多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第47話 バトル・オブ・ヨーロッパその2

新西暦186年9月21日 地球 欧州方面

 

 「…了解した。こちらも予定を早める。」

 

 Piとアラン・イゴール大尉は通信を終了した。

 

 「で、やっぱ当たりだった?」

 「デュオか。あぁ、ムゲ共は旧英国領への侵攻を開始した。」

 「やけに慌しいと思ってたらやっぱりかよ…。」

 

 アラン・イゴール少佐。

 彼はロス・イゴール地球連邦軍少将の一人息子であり、ゲリラ戦・情報戦の名手であり、対侵略者向けゲリラコマンド部隊「黒騎士隊」の隊長である。

 なお、副隊長は遂に告白してきた沙羅を振って、目のハイライトの消えた彼女から逃げるために最前線の更に奥までやってきたシャピロだったりする。

 余談だが、失恋で飲んだくれる沙羅に忍が「オレじゃ駄目か?」とアタックし、見事捕食からのカップル成立してたりする。

 良かったねシャピロ!君の目的は果たされたよ!

 で、そんなアランがここ欧州の地に部下達と共にいる目的は一つ、ムゲ帝国軍相手の妨害作戦のためである。

 本来なら民間人を巻き込みかねないゲリラ戦は旧世紀の国家間の戦争では表向き禁止されているが、ムゲ帝国軍との間にはその辺の戦時条約とかが一切結ばれていない。

 即ち、拷問もゲリラ戦もNBC兵器もやりたい放題なのだ。

 この辺は一年戦争開戦初頭のジオン軍にも通じる。

 とは言え、地球上での核弾頭の使用や細菌兵器の使用は流石に敵の逆鱗に触れかねないので使用しない。

 やるのは敵後方地帯での破壊活動並びにそれによる陽動作戦である。

 潜入を始めとした特殊作戦の専門でもある国際警察機構からの助っ人とコロニーから送られてきた民兵の少年兵ら5名(明らかに高過ぎる練度と専用のガンダム型MS付きで!)と合流した彼らは陥落した欧州方面に潜伏し、ムゲ帝国軍の情報収集並びに破壊工作を進めていった。

 とは言え、敵の補給ルートや指揮官の位置等の情報収集と違って、破壊工作は逃げ遅れた民間人への被害を考慮して極小規模なものに留まっていた。

 例えば、兵の食事に下剤が混ざっていたり、調味料が摩り替えられていたり、大事な書類が無くなっていたり、車両が頻繁に故障したり、ネズミや虫による食料や書類への食害が頻繁に発生したりである。

 一つ一つは何でもない事だが、塵も積もれば山となる様にそうした些細なハラスメントによって侵攻部隊の進軍速度や物資・兵員の集中は遅れ続けていた。

 余りに遅い物資の集積にムゲ宇宙から物資を送るべく事務方として辣腕を振るっていたルーナが文句を付けてやろうと前線視察に来た時は下水道から多数のネズミやゴ○ブリが湧き出してくるというハプニング(下水道内でガス状の殺鼠・殺虫剤を撒いたのが原因)が発生し、遂には半狂乱になったルーナの命令で対歩兵用火炎放射器を備えた掃討戦用の歩兵部隊が投入される事態にも発展した。

 結果、ルーナはこのハプニング以来地球には決して来る事はなくなった。

 そんな感じで徹底的に嫌がらせに終始していた彼らだが、今から数時間前にムゲ帝国軍が欧州方面最後の砦にして奪還作戦の基点となる旧英国領への侵攻を開始したとの報告が届いたのだ。

 

 「なら、間も無く欧州奪還作戦が発令されるな。」

 「シャピロか。そっちの準備はもう良いのか?」

 「村雨の奴が敵司令部のある基地へと潜入して、最後の仕込みをしている。奴の撤退を確認後、花火を上げる。」

 「そして上げた直後にISA戦術部隊が降りて来る。」

 「それに合わせてオレらも参戦する、と。予定通りだな。」

 「デュオ、お前達は撤退しろ。ここから先は大人の仕事だ。」

 「冗談言うなって。ムゲの奴らはコロニーにも襲い掛かってきた。しかも宇宙にはまだまだ次が控えてる。一年戦争でも沢山のコロニーが攻撃されて、軍人も民間人も大勢死んだ。」

