多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第一部 完


第11話 銀河中心殴り込み艦隊

 銀河中心宙域にて、人類とTF合同の史上最大規模の大艦隊「銀河中心殴り込み艦隊」は作戦の最終フェーズに入ろうとしていた。

 

 「全艦隊予定宙域に到達しました。現状、付近に敵勢力の反応ありません。」

 「幾ら奴らでもこの近距離で長距離ワープはしてこない、か…。このままならば勝てるが…。」

 「司令、TF艦隊から緊急通信が入っています!」

 

 タシロ提督と副長(本名不明)の掛け合いに水を差す形で管制官から通信が知らされる。

 スクリーンに映し出されたのは、焦りを隠そうともしないメガトロン総司令の姿だった。 

 

 『タシロ提督、奴らの一部がワープしたのを確認した!向かってくるぞ!』

 「何だと!?全艦隊に通達、索敵を密にせよ!ワープアウトの兆候を見逃すな!奴ら特攻するつもりだ!」

 『スター・オブ・プトレマイオスの臨界まで後15分だ。それまで何としてももたせる。』

 「各マシン兵器部隊は順次出撃!スター・オブ・プトレマイオスを死守せよ!ここが天王山だ!」

 

 そして、銀河中心殴り込み艦隊が部隊を展開し始めて1分とせぬ内に、ワープアウト反応が検知された。

 

 「大規模なワープアウト反応確認!これは…50億を超えています!現在も増加中!測定不能!」

 「応戦しろ!一匹たりとも艦隊中心に通すな!」

 

 そうして始まったのは、正に決戦とも言うべき戦いだった。

 全天からワープアウトし、一斉に特攻を続ける宇宙怪獣らを相手に、艦隊はその総力を以って迎撃を続けた。

 今日までTFと共に切磋琢磨し、その技術力を爆発的に進化させ続けた人類、その総力たるこの艦隊は、凄まじい勢いで宇宙怪獣を撃破していく。

 しかし、とてもではないがその全てを撃破する事は不可能だった。

 戦闘開始から5分、第一波から第七波の時点で敵の物量は500億を突破、奮戦するもあっという間に千を超える艦艇と万を優に越えるマシン兵器が轟沈・撃墜されていく。

 このまま状況が推移するなら、彼らは奮戦虚しく文字通りの全滅となっていた。

 だが、ここには背を預けられ、肩を貸してくれる友がいた。

 

 「第八波までの殲滅完了。続けて第九から十二波を感知。」

 「ヴァルチャー隊、損耗率13%。OF部隊は人類艦隊直援に回れ。」

 

 TF艦隊はその物量と装備以上の奮戦を見せ、破綻しかける迎撃戦闘に対して必死に対処し、辛うじて突破を阻止し続けた。

 特に活躍が目覚しかったのが量産型ヴァルチャー部隊であり、突撃してくる巡洋艦型や合体型のみならず、それらを無数に運用・生産する母艦型すら多数撃破せしめた。

 このヴァルチャー型、そのボディはナノマシン群で構成され、例え構成質量の7割を失っても再生するし、自在にその形状を変化させて環境に適応、時間さえあれば分裂して増殖すら可能で、火力においても地球側の殆どの艦艇よりも優越している冗談の様な存在なのだ。

 その指揮官機たるOFはフラッグシップ機にあたるアヌビスとジェフティの良い所取りをした上に上記のヴァルチャー型と同様の性質を持っている。

 更に指揮下のヴァルチャー型へのナノマシン並びエネルギーの補給機能まで持ち合わせているのだから絶対にセットで敵に回したくない存在だった。

 

 「! ワープアウト反応を感知!艦隊直上!質量……測定不能!大型惑星サイズと推測!」

 

 だが、そんな彼らをして、宇宙怪獣はなお絶望的な物量を持っていた。

 現れたのは、後に旗艦級と呼称される事となる宇宙怪獣。

 母艦級と同等のサイズを誇りながら母艦としての機能はなく、あくまで戦闘能力を強化された宇宙怪獣側の切り札とも言うべき存在。

 それが艦隊直上から亜光速で突撃してきたのだ。

 

