多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第65話 皇帝VS皇帝その4

 新西暦186年9月28日 極東方面 旧光子力研究所跡地 地下秘匿区画

 

 ミケーネとISA戦隊分隊の戦いが激しさを増す中、制圧された地下施設では対照的にとても静かに事が進んでいた。

 

 「おお、これが新たなマジンガーか…。」

 「計測される光子力エネルギーは…マジンガーZの10倍以上か。未完成でこれとは末恐ろしいな。」

 

 地下の秘匿区画、その一角を占める格納庫内には一機のマジンガーが未完成の状態で安置されていた。

 殆どの部分は完成すれどもシステム面の調整が未了であり、それに伴って装甲の一部が外されて内部機構が剥き出しになっている。

 完成度で言えば、精々が7割といった所だろうか。

 特に目を引くのが左目であり、マジンガー系特有の黄色いデュアルアイの片側が内部のカメラアイ兼光子力ビーム発生器が剥き出しになり、そこに無数のケーブルが繋げられている。

 位置からして恐らくシステム面の中枢に当たるCPUと直結されているのだろうか、他の部分よりもケーブルの数が段違いに多かった。

 

 【漸く来たか、兜十蔵よ。】

 

 途端、その場に重圧が広がった。

 ミケーネ帝国の兵達は即座にその場に膝を突き、頭を垂れる。

 

 「闇の帝王様、ご命令通り兜十蔵を連れて参りました。」

 

 誰もがその巨大なプレッシャーに畏怖を覚える中で唯一人、兜十蔵だけはマジンカイザーの肩へと出現した存在に真っ向から視線を向けていた。

 普通の人間の肉眼ならば何も無いと言われてしまってもおかしくない状態。

 しかし、兜十蔵の眼には間違いなくこの世ならざる存在が、まるで炎の様な威容を持つ敵の姿がよく見えていた。

 

 「お主がミケーネの首領か。」

 【ほぉ、やはり貴様は我が見えるか、兜十蔵よ。流石は我が似姿、運命の双子なだけはある。】

 「ハン!アホな事を言うでないわDr.ヘル!儂を殺そうとした爺と双子等と気色悪い!」

 「き、貴様言わせておけば!」

 

 余りの十蔵の物言いに遂に切れたゴーゴン大公が激情の言うがままに腰の剣へと手を伸ばそうとする。

 

 【五月蠅いぞ。今は我が話している。】

 「は、ははぁ!」

 【しかしよくぞ一目で見破ったな、儂の正体を。これでも隠しておったつもりなのだが…。】

 「ふん!そんなもん、回収した戦闘獣の作りを見りゃ一発よ!機械獣にやたらそっくりじゃったからのう。」

 【く、ははははは!一目で作り手の癖を見抜いたか!流石だな!】

 

 闇の帝王、否、Dr.ヘルはその姿を嘗ての紫の不健康そうな肌色をした老人のそれへと変化させる。

 しかし、その身体は透け、向こう側が見えていた。

 

 「実体が無い…アストラル体か。」

 【如何にも。説明は必要かね?】

 「恐らくだが、ZEROの放った光子力ビームが原因じゃな?平行世界か過去かは知らぬが、そこに肉体を失った状態で放り込まれたか。」

 【またまた正解だ。流石は我が永遠の近似値。】

 「だから気色悪い事言っとるんじゃない!確かに儂とお主は尋常じゃなく似とるがな!」

 

 先程から闇の帝王が告げる我が似姿、運命の双子、永遠の近似値という言葉にもしっかりと信憑性があった。

 

 【儂は紀元前1万年頃のバードス島にて古代ミケーネ人の文明と遭遇した。このアストラル体となってな。】

 「そんだけ準備期間があったのにこの様は…あぁ、アストラル体を認識できる人間がおらんかったのか!?」

 【お陰でえらい苦労をしたものじゃ…。】

 

 Dr.ヘルはげんなりとした顔で、ぽつぽつと話し始めた。

 当時、ZEROの光子力ビームを浴びたせいで肉体を失い、アストラル体のみで過去へと送られたDr.ヘルは邪神とも言える圧倒的な力を持っており、それに恐れを成した古代ミケーネ人達は隷属の道を選んだ。

