多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第61話 妖魔大帝その5 加筆修正

 新西暦186年9月28日 極東方面 臨海市

 

 アルフィミィとレーベン。

 ペルゼイン・リヒカイトとレイデンシャフト・クリンゲ。

 バラオの妖魔術を苦も無く弾くこの二機の参戦により、事態は辛うじて防戦一方から膠着状態へと移っていた。

 

 『そこ、頂きですの。』

 『WAOOOOOON!』

 

 近接もいけるが、それ以上に大火力によって次々と敵を薙ぎ払うアルフィミィと只管突撃してかき乱すレーベンの戦い方は馬が合っており、その性能からも特機部隊にも一切引けを取らぬ程に活躍していた。

 

 『は、ははは!たかが二体が何だと言うのだ!単に個人的な感情で突っ込んできただけならば、この場で始末すれば良いだけの事!』

 

 が、それもバラオの動揺が納まるまでの事だった。

 

 『者共かかれぇい!貴様らは元より不死身!何を臆する事がある!その命、その魂、その全てをバラオに捧げよ!』

 

 自棄になったのか、それともアインストの本格的な介入は無いと踏んだのか、僅か数分後には妖魔帝国軍は再度の攻勢を開始した。

 

 『チィ!やはりこの数が相手では…!』

 『それ以上に奴の術を破らねば碌に反撃にも出れん!痩せ我慢にも限度があるぞ!』

 

 そう、ISA戦隊は別に妖魔術を破った訳ではない。

 単に痩せ我慢して戦っているに過ぎないのだ。

 ずっと自分達に覆い被さっている圧迫感や脱力感を気合だけで耐え、戦闘を続行していたのだ。

 アルフィミィとレーベンの援護で多少持ち直したものの、既に底は見えていた。

 

 『っ! 艦長、後方に転移反応!』

 『識別急げ!敵ならば迎撃用意!』

 『いえ、これは…味方と敵の反応が重なっている…?』

 『何だと!?』

 『この識別は、U.T.F.とアインストです!』

 

 オペレーターの困惑し切った叫びと共に戦場の後方、市街地付近の森の上へと3隻の戦艦サイズの機影が出現した。

 

 『識別確認取れました!一隻はU.T.F.所属エクセリオン級4番艦、一隻はアインスト側の旗艦、もう一隻は不明です!』

 『至急エクセリオン級4番艦に対して通信を繋げ!何が起こってるのか確認するんだ!』

 

 ブライト少佐の言い分も最もだった。

 何せアインストとは既に人類の守護者の一角であるU.T.F.と位相空間内で交戦して撃滅する事が出来ず、魔神覚醒事件の大被害の一因にもなった勢力だ。

 そんな不倶戴天の関係にある筈の両者が不明艦と共に現れる等、歴戦のISA戦隊をして全くの意味不明ぶりに困惑し切りだった。

 何せ現れた三隻の内、アインスト側の旗艦と言われたのはアトミラールの乗艦であるグラウベンであるが、残りの一隻はそもそも戦闘用艦艇であるのかすら不明だったからだ。

 形状は古代の水上艦艇、それも神話の絵画等に出て来る箱舟のソレなのだが、その全てが赤い結晶体により構成されており、表面には武装になりそうなものは一切無い。

 サイズは全長2kmで、エクセリオンとグラウベンに挟まれる様に浮かんでいるソレは、本当に兵器なのか、そもそも現実の光景なのかすら疑う様な代物だった。

 

 『何とか間に合ったか…こちらアインスト所属グラウベン艦長のアトミラール。U.T.F.並びに地球連邦政府との同盟締結により、これより支援行動を開始する。』

 『こちら地球連邦軍参謀本部所属ISA戦隊分艦隊指揮官のブライト少佐です。同盟締結と言うのは本当なのですか?俄かには信じ難いのですが…。』

 『ブライト少佐、その辺りは本当の事だと私が証言致します。』

 『母さん!?何でその船に乗ってるんだ!?』

 

 エクセリオンと繋ぐ寸前に繋げられたアトミラールからの通信にブライトは疑念を抱くも、要人中の要人の登場とその息子の叫びによって疑念は掻き消された。

 

 『洸、今はあのバラオを前にしているのですよ!シャキッとしなさい!』

 『は、はい!』

 『こちらエクセリオン級4番艦統括自動人形です。ブライト少佐にISA戦隊の皆様、疑問は尤もですが、今は目の前の敵の撃破に集中してくださいませ。これより本艦隊による援護を開始、バラオの妖魔術を無効化致します。』

 『ではノイ様、お願いします。』

 『了解した。これより「ズィーゲルヴィーゲ」を起動する。』

 

 言うや否や赤い水晶の箱舟、ドイツ語で「封印の揺り籠」と言われた船が輝き始める。

 

 『ん?これは…。』

 『プレッシャーが消えていく…。これがあの船の効果か。』

 『お、頭がすっきりしてきたぜ!』

 『これはまた…。』

 

 その効果は、パイロット達の通信からも伺えた。

 

 『艦長!各パイロットのメンタルが平常値へと回復していきます!コンディションは大凡グリーン、一部イエロー!』

 『よし、反撃の好機だ!各員は敵機を蹴散らしつつ、バラオを撃破しろ!今日を妖魔帝国最後の日にしてやれ!』

 

 ブライトの号令の下、機動兵器部隊が火を噴いた様に縦横無尽に敵を撃滅していく。

 更にそこにグラウベンやエクセリオンからの援護射撃が突き刺さり、数だけは多いとは言え妖魔帝国軍は押されていった。

 

 『馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?何故だ、何故監視者たる貴様らが人類に与する!?何故今更横槍を入れて来るのだ!?』