 「全艦火力を集中せよ!奴を艦隊中央に通すな!」

 

 このまま突撃を許せば、艦隊は壊滅する。

 それを即座に悟ったタシロ提督の号令の下、地球側の艦隊並びマシン兵器とバスターマシン一号・二号がその火力を集中するも、その表面を削り、僅かに減速するだけ。

 

 「緊急変形開始!迎え撃て!!」

 

 メガトロンの号令と共に、TF艦隊の旗艦たる改スター級一番艦がその真の姿を露にすべく、その総身を粒子状に変化、最適な形態へと再構築していく。

 惑星サイズでありながらその姿形は混合型に酷似した旗艦級の過剰なまでの運動エネルギーの乗った先端部分を、突如巨大な右掌が受け止める。

 次いで、手首、腕、肩、胴体、首、という流れで全身を構築し、現れたのは超巨大な一個のTFだ。

 その間、僅か10兆分の1秒。

 事象改変や時間遡行すら可能とするTFにとって、これ位は不可能ではない。

 人型となった改スター級一番艦はそのまま旗艦級の先端部分を握り締め、慣性・重力制御によってその運動エネルギーを完全に封じ、止める。

 次いで旗艦級が搭載する武装で総攻撃を仕掛けるも、無尽蔵に外部からの攻撃を受け流す次元連結防御システムの前には意味を成さない。

 

 「返礼してやれ、たっぷりとな!」

 

 フリーだった左腕が旗艦級のドテッ腹へと叩き込まれ、その甲殻を易々と砕き、内部構造を散々に荒らし回る。

 次いで、その内部で左腕に搭載されていたあらゆる武装が開放された事で、旗艦級は内側から膨れ上がって爆発、その質量のほぼ全てを消滅させた。

 

 「ッ! ワープアウト反応感知!これは、先程と同様の反応が4つ!艦隊の左右下方向!」

 

 一瞬の安心も束の間、今度は先程と同じものが四体も襲い掛かってきた。

 

 「改スター級二番艦・三番艦は緊急変形!全て撃破せよ!」

 

 それぞれが二体相手をする形で、艦隊外縁部にいた二番艦と三番艦が瞬時に人型へと変形、迎撃に入る。

 

 「二番艦と三番艦に敵が到達します!」

 

 だが、旗艦級の突撃は決して二番艦に届く事はなかった。

 二体の旗艦級の先端部へと向けられた掌、そこに展開された防護力場を前にしては如何な宇宙怪獣と言えども早期の突破は不可能だった。

 その防護力場の名を「1光年障壁」。

 1光年分もの空間を圧縮し、障壁とするこの防護力場は大抵の攻撃を射程外へと追い遣ってしまう。

 その上、圧縮した空間を指向性を持たせた上で解放する事で武器にする事も出来る。

 即ち、

 

 『圧縮空間、解放。』

 

 掌の先から1光年分もの空間が圧縮から解き放たれ、吹き荒れる。

 空間そのものが津波や巨大地震を起こした様なものであり、そこに存在した物質は砕かれるしかない。

 こうして、二体の旗艦級はその巨体を砕かれ、絶命した。

 

 『捕縛、完了。』

 

 そしてもう一方、三番艦にも二体の旗艦級がその先端部を捕まれ、その動きを封じられていた。

 三番艦がやった事は特に真新しい事ではなかった。

 大始祖たるユニクロンに以前から搭載されていた機能がヒト型となっても使えるようになっただけ。

 だが、それは極めて強力な武装としても使える機能だった。

 

 『「星喰らい」起動。』

 

 両手に握った旗艦級二体を両手で挟む様に押し潰し、圧縮し、程良く砕く。

 そして、腹部に開いた口部からそれらをムシャムシャと喰らい出した。

 砕かれ、砕かれ、砕かれ、遂には粒子レベルにまで分解され、エネルギーとして吸収されていく。

 生きながら貪り食われるというおぞましい体験をする羽目になった二体の旗艦級は三番艦の腹に空いた口部へと狂った様に武装を放つが、その全てはただエネルギーとして吸収されていくだけだった。

