多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
・技術開発四方山話その1 時系列不明
「これが試作可変MSのメタスかね?」
「えぇ。正確に言えばMA形態がメインなのでTMA、可変MAと言うべき機体ですが。」
「これを叩き台に次期主力機のハイを担う可変MSを設計する、と。」
「はい。とは言え、まだまだかかりますが…。」
「予算も人員もこちらで都合を付ける。確実に成功させたまえ。」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
当時、アナハイムでは大別すると二つのMS開発の流れがあった。
即ち、ジムの流れを汲む汎用量産機とガンダムの流れを汲むコスト度外視の高級機の二系統である。
更に後になってガンダムファイター向けのMFも加わるが、それはさて置き。
一年戦争後、ジオン公国のジオニック社やツィマッド社から多くの技術情報を買い漁り、技術者をスカウトしたアナハイム社は戦後の連邦軍の次期主力機開発計画に参入したが、ストンウェル・ベルコムに新中州重工、センチネンタルの三社が合同で開発したYF-0フェニックス、その後制式採用が決定したVF-1バルキリーに対して大きな衝撃を受け、これに対抗すべく急遽可変MSの開発を開始した。
その最初の機体がメタスである。
本機はVF-1バルキリーに対抗すべく可変機構の研究用として開発された試作可変MAである。
MA形態の武装、推進系の配置はジオン側のビグロや既存の航宇機等を参考にしている。
バルキリーに比べて簡易な可変機構は安価な製造コストを実現しているが、その分胴体がパイプ3本のみという脆弱な構造とマグネットコーティングとの親和性を考えられていない事(可変機構とマグネットコーティングの組み合わせは後に洗練され、リニア・アクチュエーターという可変機の必須システムとなる)から強度面や変形速度等で大きく劣り、積載量も少ないなど実用機とするには問題が多かった。
しかしこの機体で得られた各種データはアナハイム製可変機の雛型になり、Z計画に組み込まれる等、果たした役割は大きい。
が、現場の努力に対して、その結果は残酷なものだった。
・技術開発四方山話その2
「取り敢えず形にはなったが…。」
「やはりメタスの変形機構じゃ現状頭打ちだな。」
「変形機構を見直すぞ。宇宙専用と考えてもこれじゃな…。」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
当然ながら、余りにも新機軸な可変機開発は経営陣が期待する通りには進まなかった。
既に制式採用の決まったVF-1バルキリーが一年戦争最後期から開発が始まったのだから、そのスタートダッシュの差は歴然としたものだった。
しかし、それでもメタスをベースに武装を強化した重装型や後のメタス改に相当する機体の開発には成功していた辺り、太陽系第二位の大企業の座は伊達ではなかった(実用面で問題が多かったために正式採用には至らなかったが)。
が、同時にそれだけではまだ足りぬ事も分かっていた。
故にアナハイムは開発部門にあらゆる便宜を図ると共に他の大企業から組織的技術盗用を開始、各社に産業スパイを放つのだった。
・技術開発四方山話その3
『侵入者を検知。ライブラリに確認、アナハイム所属の産業スパイと思われます。』
『了解。いつも通り、重要情報は隔離して対応してください。』
『了解。重要区画に踏み込んできた場合は?』
『予定通り適切に対応してください。』
『了解。』
位相空間内での通話記録にて。
アナハイムの技術盗用は以前からの事なので、A.I.M.は密かに傘下や協賛先の企業の機密情報をしっかり守っていた。
その方が利益になると判断された時にはある程度は目溢ししていたが、一定ラインを過ぎたと判断されれば容赦なく対応される。
全てはA.I.M.側の掌の上であり、こうした産業スパイの証拠はしっかりと記録され、後のカーバイン一族の逮捕劇に繋がる事となる。
・技術開発四方山話その4
「これがZガンダムか…。」
「現状の我が社が持つ全ての技術をつぎ込みました。」
「よくやってくれた。コストは相応だが、期待以上の出来だ。」
「ありがとうございます。」
(とは言え、恐らくこれでは採用は取れんだろうな…。)
