多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第55話 ボーナスステージ(強制)その2

 新西暦186年9月24日 地球 欧州方面 旧ギリシャ領

 

 デルポイに集まったムゲ帝国軍地球侵攻部隊の数はその往時の1割にも届かなかった。

 いや、寧ろ1割も逃げ遂せたと称えるべきだろう。

 この三日間、全方位から今までの復讐だと攻めかかってくる地球連邦軍によって、散々に撃滅されていたのに足の速い戦艦に機動兵器と航空兵器とそれらに積載できた歩兵部隊のみとは言え、地球連邦軍基準で一個師団程度は確保出来たのだから。

 地球連邦軍基準(一年戦争時08小隊より)ではMS3機(+ホバートラック)で一個小隊となり、中隊で9機、大隊で27機となる様に所属部隊は基本三つで統一されている(戦闘で減ったり、一時的に増強したりはされるが)。

 で、大隊から上の連隊が81機、旅団が243機、師団が729機になり、残った一割が一個師団に相当する戦力になる。

 こう考えるとムゲ帝国軍地球侵攻部隊がどれだけの兵と兵器を失ったのかが分かるだろう。

 同時に地の利があったとは言え、たった三日でここまで叩いてみせた連邦軍の異常さも浮き彫りになっているが。

 それはさて置き、現在の彼らは空間の特異点とも言えるデルポイに設置されたメガロプレッシャー改装型ゲートシステムを起動すべく準備を進めていた。

 

 「えぇい、まだゲートは開かんのか!?」

 「も、申し訳ありません!現在、技官総出で取り掛かっておりますが、空間がこれまでになく不安定でして…!」

 「ぬぅ…事故の起きぬ範囲で可能な限り急げ。最早敵の攻撃まで猶予は無いぞ。」

 

 しかし、何故かシステムが不調であり、起動が遅れていた。

 勿論、どっかの誰かさんの仕込みである。

 イライラとするギルドロームはそれ以上話す事なく技官に行けと命じてどっかりとムゲ戦艦内の艦長席へと乱暴に座る。

 帰還した所で、罷免は免れないだろう。

 だがしかし、自分は命を賭けて戦ってくれた将兵らのためにも生き延び、事の次第を帝王様に奏上する義務がある。

 処罰され、処刑されるのはそれからでなくてはならない。

 焦りと苛立ち、絶望がジワジワと蔓延する中、警報が鳴り響く。

 

 「どうした!?」

 「敵襲!敵の大攻勢です!」

 「総員、戦闘配備だ!何としても時間を稼ぐのだ!」

 

 こうして、ムゲ帝国軍の地球最後の戦闘が開始された。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦186年9月23日 地球 欧州方面

 

 「今回の我々の作戦はデルポイにて集結しているムゲ帝国軍残存戦力の撃滅になる。」

 

 スペースノア級4隻とヒリュウ改へと繋げられた通信で、ブライト少佐が説明を始めた。

 なお、マクロス級2隻はこの作戦には参加していない。

 また大砲ブッパしては鹵獲できるものも出来ないし、地球上で運用するにはサイズが大き過ぎて入れるドックや補給施設等が欧州には無いからだ。

 後、デカいだけあって運用コストがちょっとスペースノア級よりも桁が一つ違ったりする。

 主だった艦載機であるスカル大隊は各地で逃げ遅れながらも徹底抗戦を続ける死兵化したムゲ軍相手に局所的に押される連邦軍への救援、即ち元の火消任務に、三機の正式量産版シズラーは沖女に戻り、二機のジガンスクードⅡはそのまま両艦に配置される事となった。

 なお、スカル大隊の母艦は以前のストーク級と追加されたグレイである。

 

 「敵が撤退のために用いると予想されているゲートシステムだが、その傍の敵中枢への通常部隊での攻撃はリスクが多く、最悪空間崩壊からの大災害に繋がりかねん。そのため、通常の連邦軍ではなく少数ながらも戦力・機動力に富む我々が担当する事となった。」

 

 現状、陸上戦艦や航空母艦はまだまだ貴重であり、更にその足の速さは万能母艦であるスペースノア級やヒリュウ改の方が圧倒的に上である。

 機動兵器に関しては千差万別であるものの、ゲートシステムを刺激せずに早期に敵を駆逐するには通常の量産機よりも遥かに高い性能と腕の良いパイロットを揃えているISA戦隊は都合が良かったのだ。

 加えて、敵増援が出て来る等の可能性も否定できず、先の敵司令部強襲作戦以降から殆ど消耗らしい消耗をしていない事もあり、こうしてISA戦隊にその任が回ってきたのだ。

 

 「要はかなり大規模な威力偵察に近い。それで連中が撤退してくれるなら良いが、もし増援等が確認されればこれも撃滅する。説明は以上だ。各員の奮励を期待する。」

 

 こうして、着々とフラグは積み重ねられつつあった。

 

 

 ……………

 

 

 「で、準備の方はもう良いのか?」

 

 葉巻に火を着けながら、アルベルトがそう問うた。

 

 「えぇえぇ、仕掛けは上々!あのご老人も快く協力を約束してくれましたとも。」

 

