多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
皆さんも遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
◯2人のノリコ
タカヤノリコ。
無敵のスーパーロボット「ガンバスター」のパイロットにして太陽系絶対防衛作戦の英雄。
後に参加したカルネアデス計画において敬愛するお姉さまこと「オオタカズミ」と共にブラックホール爆弾の点火栓となり12000年後の地球に帰還する……はずだったのだが、彼女らはなんの因果か並行世界の地球にたどり着いてしまう。
幸いというか先にこの世界に来ていた(体感的には別れの挨拶を交わしたばかりの)友人ユング・フロイトの伝手もあって、現在は地球連邦軍附属沖縄女子宇宙高等学校でパイロット候補生たちの教官におさまることが出来た。
そんな彼女が今何をしているかと言えば…
「これですよ教官!前に話したゲキ・ガンガー3!アニメ好きでこれを観たことないなんて人生の半分を無駄にしてますよ!」
「そ、そうなの?タカヤさん。」
平行世界の自分と一緒にロボアニメを観る羽目に陥っていた。
“なんでこんなことに?まだどんな顔して向き合えば良いのか分かんないのに”
いそいそとモニターの準備をするノリコ(女子高生)をよそにノリコ(成人女性)は内心パニクっていた。
平行世界の同一存在である「この世界のノリコ」とは自分が教官を務めている都合上何度も会っているが、マンツーマンで、しかもプライベートな空間で向き合うことは想定外だ。
この世界のアニメ作品を堪能すべく向かったホビーショップに休日だからと言って長居したのが不味かった。
同じ自分同士、趣味嗜好が似通ってるならそう言ったところで出くわす可能性もあるとなぜ気付かなかったのか。
というかロボアニメのことで盛り上がったからと言ってなぜ自分はホイホイ彼女の下宿先まで着いていってしまったのか。
“もう一人の自分かぁ”
気付かないのを良いことにノリコ(15)や部屋をしげしげと眺めるノリコ(24)は自分と彼女の違いについて考える。
同じ頃の自分は(亡くなった父を蔑む意図もあっただろうが)意地の悪い同級生に「全滅娘」と呼ばれるほどマシーン兵器の操縦はからっきしだった。
それに比べるとここの自分は決して成績が良いわけではないがよくやっている。
授業は熱心に聞くし(たまに睡魔に負けて寝てるが)、マシーン兵器の操縦訓練もマニュアルである程度こなせて、分からないことはすぐ質問し、放課後は許可をとって居残り練習をしている。
良いことだがなぜそんな差が生じているのだという疑問もある。
“やっぱりパパがいるからなのかな”
自分と彼女のもっとも大きな違いはやはりこれだろう。
八歳の誕生日を前にして死別した父はこちらの世界では今も存命であり、連邦宇宙軍の将官として太陽系防衛の任についている。
この娘は自分が持てなかった父との数年間の思い出を持っているのだ。
「ねえタカ「お待たせしました教官!さっそく観ましょう!」え?ええそうね。」
いかん、別人だと割り切っていたつもりだったが今完全に父のことを聞こうとしていた。
自制しようとは思うのだが、やはり気になるものは気になるのだ。
「確かゲキ・ガンガー3だっけ?このアニメ?」
「そうです!アニメ好きでこれを観てないのは人生の半分を無駄にしてますよ!教官の好きなバーンブレイド3だってこれの影響を受けてるんですよ!私なんかこれを観てパイロットになることを決めたんですから!!」
“なんかこの娘今とんでもないこと言わなかった!?”
まあぶっちゃけ自分もそういう気があったわけだがこうもあけっぴろげに言い放っていただろうか?
