多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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ぬぅ…日付が変わってしまったか、不覚!


第38話 撤退戦

新西暦186年8月7日 ムゲ第二次侵攻開始直後 地球 欧州方面にて

 

 

 式波・アスカ・ラングレーは激怒した。

 必ずやあの邪知暴虐のムゲ野郎を駆逐してやろうと決意した。

 

 アスカには政治も戦争も少ししか分からない。

 アスカは天才だが、その性格は多少捻くれた所はあるものの、見た目通り13歳の少女のそれである。

 だが、故郷であるドイツでのエヴァのパイロットしての訓練と飛び級して入学した大学での勉学を苦に思った事は一度もない。

 ガリ勉だった自分を気にかけて年相応の遊びや娯楽を教えてくれた加持リョウジと真希波・マリ・イラストリアスには感謝しているし、何なら友人とも思っている。

 実は自分とマリの乗るエヴァが兵器としては欠陥品も良い所で、大人の加持さんが本当は自分達子供を戦わせたくないと思っている事も、遠く極東のまともに訓練も受けてない同い年の少年がエヴァに乗って連邦軍と共同で最初に使徒を撃破した事も、最終的にはアタシとエヴァの完成型たる弐号機が結果を出してやるわよ!と思っていたのでそこまで気にしてはいない。

 だが、漸く出立だという日にNERVドイツ支部を襲って顔馴染みの職員や故郷を焼いてくれやがったムゲ野郎だけは絶対に許さん!

 アスカは激怒していた。

 しかし、エヴァ2機を極東方面のNERV本部へ運ぶ重要性を理解していた。

 故にムゲ野郎をボコボコにするのはエヴァよりも強いだろう連邦軍に任せ、マリの仮設五号機と共にドイツ支部跡地を発った。

 なお、加持さんは別ルートでピンクのスーツ姿の同年代の男性と共に先に発ったそうだ。

 

 で、欧州の空をエヴァ二機を積んだストーク級と共に飛ぶ最中、ムゲ野郎に蹂躙される欧州を見てしまった。

 

 おい、エヴァより強い連邦軍は何処行った?

 ブチ切れながら近くの整備員に全てを喋りたくなるように丁寧に話しかけると、その整備員は顔を青くして勢いよく話してくれた。

 曰く、欧州方面軍は通常の連邦軍とは違うのだ、と。

 何でも現地の有力者であるロームフェラ財団を始めとした企業達(ロゴスは表向き秘密組織)が権勢を持っており、各方面並びコロニーの自治を認めている連邦政府と言えど、おいそれと口を出せないらしい。

 加えて、独自規格の機動兵器や指揮系統を持ち、貴族(この新西暦の時代に貴族!)や企業関係者には優先して指揮系統や作戦、補給等での優遇が受けられ、それ以外の一般の連邦軍人は未だ旧式兵器しかないのだと言う。

 既に旧式扱いされている筈のジムⅡですら配備未了とか嘘でしょう?とアスカは思った。

 しかも、このストーク級すら「そいつを寄越せ!オレらが使ってやるから!」とか戦闘中なのに通信を寄越したり、「自分達を乗せて逃げろ!」とか民間人を放ってまで言う者すらいる始末。

 馬鹿しかいないの???

 アスカの疑問に、しかし話を聞いていたマリが双眼鏡を寄越して地上を見る様に言われた。

 訝しみつつ下を見ると、必死に民間人の救助や護衛、シェルターへの誘導を行っている連邦軍部隊や警察の姿が見える。

 成程、腐ってるのは上で、現場はまだまだ大丈夫なんだな、とアスカは納得した。

 そんな時に、敵部隊接近の警報である。

 ストーク級は即時離脱を試みるも、ムゲ側の展開速度の方が早かった。

 

 『仕方ないか…。全艦、第一種戦闘態勢!護衛のガーリオン隊は全機発艦せよ!』

 『敵部隊、戦艦2に機動兵器多数!本艦に向けて接近中!』

 『ガーリオン隊は本艦の戦域離脱まで防衛してください。無理な戦闘は他の敵部隊に捕捉される恐れがあるため、厳に慎んでください。』

 

 ストーク級は設計の古いガルダ級を超える艦載機運用能力を持つロールアウトしたばかりの空中母艦である。

 それ故、MSサイズの機動兵器ならば最大一個大隊27機を万全に運用できる。

 しかし、今はエヴァ弐号機並びに仮設五号機とその予備パーツ等を運んでおり、現在の艦載機動兵器たるガーリオンの数は僅か二個小隊6機しかいない。

 火器類は対空迎撃用の機銃と対艦・多目的ミサイル位しかないストーク級と火力の低いガーリオンしかいない現状、ムゲ戦艦を含む有力な部隊と正面から戦うのは自殺行為でしかない。

 しかも、それはエヴァ二機を乗せているのが原因なのだ。

 アスカは激怒した。

 今この故郷の窮地を見捨て、遠く極東に逃げる様に去らねばならない自分自身に激怒した。

 今も地上で必死に戦っている軍人を、職務を必死に果たしている警察を、どうして良いかも分からずにいる一般市民を置いて、逃げる事しか出来ない自分に嫌悪した。

 しかも、ここでアスカが勝手な義侠心を起こして地上にエヴァと共に降りた所で、10分も動けば途端に巨大なオブジェに早変わり、碌に何かをする事もなくムゲに見つかって殺されるだろう。