 それに上機嫌に答えるのはどう見ても信用ならないが能力は本物な軍師諸葛亮孔明である。

 アジトでの十傑集と軍師達の会議にて、彼らは着々と次の作戦の準備を行っていた。

 

 「ふん、てっきり魔神に消し飛ばされていたと思ったのだがな…。」

 「配下の戦闘獣と言ったか?見た限り、以前の機械獣よりも遥かに強化されていたぞ。」

 「そうまで準備していたのなら、バラオなり魔神なりに挑めば良かったものを…。」

 「勝てる見通しが立たなかったんだろうよ。その辺はバラオに屈した時と同様、底の浅さが分かるというもの。」

 

 全員がとある人物とその配下達を散々に酷評する。

 それだけ彼らからすればその人物の行いは許し難く、度し難いものがあったからだ。

 

 「で、バラオの方も動いているそうだが良いのか?」

 「我らがBFの盟友ラ・ムーによって封じられて弱っていたとは言え、その力は本物だろう。どうなのだ孔明?」

 「ご安心を。今現在のバラオならば皆様なら多少の損害は出るやもですが対処可能です。」

 

 次々と飛び出て来る地球圏の特記戦力の名前だが、その多くを撃滅可能なBF団にとっては然したる問題にはならない。

 ただ一つの例外を除けば。

 

 「…して、バラルの連中はどうなのだ?」

 

 ここで今まで沈黙を保っていた直系の怒鬼がその重過ぎる口を開いた。

 怒鬼が口を開いた事とその内容に一同が僅かに動揺するが、瞬時にその問いに対する答えへと興味は移る。

 

 「未だ彼らの神は目覚めきっておりません。しかし、数年以内には目覚めるだろう、との事です。」

 「何と!?」 

 

 今度こそ十傑集の間で動揺が広がった。

 バラルの神、即ち二体の創造神ガンエデンの内の一体たるナシム・ガンエデン。

 そして、その依代として選ばれた巫女(マシアフ)たるイルイ・ガンエデン。

 彼女らが目覚めれば、バラルは現状の地球圏を覆う問題を一挙に解決できる程の大戦力となるのだ。

 ともすれば、BFが未だ目覚めぬままのBF団よりも。

 

 「だが、あの男がそんな状況を座視するか?」

 

 彼らの脳裏に浮かぶのは白いスーツに青いシャツ、黄色のネクタイ、胸のポシェットに白い百合と言う紳士然とした恰好でありながらも飄々とした油断ならない日和見主義者だった。

 あいつならゼッテー何かやらかす。

 割としょっちゅう小競り合いをして相手の性格や性根を知っている事もあって、そんな確信が十傑集の間にはあった。

 

 「えぇ、しますとも。何せ彼の目的は自分の生存というとても分かり易いもの。余禄も多少ありますが、その点はブレません。ならば誘導も容易き事。快く協力を引き受けてくれましたよ。」

 「「「「「「「「何ぃ!?」」」」」」」」

 

 十傑集のほぼ全員が驚きに席を立ちあがった。

 静かなのは怒鬼だけで、後はこの場にいない幽鬼位である。

 

 「一体どうやった!?」

 「あのド外道を納得させる等、どんな対価を!?」

 「いや、そもそも取引できるのかアイツ?」

 「えぇい、静まれ!全員、先ずは話を聞くのだ!」

 

 喧々諤々と怒号が飛び交うが、そこは空かさず二代目リーダーたる混世魔王 樊瑞が制止する。

 同意する様に激動たるカワラザキもじろりと騒ぐ後輩達を睨みつけると、一時とは言え皆静まった。

 

 「では話を続けますよ?何、種は簡単な事で、以前から彼が探していたものをこちらで提供したというだけです。」

 「探していたもの?」

 「竜玉ですよ。先史時代に失われていた筈の、ね。」

 

 孫光龍の搭乗する「超機人」の中でも最上位に位置する「四霊」の一機、「応龍」の超機人「真・龍王機」の装備であり、超機人大戦を始めとした先史時代の戦乱によって荒れ果てた地球環境を再生するために使用され、消えてしまった超機人文明の技術の一つの到達点であったエネルギー機関。

 そんなものの代替となると簡単に見つかる筈もなく、200年程前に目覚め、活動を再開して以来(その直後にもう一度うっかり撃破されて眠りに就いていたが)、孫光龍がずっと探し求めていたものの、未だ見つかったという報告は無かったのだが…。

 

 「そんなものを渡して大丈夫なのか!?」

 「ご安心を。性能は本物ですが、所詮パチモンです。」

 

 相変わらず信用ならない「計画通り」とでもテロップが出そうな笑顔でそう言い切る孔明に、十傑集は絶句した。

 

 「えぇ…(困惑)。」

 「えぇんかそれ…。」

 「良いんですよぉ。どうせあちらも状況次第じゃ簡単に裏切ってくる訳ですし、織り込み済みって奴です。」

 

 ほほほほほほ、と扇で口元を隠しながら嗤う孔明に、十傑集は微妙な顔になるのだった。

 

 




フラグ立て回でした。

この話だけで一体何本のフラグが立ったんでしょうねぇ?(※質問とかじゃありませんよ念のため)
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