しかしこれはいい機会だ。
それほどまでに影響を与えた作品であればこれを観ることで彼女のことがより理解できるかもしれない。
「分かったわ。じゃあ観ましょうか。」
「はい!じゃあ行きますよ!」
_数時間後
「「ジョぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
海燕のジョー死亡回までぶっとおしで視聴した時、そこには並行世界の自分だのなんだのと悩んでいたノリコ(原作)はいなかった。
ただそこには漢の死にざまに涙する二人の女が残されるのみである。
《補足》
・タカヤノリコ(原作)
原作世界からの来訪者。偽装身分としてカタヤ・ノリカ地球連邦軍中尉となっている。
現在は並行世界の同位体であるタカヤノリコらの教官を務めるも教職の経験は浅いので実技以外は結構ポンコツ。
そのため生徒達からは教官よりもノリちゃん先生と呼ばれる事が多い。
新西暦187年時点で24歳。
もともとのオタク趣味はここでも健在で21世紀から近年までの作品を収集している。
これが幸いしこの世界のノリコとプライベートでの関わりも持つようになり、今では「もう一人の自分」ではなく「妹分」として彼女を認識するようになった。
なお後日練習後のシャワー室でこの世界のノリコと鉢合わせになった際、自分と彼女の違いをより深く認識したとかなんとか(タカヤ提督生存によるメンタル面へのダメージが無かった&不摂生してると叱ってくれる家族がいるためにより健康的に育った結果)。
・タカヤノリコ(α時空)
この世界のタカヤノリコ。新西暦187年時点で15歳。
父への憧れと幼少より親しんだゲキ・ガンガーの影響でスーパーロボットパイロットを志し沖女へ進学。
趣味嗜好が近しい原作時空のノリコとは生徒と教師の関係以外にも同好の志、もしくは姉妹のような関係を築いた。
尚、お姉さま呼びはこの世界のカズミ限定なので「ノリ姉さん」と呼ぶ。
実はタカヤ提督生存とトレミィの介入(食料事情&医療技術がアップ)などの要素のせいで原作ノリコよりスタイルが良い。
・ゲキ・ガンガー3
機動戦艦ナデシコの世界では後継機ゲキ・ガンガーⅤのデザインがウケなかったなど諸々の理由で4クール放送の予定が39話で打ちきりになってしまったこの作品だが、この世界ではスポンサーについたA.I.M.のおかげで全50話が無事に放送され総集編に劇場版やOVAの製作された。
原作でアキトに「酷い話」と言われた海燕のジョー復活は作中に伏線を張っておくことで無理なく実現。
そのため当時の考察サイトでは「ジョー生存説」がつぶやかれており、それが的中する形となった。
なお前述のOVAには離脱中のジョーが名と顔を偽りキョアック星人のスパイと暗闘を繰り広げるハードボイルド調のものなどが存在する。
この作品は後の高名なロボット開発者達にとってバイブルの一つとして扱われており、リアタイで視聴していた早乙女博士はもちろんのこと、再放送を視聴していた兜十蔵博士も本作品のファンであった。
ちなみに劇中で描写されたゲキ・ガンガー3の内部機構は放送から数年前の火星で発見されたゲッター艦内部に残されていた量産型ゲッターロボそのものが参考にされており、当時のロボット研究者達の間では「一見荒唐無稽だが機械的な部分は意外と理にかなった作りをしている。装甲と動力はどうにもならんが」と言われていた。
実は本人承諾のうえでクローン武蔵がカメオ出演している。
《余談》
悲報:ノリコ、シリアス保たない。
◯そのときふしぎなことが……起こらなかった
シズラー。
地球帝国宇宙軍の主力マシーン兵器であり、この宇宙ではA.I.M.によって生産される地球連邦軍の主力スーパーロボットである。
ガンバスターの廉価版とも言えるこの機体は攻防速並びに拡張性の全てが高水準に纏まった名機であるが、それゆえに後継機開発は難航。様々な派生型や試作機が生み出されることとなる。
そして今、地球連邦連邦軍情報部に所属するギリアム・イェーガー少佐の前に鎮座するこの機体もそんな派生機体の1つである。
「これがシズラーBLACKRXか。」
A.I.M.、いや、UTFの中枢であるトレミィと情報交換に訪れたギリアムはもののついでとばかりに依頼された防諜体制の査定を行っている最中にこの機体に出くわした。
ハイパースペースチタニウム製の黒いボディ。
あらゆる敵を視界に捕らえて逃さない真っ赤な目。
惑星サイズの敵を想定して開発された新型格闘兵器リボルビングケイン。
超小型縮退炉を搭載することで本体のエネルギー消費をもたらさない拳銃型バスタービーム砲ボルティックシューター。
いずれもが彼のかつての戦友を思い起こすものであった。
「ギリアム少佐どうかしましたか?」
そんなギリアムに付き従う青年「西光次郎」。
不意に足を止めた上司の何か懐かしむような表情を訝しみながら声をかけた。
「いやなに、なかなか頼もしい機体だと思ってな。」
そう返すギリアム。
だが光次郎は思う。
この機体はあまりの機体出力にパイロットが振り回されてしまい正式採用を逃した機体ではなかったか?
ある意味で欠陥品とも言えるこいつに何か期待するものがあったのだろうか?
しかし…
「そうですね。自分もそう思います。それに何か懐かしい感じがします。自分でもよく分かりませんが」
なぜか自分もなんとも言えぬ感情をこの機体には抱いていた。
「そうか。さて他も確認するか光次郎。」
「了解です。」
そんな2人の姿を電子の目で監視する者がいた。
そう、我らがトレミィである。
「それでなんかリアクションはあった?」
「RXの前にやや立ち止まった程度です。目立った行動はありません。」
「ギリアム少佐はまあいいんだけどさ。てつをは予想外だよてつをは!」
「てつ、なんです?」
どうやら今回の本命はギリアムではなくその部下のようだ。
まあインフィニティーストーンに匹敵しかねないキングストーンの持ち主かもしれないしね。仕方ないね。
「これ開発中のムーン見せたらなんかリアクションしてくれるかな?」
「どういう根拠でそうされようとしているかは分かりませんがやめておいた方がよろしいのでは?」
ヒーロー戦記もよろしく!
