多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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何時スランプやリアル事情で書けなくなるか分からんのだし、書ける時に書いておこう。

そういう訳で投下です。


第50話 バトル・オブ・ヨーロッパその5

 新西暦186年9月21日 地球 欧州方面

 

 『ああああああああああああ!?私は、私は、私は!?!』

 『ぐぁ…!落ち着け、正気に戻ってくれゼオラ!』

 

 旧英国領。

 強化人間達の半数以上が暴走・錯乱し、周囲の目に付くもの全てに攻撃を仕掛けるという事態から始まったヘルマット率いる部隊の侵攻はドーバー海峡を主戦場としていたものの、旧フランス領のカレーと旧英国領のドーバー周辺にまで戦場を拡大化して激化の一途を辿っていた。

 そんな中、数少ない暴走を免れた強化人間達、即ちブーステッドチルドレン達は未だ暴走状態のゼオラの動きを封じながら、迫り来るムゲ帝国軍を相手に奮闘していた。

 

 『こ、のぉ!』

 『姉さん!もうこれ以上は弾薬がもたないわ!』

 『駄目よ、ここで後方に戻ったらゼオラが処分される!』

 『でも、でも、ゼオラはもう…!』

 『泣いちゃ駄目!まだ諦めないで!』

 

 既にしてエース級の腕前を持つオウカ・ナギサが前衛で敵を引き付け、臆病ながらも命中と回避が得意なラトゥーニ・スゥボータが支援射撃を行う事で辛うじてゼオラとアラドの二人の元へは敵が行っていない。

 しかし、元々継戦能力という面では試作機故に殆ど考慮されていないギャプランでは間も無く内蔵式ビームライフルの残弾が無くなる。

 腕部ビームガン兼ビームサーベルはまだ余裕があるが、火力の低いそれだけで乗り切れる程この戦場は温くない。

 

 『おい!そこのギャプラン隊、何をしている!錯乱した味方機は排除しろと命じられただろうが!』

 『っ!』

 

 そこに遂に恐れていた事態が起きてしまった。

 地球連邦軍欧州方面軍か増援部隊かは知らないが、正規軍所属のジェガンが来てしまったのだ。

 

 『ま、待ってくれ!こいつは大事な家族なんだ!今はまだ暴れてるだけで…!』

 『…少年兵か。』

 

 アラドが必死になって繋いだ通信を聞いて、先程こちらに呼び掛けてきたパイロットが苦渋の滲んだ声を漏らした。

 明らかに志願可能な16歳未満の少年兵で、ギャプランに搭乗している=強化人間の類。

 眉唾な噂だと思っていたが、目の前にいる重犯罪の生きた証拠にして被害者の姿に、ジェガンのパイロットはやり場の無い憤りに駆られた。

 

 『そうなってしまってはもう無理だ。他の強化人間達も殆どは危険だからと排除された。

幸い、お前とあっちの二機はまだ無事だ。そいつの処分はこちらでするから、お前達は後方に下がって補給を受けるんだ。』

 

 努めて平静な声にしようと多大な労力を費やしながら、ジェガンのパイロットはそう言い切った。

 彼は軍人であり、パイロットであり、兵士だ。

 故に今見た出来事は生還できれば後で上官に報告して証拠として映像・通信記録を提出するし、何なら法廷で証言しても良い。

 しかし、その前に先ずこの戦場を生き抜く必要があり、目の前の少年兵達を生かして後方の送る必要があった。

 だからこそ、彼は汚れ仕事同然の行いを自分でする事に決めた。

 

 『だ、ダメだ!こいつは、ゼオラとはずっと一緒だったんだ!』

 『じゃぁ、ここで全員討ち死にするか?あっちの僚機はもうじき限界が来るぞ?』

 

 アラドがそちらを見ると、今も必死に姉貴分のオウカと妹分のラトが必死に敵の攻勢を食い止めている。

 だが、既に弾薬が危ういのか、徐々に押されつつある。

 もう間も無く突破されるだろう。 

 

 『あああ、ああああああああああああああ!!』

 『…その子の処分はこちらでする。お前達は自分達が生き残る努力をしろ。』

 

 アラドと通信中だった故に、接触回線から漏れてくるゼオラの叫び声に、ジェガンのパイロットは今度こそその声に苦渋の色を載せてしまった。

 それ程に非道であり、外道であり、無情な状況だった。

 

 『っ…!この馬鹿女!』

 『おい、坊主!?』

 

 そして、いい加減に頭に来たのか、アラドが怒鳴った。

 

 『料理下手!音痴!デカパイ!くまさんパンツ!』

 『』

 

 聞いていたジェガンのパイロットが絶句する程の幼稚な罵詈雑言。

 しかしまぁ、精神攻撃で揺さぶられて錯乱している人物を激怒させ、激しい感情で明確な意思を呼び覚ますというのは意外と理に叶っている。

 意識してか直感かは知らないが、その目論見は成功した。

 

 『この馬鹿!エッチ!胸の事ばかりか人の下着の事まで言わないでよ!』

 『ぐええええッ!?』

 

 そして、予定調和というか当然というか、酷い事になった。

 激情のまま、ゼオラはアラド機の拘束を抜け出し、ただ感情のままアラド機の頭部をガンガンと殴りつける。

 

 『悪かった!ごめん!謝るから』

 『ア・ラ・ド・のォ!ぶわかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 何とか謝罪して許してもらおうとしたのだが、哀れアラドの言葉が届く前にゼオラ機の回し蹴りによってアラド機の頭部は粉砕され、吹っ飛ばされるのだった。

 