(こいつの開発で多くのデータが取れた。より洗練し、次に繋げなければ。)
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
遂にZガンダムが完成したが、高性能と可変機構の両立を追及した結果、極めてピーキーな性能と操縦性になった事から当然の如く不採用となってしまった。
メタスを始めとしたZ計画初期の機体(百式やデルタ等。他にも他社からの盗用データも)で培った可変機構のノウハウを更に発展させ、当時アナハイムが獲得した各種最新技術を投入して開発された可変MS。
スムーズな変形と機体強度を両立するためにVG合金が用いられており、その防御力は準特機級となった。
またプロジェクトTDで確立されたテスラドライブのシンクロ運用方式である「ツイン・モーダル」を参考にして脚部に二基搭載しているが、システム面が未完成なために活かし切れていない。
幸いと言うべきか、一連の戦乱の勃発により、最終的にシステム面に関してはプロジェクトTDチームの協力を得られた事によって完成を見る事となった。
結果、Zガンダムは次世代VFであるVF-11サンダーボルトすら大きく上回る速力と機動力を備える事となり、シリーズ77のアルテリオン(とその合体機ハイペリオン)を除けば、ヒュッケバイン系列にすら比肩する最高速度を得るに至った。
しかし同時にその圧倒的な速力と機動力を生かすことは一般的なMSパイロットには不可能だった。
加えて本機に搭載されたジェネレーターや装甲、テスラドライブ等の部材が何れもMSとしては最高級品を採用していた事が災いして機体コストは高騰。
これならばヒュッケバインの生産を進めた方が良いとして、3機が納入されるだけとなってしまった。
この数機はサイド7グリーンノアに運び込まれ、他の連邦軍向け試作機と共に技術開発用の試験機として運用される事となった。
しかし、戦乱がコロニーにも広がった際、後のNTパイロットの一人であるカミーユ・ビダンと出会い、図らずも実戦に投入される事となる。
この3機は1機は予備、1機はパーツ取り用にされ、実質的なカミーユ専用機とされた。
後にインターフェイスがサイコセンサーからサイコフレーム式に改良される等、各種の改修を施されながら使用される事となる。
・技術開発四方山話その5
「やはりZはダメだったか…。」
「となると、ペーパープランのZZもダメだろうしなぁ…。」
「今後も可変機の研究は継続するそうだが、そろそろ形にせんとな。」
「一旦可変機構は取り止めて、単なる高性能機にするか?ノウハウは大分溜まったし。
「百式みたいにか?あれもまぁ悪い機体じゃなかったが…。」
「どうせだ。Zで準特機級の予算と性能を獲得したんだし、準特機のつもりで作ってみるか。」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
こうして生まれたのが可変・分離合体機構の一切を省略した量産型ZZ、そのアップデート機たるメガZである。
内蔵武装は腹部のハイメガキャノンとビームサーベル兼ビームガンにダブルバルカンと最小限にした上で、機体構造自体はZ計画で生まれた高性能MS開発のための技術を惜しげも無く注がれた。
結果として30m未満の量産主力機の中では頭一つ飛び抜けた性能を持った機体が誕生する事となった。
近代化改修されてメガZとなった後もその性能とMSとは思えぬ頑強さとコロニーすら破壊する大火力、それを更に強化するフルアーマー装備から開発から年数が経ってもパイロット達から信頼され続けた。
本来のZ計画の趣旨とは異なる事から開発陣からの評価は今一つながらも、良い売り物になってくれたのでアナハイム経営陣としては満足のいく機体であった。
・技術開発四方山話その6
「一応メタスの方も改良を進めるか…。」
「とは言え、大気圏内外両用の機体は現状無理だな。」
「…噂の移民船団向けに宇宙用で進めるか?」
「後、可変機構が絡まない部分は全部ジェガンと共用しよう。それなら多少はコストも下がる。」
「名案だな。自社内でいがみ合ってもオレらはあんまり意味ないし、向こうの開発チームとも協力しよう。」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
こうして生まれたのがリゼルであり、ジェガンを多く採用した移民船団で採用された。