 『負の無限力、その残滓よ。それは一重に貴様らがこの星に集まり過ぎた故。貴様らを滅ぼさぬ限り、正と負の無限力は延々とこの地に集い、滅ぼし合う。』

 

 混乱の極致にあるバラオ、その叫びに応えたのはグラウベン内にレムリア女王とアトミラールと共にいたノイ・レジセイアの人型端末だった。

 歴史ある亡国の女王とガチガチの軍人の威圧にも負けず、所か塗り潰してすらいる女性型の端末の外見はメリハリの効いた肢体、先端に黄色のメッシュの掛かった濃紫の長髪の美貌を緑や赤系の刺繍やアクセサリーが随所に見受けられるドレスで包んでおり、何処か本体たるノイ・レジセイアを彷彿とさせる色彩だった。

 

 『では、何故我のみを狙う!?正と負の無限力、その過密が災いと言うが、我らが滅ぼし合うは必定!古からの摂理に過ぎぬ筈!それを阻み、剰え片方を滅ぼすとは如何なる要件か!?』

 『此度のアポカリュプシスの始まりは、そも負の無限力の側からである。負さえ消えれば、呼応した正もまた労なく消える。それだけの事。』

 『貴様、貴様、貴様は…!』

 『加えて、我が古きより見定めし星に外敵を招く者等、1万2千年前と同じく滅ぼされて然るべきである。』

 『貴様ぁあああああああああッ!!』

 

 バラオの絶叫、しかしその激情のままに妖魔大帝が突撃する事は出来ない。

 既に眼前にはあの赤い水晶の船から発せられるジャミングによって消えた結界を乗り越え、下半身に相当する島へとISA戦隊の特機部隊が乗り込んできたからだ。

 

 『おおお、おおおおおおおおおお!おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇ!』

 

 己の劣勢を自覚しながらも、バラオは再度全身から妖力を噴出し、妖魔術を行使しようとした。

 

 『では皆様、よろしくお願いします。』

 『はーい!今日は私達』

 『ニュージェネレーションズが歌います!』

 『たっぷり聞いていってくださいね!』

 

 エクセリオン級の第七ハッチ(ガンバスターが初出撃した所)。

 そこに設置された特設ステージより、三人のアイドルである少女達が煌びやかな衣装とステージに囲まれ、笑顔と共に歌い出したのだ。

 なお、見えない所では照明や音響担当らがしっかりサポートし、そのステージの下、観客席にも格納庫一杯の自動人形達が手に手に専用に調整したペンライトを持ってライブを見守っていたりした。

 その自動人形達の頭や肩には推しアイドルの名前や曲名、デフォルメされた姿が印刷された鉢巻やタスキが装備されており、正に万全の状態だった。

 …君達、今戦闘中よ???

 余りの事態に事情を知っている者達を除いだ敵味方が呆気に取られる中、少女達の歌声が響き始めるとその効果は直ぐに現れ始めた。

 

 『何だこの歌?』

 『聞いた事ない奴ですね。』

 『でも、何か力が湧いてこない?』

 『何故歌でこんな湧き上がるものを感じるんだ…?』

 

 パイロット達は余りの突拍子の無さに戸惑ったが、次第に何か温かな熱の様なものを感じ、次第にその熱量のままに動きが精彩に満ちていく。

 

 『何だこれは、どうしたと言うのだ!?何故このバラオの妖魔術がたかが歌如きに掻き消されるのだ?!』

 

 一方、妖力が雲散霧消して何の効果も出せなかったバラオは混乱の極致にいた。

 しかし、それも無理もない事だった。

 1万2千年前の戦いでも、超能力や魔術で対抗された事はあれど、単なる歌によって自身の術が無効化された事は無く、完全に初見だったのだから。

 

 『何なんだこれは?』

 『パイロット達のメンタル、更に回復していきます!』

 『………よし、考えるのは後だ!今は目の前の敵に集中するんだ!』

 『皆様、注意事項ですがあの赤いクリスタル状の船とエクセリオン級が沈んだ場合、この効果は消えてしまいますので、くれぐれもこちらまで攻撃を通さない様によろしくお願いします。』

 『聞いていたな!後ろに敵を通さず、目の前の敵に対応しつつ、バラオを撃破するんだ!』

 

 ブライトはかんがえることをやめ、必要となる号令を下した。

 こうして、妖魔帝国軍との決戦は遂に最終段階へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アルフィミィにレーベン。こそこそしてるけど、後でしっかり話を聞かせてもらいます。良いですね?』

 『ヒェ…べべべべ別に隠れていた訳ではありませんの。ただちょっと慎重になろうかと…。』

 『きゅーんきゅーん…。』

 『 良 い で す ね ?』

 『『はい……。』』

 

 (っぶねー。私がてきとーに観光しちゃいなYO!とか言ってたのバレてないみたいですね、良かったー。)

 

 『フォアルデン?貴方も後で話をするわよ?』

 『ア、ハイ。』

 

 ちゃんちゃん♪

 

 




ズィーゲルヴィーゲ
 元は対ZERO等のチート系への対抗策とすべくアインスト側で開発。
 敵の持つ特殊能力を全て無効化する能力を持つ。
 が、その範囲はあくまで因果律干渉とか魔法や魔術に超能力といった物理現象を飛び越えた領域のものであり、単なる自己修復機能とかは含まれない。
 バリアはあるけど大して装甲もない戦闘力ゼロ。
 詳しくは後日で。



 ISA戦隊、歌エネルギーと遭遇す。
 バラオ、自分の知らん所で詰まされる。
 の二本でした!
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