多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第39話 撤退戦その2

 新西暦186年8月12日 地球 アフリカ方面

 

 式波・アスカ・ラングレーは激怒した。

 

 またかよ、と思ってはならない。

 地球連邦軍参謀本部直属空中機動艦隊所属スカル大隊とアフリカ方面軍のお陰で何とか欧州からの脱出に成功した。

 ストーク級グレイとその乗員並びに積み荷のエヴァ二機とそのパイロット達は、補給と整備のためにアフリカ方面軍ハルツーム基地へと入港した。

 原作ではティターンズの基地だったり地下に大戦時に行方不明となった気化爆弾が発見される等の物騒な場所なのだが、この世界線ではそうしたフラグの類は全てトレミィ達によって確認・管理されている。

 そんな訳で十全に補給と整備、そして半舷休暇となったクルー達は三日間羽を休める予定だった。

 だったのだ。

 

 基地への物資搬入に使う貨物列車が擬装されたBF団のロボットで、そいつとそいつに積載されていた無人攻撃ヘリ並び歩兵部隊によって基地が壊滅するまでは。

 

 流石はBF団、その隠蔽と手際、戦闘能力は地球連邦政府がガチで警戒するだけはある。

 士気旺盛かつ精鋭なアフリカ方面軍ハルツーム基地を奇襲効果もあったとは言え壊滅させる程なのだから!

 貨物列車に擬装していた特機、維新竜・暁という名前らしいが、モグラの様な本体に蛇の様な長い貨物列車状の後部パーツを持った機体は全長100m近く、火力こそ低いものの特機特有の頑丈さも併せ持っており、その後部から発進した無数の無人戦闘ヘリからの攻撃で基地施設全域が瞬く間に火の海にされていく。

 何とか生き残ったストーク級グレイとそのクルーは自分らが目的と宣うBF団にブチ切れながら、しかし戦力的に劣っている事から大慌てで逃げ出すのだった。

 勿論、全方位通信でハルツーム基地の窮状を伝えながら。

 BF団の無法に、世話になったハルツーム基地の人々が殺された事に、アスカは激怒した。

 そして、何よりもその惨劇を見ながら何も出来ない己にこそアスカは激怒した。

 

 そこからは再び逃避行の日々だった。

 

 今度はインド洋に出て、そこから東南アジアをを超えて極東方面を目指す。

 幸いにもムゲの小規模部隊に遭遇する事はあったが、その程度は最早慣れた彼らはあっと言う間に蹴散らした。

 対艦攻撃もエヴァ用に大型レールガンやポジトロンライフル、対艦ミサイルポッド等が追加されたために万全であり、彼らの旅路は順調だった。

 問題はインド洋を超え、東南アジア方面に入ってからの事だった。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦186年8月15日 地球 東南アジア方面

 

 「! 対空警報!各対空火器、自動迎撃始め!」

 「第一種戦闘態勢発令!機動兵器部隊は全機出撃、エヴァ二機も出すんだ!」

 

 順調に行けば極東まで後一日という所で、東南アジア特有の熱帯雨林のジャングルの中から、不意に対艦ミサイルが飛翔する。

 無論、ミノフスキー粒子も無い状態で、そんなものに当たる程地球連邦軍の対空迎撃システムは杜撰ではない。

 対空機銃が即応、全ての対艦ミサイルを撃ち落とす。

 

 「ミノフスキー粒子感知!レーダーの精度が低下!」

 「今のミサイルに紛れ込ませていたな…各員、索敵を密にしろ!敵の本命が来るぞ!」

 

 通常の対艦ミサイルだけでなく、ミノフスキー粒子を封入した容器入りのミサイルを迎撃した事により、索敵精度が大きく落ちてしまう。

 一年戦争の後、ミノフスキー物理学は大きく進歩してきた。

 軍事・民事・純物理学の全てにおいてだ。

 中でも軍事は著しく、ミノフスキー式核融合炉に始まり、射撃や格闘用のビーム兵器、そしてミノフスキードライブすら誕生した。

 だが、その最も単純な方法である周辺への散布への抜本的対策は出来ていない。

 観測員の増員に光学センサーの増設を始めとした光学・目視確認の徹底、更にミノフスキー粒子の電子機器への影響を防ぐシーリング技術の発達。

 それらを以ても尚ミノフスキー粒子の電波(マイクロ波~超長波)、一部の可視光線、赤外線を漸減吸収する特性によるジャミング効果からは完全には逃れられない。

 即ち、有視界戦闘こそが重要となる。

 

