多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
説明不足だった所を補った話になります。
大変申し訳ありませんでした。
新西暦186年9月20日 月 フォンブラウン市
その郊外の集団墓地には先日新たに亡くなった人物の墓がひっそりと佇んでいた。
しかし、葬儀から間もない事、彼を良く知る人物達からの献花が未だ途絶えない故か、その墓には色取り取りの花々が添えられていた。
トレノフ・Y・ミノフスキー ここに眠る
新西暦125~186年
ミノフスキー物理学の開祖たる科学者として激動の時代を生き抜いた男が、今はここで静かに眠っている。
葬儀は戦時下と言う事もあって当時月にいた関係者だけが参列したが、彼に恩義を感じる者達が時間の出来次第ここに訪れている。
「ゆっくり休んでくれ、博士。」
「………。」
片やジオン共和国軍最強のエースと名高い赤い彗星シャア・アズナブル。
片や地球連邦軍最強のNTと名高い白い悪魔アムロ・レイ。
一年戦争中は殺しあったこともある二人は数年前からは義兄弟でもあり、今はただ世話になった故人を偲んでいた。
「…行こう。無理を言って済まなかったな。」
「良いさ、これ位。博士には僕もお世話になってたからな。」
二人とミノフスキー博士は戦後の新型主力機開発計画で幾度も激論を交わし続けた仲だった。
それでもプロジェクトメンバー達の仲が悪いなんて事はなく、只管に実力のみが問われたこの開発計画ではスペースノイドもアースノイドも、オールドタイプもニュータイプも関係なく、次なる地球人類を守るための力を鍛え上げるべく力を尽くした。
あの計画で開発された機動兵器とその系譜は今、太陽系に住まう人類を守るための力となって振るわれている。
ミノフスキー博士の持つ各種特許(ジオン公国時代のは賠償金代わりに売却済み)は現在A.I.Mグループに委託され、その特許使用料は最低限の手数料を除いて一年戦争時に発生した被害の賠償並びに孤児達の支援へと使われている。
せめてもの罪滅ぼしだよ、とは以前宴会の席で博士がテムに零していた言葉だった。
だが、それで救われた者達からすれば、それがどんな経緯で誰が出した支援であったとしても、救いの手である事に違いは無い。
故に彼の墓には未だ献花が絶えないのだ。
「妻には会っていかないのかい、義兄さん?」
「義兄さんは止めてくれ…。何、心配せずとも勝ってから会いに行くとも。」
本当はアムロの前で妻同士で共有している色々な(主に情けない)話を暴露されたくないというのも大きいが、事前に心残り全部を晴らしておくとうっかり戦場から帰りたくなくなってしまうかもしれない、なんて思っているのもあった。
「やはり会わずに行くつもりだったんですね、兄さん?」
「おい おいアムロ。」
「いやぁどうしても会いたいって言うからさ。」
そして、墓地の出入り口でその腕に娘を抱えたにっこり笑顔のセイラ・M・レイに出待ちされていた。
その妹と姪の姿を前に、シャアは思わずアムロの胸倉を掴んで問い詰めるが、アムロの方は悪戯小僧そのままのしてやったりと聞こえてくる程の笑顔だった。
「全く、変な所で臆病なのはちっとも変ってないんだから…。軍のシャトル出発時間までまだまだ時間があるんですから、宇宙港の喫茶店にでも入りましょう。そこでみっちり話し合いましょうか。」
呆れつつ、有無を言わさずエレカを確保して乗り込むセイラ(二児の母となって肝っ玉強化済み)に対し、シャアはここぞとばかりにNTのキュピーンを用いてアムロと念話する。
なお、エレカのハンドルを握るはテムで、助手席には彼の初孫がチャイルドシートに埋まるようにして眠っている。
ちなみにここの宇宙港の喫茶店の一つにはA.I.Mグループの系列店である喫茶店間宮フォンブラウン宇宙港支店があったりする。
(おいアムロ、義兄の危機だ。手を貸してくれ。)
(諦めて処されてくれ義兄さん(笑)。それもこれも何だかんだ理由付けて顔出さないからだぞ。)
(アムロ、謀ったな、アムロ!)