 「……。」

 

 森の中、周辺に合わせた色彩に自動的に合わせてくれる自動迷彩仕様のテントの中に沈黙が広がる。

 デュオの言っている事は正しく、地球連邦はまだまだ外敵と戦わねばならない。

 そのためには少しでも多くの優秀な兵士が必要となる。

 欧州方面のくだらない政治的な問題で始まったこの戦いで、貴重な人的・物的資源を消耗する様な事は避けたいというのが正直な話だった。

 だが、それで民間人の少年兵を投入すると言うのは市民を守る地球連邦軍としても、一人の大人としても間違っている。

 そこにもう一人、コロニーからの少年兵が現れた。

 

 「ムゲ、ズール、バルマー。それらを排除するためにもここで少しでも損害を抑える必要がある。」

 「ヒイロか。機体の調整は終わったのか?」

 「あぁ。後は出撃するだけだ。」

 

 5人の少年兵達の中でも特に無愛想な二人の内の一人が現れる。

 整った容姿を微塵も動かさないその少年の名はヒイロ・ユイ。

 嘗てのコロニー独立運動の活動家の一人であった人物と同じ名を名乗る少年は、その年齢からは想定できない程に兵士として完成していた。

 

 「! アラン隊長、暗号通信です!」

 「解読しろ。」

 「…長い者が、5人…船から降りる、です!」

 「聞いたな?5時間後だ。各員、装備の最終点検に移れ!不要な装備や記録は残さず廃棄!ムゲ共を欧州から追い出す大仕事を始めるぞ!」

 

 アランの命令に、テント内の人員が表向き静かに、しかしその胸の内を熱くしながら駆け回り始める。

 後5時間、それで彼らの仕事の大詰めが始まるのだ。

 

 「お前達、すまないが丁寧に逃がすだけの時間はない。」

 「別に良い。そちらが立場上構うのなら、こちらは勝手に参戦する。」

 「祭りにオレらだけハブられるなんて無しだぜアラン。」

 「………勝手にしろ。他の連中にも伝えておけ。」

 「素直じゃないねぇ。」

 「了解した。こちらも準備に入る。」

 

 欧州亜大陸史上最大の戦い、そのメインイベントが間も無く始まろうとしていた。

 

 

 ……………

 

 

 ヒイロ・ユイ。

 デュオ・マックスウェル。

 カトル・ラバーバ・ウィナー。

 トロワ・バートン。

 張・五飛。

 この5人の少年が態々コロニーから対ムゲ帝国軍の最前線にして最激戦地にやってきたのは、コロニーに隠れ潜む5名の博士と各サイドに潜むコロニー独立派からの指令だった。

 一年戦争前ならいざ知らず、現状ではコロニーが独立する必要性は無い。

 何だかんだ言って命を賭けてコロニーを守り、スペースノイドを助け続けた地球連邦軍並びに政府に対し、スペースノイドの代表面をしながらも組織的大虐殺を行ったジオン公国とでは明らかに前者の方がマシだとスペースノイド達が判断していた。

 また、その後も外宇宙や異次元からの侵略者に魔神覚醒の様な未知の脅威の発見や誕生の可能性も高い事から、独立活動は下火も下火になっていた。

 加えて、それでも過激な思想を持った者達にもある情報が出回り始めると、困惑と共にその活動も下火になっていった。

 

 曰く、地球連邦がA.I.Mの支援の下に大規模な長距離移民船団を組織しようとしている。

 