 「さ、三時の方向に機影確認!特機サイズです!」

 

 雲を突き破って現れたのはGR3、BF団の開発した空戦用ロボット兵器である。

 背面の飛行ユニット並びに全身の各所に設置されたスラスターによって飛行する。

 装甲こそ他のGRシリーズには劣るものの、空中における高い機動性能を誇る機体だ。

 

 そんな機体が、音速を置き去りにして突撃してきたのだ。

 

 指からミサイルをばら撒きながら突進してくる特機への対処となると、非常に限定的になる。

 そもそも特機はその性質上、一騎当千こそを主眼としている。

 これは特機がそもそも数の不利を覆すための決戦兵器であり、通常の生産ラインを確立した機動兵器とは全く異なる設計・運用思想を持っているからだ。

 即ち、滅茶苦茶凄いコストかかるけど超高性能な機体で、圧倒的物量の侵略者を蹂躙する。

 こうした性質を持つ特機が先手を取っての対艦攻撃である。

 こうなると同質の機体で迎撃・防御するか、機動兵器類で足止めする位しか対応策がない。

 そして、ストーク級グレイには欠陥品が2機と漸く出撃し始めたガーリオン隊、後は貧弱な対空機銃や各種ミサイルランチャーしかない。

 結果、必死の対空砲火を命中させるも有効打には至らず、すれ違い様に額から発射されたレーザーに機関部を貫かれてしまった。

 

 『ちょっと!落ちてる落ちてる!?』

 『あーこりゃもう駄目かも分からんね。』

 

 漸く艦上部に出てきたエヴァ二機が大慌てで海面に近付いていく艦にしがみ付く。

 

 「機関部大破!繰り返す、機関部大破!」

 「まだテスラドライブは生きてます!何とか海面には浮けますが…!」

 「付近に浅瀬を確認!そちらに行けば浅瀬に乗り上げる事が可能です!」

 「了解、何とかやってみます…!」

 「付近の友軍に救援要請を出せ!何処でも良い、何としてもお嬢さん方を送り届けるんだ!」

 

 こうして、ストーク級グレイは目的地の極東方面まで後少しという所で東南アジア方面、南シナ海の西沙諸島の浅瀬へと座礁する事となった。

 

 「…ぐっ!状況報告!」

 「機関部大破!それ以外は軽度の損傷ですが、テスラドライブに負荷がかかりました!現在、緊急停止している模様!」

 「復旧急げ!付近に友軍は『おおっと、そこまでだ諸君。』っ!?」

 

 突如繋げられた通信に、グレイのブリッジクルーが固まる。

 

 「通信?メインモニターに出します!」

 『私はBF団十傑集が一人、眩惑のセルバンテス。諸君らの健闘に敬意を表し、降伏を勧告する。』

 「何…?」

 

 中東の富豪、より具体的に言えばアラブの石油王と言われても違和感のないターバンを頭に巻き、白いスーツに身を包んだ男性。

 その顔にはドジョウの様な髭と奇妙な傷跡があり、そして大きなサングラスでその目元は分からない。

 だが、その口元だけは笑みの形を取り、紳士的と言っても良い言葉を述べる。

 

 『先のハルツーム基地襲撃、更に欧州からの脱出劇、実に素晴らしい。ここまで我々BF団の手を逃れた者はそういない。優秀な者、未来ある若者は人類の宝だ。それを無暗に失わせる様な事は我々も望む所ではない。ここで降伏し、無意味な抵抗を止めてくれれば、我々は当初の目的以外は何もせずに立ち去る事を誓おう。』

 「…こちら、本艦の艦長を務めるオットーだ。当初の目的とは何か聞いても良いかね?」

 『我々の目的、それは貴艦の積み荷であるエヴァ2機とそのパイロットだよ。』

 「『『ッ!』』」

 『さぁどうするかね?このまま抵抗されたとしても、我々としては手間が増えるだけの事。既に状態はチェックだが。』

 