因みにVISPは父の実家にあったヒーロー戦記の一つ「ザ・グレイトバトルⅡ ラストファイターツイン」でファミコンやり始めた口だぞ!
・シズラーBLACK-RX
シズラーブラックの近代化改修試験機。
正確には「シズラーブラックリファインXタイプ」。
装甲はスペースチタニウムからハイパースペースチタニウム(バスタートマホークの素材)に、縮退炉を新型に換装したうえで2基搭載。
スペック上はガンバスターすら凌駕する出力を誇る(尚、炎になったガンバスターは想定外)。
操縦方式は引き続きDML式でコクピットブロックにはサイコフレームを採用。
頭に思い浮かべただけで火器管制を行うことが可能(が、YF-22よろしく操作性のピーキーさに繋がる破目になる)。
各種武装はシズラーのものを引き継いでいるが出力の増した縮退炉の恩恵を受けてその威力は大幅に増強されている。
また両手両足にエネルギーを集中し破壊力を増大させる「シズラーパンチ」「シズラーキック」が搭載。
加えて小型縮退炉を搭載した拳銃型バスタービーム砲「ボルティックシューター」を装備。
そして最大の武器は内部に格納された格闘戦武器「リボルビングケイン」。
エグゼリオ変動重力源やZマスター級の敵を想定した武装であり、アルトアイゼンのリボルビングバンカーをベースに開発された。なお外見は警棒。
内部には惑星を消滅させるレベルのエネルギーを超高圧縮させて封入したカートリッジが6発内蔵されており、これを相手に突き刺し激発させることで敵の内部にエネルギーを送り込み、敵を内部から破壊する。
この超高エネルギーに耐えるため本体は超合金ニューZαで作られている。
性能的には申し分のないものに仕上がったものの増大した主機出力に振り回されるテストパイロットが続出。
またリボルビングケインとそのカートリッジの製造コストが高くついてしまったため改修された機体は極一部にとどまった。
ネーミングから分かるように元ネタは「仮面ライダーBLACK・RX」。
しかしこんだけやってもボルティックシューターの射程は無限にならないし、リボルビングケインの威力は最強スレそのままのスペックなら「宇宙を破壊できるエネルギー×n」とも言われるリボルケインには全く及んでいない。
当然ながらゲル化も出来ない。
なんなんだあいつ(RX)は???(A.公式チートです)。
・シズラームーン
シズラーをベースとした次世代主力量産特機の試作機。
純粋な強化型であるBLACKRXとは異なり新技術を随所に投入、次世代主力量産機のスタンダードとなるべくして開発された。
機体フレームはシズラーを原型としつつもユング・フロイトの持ち込んだガンバスターセカンドの概略図の要素を盛り込んだため殆んど別物に近い。
装甲材質や縮退炉はBLACKRXと同等だが、内部に高純度のフォールドクォーツを用いた新型フォールドシステムが組み込まれている。
これにより如何なる地形や空間異常にも影響されずに超空間航行を行え、誤差1m未満の短距離戦術フォールドや異次元からのエネルギー供給などその効果は多種に及ぶ。
またこのエネルギーを用いた特殊装備として「サタンサーベル」が存在する。
これはフォールドクォーツによる時空操作能力を応用した剣で、刀身が文字通り「空間を絶つ」能力を発揮できる。
しかし未だにA.I.M.でも解析半ばのプロトカルチャーテクノロジーを随所に盛り込んだこの機体はあまりの多機能ゆえに扱えるパイロットが非常に限られ、整備性も劣悪。
結局技術実証機の域を出なかったこの機体は扱いこなせるパイロットがあらわれるまでUTF旗艦プトレマイオスに保管されることとなる。
元ネタはシャドームーンであり装甲表面はシルバーでアイカメラの部分は緑色。
・西光次郎
OGクロニクルに登場したギリアムの部下。
なお名字は今作オリジナル。
某太陽の子そっくり。
幸いなことにこの世界にはゴルゴムもクライシス帝国も存在しないので普通の人間である。
・トレミィ
もし「ふしぎなことがおこった」場合、丁重にスカウトするつもりだったが、敢え無く不発に終わった。
割とよくある事だが、今回は流石にちょっと予算使い過ぎでお小言貰った。