多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年9月28日 極東方面 臨海市
『各機、これ以上臨海市に敵を侵入させるな!MS部隊は半数は防衛部隊に代わり海岸線に展開、残り半数は市街地内部に侵入した敵を撃破しろ!』
ブライト少佐の命令に、MS部隊は迅速に反応した。
射撃能力、特に火力に優れる機体は海岸線付近に展開し、先程防衛部隊所属のデストロイド隊がしていた様に海上から上陸を試みる敵部隊を阻止すべく迎撃戦を開始する。
幸いにも先程の二度のMAP兵器によって敵の数は当初の6割にまで減じ、その圧力を大幅に減らしている。
残り半数、市街地へ侵入した敵の排除を担当するのは近接戦闘や高機動仕様の比較的火力の低い機体だ。
彼らは避難を再開した市民並びに街を蹂躙せんとする化石獣を相手に市民に配慮しながら戦闘を行う事になるも、その圧倒的練度からほぼ近接武装のみで敵を確実に撃破していくのであった。
『特機部隊並びにヒュッケバイン隊は海上の敵戦力に斬り込み、攪乱しろ!敵の目を引き付けるんだ!』
具体的にはライディーン、ゴッドマーズ、超電磁ロボ×2、闘将ダイモス、サイバスターにヴァルシオーネ、グルンガスト零式にグルンガスト、そしてヒュッケバイン×2が待ってましたとばかりに未だ総数5000はいるであろう敵の軍勢向けて突撃した。
もうこの時点で常識的なパイロットや指揮官ならば目を疑う光景である。
であるのだが、彼らは全員がISA戦隊に選ばれるエースオブエース達である。
『斬り込むぞ、シャア!』
『合わせるぞ、アムロ!』
そして、真っ先に敵陣に突撃したのがこの二人である。
青が紺色になって少しだけ控えめになったトリコロールカラーと相変わらずの真っ赤なカラーの二機のヒュッケバイン。
最大巡航性能が光速の98%にまで到達するこの機体は現時点において太陽系最強のMSと断言できる程の超高性能機である。
既に月面において大きく活躍したアムロの一号機、そしてアムロに並ぶシャアならば行けるだろうと急遽追加生産した二号機。
大気圏内ではその最大巡航速度を出す事は出来ないとは言え、この二機を捕らえる事は妖魔帝国側のどの機動兵器でも不可能であった。
唯一、バラオの妖魔術のみが彼らに対するカウンターと成り得るが、今現在バラオはまだ姿を現していない。
即ち、現在の妖魔帝国にはこの二人を止める手立てはなく、自陣に斬り込み、亜光速状態でありながらも完璧な連携を以て次々と撃墜スコアを計上していくのを見る事しか出来なかった。
『見える!』
『そこだ!』
両雄による最大出力でのメガビームライフルの斉射は、一度に10体近い巨烈獣を纏めて撃破する。
技術革新によるEパックの大容量化、そして核融合炉とは比較にもならない縮退炉による大出力。
この二つからエネルギー供給を受けるメガビームライフルはUC世界における手持ち式ビーム兵器では最強の一角たるビームマグナムにすら匹敵する。
近接武装も重力刃を展開するロシュセイバーであり、その長さを最大の30mまで伸ばして縦横無尽に駆け抜け、鎌鼬の様に目にも映らぬ速さで斬り裂いていく二機のガンダムヒュッケバイン。
一撃さえ当てる事ができればバランスを崩し、数の利からそのまま袋叩きに出来る筈。
なのに、その一撃が余りに遠い。
現時点で太陽系最強のNTにしてMSパイロット二人が現時点で最強のMSを駆る。
正に鬼に金棒、虎に翼であった。
『ディスカッター・乱舞の太刀!』
『円月殺法・乱れ散華!』
更に高機動特機の二機もまた、二機のヒュッケバインと共に敵陣を荒らし回る。
機動性に長けていない準特機が殆どの妖魔帝国軍の対応は機動性の差からどうしても後手後手に回っていた。
『えぇい、その4機に近い者は接近戦で行動を抑制しろ!距離ある者は味方ごと撃っても構わん、弾幕を張れ!』
『おおっと、その二人ばっかりに気を取られて良いのかよ!』
『ぬぅ!?』
二人が文字通り切り開いた道を、特機部隊が持ち前の装甲と突破力を駆使して無理矢理に開墾し、敵指揮官である巨烈兄弟の乗るガンテへの道を猛進する。
本来なら特機にしてはその合体・変形機構故に装甲の薄い超電磁ロボ二機も強化パーツの追加によってコンバトラーV6、ボルテスVⅡとなっており、その弱点を克服している。
集中される火力に対し、それ以上の火力と勢いをぶつけてこちらの行く先を阻もうとする敵を破城槌も斯くやという勢いで突き破り、次々と突破していく。
彼らの目的はただ一つ、この軍勢を指揮する大将首である。
『チィェェストォォォォォォォッ!!』
『計都羅喉剣・暗剣殺ッ!!』
そして、その質量と運動エネルギーを遺憾なく突破力へと変換したグルンガストと零式の二機が指揮官の乗る二隻を守るべく前に出たガンテを斬断する。