 太陽系の外に新たな新天地を探して旅に出るというのだ。

 これが成功すれば地球圏が滅んでも地球人類の存続が叶うし、侵略者を防ぐ外郭部を形成する事が出来る。

 また、コロニーのみならず太陽系だけでは追い付かない地球人類の人口問題もこれなら合法的に解決する事が出来る。

 これだけなら画餅になるが、そこにA.I.Mが加わるなら話は違う。

 彼女らなら必ずやこの計画を明後日の方向から成功に導くだろうという厚さ30mの鉄筋コンクリート並みの厚い信頼がスペースノイド達の間にはあった。

 安心と驚愕のA.I.M。

 彼女らは火星を独力で、木星を一番乗りで開拓し、連邦政府へと多大な影響力を持つ強大無比な巨大企業グループ。

 揺り籠から墓場まで、螺子一本からコロニー、果ては超巨大戦艦まで。

 あらゆる産業に根を張る彼女らなら、確かにその経歴からもやってのけるだろうという信頼があった。

 事実、密かにこの噂を確認するためにA.I.Mグループお客様総合相談センターへと質問した者は「現在企画中の案件ですのでお答えできません」との返答を貰っている。

 つまり、「企画中の案件」なのだ、長距離移民船団は。

 即ち、何れ実現化する見込みが極めて高い。

 これにはコロニー独立派も合法的に新天地で独立する事も夢ではない。

 加えて、連邦政府のこれまでの方針からしても、移民船団は監視の目の届かない事からも積極的な自治を推進する可能性が大いに高い。

 そうなれば、態々危険な真似をして、同じスペースノイドから反感を買ってまで過激な運動をする必要は無い。

 更に言えば、ミノフスキー博士が当時形にしたばかりの亜光速推進器であるミノフスキードライブの実用化に加え、プロトカルチャーの遺産から実用化された長距離空間転移ことフォールド航法も既に実用されているし、チューリップ型ゲートまであるのだ。

 確かに、長距離移民船団を組織し、運用するだけの下地は既に十分整っていたから、頑なな者であっても有り得ると説得できる材料は十二分だった。

 こうして、コロニー独立派達はその運動を縮小し、密かに移民船団への希望者の募集と準備を始めていく。

 同時に困り事が出来た。

 

 5人の少年兵と5人の博士達、そして彼らの持つ5機のガンダム型MSの処遇である。

 

 元はコロニー独立活動が過激化した場合に備えてのものだったが、連邦政府に露見した場合を考えるとどうにかして処分した方が良い。

 しかし、マッドサイエンティストな5人の博士らは兎も角として、少年兵らを排除するのは彼らにも躊躇われた。

 加えて、その内の一人はコロニーと地球双方に顔の利く富豪の跡取り息子であった事からも強引な方法は取れなかった。

 なので、5人の博士らとも相談した上で彼らは決断した。

 

 曰く、地球連邦政府に協力しよう。

 

 自分達だけでは屁の突っ張りにもならないだろうが、厳しい訓練を受けた少年兵5人と博士達の作った特化型高性能ガンダムならばこの戦局でも十分に役立つ事が出来るだろう。

 元の目的がどうであれ、使えると判断されたならば罰される事は無いという希望的観測もあって、5機のガンダムとそのパイロット達は侵略者を排除するべく地球へと降り立ったのだった。

 なお、彼ら活動家達は後に連邦軍情報部から念入りに警告を受け、以降移民船団に乗るまでそれはもう大人しくなるのだった。

 これが彼ら5人の少年兵らが地球に降りた経緯である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




村雨の「見ない顔」フラグ&W組参戦の経緯の巻。

なお、五機のガンダムのデザインはカトキ版です。
性能も現在の主力量産機に搭載されている機能や構造を解析した5博士らによって大きく強化されています。
具体的にはガンダニュウム合金+ステルスクローク(A.I.M通販)による高度なステルス能力。
DF・ガンダニュウム合金・ビームシールドによる三重の防御。
小型化に成功したプラズマリアクターの高出力から来るパワーと火力。
各特化武装に加え、手首のビームガン兼ビームサーベルによる汎用性の向上。
MSという兵器の運用情報の蓄積を活かしてのOSの最適化。
総合的には準特機級の性能を誇ります。
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