の活躍によって都市全体への被害は抑えられた。
迎撃機能の多くは既に修復を完了しているし、極東方面の行政府としての機能も同様だ。
しかし、いなくなった人間の補充は簡単ではない。
精鋭揃いの首都防衛隊も先日の戦いで多数の戦死者を出しており、その補充にはムゲ帝国の再侵攻もあって腕利きは何処でも引っ張りだこなので難儀している。
更に民間人に大きな被害が出た事は変わりなく、如何なる理由であってもムゲ帝国の奇襲に対処できなかったのは連邦軍、そしてNERVの失態だった。
これ以上何か失態を起こせば、それこそNERVの根幹が揺らぎかねない。
何れ切り倒される組織と言えど、
その辺をある程度上層部から知らされていたヤザンは、NERV側への配慮を忘れなかった。
「となれば水際、砲撃戦よりも被害を抑えるために狙撃の一撃で仕留める。」
「囮には旧式の無人攻撃機、無ければラジコンヘリとかでも良い。奴さん、そこまで個体差を見分けているかは怪しいみたいだしな。」
極東方面、旧日本本州に上陸する前に、水平線から姿を現す瞬間に狙撃にて決着を付ける。
目標に対しては多数の無人航空機(足りなければラジコンでも可)による攻撃で陽動を行い、注意を引き付けた上で狙撃を行う。
「ですが、その場合は正面からATフィールドを貫く必要がありますよ?」
「A.I.M.辺りに声をかけとけ。オレの名前を出しても良い。連中の事だ、面白い玩具をダースで隠し持ってるに決まってる。」
「外した時が怖いから、二の矢も用意すべきね。」
「寧ろ、代えの効かんエヴァを二の矢にすべきだろう。丁度うちの部隊のデストロイド・モンスターの修復も終わってる。その上で提案がある。」
「提案?」
ミサトの疑問に、ヤザンはその二つ名の通り野獣が如き獰猛な笑みを浮かべる。
「俺達が不甲斐ないってんでな、お偉いさんがジガンスクードⅡと予備パーツを沢山仕入れてくれてよ。昼にもうちの基地に搬入される予定だ。」
「目標のエネルギー数値がこれで…ジガンスクードの防御可能エネルギー量がこれだから…あ(察し)。」
ここに、ラミエルの命運は決まった。
……………
新西暦186年8月16日明朝 極東方面にて
旧神奈川県真鶴半島。
本来なら景観豊かだったこの土地はメテオ3群の落着による水面上昇によってその多くが水没し、現在は小島に近い状態になっている。
干潮時には嘗てに近い姿となるが、満潮時には多くが海面下に沈む。
そんな場所に身を潜める形で、エヴァ初号機と零号機、そしてロック1と2の駆るグラビリオン2機がいた。
エヴァ初号機は島を遮蔽物として狙撃態勢を取り、その周囲には増加装甲を追加したグラビリオンと巨大な盾を装備した零号機の姿がある。
この盾も原作のスペースシャトルの船底部を改造したものではなく、何と搬入されたジガンスクードの腕部のDブレード(予備パーツ)を手持ち式に改造して装備しているのだ。
限定的ながらもちゃんとGテリトリーを展開可能になっている。
なお、動力は予備のアンビリカルケーブルと大型バッテリーである。
『綾波、大丈夫?疲れてない?』
『平気。碇君こそ疲労は?』
『僕は大丈夫。ギリギリまで寝てたから。』
『そう…なら、任せるわ。』
シンジも先の戦闘で一皮剥けたのか、今ではこうして他者を気遣う余裕すらあった。
無論、追い込まれれば生来の臆病さや年相応の未熟さが出て来るだろうが、それでも原作に比べれば遥かにマシだし、何より彼はまだ子供なのだ。
足りない所は大人達が補い、支えれば良いのだ。
その頼れる大人達は、現在は別の場所に布陣していた。
旧静岡県熱海市網代。
そこには極東方面では二度目の実戦参加となるジガンスクードⅡ、そしてデストロイド・モンスター(敷島スペシャル)の姿があった。
この二機が揃うのは先の地底種族連合との決戦以来であり、パイロットらの会話も弾んでいた。
『いよっ盾の人!そっちは無事だったかい。』
『ははは、頭打って血ぃ流しただけですよ。そっちこそ聞きましたよ、大活躍だって。殆どの時間動けなかったオレなんか比べ物にならないですよ。』
『んなこたーねーさ。お前さんが身体張ってくれたからこそ、今も俺達は生きてるんだから。なぁお前ら?』
『うっす!俺達、ジガンスクードには足向けて寝られません!』
『流石無敵の盾、地球の守り人、連邦軍の誇り!』
『煽て過ぎだって。ジガン乗りは皆あれ位出来て当然なのさ。』
事実である。
ジガンスクード、それは地球を、コロニーを、市民を守る最後の盾。
コロニー落としに隕石、コロニーレーザーに核攻撃。
地球やコロニーに壊滅的な被害を発生させ得る脅威に対し、文字通り最後の盾となって被害を抑える事が彼らの役目なのだ。
現に先のムゲ再侵攻に当たり、各サイドのコロニー防衛戦ではムゲの艦隊を相手に一歩も退かずに攻撃を後ろに通さず、兄弟機たるジガンスパーダによるマルチロックオン砲撃の反撃とデストロイド・モンスターによる大火力砲撃によって勝利に貢献していた。
これは機体性能もさる事ながら、パイロットも同程度に重要だった。
他の量産機とは一線を画すコストの特機を与えられるとして、そのパイロットになるには先ず上官から人格・才能・経験等の全ての面で高評価を取れれば候補生となり、後に極めて厳しい訓練が謎の覆面コーチX、もとい教官役を務めるユン・グローリアス少佐によって課される。
彼女との訓練で心身共に一から叩き直し、特機に相応しいパイロットへと鍛え上げる。
その苛烈な訓練模様は精鋭で知られる教導隊ですら目を見張るものがあり、同じ基地に所属する一般パイロット達はその光景を見ては「一体何時リタイアするか」と賭けるのだ。
具体的な内容としては、某幼女が部下達にやった雪中行軍に近いと言えば分かるだろうか?
人間の尊厳を破壊し、疑心暗鬼と疲労をピークにさせ、それでも尚正気と倫理と理性を持ち続けながら、連邦軍人としての本懐を果たさんとする者こそ、特機のパイロットに相応しいと判断されたのだ。
しかし、意外にもその殆どは厳し過ぎる訓練を耐え抜き、心身共に地球連邦政府に忠誠を誓い、市民を守るために戦う戦士へと成長する。
単に厳しい訓練ではなく、ちゃんとリタイアさせずに人材育成をやり遂げる辺り、ユングは本当に天才である。
で、そんなガン決まり集団の一員である盾の人(名も無きモブ)にとっては、マジで死ぬかも知れない攻撃に友軍を庇うのは別に不思議でも何でもない。
何故って、それが仕事であり、使命なんだもの。
『お前ら、お喋りはそこまでだ。後30分で敵が水平線上に出て来る。そろそろ気を引き締めろよ。』
『『『『了解です”』』』』
こうして、対第五使徒作戦が始まろうとしていた。