これでもう、敵指揮官を守る壁は無くなった。
『行くぜ!超電磁タ・ツ・マ・キー!』
『今だ!超電磁ボール!』
二機の超電磁ロボから放たれた超電磁波による拘束技が巨烈兄弟の乗る二隻のガンテへと命中、その動きを拘束する。
『超電磁スピーン!』
『天空剣Vの字斬りー!』
『ぐおおおおおおお!?』
『馬鹿なああああああ!?』
二機の超電磁ロボの必殺技をまともに受け、二隻のガンテはあっとう言う間に轟沈していった。
だが、流石は妖魔族と言うべきか、巨烈兄弟はタフだった。
『ぬぅぅぅ!この屈辱、貴様らの命で贖ってくれようぞ!』
『この程度でオレが死ぬかぁ!今日こそは貴様ら人類を根絶やしに…!』
豪雷巨烈と激怒巨烈がそれぞれ巨烈獣コーカツとゴースタンに乗って、爆炎の中から再度姿を現したのだ。
『フリーザーストーム! ファイヤァァブリザァァァド!』
『照準セェット!』
だが、忘れてはいけない。
ここはスパロボ時空なのだ。
即ち、敵よりも怪物よりも異星人よりも地球人類こそが、その中でも特に主人公部隊こそが最も苛烈にして容赦がない世界なのである。
既に二機の動きは捕捉されており、それを見越してライディーンとダイモスが止めの一撃を加える態勢に入っていた。
『な!?』
『うおおおおおお!?』
『そこだ、ゴッドバード!』
『烈風、正拳突きぃッ!』
『ぐわあああああああ!?』
脱出の瞬間を狙いすました必殺技を回避する事も出来ず、激怒巨烈はゴッドバードの一撃によって機体内部の本人を正確無比に貫かれ、断末魔の叫びを残して消滅した。
『が、あああああああ!オノレ貴様ら!よくも我が弟をぉ!』
『何ぃ!?』
一方、ダイモスの拳によって致命打を受けていながら、豪雷巨烈はまだ生きていた。
『おおおおおおおおおお!タダでは死なん!一人でも多く道連れにしてくれる!』
爆散する機体、そこから現れたのは生身の豪雷の姿形を色濃く残す巨烈獣バンガーの姿だった。
『ちぃ、しぶとい!』
『合わせろゼンガー!ファイナルビーム!』
『ぬぅ、ハイパーブラスター!』
自分自身を機動兵器並みのサイズまで巨大化、下半身には巨大な車輪と胸部と脚部の無数のドリルを備える姿へと変貌した豪雷に対し、空かさずグルンガストと零式の胸部内蔵式エネルギー砲が炸裂する。
『くははははは!効かぬわ!』
『ゴッドゴーガン、束ね撃ち!』
余裕綽々なその姿に、ライディーンがその最たる特徴の一つたる弓矢による連撃を見舞うも、しかしその装甲を貫く事は出来ない。
『効かぬ効かぬ効かぬ!全軍、オレごとこいつらを撃てぇい!』
『何ィ!?』
そして、その圧倒的防御力を活かした行動を取ってきた。
今現在、特機部隊は斬首戦術のために敵指揮官、即ち巨烈兄弟を討つために敵本陣深くへと乗り込んでいた。
それ即ち、全方位を敵に囲まれている事を意味する。
特記戦力による速攻の斬首戦術で敵の指揮系統と連携を破壊し、掃討作戦に移行するのがいつものISA戦術だ。
しかし、斬首し切れない程の敵を前にしては、ただ悪戯に突撃する事と何も変わらず、結果として戦艦や海岸線に布陣するMS小隊と上空で制空戦闘に徹しているVF隊からも孤立してしまった。
加えて、豪雷は既に己の生死もプライドも投げ捨てている。
指揮官の手腕としては強襲に対応できず完全に負け、迎撃するも敵の接近と自陣への浸透を許し、剰え何だかんだ言って大事な弟を目の前で殺されたのだ。
そりゃー自分自身を引き換えにしてでも仇を討とうという気になるだろう。
『チィ!全艦、砲撃を味方部隊を包囲する敵部隊へ照準!』
『駄目です!接近してくる敵機の迎撃で手一杯です!』
更に言えば、三隻の母艦も街を守るべく制空権を確保する事だけで手一杯だった。
如何に精鋭で知られるISA戦隊とエース揃いのVF隊であろうとも、流石に4桁にも達する敵から街を守り抜く事は至難だった。
だからこそ特機+α部隊には敵指揮官を撃破してもらい、敵の指揮系統を破壊する必要があったのだ。
『いかん、このままでは前衛が壊滅する!』
『…特装砲チャージ開始。』
『艦長!?』
『味方部隊を巻き込まない位置に収束率を上げて撃つ。敵の注目をこちらに割かせる。』
『り、了解です。』
つまる所はヘイト稼ぎである。
確かに巨烈獣バンガーが如何に高い防御力を有していようとも限度がある。
故に自身の脅威となる三隻の持つそれぞれの特装砲を警戒し、こちらに敵を差し向ける可能性は高い。
だが、それは詰まる所艦を危険に晒す行為であり、ギリギリ確保できている街の上の制空権を捨て去るに等しい事だった。
『ぬ、また小賢しい真似を…行け、巨烈獣よ!我が弟の仇を取り、人類を悪魔世紀実現への生贄とするのだ!』
戦場は未だ半ばに差し掛かった所だった。