多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第69話 皇帝VS皇帝その8 一部修正

 新西暦186年9月28日 極東方面 旧光子力研究所跡地

 

 『お兄ちゃん、合体だよ!』

 『はぁ?!』

 

 見た事もない飛行機に乗って戦場にやってきた妹のグレース・マリア・フリードに対し、デューク・フリードは驚きの余り叫ぶ。

 なお、彼女がこの場にいるのも試作型スペイザー(地球製1号)に乗っているのも保護されていた科学要塞研究所の職員には一切無許可である事を明記しておく。

 

 『合体って…その機体にそんな機能が?』

 『そう、博士達が作ってくれたの!』

 

 きっとこの場に剣造博士と弓博士の二人がいたら必死こいて止めるだろう。

 何せこの試作型スペイザー、試作型グレートブースター同様に「光子力とゲッター線の融合のための概念実証機」であり、二つのエネルギーを用いて光量子エネルギーで稼働するグレンダイザーを強化するという無茶が三つ四つ重ねられているのだ。

 戦場という不確定要素ばかりな場所での実機試験無しでの合体など、どれだけ危険であるかは言うまでもない。

 無論、シミュレーター上では四桁所か五桁単位でデータを取っているが、やはり実機試験程のデータは得られない。

 

 『よし、繋がったか!』

 

 そこで剣造博士からの通信が繋がった。

 

 『げ、剣造博士!?』

 『マリア君、君への説教は後だ。大介君、合体用の機動データは今そちらに送った!この土壇場で悪いが、後はそちらに任せる!』

 『剣造博士…合体成功の確率は?』

 『シミュレーター上では8割をキープしているが、実機試験は未だ行っていない。念のため、搭載された光子力エンジンとゲッター炉は機体側へ供給する事なく、あくまで武装へのエネルギー源としてのみ運用する予定だ。合体シークエンスに失敗しない限りは直後に爆散しない事は約束する。』

 『その言葉、信じます。マリア、合体だ!』

 『いよっし、試作型スペイザーいきまーす!』

 

 危険だっつってんのにマリアは一切の躊躇いなく、表示された合体のための機動を実行していく。

 350mというその突出したジャンプ力で高く跳び上がるグレンダイザー、それを下方向から追いかける試作型スペイザー。

 やがてグレンダイザーの跳躍が頂点に達し、失速して落ちる前の僅かな停滞の瞬間。

 追い付いてきた試作型スペイザーが先程までゴッドハンマーを保持していたアームを展開し、グレンダイザーの背中へと自らを固定する。

 

 『スペイザー、クロス!』

 『合体成功!これで自由に飛べるわよ、兄さん!』

 『よし、いくぞマリア!』

 

 外見こそ後のダブルスペイザーのそれと酷似しているが、性能に関しては段違いと言っても良い。

 装甲こそ原作通り超合金ニューZ製のボディだが、動力は光子力エンジンとゲッター炉を備え、高出力の光子力ビーム(両翼の根元)×2とゲッタービーム(機体中央の垂直翼の根元)×1、翼に懸架された各種ミサイルで武装しており、下手なMSよりも遥かに強力な火力を誇る支援戦闘機にして飛行能力の無いグレンダイザーと合体して飛行機能を付与するための追加オプション。

 それがこの世界での試作型スペイザーである。

 それと合体したグレンダイザーは、言うなればグレンダイザー(PS)と言うべきだろう。

 なお、PSとはプロトタイプ・スペイザーの略である。

 

 『一斉射撃、行くぞ!』

 『うん!ゲッタービーム、光子力ビーム、一斉射!』

 『喰らえ、スペースサンダー!』

 

 戦闘獣とVFが鎬を削り合う戦場の空を二条の光子力ビームと一条のゲッタービーム、そしてスペースサンダーが貫いていく。

 機動性と練度は勝れども、火力の足りなかった制空戦闘に極めて心強い戦力が追加された瞬間だった。

 このグレンダイザー(PS)の誕生により、制空権はISA戦隊側に大きく傾いていく事となる。

 

 

 ……………

 

 

 【えぇい、何をやっておるか!】

 

 戦場が各所で押され始めた事に業を煮やした闇の帝王は歯ぎしりしながら、念のため用意しておいた奥の手を切る事にした。

 