 だから仕方ない、だから自分は悪くない、だから逃げても良い。

 

 

 「そんな訳ないじゃない。」

 

 

 これ以上なく冷え切った声が自分の喉から出た。

 

 「お、どうすんの~姫?」

 「艦長に言って、せめてこの艦で砲台になる位はするわ。」

 「下には降りないんだ?」

 「愉快なオブジェになりたいなら一人でやってなさい。」

 

 その後、それしか現状を打破する手段は無いと判断した艦長はアスカとマリの二人にエヴァ二機による艦の防衛を命じた。

 艦上部に出撃し、そこで砲台役となるのだ。

 幸いにもエヴァ用の武器弾薬はたっぷりあるし、装備や弾薬の規格は連邦軍と一緒なので問題はない。

 二人はミサイルにマシンガン、ガトリングガンにロケット砲に大型ビームキャノンと景気よく弾をばら撒きつつ、エヴァ固有のATフィールドによってストーク級をムゲ側のあらゆる攻撃から守り切った。

 最終的な戦闘の結果は艦とエヴァ二機は無傷、ガーリオン隊も一機も落ちる事なく離脱に成功した。

 だが、これが地獄の撤退戦の幕開けだと、この時は誰も予想出来なかった。

 

 「欧州全域からの撤退だと?確かなのか?」

 「は、はい。欧州方面司令部からの正式な通達です。」

 「何て事だ…。」

 

 艦長は頭を抱えた。 

 欧州方面軍が現政権並び他の方面軍と不仲とは聞いていたし、装備すら独自調達しているのは聞いていたが、まさか増援の一つも寄越さない程だとは思ってもいなかった。

 無論、他の地域に出現したムゲ帝国軍に対応するためだとは分かっているが、ここに来て内ゲバをするとかマジ止めてくれよ…というのが正直な思いだった。

 

 「このまま予定通り旧英国方面に向かいますと、ロームフェラやティターンズの目に留まる恐れがあります。」

 「あの黴の生えた骨董品と鼻摘み共か…。」

 

 副官の言葉に、艦長はげんなりした。

 どちらも通常の正規軍からすれば目の上のたん瘤とも言うべき連中だった。

 実力や優良装備こそそれなりにあれど、規格は兎も角他の連邦軍のそれとは異なるから足並みも合わせ辛いし、補給物資の融通もし辛い。

 おまけにやたら高圧的で、良さげな装備や部隊と見るや否や直ぐに権力を傘にして指揮下に入れようとする。

 お前ら軍を何だと思ってるんだ?と声を大にして言いたい。

 

 「…仕方ない。予定コースを変更し、このまま地中海を抜けてダカール、アフリカ方面軍との合流を目指す。」

 「まぁそれしかないですか…。」

 

 こうして、エヴァ二機とその護衛部隊を載せたストーク級は戦乱の最中にある欧州からアフリカを目指すべく、進路をイタリア半島方向へ向けるのだった。

 が、勿論そんな簡単に行く訳がなかった。

 逃避行の最中、彼らには散々に試練が降り掛かる事となる。

 

 

 『そこのストーク級、何処の所属だ!この辺は既に撤退命令が出ているんだぞ!直ぐに旧英国方面に進路を向けろ!』

 『こちらはストーク級○○番艦グレイ、現在アフリカ方面に向けて機密物資輸送任務を受けている。こちらに構う事はない、貴官らは貴官らの任務を続けてくれ。』

 『そんな話は聞いていない!良いから旧英国方面に行けと言っている!抵抗するならば攻撃する!』

 

 『これは…連邦軍同士、いえ、市民まで互いに殺し合っています!』

 『ムゲが使うという噂の精神攻撃か…我々に出来る事は無い。直ぐに離脱だ。』

 『了解です。全速前進、この空域を離脱します。』

 

 『こちらティターンズ所属MS部隊である。我々は現在、重軽傷者を抱えている。治療のためにもそちらの艦に乗せてもらいたい。』

 『艦長…。』

 『こちらストーク級○○番艦グレイだ。おかしいな、ティターンズの諸君。こちらのセンサーには君達の足元にある医療用トラックには生体反応が感知できない。そして、君達は既に戦闘準備を終えている。』

 『貴様…!』

 『連邦軍の面汚しが、重軽傷者等と片腹痛い!どうせムゲ共の面を拝む事なく逃げてきたんだろう!少しは連邦軍人としての職務を果たしてから物を言うがいい!』

 

 『ここまでか…。仕方ない、ムゲに通信を繋いでくれ…。』

 『! 艦長、味方の増援です!』

 『こちら地球連邦軍参謀本部直属空中機動艦隊所属スカル大隊!お前さんらが例の特機輸送便か!ここは俺達に任せて行け!』

 『すまん、恩に着る!』

 『応、何時か一杯奢ってくれ!』

 

 そんな大変は思いをして、アスカとマリ、エヴァ弐号機と仮設五号機を載せたストーク級グレイは漸くアフリカ方面軍への合流に成功したのだった。

 しかし、彼女らの旅路はまだ終わっていなかった。

 

 

 

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