多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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本ステージにおける一般的スパロボプレイヤー

お、指定エリア防衛戦だから敵が勝手に来てくれるじゃーん
→敵が沢山!よーし、幸運努力MAP兵器連射ぁ!
→ボスが何度も復活!オイシイオイシイ!
→敵が無限復活の稼ぎ面!ターン制限無しでボスの増援も来るとか美味し過ぎィ!!(絶頂)

大体こんな感じです。


第60話 妖魔大帝その4

 新西暦186年9月28日 極東方面 臨海市

 

 遂に現れた妖魔帝国の長、妖魔大帝バラオ。

 そしてバラオの召喚した妖魔巨烈獣バラゴーンと復活する無数の巨烈獣に化石獣。

 その物量と戦場を覆い隠してしまう程のプレッシャーに、ISA戦隊分隊は徐々にだが不利に陥っていった。

 先程までならまだ何とかなった。

 多数の物量はシズラー三機によって蹂躙され、今も抑え込まれているが、文字通り無限に復活すると言うのなら何れ破綻する。

 そして、肝心の敵指揮官を撃破しようにも、生半可な攻撃は通じない事は出現時に証明されてしまった。

 特機部隊が果敢に仕掛けるも、バラゴーンへの対処で手一杯であり、バラオに割ける余裕がない。

 否、本来なら余裕はあった。

 本来の規模、ムゲ帝国軍司令部へと強襲を仕掛けた時の規模であれば、この状況を突破出来た。

 しかし、無い物強請りをした所で意味はない。

 ISA戦隊だけでなく、現地の防衛部隊も必死に健闘しているが、何れ機体のエネルギーや弾薬も切れる。

 否、そうでなくとも何れ疲労が限界に達してミスをし、そこから切り崩されるだろう。

 状況を好転させ得る要素が無い以上、ジリ貧と言っても良い。

 そんな状況の中で、幾人かはこの状況に違和感を抱いていた。

 何故かいつもよりも力が出ない、意識がはっきりしない。

 普段なら出来る事が、何故か今は普段程に出来ていない。

 

 『な、なんだ…?』

 『くそ、反応が鈍い!』

 『機体の状況は良好なのに…!』

 『これは…敵の妨害か!?』 

 

 僅かに通信で流れて来る味方機の呻きや戸惑いの声に、漸く勘の鋭い者達が気付き出した。

 それは普段の彼らからすればとても遅いものであり、既にして手遅れである事にもまだ気付けていなかった。

 

 『全員気を付けろ!敵の精神攻撃だ!』

 『広範囲かつ遅効性とはやってくれる…!』

 『なんだと!?』

 

 NT二人からの警告に、ブライトは驚愕の叫びを上げる。

 

 『各パイロットの生体反応を確認!』

 『こ、コンディションは全員イエロー!一部はレッドです!』

 『何て事だ!』

 

 ブライトはここで漸く敵の策に嵌った事を悟った。

 機体ではなくパイロットへの直接的な攻撃手段である精神攻撃が登場してからと言うもの、パイロットの体調を直ぐに把握するためのシステムが必要とされた。

 こうして生まれたのが機体側でパイロットの体調を把握し、普段のデータと異なる部分から戦闘時の状態を把握するというシステムだ。

 元々はNERVのエヴァパイロット達向けに採用されていたシステムをより簡易化したものであり、座席部分を取り換えた上で機体のシステム面に少し追加するだけで済む程度のものだったため、欧州戦線の戦訓から現行主力機や特機は全てこのシステムが搭載されている。

 そこから示されるデータは明らかに悪いものだった。

 グリーンならば何の問題も無いのだが、イエローならば後退の必要性有り、レッドならば早急に戦闘を終了して医療施設へ搬入する必要性有りとされる。

 それが一部とは言え出ているのだから、ブライトの叫びも当然のものだった。

 

 「ハハハハハハハハハハ!なんだ、漸く気付いたか鈍間な人間共!」

 『バラオ!やはり貴様の仕業か!』

 『無論よ!このバラオが貴様らの様な多少やるだけの猿風情をまともに相手をしてやると思っていたのか?』

 

 ニヤニヤと、その異形を嘲笑の形に歪めるバラオ。

 既に大勢は決したと見るや、散々手を焼かせてくれた人間達の負の感情を摂取しようと一旦攻め手を止め、丹念に心を折る事に決めたのだ。

 