 【ピクドロン、何を遊んでおるか!合体して敵を蹂躙せい!】

 『ギシャアッ!』

 

 闇の帝王の号令の下、ダンクーガに抑え込まれていたピクドロンが応える。

 

 『ギィィシャアアアア!!』

 『ぬお!?』

 

 ダンクーガを咆哮と共に弾き飛ばすと同時、戦場に散らばっていた無数の戦闘獣の残骸が一斉にピクドロン目掛けて集まっていく。

 

 『何だこりゃ!?』

 『これは…百鬼帝国の時と同じか!』

 『各機、残骸並びに本体を攻撃して阻止しろ!合体するぞ!』

 『この状況じゃ無理ですよ!』

 

 無論、ISA戦隊側もそれはさせじと阻止に動くも、未だ戦闘獣相手に一進一退の戦況で手が空いている訳もなく。

 無数の戦闘獣の残骸がピクドロンを核として寄せ集まり、合体していく。

 出来上がったのは、全長100mにもなる巨大な機械の怪獣だった。

 四肢と翼を持った直立の獣の様な姿であり、その全身から放つ威圧感からパイロットらはその脅威度を明確に感じ取っていた。

 

 【ゆけぇい、ギルギルガンよ!その力で、早乙女や剣造めの作ったロボットを蹴散らすのだ!】

 『グギャアアアアアアアアアアぉ!』

 

 ギルギルガンが真っ先に襲い掛かったのは、先程までピクドロンと一騎打ちを演じていたダンクーガ(ブースター装備)であった。

 ギルギルガンからすれば消耗し切ったダイターンを、引いてクロガネとシロガネの二隻に止めを刺す邪魔をしくさった憎い相手である。

 強化され、相手よりも強くなったと判断した現在、ダンクーガを撃破せんと仕掛けるのは当然の事だった。

 

 『チィッ!』

 『気を付けろ忍!先程とはパワーが段違いだ!』

 『分かってる!こいつは俺達が抑え込むぞ!』

 

 対して、ダンクーガは消耗しつつも他の機体とは少々異なる事情があった。

 パイロット四名の野生の力、即ち意志力や精神力を「野獣回路」によってエネルギーへと変換するダンクーガは、エネルギー面での消耗は他と比較すると格段に少なかったのだ。

 加えて、他の特機に比べてパワーよりも運動性に重きを置き、機体サイズも20m級半ばと大型MS程度(断空砲付きブースターユニット込みで漸く34.6m)である。

 その分全機が三段階の可変機構によって装甲は特機としては並みかそれ以下なのだが、それはさて置き。

 そのため、合体によって火力やパワーが大幅に上がったものの巨大化したギルギルガンの大振りな動きに対して辛うじて対応できていた。

 

 『ギギャアアアアアアッ!』

 『上等だ、膾切りにしてやらぁ!』

 

 こうして野獣と怪獣の戦いは第二ラウンドに突入したのだった。

 

 

 ……………

 

 

 『甲児君、大丈夫!?』

 『ぅ…さやか…か?』

 

 一方その頃、大破した量産型グレートと甲児の下にさやかの乗った試作型グレートブースターが到着していた。

 幸いと言うべきか、コクピットは外見こそ酷い有様で甲児も負傷している様だが命に別状は無さそうだった。

 

 『くそ、こっちはもうダメだな。さやかさん、急いで逃げてくれ!アイツが来る!』

 『ダメよ、甲児君を置いてはいけない。それに、その量産型グレートはまだ戦えるわ!』

 『なんだって?』

 『今から合体シークエンス用の機動データを渡すから、それを実行して!』

 

 それは先程グレンダイザーと試作型スペイザーの合体シークエンスと酷似したものであり、使用する機体がグレートマジンガー並びに量産型グレートであるため、先程のグレンダイザーと試作型スペイザーの時よりも成功率は高い。

 しかし、大破寸前(HPバーがミリ残り状態)の量産型グレートが計算通り飛んでくれるかは怪しかった。

 