 

 「……どうやら疲れているようだな。」

 「仕方がありません。こんな決戦なんですから。」 

 

 それを見たタシロ司令がちょっと現実逃避をする程度には非常識でグロい映像だった。

 

 「第十二波殲滅完了!続けて第十三・十四波を感知!20億ずつです!」

 「密集陣形を崩すな!各員の奮戦を期待する!」

 

 互いに切り札を切った状態だが、それでもなお戦闘が終息する気配は無い。

 戦闘開始から8分、戦いは漸く折り返し地点に来た所だった。

 

 

 ……………

 

 

 残り1分、銀河中心殴り込み艦隊はその数を7割にまで減じていた。

 それだけ宇宙怪獣の短距離ワープからの特攻攻勢は激しく、その物量故にとてもではないが防ぎ切れなかったのだ。

 それでも艦隊中央には小型の兵隊級が既に何千匹と雪崩れ込み、しかしその全てが多くの犠牲と共に撃墜されていた。

 艦隊周辺の交戦可能な距離には、もう一匹の宇宙怪獣もいなかった。

 旗艦級もまた、あの後に性懲りもなく3体がやってきたが、全てが宇宙の塵へと消えた。

 そして今、遂に臨界を迎えたスター級機動要塞17番艦スター・オブ・プトレマイオスの姿があった。

 

 「凄い…。」

 「美しい…。」

 「見たまえ。あれこそがTFの力の源なのだ。」

 

 全身から余剰エネルギーを放出しながら、胸部装甲を開いたその姿に誰もが目を奪われた。

 人型へと変形したスター・オブ・プトレマイオス、その胸部へと収められていたTFの最至宝にして最秘奥が初めてこの世界の地球人類へと公開されたのだ。

 ソレは黄金色の容器に包まれた、巨大な球体だった。

 ソレは翡翠と碧、紅玉に似た色彩に絶えず変化し、輝いていた。

 ソレは巨大な存在感を持ちながら、しかし何処か古木や穏やかな海の様な大きくとも静かで暖かな気配をさせていた。

 

 ソレの名は、マトリクスと呼ばれていた。

 

 『タシロ司令、作戦は完了した。全艦載機部隊を収容後、予定通り超長距離ワープに入る。』

 「メガトロン司令…貴方方の協力に感謝します。また何れお会いしたいものです。」

 『ふ、こちらこそ。その時を楽しみにしていますぞ。』

 

 そして、残存艦隊は続々と超長距離ワープへと入っていった。

 最早この場所で自分達が出来る事は無いのだと知っているから。

 その中には勿論、バスターマシン1号と2号の姿もあった。

 

 『皆帰った、か…。』

 

 そして一人、この宙域に残っている者がいた。

 誰あろうユニクロンの数ある端末の一つ、スター・オブ・プトレマイオスを操作している分体だった。

 

 『では、最後の仕事を済ませましょう。』

 

 そう言って、スター・オブ・プトレマイオスはマトリクスの保護容器の取っ手にある穴へと、鍵の様に指を順に入れていく。

 無論、これは必要な行動だった、様式美という意味で。

 そんな事をしている最中にも、マトリクスの輝きは更に増していく。

 全身から発せられる行き場を無くしたエネルギーが完全に開放されると同時、純粋な高エネルギーの結晶体にしてTFの叡智の集積体であり、TFのスパークを納める器であり、時には感情すらエネルギーへと変換してしまう奇跡の物体マトリクスを解放する。

 結果、引き起こされるのは疑似的なビッグバンだ。

 太陽系の存在する銀河系どころではない。

 この宇宙そのものが一度滅び、新生するだけのエネルギーが発生する。

 無論対策済みであり、次元連結防御システムを搭載したスター級機動要塞の全力出撃によって太陽系が滅ぶ事はない。

 そして、ゆっくりと容器を左右に開き始めた。

 