 『貴様らが幾ら足掻こうとも既に無駄。我はここ暫くの戦いで死したあらゆる者達の怨念を吸収し、力を蓄えてきた。嘗ての頃とは行かぬまでも、既に貴様らではどうにもならん程になぁ?』

 『そんな…!じゃぁ欧州の人達は…。』

 『いや、それだけじゃない。ムゲに地底種族連合、連邦軍。全てあいつが…!』

 『その通り!敵も味方も関係ない!巨烈兄弟も含めて、全てが我が生贄となった!』

 

 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 戦場にバラオの哄笑が響き渡り、歴戦のISA戦隊と雖もその戦意に衰えが見え始める。

 もう少し後押しがいるな。

 そう判断したバラオは、次々と彼らの心を折るための理由作りをしていく。

 人間、何の理由もなく心が折れたりはしないが、逆に当然の理由があればどんな行動ですら正当化してしまうものだ。

 過去に起こった虐殺や凄惨な事件だって、宗教や民族、国家間や個人の対立が正当化されたり、怨恨が理性や法の軛を超えたが故に起こったのだ。

 ここで戦士達に「負けても、心が折れても仕方ない理由」を追加していく事で、バラオは完全に戦士達の心を折り、その上で己の糧として血祭りに上げようと言うのだ。

 

 『なぁお前達、先程から身体が重いだろう?動きが鈍いだろう?』

 『まさか!これもお前が!?』

 『当然!貴様らが今覚えている恐怖!苦痛!憎悪!怒り!全て全て我が糧となっているのだ!そんなものを吸い出されては、そりゃ戦意も萎むというものだろう?』

 

 お前達の様な存在こそが、このバラオの最大の栄養源なのだよ。

 ビシビシ、ピキピキと。

 戦士達の心が折れ始める感覚に、バラオはこれ以上ない愉悦を感じていた。

 

 『なぁひびき洸よ、貴様こそ何故戦うのだ?そのライディーンを降り、ムートロンさえ渡せば、我は貴様の家族や恋人には手出しはせぬぞ?』

 

 文字通りの悪魔のささやき。

 武器を捨てれば見逃してやる。

 そんなとても分かり易い誘惑に、しかし、早くも防衛部隊の方には効果が出始めていた。

 

 『あ、あ、武器、武器を捨てれば…。』

 『死にたくない…死にたくない…。』

 『な!?お前ら、機体を降りるな!死にたいのか!?』

 

 優秀とは言え、普通の人間である彼らにとっては、バラオという超常の存在の力ある声は即ち神の声にも等しい。

 心折れ、伏して祈るしかないと思考を固定された彼らは正気を失って、次々と機体から降り始めていた。

 

 『さぁひびき洸よ。お前達も我に平伏すのだ。さすれば貴様らと家族の命だけは慈悲を示してやろうではないか?』

 『だ・ま・れェェーー!』

 

 周囲の誰もが動きが鈍る中、ライディーンは脇目も振らず、単騎でバラオへ向けて突撃した。

 

 『い、いかん!援護しろ!』

 『駄目だ、ひびき君!』

 

 ブライト少佐の命令に、即応したのが超能力者故にある程度抗えていた明神タケルのゴッドマーズだった。

 鈍重な機体ながら必死に追い縋るが、それを巨大な赤き竜バラゴーンが遮る。

 

 「GWOOOOOOON!!」

 『く、邪魔をするな!』

 

 如何にゴッドマーズとは言え、弱体化した状態ではバラゴーンを一対一では倒せず、その対応へと注力せざるを得なかった。

 それはつまり、ライディーンは単騎でバラオと相対する事を意味していた。

 

 『ふははははははははは!よくこのバラオの前に来れたな、ひびき洸!』

 『黙れバラオ!今日こそは貴様を倒し、妖魔帝国を終わらせる!』

 『不敬!だが許す。態々我にムートロンを献上してくれると言うのだからなぁ!』

 

 上半身だけもライディーンの3倍以上の巨体から繰り出されるのは、悍ましい程の呪力が込められた破壊光線の雨だった。

 必死に回避し、時にはゴッドゴーガンを盾状に展開して防ぐものの、その多くがライディーンの装甲を貫き、深刻なダメージを与えてくる。

 

 『ぐ、ああああああああ?!」

 『今や地球上に残ったムートロンの過半数がその機体の中に貯蓄されている!ライディーンを破壊し、その中のムートロンさえ手に入れれば、今度こそ1万2千年前より掲げた我が悲願、悪魔世紀の実現が叶うのだ!』

 『まだ、まだだ…!オレは…!』

 『ありがとうひびき洸!ありがとうライディーン!貴様らが無謀にも我が眼前に現れた事で、遂に我が望みが実現する!』

 

 ダメージを受け、動きの停止したライディーンをバラオがその両手で掴み、捕獲した。

 後は焦れったい程ゆっくりと力を籠めて、握り潰すだけ。

 それだけで、彼の野望は達成できる…

 

 『行くぞ、アルト。』

 

 ド、ゴォッ!!