 『甲児君、聞こえているかね?私だ、絃之助だ。』

 『弓教授!?』

 『その試作型グレートブースターには今送った情報通り合体できる。それによってオリジナルのグレート同様再生機能も付与されるが、上手く機能するかは未知数だ。』

 『未知数って…。』

 『それにどの道その状態では戦えん。合体が上手くいかなかったらさやかに回収してもらってそのまま科学要塞研究所に帰還してくれ。予備機を用意しておく。』

 『お父様…。』

 『さやか…言いたい事は山程あるが、それは終わってからで良い。甲児君と共に無事に生き延びるんだ。良いね?』

 『はい!任せてくださいお父様!』

 『…分かりました。オレも腹を括ります。さやか、お願いできるか?』

 『任せて甲児君!それじゃ合体シークエンス、開始!』

 『進路確保、行けスクランブルダッシュ!』

 

 大破した量産型グレートと試作型グレートブースターの二機が直上へと飛翔する。

 幸いにも背部のスクランブルダッシュは比較的無事であったため、その飛行は安定していた。

 試作型グレートブースターも一切の問題なく、量産型グレートの背面へと近付いていく。

 

 (凄い…私は今、甲児君と空を飛んでる…。)

 

 この戦乱が始まってから今日まで、さやかは光子力研究所や科学要塞研究所で甲児や父をサポートするだけで、戦場に出る事は許可されなかった。

 それは父である弓絃之助と恋人である甲児からの意見が故だった。

 絃之助は父として年若い一人娘が厳しい戦場に出る事を許さなかった。

 何せ戦況は一切の予断を許さぬ状態であり、地球人類の興亡のためならば戦場では娘の命が切り捨てられる可能性もある。

 加えて、もしさやかが戦死した場合、自分と甲児が狂わない可能性を否定し切れなかったのだ。

 もし光子力研究の権威の一人である自分とマジンガーZのパイロットにしてあの魔神ZEROへと取り込まれた経験のある甲児が暴走した場合、兜十蔵博士の生み出してしまった魔神に匹敵する邪神を生み出す可能性があった。

 自分という人間を知るが故に絃之助はさやかを止め、甲児も自分を立ち直らせてくれた恋人が戦場に出ると聞いて必死になって止めた、土下座もした。

 だからこそ、さやかは戦場に出る事は諦め、テストパイロットとして父のサポートをしながら過ごしていた。

 だが、今はどうだろうか?

 

 (私は今、甲児君と一緒に戦おうとしている!)

 

 それは後方で戦場で戦い続ける甲児の無事を祈り続ける日々に比べ、余りに甘美な時間であった。

 最も愛しい異性と極限の状況で生死を共にする。

 これに勝る快感が存在するのだろうか?

 それこそ最も愛しい異性と愛を交わすか、子供を設ける事位だとさやかは思う。

 

 【見逃すと思ったかアホぅめ!】

 

 しかし、10秒程度の結婚飛行ならぬ合体飛行は無粋な乱入者によって邪魔された。

 

 『Dr.ヘル!』

 『何よ、邪魔しないでよ!』

 【合体シーンは邪魔しないなんてお約束、現実であると思うかぁ!!】

 

 肉体を無くしても相変わらずギャグなのかメタなのか困る発言をするDr.ヘルもとい闇の帝王。

 主翼となるカイザースクランダーは真ゲッターばりの収納式であり、空中や宇宙でもマジンガー系で最高の機動性を誇る。

 この部分だけは最初から完成していて継ぎ接ぎも無く、その圧倒的機動性は設計通り遺憾なく発揮されていた。

 

 【恋人共々あの世へ逝くがいい!!】

 『チィ!』

 『甲児君…!』

 

 ヘルカイザーの胸部、左右の放熱板が赤熱する。

 ファイヤーブラスターというブレストファイヤーの三十倍の威力を誇る現時点でのヘルカイザーの最強武装。

 その威力たるや、先程放ったルストトルネードの比ではない。

 この戦場所か日本列島の地図を書き換えねばならない程の大破壊を齎す可能性すらあった。

 

 『真に申し訳ありませんが』

 『合体シーンは大人しく観賞してください。』

 【ぐオオおおおお!?】

 

 が、瞬間的に位相空間から顔を出した数機の無人ヴァルチャーと無人OFセトがヘルカイザーへとデストロイヤーガン(地球上なのでてかげん付き)と対象に衝撃を与えて吹き飛ばす実体弾ガントレットによる砲撃を加え、無理矢理引き剥がす。