本機はジェガンよりも機動力や反応速度、航続距離に優れており、それでいて操縦難易度は低い。
コストは変形機構の分ジェガンより高いものの、最新のVFシリーズよりは低く抑えられていた事からアナハイム製可変機としては初の量産化・大量受注に成功した機体となった。
・技術開発四方山話その7
「まさかジェガンがこうも早く陳腐化するとは…。」
「科学技術は日進月歩って言うけどさぁ…。」
「グスタフカールは兎も角、ジェスタも今一つ評価が低いしな。」
「確か『シールドが普通のと違う』『サブアームが非力かつ不器用で片側しかない』とか言われてたな。」
「かと言って、現状一から設計して生産ラインを立ち上げる程の余裕はない。」
「なら再設計か。」
「グスタフカールは普通のアップデートで当面は十分だとして…。」
「ジェガンとジェスタ。双方の長所を取り入れ、短所を潰した機体。それが我々の次の目標だ。」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
こちらはハイではなくロー、ジェガン系の開発チームである。
が、昨今の敵勢力が量産を果たした特機軍団(総合性能が初期マジンガーZ級)とも言うべき集団であったため、必然的にコスト優先の量産機ではパワー不足が問題視され始めた。
そんな連中の相手は同じ特機か高級機に任せろよ!と言う開発チームからの指摘には「特機に乗れる人が不足してる」という現実が帰ってきた。
大気圏内外問わず音速超過駆動が当たり前の高性能兵器を乗りこなせる人材は、地球連邦軍広しと言えどもそう数はいない。
況してや地球とコロニー、火星に木星、土星までカバーする必要があるのだから尚更に。
結果として、ジェガンとジェスタの統合設計計画はスタートした。
・技術開発四方山話その8
「で、意外と違和感なく出来たな。」
「あぁ。バックパック直結式のサブアーム2本にジェスタをベースに機動性・運動性を強化。」
「他にもセンサー増やした上で内装系を最新のものにアップデート。カタログ上は重量増加も加味して3%UPって所か?」
「だが、サブアームのお陰で無重力ならスターク装備にも負けない重武装が可能なのは大きい。」
「サブアームの制御プログラムも作業用ポッドので割と何とかなったしな。」
「あぁ。でもサイコセンサーのお陰で割とどうにかなったな。」
「バズーカやミサイルランチャーをスターク装備無しで最大4つまで装備可能なのは運用の幅が広がるぞこれ。」
「結構外観も変わってるし、新しい名前付けるか?」
「そうだな…ジェダなんてどうだ?」
月のアナハイム・エレクトロニクスMS開発部門の一角にて。
外観はほぼムーンガンダムに登場するジェダである。
バックパックはジェガンD型のものの左右にサブアームが追加、リアアーマー(腰の後ろ)にジェダの特徴的なものとなっている。
サブアームはサンダーボルトのアレである。
カートリッジや武装の交換、武器使用に加え、機体の固定まで行える。
重力下では重量物の使用には大きな制限がかかるが、宇宙用としてはとても便利である。
以降、このサブアームは主力量産機の多くに追加される事となる。
これ程便利でありながら、制御プログラム等で揉めなかったのは、似たシステムが既に存在したからである。
ボールの元となった船外作業用ポッドのデータである。
時には無人でも運用するこのポッドは各企業も開発しているものであり、かなり信頼性の高い枯れた技術である。
これを参考にしてFCSとのリンクや戦闘時での重量バランスの変化等を加味して改良したのがサブアームの制御プログラムである。
サイコセンサーの思考制御方式と登録された多数のパターンを音声認識で起動させる方式の併用で動かしている。
但し、考えている内容と発声した内容が異なる場合はセーフティが働いて機能しなくなったりする。
カタログスペック上は3%増し程度だが、その内実を含むと大きく戦闘能力向上を実現した本機はそのパーツの7割以上がジェガン系と共用しており、生産ラインも大きな変更なく生産できた。
が、サブアームの扱いには機種転換訓練を始めとした習熟が必要として、戦中に生産された最初期モデルはパイロットの使い心地優先で敢えてサブアームの無いモデルが多かった。
これらは後の休戦期に制式量産モデルへと全て改装され、パイロットも機種転換訓練を受けてその真価を発揮する事となる。