 ヒュッケバイン二機とシズラー三機、サイバスターにヴァルシオーネと言った高機動特機かそれに準ずる機体を除けば、この面々の中では直線的加速においては圧倒的な性能を持つアルトアイゼンが、両手でライディーンを拘束するバラオ目掛けて突貫した。

 

 『ちょ、キョウスケ!?』

 『無茶だ、中尉!』

 『えぇい、何という!』

 

 その目を疑う出来事に、停止していたISA戦隊が再起動し、攻撃を再開し始める。

 自身の危機ならば心折れた所で自分が死ぬだけで済む。

 しかし、仲間の危機となれば話は別なのが彼らだった。

 

 『全リミット解放、ブレイクフィールド展開、フルブースト。』

 

 そんな仲間達の声を背に、全ての機能を推進力を得るためだけに費やして、アルトアイゼンは遂にバラオへと到達した。

 

 『小賢しい!そんな玩具でこのバラオを…!』

 

 ズガァァン!!

 バラオの言葉を遮るかの様な巨大な衝突音と共に、バラオの眼前に展開された結界にアルトアイゼンのブレイクフィールドが衝突、拮抗しながらも互いに負荷を増大し、撓んでいく。

 

 『馬鹿め!その様な原始的武器で、一体何をするつもりだ?』

 『今、僅かだが重圧が緩んだ?』

 『貴様…っ!』

 

 戦場全域に展開されるバラオの妖魔術。

 それは術者を基点とした攻性結界の様な代物であり、厄介ではあるが決して絶対でも無敵でもない。

 本当にそうならば、ISA戦隊と雖も既に全滅させられていてもおかしくはない。

 その証拠に「目の前の事態に対処するために、妖魔術による重圧が緩んだ」のだ。

 もし本当に絶対かつ無敵の力がバラオにあるのならば、そもそもムートロンすら必要は無い。

 ならば、やれる筈だ。

 この絶対的とも言える怪物を殺す事だって、不可能ではない。

 

 『良かろう。貴様だけは丹念に磨り潰してくれる!』

 『どんな守りだろうと…』

 

 がきん、と右腕のリボルビングステークに、特製の赤いカートリッジが装填される。

 通常のビームカートリッジではなく、その3倍のエネルギー量を誇る対特記戦力向けのビームマグナムカートリッジである。

 その解放による衝撃波が特製の杭によって直接機体内部へと浸透させた場合、どんな結果になるのか?

 バリア等の防御無しで受ければ、先ず間違いなく現行の量産型特機の中では最も硬いシズラーやグレートマジンガーにさえ通用する威力を叩き出す代物である。

 では、それを加速が最大限になった状態で連射すれば、一体どうなるのだろう?

 

 『ただ、撃ち貫くのみ。』

 

 軽くなったとは言え、未だ襲い来る妖魔術による弱体化を受けながら、それでも尚キョウスケは迷いなく、最速で敵の懐へと踏み込んだ。

 ズガガガガガガン!!

 今まで殆ど経験しなかった程のエネルギーが右腕内部の回転弾倉内部で次々と爆発、その威力を余す事なく杭へと伝え、バラオの結界へと直に伝え…

 

 『馬鹿な!?何の加護もない人間に破られたと言うのか!?』

 

 呆気ない程簡単に、バラオの結界はパリンと割れた。

 バラオからすれば驚愕しかない。

 魔導技術が衰退して物理的技術にのみ拘泥する今の人類に、ライディーン等の先史文明の遺産等を除けば、自分に対抗する術など無い。

 それが戦う前のバラオの考えであり、事実として一般的にはそうだった。

 なのに、何の神仏の加護も異能も持たないただの人間の駆る純物理的兵器が、この妖魔大帝の結界を打ち砕いた。

 バラオからすれば、その事実は決して許せるものではないし、この世界にあってはならない。

 バラオは己の野心以上にその屈辱を消すためだけに、アルトアイゼンへと矛先を向ける。

 しかし、その行動は余りに無謀で隙だらけだった。

 