 その後、古代ミケーネ人達の技術を用いてDr.ヘルもとい闇の帝王は打倒地球連邦!打倒マジンガー!を目指して兵器開発に撃ち込んだ。

 そこまでは良い。

 問題はバードス島が当時の地球の守護者らである先史文明と外宇宙からの侵略者達との戦いの余波で沈んでしまった事だった。

 多くの貴重な労働力が失われ、闇の帝王は先史文明と侵略者の双方に罵詈雑言を叫んだ。

 が、それで挫けるなら地球征服なんて目指さないのである。

 闇の帝王は他の人口の多い地域への移住と研究施設の移設を試みたのだが…失敗した。

 原因はアストラル体の闇の帝王を認識できる人間の数が余りに少ない事だった。

 念動力者や超能力者、オカルト関係者は彼の異常性に迅速に反応し、通報を受けて駆け付ける守護者達は極めて強力で、とてもではないが拠点や兵器生産設備の移設なんて無理であった。

 加えて、アストラル体を見れない・触れない人間に直接作用する事が出来ないという致命的欠陥が判明した。

 アストラル体でも問題なく接する事の出来る古代ミケーネ人との出会いは望外の幸運であり、その実質的な滅亡は大きな不運だったのだと漸く理解したのだった。

 僅かな生き残りとそのクローン達を戦闘獣やミケーネスとして戦力化・増産する事を決定し、水没したバードス島地下で憎き兜一族とマジンガーが生まれる時を待った。

 が、ここで躓いだ。

 

 【儂は遂にマジンガーZEROを超える事が出来んかった…。】

 

 それはDr.ヘルにとって、特に自慢の頭脳においては初めての敗北だった。

 

 「当然じゃな。アレは平行世界より齎された産物。早々超えられるもんじゃないわい。」

 【全くじゃ。】

 

 それでもバードス島の地下で、Dr.ヘルはずっと努力し続けた。

 あのZEROを超える。

 自らを過去に飛ばし、肉体を消滅させた憎き怨敵を滅する。

 そのためだけに全霊を注いだのだ。

 

 【そして調べる内に気付いたのじゃ。儂とお主の近似性をの。】

 

 ある日、「そもそも兜十蔵とは何者なのか?」という疑問を抱いたDr.ヘルは諜報軍を動かして調査を行った。

 結果は驚くべきものだった。

 兜十蔵とDr.ヘル。

 両者の家系図はまるで鏡合わせの様な系統樹であり、両親の容姿も何処かそっくり。

 極め付けは両者の遺伝子構造がピタリと合致したので、まるで一卵性双生児の様に。

 正に運命の双子、永遠の近似値。

 壮大な地球の悪戯とも言えるこの現象は、Dr.ヘルをある考えに行き着かせた。

 

 【お主の作ったものは儂のもの。何せ双子じゃしな。相性ばっちりじゃろう。】

 「で、カイザーに目を付けたと。デビルの時と同じじゃの。」

 

 余りの言い様に十蔵は呆れた。

 以前の頑固な自分だったらこの場で即殺し合いのゴングが鳴っている程の物言いである。

 

 「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……。非っっっっ情に癪じゃが、カイザーはお主にくれてやる。」

 【ほう?やけに素直だな。】

 「元々甲児用じゃったが、今の孫にゃ無理じゃしの。あのままフェードアウトするのが一番あの子にとって幸せじゃからな。」

 【加えて、何らかの安全装置がある、と?】

 「ZEROの二の轍は踏まん。がっつり暴走を抑制するシステムは組み込んどるわい。」

 

 今の兜甲児には、今一つ覇気が足りない。

 それではあの魔神に勝てない。

 それが現時点での兜十蔵の結論であった。

 ならば、戦いからさやかと共にドロップアウトして、何処かで平和に暮らしてほしい。

 それが孫の幸せを望む十蔵の偽り無き願いだった。

 それと同じ位には自分の作ったマジンガーに乗って英雄として活躍してほしいとも思っているが、それを選ぶかどうかは甲児次第。

 となれば、カイザーを破棄する理由付け、或いは真に英雄として再び立ち上がるための試金石としてDr.ヘルの駆るカイザーをぶつけるのは悪くない話だった。

 なお、後日この話を聞いたミネルバXに腹パンされる破目になったりする。

 