 

 ……………

 

 

 宇宙怪獣とは何者なのか。

 宇宙を人体と見た場合、宇宙怪獣とは白血球に相当する存在とも。

 銀河に涌いた知的生命体というバクテリアを駆除しようとしている銀河系の免疫抗体とも。

 地球人類同様の知的生命体が進化の果てに行き着いた姿で、自身らの脅威となりうる他の知的生命を滅ぼし続けているとも。

 共通しているのは、彼らが人類を始めとしたあらゆる知的生命体の天敵であるという事だけ。

 そんな推測での彼らの視点で言うのなら、人類を始めとした知的生命体とはやはりこの宇宙に巣食うガン細胞に等しかった。

 エネルギーを消費するだけ消費して補填する事なくその内滅んでいくだけの存在。

 宇宙のエネルギーを消費してその寿命を削るだけの病原菌。

 ならば滅ぼすしかない。

 ならば消し去るしかない。

 それが宇宙を延命するただ一つの方法なのだ。

 こうして、彼らは気の遠くなる程に長い、久い、永い時間を戦い続けた。

 

 そして、出くわしたのだ。

 時は2015年12月18日。

 このエーテル宇宙に住まう地球人類とこの世界の外からやってきたTF達との出会いの場に。

 その至上命題に従って即座に攻撃へと移った宇宙怪獣は、しかし致命的なミスを犯した。

 彼らは自分達をこの宇宙ごと滅ぼし得る存在へと喧嘩を売ってしまったのだ。

 そこからの彼らは必死だった。

 逆撃によってほぼ全滅した偵察部隊の生き残りから新たな標的を殲滅するのに十分な戦力を送り出したと思ったら、それらが返り討ちに遭い、撤退してきたのだ。

 それから幾度も幾度も艦隊を編成し、送り出し、しかし撃退・殲滅されてきた。

 もし宇宙怪獣に人間並みの精神性があったらストレスで禿げ上がってたかもしれなかった。

 それ程彼我の戦力差は大きく、絶望的だったのだ。

 挙句の果てに人類は辺境も辺境たる太陽系から自分達の本拠地である銀河中心領域へとやってきたのだ。

 断じて許す訳にはいかない。

 彼らは不退転の決意を以て、これにて地球人類との闘いを終わらせるつもりで、手加減なくその戦力を運用した。

 しかし、地球人類とその友邦の艦隊を撃滅する事叶わず、置き土産を残して撤退していった。

 だが、その置き土産こそが最も重要だった。

 彼らが戦うのは、エネルギーを無為に消費して宇宙に還元しない知的生命体を滅ぼすため。

 宇宙が熱的死を迎えるまでの時間を少しでも遅くするため、即ち延命のためである。

 そんな彼らの目の前に、とあるものが現れた。

 

 人の、知的生命体の感情すらエネルギーへと変換してしまう、彼らをして理解できない程の叡智の結晶が。

 

 自らの至上命題を解決する手段を目の前に提示され、彼らは殺到した。

 何としても手に入れる。

 何を犠牲にしても奪い取る。

 だって、それが、それだけが、彼らの夢を叶える願望器だから。

 だが、彼らの夢は叶わない。

 あの輝きは、あの光は、彼らの無法への怒りだから。

 彼らの夢を否定し、拒絶し、絶滅させるための光輝だから。

 故に、

 

 

 『光あれ。』

 

 

 全てが光に包まれた。

 

 

 

 

 




いつもの草原で、ホラクロンは目を覚ました。
随分長く眠っていたようだった。
そもそも睡眠なんてしない存在の筈なのだが、どうして彼女は眠っていたのか。
それすらもよく分かっていない。
ただ、彼女が見ていた夢の内容だけは、しっかりと彼らのライブラリに記録されていた。
だから、彼女は、彼らは決めた。

「あの領域に辿り着きましょう。」

そして、彼らは久々に本格的に動き出した。
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