(恨むなら今までの己の行いを恨むんだな、シャア!)
「早く来なさい!」
「「は、はい!」」
斯くして最強NTコンビは急いでエレカに乗り込むのだった。
この24時間後、極東に二機の新型MSとこの二人が降り立つ事となる。
……………
新西暦186年9月21日 地球 極東方面 伊豆基地
「諸君らに集まってもらったのは他でもない。欧州方面奪還作戦の事だ。」
極東方面軍司令官たる岡長官は講堂に居並ぶ面々を見渡す。
ゲッターチーム、マジンガーチーム、コンバトラーチームにボルテスチーム、獣戦機隊。
竜崎一矢にひびき洸、宇門大介に明神タケル。
誰もが名だたる特機のパイロットであり、民間所属の彼らを纏めるために急遽編成された特別遊撃部隊マーチウィンドの主力メンバーだった。
その隣にいるのはSRXチーム、ATXチーム、マサキ・アンドーにリューネ・ゾルダーク。
元教導隊のメンバーにヒリュウ改のパイロット達、そして急遽呼び出された連邦軍とジオン内で最強の呼び声高いNTコンビに沖女から呼び出されたトップ部隊教官女性陣三人衆からなるISA戦術専門特務部隊αナンバーズ。
最後に地球連邦軍参謀本部直属空中機動艦隊所属のスカル大隊の面々+教導隊から引っ張ってこられたD.D.イワノフ(奥さんのノーラは産休中)だ。
大凡現在地球圏にいる最も腕の立つパイロット達を掻き集めたと言っても良いメンバーであり、これ以上の人員は今現在望めないと言っても良かった。
「皆、資料は行き渡ったな?今度の欧州奪還作戦の概要を説明する。」
簡単に説明すると、海上と陸上部隊が全方位から攻め立て、敵中枢の戦力が薄くなった所からISA戦術対応艦隊による敵中枢へのISA戦術を実行する。
第一段階、明朝に敵地に潜入した特殊部隊・コマンドゲリラ部隊による破壊工作。
第二段階、陸上・海上からの長距離ミサイル並びに長射程砲による準備攻撃。
第三段階、陸上・海上の機動兵器部隊による攻撃開始。敵機動部隊への対応並びに排除を目的とする。
第四段階、以上を陽動とした状態でISA戦術専門部隊による敵中枢への攻撃。
「君達の担当となるのはこの第四段階に当たる。具体的な手順に関してはブライト中佐にお願いしよう。」
「説明を担当するブライトだ。これより我々が行う欧州方面のムゲ帝国軍中枢への突入作戦について説明する。」
そして、ブライトが説明した作戦内容は驚くべきものだった。
多くのパイロット達(特にスカル大隊)は驚愕に目を見開くか口元を引き攣らせ、反対にマーチウィンドの面々は面白そうだと口元が弧を描く。
が、こんな滅茶苦茶な作戦や戦闘には慣れている連中はまたかー…と半ば以上諦めの境地に達している状態だった。
「説明は以上になる。誰か、質問はあるか?」
「はい!スカル大隊ヴァーミリオン小隊所属の一条輝軍曹であります!」
「よし、質問を許可する。」
「は!この作戦では母艦への危険が高過ぎると思いますが、よろしいのでしょうか!?」
「この作戦において優先すべきは敵精神攻撃兵器への対処だ。母艦の危険性は確かに憂慮すべきだが、だからこその前線部隊の陽動作戦だ。我々は多少のリスクは承知の上でこの任務を絶対に成功させる必要がある。」
「………。」
「先立って冥王星基地の太陽系防衛用無人機動部隊よりズール帝国軍の通信量の増大が確認された。連中も近い内に仕掛けてくる。その前に地球での憂いを取り除き、戦力を宇宙に集中させる。この戦いは太陽系から侵略者を追い出すための第一歩になるだろう。」
おお、と場がざわめく。