 『今だ!ゴォォォッド!』

 『しま…!』

 『ラ・ムぅぅぅぅぅ!!』 

 

 一瞬の隙を突いて、ライディーンの胸部から3つの砲口が展開、そこからライディーンの奥の手たるゴッドボイスが発射され、バラオの両手を粉微塵の様に粉砕した。

 

 『っ、キョウスケさん!』

 『あぁ!』

 

 空かさず、感情に振り回されて余りに迂闊に踏み込み過ぎたと思い知ったライディーンは即座に後退、右腕の駆動系が焼き切れたアルトアイゼンを抱えて退避する。

 

 『おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれェ!!もう許さぬぞ貴様ら!じわじわと嬲り殺すのは止めだ!全員惨たらしく殺してやるわぁ!!』

 『ハン!こっちこそ、アンタみたいな下種野郎に降伏するなんて願い下げだね!』

 『壊せるんなら殺せる!殺せるんなら滅ぼす事も出来る!何度だってやってやる!』

 『各員、気合を入れ直せ!ここで我々が倒れ、バラオがムートロンを手に入れれば、人類はムゲ帝国軍かそれ以上に悪辣な侵略者へと地球を明け渡す事になる!ここで絶対に阻止するんだ!』

 

 リューネとマサキ、そしてブライトからの激励に、ISA戦隊のみならず守備隊までもが次々と正気に戻り息を吹き返していく。

 それはバラオが最も忌み嫌うものの一つ。

 人の持つ、命の、魂の煌めき。

 負の無限力に対抗できる、誰もが持つ光だった。

 彼らは今、バラオの放つ妖魔術という精神への重圧を、自前の精神力だけで打ち破らんとしていた。

 

 『…良かろう!今再び、このバラオの妖魔術をとくと味わうが良い!』

 

 だが、一度苦労して打ち破ったのなら、再びかけ直してしまえば良い。

 今のはみっともなく足掻いた事でたまたま縄が解けたに過ぎない。

 だったら、もう一度縄をかけ直せば、先程の繰り返しとなった所で何れ消耗して崩れ去る。

 バラオの側には未だ無尽蔵に湧き出す巨烈獣に化石獣、そして自分の分身とも言えるバラゴーンがいるのだから。

 

 『あら、これは絶好のチャンスですわね?』

 「GYAOOOW!?」

 

 オニボサツ・ヨミジ。

 臨海市の山間部から突如放たれた極太の光線が二条放たれ、バラオを守るべく正面に移動していたバラゴーンへと直撃したのだ。

 苦痛に悶えるバラゴーンを他所に、山間部からは二機の不明機が現れ、ISA戦隊へと加勢するようにその隣へと進み出た。

 現れた二機の不明機は赤と白の鬼面が寄り集まった様な奇妙な機体、そして白銀の直立した野獣の様な機体だった。

 アインスト4人娘の幼年組の乗機、ペルゼイン・リヒカイトとレイデンシャフト・クリンゲであった。

 

 『御機嫌よう、ISA戦隊の皆様。私はアインスト・アルフィミィ。故あって加勢させて頂きますの。』

 『えぇっと…レーベン、です。アルフィミィのお手伝いで加勢します…。』

 『…こちら、指揮官のブライト少佐だ。取り敢えず、こちらに敵対しないのなら構わない。』

 『まっかせてくださいの!あんにゃろうの赤ら顔に思いっきりかましてやりますの!』

 

 ISA戦隊は先の第二新東京市での出来事から多少の疑いと戸惑いを感じるだけだったが、彼らよりも遥かに大きく反応したのは、敵対する事となったバラオの方だった。

 

 『ば、馬鹿なッ!?何故監視者が今更人類に味方する!?またも横槍を入れるつもりか!?』

 『あぁ、そう言えば前回も横殴りしたと聞いていましたの。』

 

 動揺も露わに叫ぶバラオに対して、そういやそんな事もあったねーと実に軽い調子でアルフィミィはさらっと答えた。

 そんな彼女だがしかし、その胸中に激情が轟々と燃え上がっている事に気付けたのはほんの僅かな者しかいなかった。

 

 『でも今回はもっと個人的な事ですの。具体的には貴方、キョウスケとエクセレンの事を殺そうとしましたの。だから私がぶっ殺しますの。』

 『だから、やっちゃう、ね?』

 

 こうして、臨海市防衛戦は予想もつかない方向へと動いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

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