 

 【えぇい、人形風情がいい気になるな!】

 『各機、急速潜行。』

 

 お返しとばかりにファイヤーブラスターが発射されるが、ヴァルチャーもセトも位相空間に潜ってそこにはいない。

 巨大な熱線が何もない虚空を焼き、その隙に合体シークエンスは終わりを告げた。

 

 【ああ、しまった!?】

 

 大破した量産グレートの背に、相対速度を合わせた試作型グレートブースターが接続される。

 直後、グレートブースターに内蔵された光子力エンジンとゲッター線増幅装置付きゲッター炉から膨大なエネルギーが供給される。

 これだけならば、余りのエネルギー量に大破した量産型グレートではそのまま爆散する事だろう。

 だが、この試作型グレートブースターは「グレートマジンガー並びに量産型グレートを強化」するために生み出された。

 謂わば再生機能等をオミットした量産型グレートをオリジナルに比肩、或いは凌駕させるために開発された機体でもある。

 オリジナルのグレートで再現に成功した4つの魔神パワーを後天的に付与する事も可能なのだ。

 結果、大破していた機体は瞬時に修復、否、それ以上に進化を開始した。

 ある程度の強化は元からの仕様だが、しかしゲッター線の恩恵によって想定以上の事が起き始めていた。

 四肢が、翼が生え、装甲が瞬く間に修復していく。

 本来の想定ならばその程度だったが、この世界で最初の融合を果たしたゲッター線と光子力という正の無限力は複雑に作用し合い、この程度では終わらせてくれない。

 全身を覆う装甲はやや青みがかった超合金ニューZから漆黒のニューZαへと進化し、その形状もよりマッシブで生物的になる。

 カイザーの様な生物的なデザインながらも、まるで上下逆にした様なデザインの翼へと変貌する。

 その頭部もまた猛々しく、同時に禍々しく変貌する。

 頭部の左右の角も伸び、ジェットパイルダーを囲む部位も大きく鋭くなり、合わせるとまるで冠の様に変貌していく。

 その総身から光子力とゲッター線の輝き二つを放出しながら、遂にその皇帝は大空より現れた。

 

 【兜甲児…その機体は一体何だ!?】

 『問われたとあっちゃ答えてやるさ!』

 

 額から垂れた血を拭い、兜甲児は嘗ての様に自信満々元気溌剌な声で応じる。

 

 『この機体こそゲッター線と光子力を融合させて誕生した最も新しいマジンガー。』

 

 続き、さやかが甲児と共に戦えるという幸福を噛み締めながら続ける。

 

 『テメェらの様な悪に堕ちた魔神を倒すために生まれたこの機体の名は、グレートマジンカイザーだッ!!』

 

 今ここに、新たな魔神皇帝が誕生した。

 魔神を倒すための魔神、それこそが正しき魔神皇帝。

 だが、堕ちたとは言え相対するのもまた同じ魔神皇帝。

 それは即ち、二体の魔神皇帝が激突する事を意味していた。

 

 【フン!真の魔神皇帝はこのヘルカイザーただ一機!消えて失せるがいい!】

 『おいおい、盗人猛々しいってのはこの事だな!』

 【なにぃ!?】

 『お爺ちゃんを傷付けカイザーを盗んだ罪、多くの人々を野望のために傷つけてきた罪!マジンガーを二度も悪用しやがった罪!今から全部耳揃えて払わせてやらぁ!!』

 【しゃらくさいわ若造が!我が機械道空手の前に沈めぇい!』

 

 こうして、二体の魔神皇帝は激突を開始した。

 

 




なお、魔神皇帝二体の火力が合わされば、現時点でも十分日本列島を消滅させられる模様。

極東「止めて!私の上で争わないで!」
地球「それワイはいつもの事なんやで。」
北米「くんなよ…こっちくんなよ…。」
欧州「……」死にかけ
アフリカ「それそっちだけで終わらせろよ!?いいか、フリじゃないからな!?」
南米(こっちは特にフラグもないから平和やな。)
南極&中華((フラグが炸裂しませんように…。))
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