今度は恐れではなく興奮で、だ。
基本、パイロットなんてやってる人種は向こう見ずでプライドが高く、粋や浪漫に生きている。
この様な事を一年戦争の名指揮官と言われる人物に言われ、血潮が滾らない者はこの場にいなかった。
まぁ、アムロとシャアは(ブライトの奴、無理して盛り立ててんなー)と苦笑しながら見ていたが。
「作戦決行は明後日明朝と同時だ。各員、それまで万全の「ほ、報告します!」
そこに突然焦燥を顔一杯に刻んだ通信士官が駆け込んできた。
「どうした…ブリーフィング中だぞ!」
「構わん。報告したまえ。」
ブライトの叱責を制し、岡長官が小走りで寄ってきた士官から報告を耳打ちされる。
その内容を理解したと同時、岡長官は驚愕と共に叫んだ。
「何、欧州方面で戦闘が開始されただと!?」
「な、確かなのか!?」
「クシュリナーダ准将閣下から参謀本部への緊急電があったとの事です!間違いありません!」
その内容に一同は愕然とした。
「一体何があった!?」
「その、現場も混乱して確定ではないのですが、一部の兵士が錯乱・暴走して友軍を攻撃、同時にムゲ側が旧英国領に向けて侵攻を開始したとの事です。」
この場にいる彼らは知る由もないが、ジブリール派の研究者らが用意したフォウ・ムラサメを始めとした強化人間らが遠距離から微弱ながらも発せられた精神攻撃兵器に大きく反応し、錯乱した事が原因だった。
ムゲ側はジブリールの根拠地たる東欧方面で入手する事に成功した強化人間の研究の一部資料(電子データではなく紙媒体)から強化人間のスペックの高さと不安定さを知り、それを利用して欧州方面軍最後の拠点たる旧英国領を攻略しようとしたのだ。
本来の予定ならば洗脳される筈なのだが、予想外に未熟かつ不安定な強化人間への措置が原因で錯乱・暴走を開始してしまった。
折しも旧英国領は極東方面と比較して9時間もの誤差がある。
今、旧英国領は正に夜明け前の空が白み始める時間、即ち朝駆けには絶好の時間帯だったのだ。
『まぁ急造の強化パーツではこんなものだろう。』
『だが、戦果としては十分だ。』
『うむ。では予定通り旧英国領に進軍を開始する。ヘルマット、任せたぞ。』
『おう、吉報を待っていろ!全艦、我に続け!欧州方面から地球人共を今度こそ追い出ずぞ!』
こうして、ムゲ帝国軍は連邦軍よりも一歩早く次の行動へ移ったのだった。
「…チャンスだな、これは。」
旧フランス領から迫り来るムゲ帝国軍と味方機の暴走によって混乱と被害が広がる状況下で、トレーズは呟いた。
今や欧州方面軍総司令官を任ぜられたこの男は、この事態を奇貨とするに十分な才覚を有していた。
「敵が進軍してきているのならば、陽動の役割としてはこれ以上ない。」
「作戦を早めるという事ですね?」
「あぁ。総司令部に通達してくれ、レディ。欧州奪還作戦は予定よりも繰り上げて行われたし。敵主力は当方で引き付ける、とね。」
「畏まりました。」
態々引っ張り出そうとしていた敵が向こうから押し寄せてきたのだ。
これを利用しない手はトレーズの中には無かった。
「全軍、戦闘開始。錯乱する機体と兵士は全て敵として処理。然る後にムゲ帝国軍に対処せよ。」
こうして、一年戦争以来となる地球上での大規模会戦が幕を上げた。
この日から始まる戦闘を後世の人々はBOE、即ちバトル・オブ・ヨーロッパとして地球の戦乱の歴史の中で長く語られ続ける事となる。
所々ギャグを挟みつつ、遂に欧州方面奪還作戦開始です。
と言ってもムゲ側が先制してきましたがね!