 『……あーゴホン。そっちのお嬢ちゃんは正気に戻ったって事で良いのか?』

 『へ、え、あ!すすすすいません!お手数お掛けしましたー!』

 

 漸く正気に戻ったゼオラは置いてけぼりのジェガンのパイロットに謝罪を入れる。

 次いで、一時的に敵の攻勢が止んだのか、オウカとラトのギャプラン二機も降りて来た。

 

 『ゼオラ、よく戻って…!』

 『よ、良かったぁぁぁ…。』

 『姉さん、ラト!』

 『お、オレに対しては何も無しかよ…。』

 『アンタはもう少しデリカシーを学びなさい!』

 

 四機の中で一番損傷の激しいアラドが訴えるも、恥を晒す事になったゼオラが怒鳴る。

 

 『あー……お前さんら、その状態なら後退できるな?もう精神攻撃なんて浴びない様にして一旦下がれ。』

 

 こうして、何とかブーステッドチルドレンの面々は全員が初陣を生還する事に成功したのだった。

 

 

 ……………

 

 

 同時刻 ドーバー海峡にて

 

 デストロイガンダムがその全身の火器を発射しながら、海上を旧フランス方面に向けて移動している。

 テスラドライブのおかげで辛うじて浮く事の出来る本機は、意図してか撃破しない限りは海中に没する事はない。

 加えて、PS装甲にDF、ビームシールドに元々の重厚な装甲もあって、やたら頑丈だった。

 結果、ムゲ帝国軍と欧州方面軍から集中砲火を受けながらも全く堪える様子も無いままに未だ暴れ狂っていた。

 

 『落ちろ、カトンボ!』

 

 両腕の腕部飛行型5連装ビーム砲が指を折り曲げた状態で発射され、空中にビームの網を形成、接近しようとしていたゼイ・ファー数機とドル・ファーの編隊があっと言う間に爆散する。

 更には背部バックパックの10門もの照射型ビーム砲が己に敵意を向けて来る欧州方面軍所属MSに向けてビームを照射する。

 しかし、その多くは回避、或いはDFに阻まれて撃墜する事は出来ない。

 元より対空砲としての意味合いが強い武装なので、威力自体がそこまで高くない事も大きかったが。

 

 『えぇい、何という事だ!』

 

 一方、幾度も挑発を行い、何とかデストロイガンダムを誘導していたゼクスはいい加減に苛立ちが大きくなっていた。

 あのデカブツ、と言うよりも強化人間達のせいで欧州方面軍は混乱してばかりだ。

 彼は知らないが、アレを戦場に持ちだしたジブリール等は既に逃げ出そうとした所を憲兵隊に逮捕され、楽しいお話タイムに入った所だった。

 

 『各員、デストロイを盾にしてムゲ側の攻撃を集中させろ!ミサイル以外はDFとブレイクフィールドで防げる!焦らず怯えず冷静に対処しろ!』

 

 欧州方面の戦禍は未だに拡大の一途を辿っていた。

 

 

 ……………

 

 

 『今回のミッションは欧州を占領中のムゲ帝国軍の中枢への強襲作戦だ。』

 

 『ムゲ帝国軍は直径6kmにも及ぶ巨大な円盤兵器を制圧した旧ドイツ領ラムシュタイン空軍基地近郊に12基を着陸させている。それらを連結して大規模な工廠や機動兵器運用能力を持った巨大な基地施設へと改装している。事前の偵察によってここに敵の司令部が存在している他、ムゲ帝国の存在する異次元への渡航用設備があると推測されている。故に、敵の補給並びに指揮系統を断つために我々ISA戦隊がここを強襲する。』

 

 『大気圏外からの突入と同時にマクロス、メガロード、スペースノア改、ヒリュウ改、ハガネ、クロガネ、シロガネの合計7隻によるアウトレンジからの特装砲による敵基地への砲撃。後に陣形クロガネを先頭したアロー体制に変更して大気圏内に突入。以降は残存敵戦力の掃討戦へと移行する。』

 

 『掃討戦に移行する前、未だ無事なメガロプレッシャーの存在が確認された場合、マクロス並びにメガロードの両艦は強行形態へ移行してのマクロスアタック並びにデストロイドモンスターによる光子砲弾を用いた砲撃を行い、これを撃破する。だが、ここまでやっても敵の精神攻撃兵器を全滅させられるかは分からん。』

 

 『故に対策として機動兵器部隊は砲撃を行う直前、上空よりスカル大隊の護衛を受けながら降下する。艦隊へと攻撃を行う敵軍の中から精神攻撃兵器搭載機を発見し、最優先で撃破せよ。艦隊も発見次第位置情報の送信並びに攻撃を行うが、余り期待はするな。例え艦が落とされても、精神攻撃兵器搭載機の撃破を優先しろ。作戦内容は以上だ。』

 

 『事前に情報収集や破壊工作等、潜入部隊による工作活動は行われているが、敵の激しい抵抗が予想される。加えて、敵司令官の率いる精鋭部隊並びに精神攻撃兵器を搭載した機動兵器の存在も多数確認されている。はっきり言って、生還の確率は低い。』

 

 『だが、この戦いは地球を、人類を守るためには避けては通れない作戦であり、この場に集まった者達とならば必ずや作戦を勝利させ得るだろうとも私は思う。』

 

 『以上だ。各員の奮闘と努力に期待する。』

 

 

 こうして、後に「馬鹿と冗談が総動員」「ガンギマリ特攻大作戦」「いつもの地球人類」「なんであいつらこれで成功した上に殲滅してくんの???」「物量比1:10超え。なお結果」とか散々言われるISA戦隊の初の大規模作戦となるのだった。

 

 

 

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