 周囲を見ると、一時的に戦闘は止まっているが、海からは続々と量産型GR2が、空中からは量産型GR3が現れて、既に周辺を取り囲んでいる。

 セルバンテスの言う通り、既に状況は詰んでいた。

 だが、もしセルバンテスの言う通りにしたら、それは年若い少女二人を生贄にして助かった事に他ならない。

 

 「…セルバンテス殿、機体だけでは駄目かね?パイロットはどちらも年若い、未来ある少女なのだ。」

 『貴官の言いたい事は分かるが、任務内容には彼女達も含まれる。無論、彼女らの扱いは私が責任を持って非人道的なものにはしないと誓おう。』

 「ぬぅ…。」

 

 正直な所、驚異的な戦力を持つものの正真正銘のテロリスト集団に年若い少女二人を引き渡す事、それも部下と自分の命を守るためにそんな事するのは、連邦軍人としても一個人としても憚られた。

 

 (だが、このままでは皆殺しになる…!)

 

 既に敵の物量はこちらの三倍以上であり、特機の端くれとは言えケーブル付きの欠陥機という荷物と疲弊したガーリオン隊でどうにかなる戦力差ではない。

 

 『さぁ、返答は如何に!』

 

 『そこまでです!』

 

 『おお!?』

 

 非情な決断をせねばならないか、そう思っていた時、不意に通信に別の音声が混じる。

 

 『行け、ジャイアントロボ!』

 

 ストーク級に迫りつつあった量産型GR2、それらの後方の海域から大量の飛沫と共に全身をマントに包んだ同サイズの特機が現れる。

 

 『おおお、まさか、君か大作君!』

 『お久しぶりです、バンテスおじさん!』

 

 挨拶もそこそこに、量産型GR2が反応する前に海中より現れたジャイアントロボが奇襲を掛ける。

 その全身はマント、否、外套であるステルスクローク(安心と驚愕のA.I.M製)に包まれており、大抵のレーダー・センサーの類は潜り抜けられる。

 熱量も水中にいる事である程度誤魔化されてしまい、ここまでBF団側が気付けなかったのだ。

 

 『ロボ、グレイを守るんだ!』

 

 グォォォン!

 

 独特の稼働音と共に、応える様にジャイアントロボが暴れ回る。

 あっと言う間に2機のGR2を破壊し、その背後にグレイを庇い、防戦の構えを見せる。

 

 『バンテスおじさん、例え貴方でもBF団の好きにはさせません!』

 『ははははは、これは痛快!しかし、私とてこのまま引き下がる訳には行かんのだよ。やれ、GR3!』

 

 命令と共に、上空に待機していたGR3の部隊が空中から大量のミサイルを雨霰と降らせる。

 ジャイアントロボはその装甲で耐えられるだろうが、背後のストーク級グレイは到底耐えられないだろう。

 

 「各対空火器、自動迎撃始め!」

 「他各砲座も敵機動兵器に対して撃ち方始め!」

 「ガーリオン隊、何をぼさっとしている!戦闘開始だ!」

 

 だから、グレイとそのクルーは自ら動き始めた。

 

 『こちら国際警察機構所属エージェント、草間大作並びにジャイアントロボです!これより共同して戦闘を開始します!』

 「こちらこそ救援感謝する、助かった!だが謝礼は後だ、先ずはこの場を乗り切るぞ!」

 『はい!正面から来る敵は任せてください!』

 『エヴァ二機も出るわよ!止めないでよね!』

 『こっちも準備OK、何時でも行けるにゃーん。』

 「えぇいくそ、君達も行ってくれ!但しちゃんと生きて帰って来い!」

 『らじゃらじゃー。』

 『誰に言ってんのよ、誰に!そっちもこれ以上壊されないでよね!』

 

 こうして、戦闘は第二幕へと続いていく。

 

 

 

 

 

 

 『……………。』

 

 その戦闘に感付いて、沖合からゆっくりと海底を進んでくる影に誰も気付かぬままに。

 




ステルスクローク(強化パーツ)

外見はエヴァ弐号機初登場時のマント。
機体に軽度のステルス能力を付与するが、本格的な電子戦機や偵察機には発見されてしまう。
また、ある程度の対ビーム能力を持つ。
ご存知安心と驚愕のA.I.M製。
特殊・特務部隊向けに一定数が販売されている。
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