 「どうせカイザーに接続用の機器も持ってきておるのじゃろう?儂は堂々と観戦しながらデータを取らせてもらうぞ。」

 【それが狙いか…。まぁ良い。その前にプロテクトを解いてもらおうか。】

 「コード入力■■■■。よし、これで大丈夫じゃろ。」

 【ご苦労だったな兜十蔵。では、ヤヌス侯爵!】

 

 ザシュ!と。

 十蔵の腹を貫いて、ヤヌス侯爵の放った手刀が突き出た。

 

 「が…!ぎざま…!」

 【頂点は一人で良い。】

 

 放っておいたら、カイザーよりも強いマジンガーを作り出す事すら有り得る兜十蔵を生かす選択など、元よりDr.ヘルの中には無かった。

 その警戒心を少しでも薄れさせるため、自分の調査結果を上から目線で教授するために先程の会話をしただけだった。

 

 『要護衛対象の負傷を確認。これより救助活動に移ります。』

 

 同時、位相空間内に潜伏していた高級自動人形達、その本来の姿たるヴァルチャー5機が出現、襲い掛かった。

 

 「ぐがああ…!?」

 

 同時、ヤヌス侯爵はその右腕を斬り飛ばされ、兜十蔵から引き離された。

 

 「撃てぇい!」

 

 ゴーゴン大公の指示の下、ミケーネス達が一斉に射撃を加えるが、用は済んだとばかりに再び位相空間へとヴァルチャー達は兜十蔵を守りながら撤退する。

 襲撃から救助、撤退まで実に5秒とかかっていない見事な手際だった。

 

 【捨て置けい。先ずはカイザーを優先せよ。】

 「は、はっ!」

 【直ぐに機体のチェックを開始するぞ。何が仕掛けられておるか分かったものではないからな。】

 

 こうして、マジンカイザーは闇の帝王もといDr.ヘルの手に落ちたのだった。

 

 

 ……………

 

 

 一方その頃、地上では兜甲児と炎ジュンの量産型グレート1号機と2号機は七大将軍らを相手に熾烈な戦闘を繰り広げていた。

 

 『く、ブレストバーン!』

 『甘い、ファイヤーブレス!』

 

 妖爬虫将軍ドレイドウは甲児が放った苦し紛れのブレストバーンをひらりと回避し、お返しとばかりに口から放射能熱線を吐き出す。

 

 『ぐぅぅ…!』

 『ははははは、どうした兜甲児!先程の兵士共の乗る量産型の方が強かったぞ!』

 『甲児君、挑発に乗らないで!ここは時間稼ぎに徹して!』

 『分かってるぜジュンさん!』

 

 甲児自身もそれは分かっていた。

 分かっていたが、旧光子力研究所には祖父である十蔵がいると聞いている。

 

 (爺ちゃんは無事なのか!?流石にもう避難してるよな!?)

 

 焦燥感がじりじりと募っていく。

 魔神覚醒事件以降の甲児にとって、戦うのは常に恐怖と隣り合わせだった。

 死ねばもうさやかに会えない、戦ってる内に機体が暴走するかもしれない、一手ミスすれば誰かが死ぬかもしれない。

 そんな当たり前の恐怖や焦りを、マジンガーZに乗っていた頃には感じなかった雑念を甲児は感じるようになっていた。

 それは人として正しい事であるが、英雄の一員となるには余りに不要な感情でもあった。

 少なくともある程度はそれを精神力で抑え付けられるようにならなければ、今後はパイロットとして活躍する事は難しいだろう。

 それでも今また戦場に立っているのは、嘗て何も知らずにマジンガーZに乗り、多くの被害を出した事の贖罪をするためだった。

 あの魔神覚醒事件によって、人的損耗は殆ど無かったものの、地球圏防衛のためのU.T.F.の大事な戦力の多くが消滅し、それは今も補填できていない。

 その戦力さえあれば、今も地球は比較的平和だったかもしれないと言うのに。

 その罪を僅かでも償うために、兜甲児は今や恐怖や嫌悪しかない戦場に自らを誤魔化して立っていた。

 

 『集中して、甲児君!』

 『分かってる!』

 

 甲児が十蔵の行方を知るまで、後1分の事だった。

 

 

 




次回、遂にカイザー起動。
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