多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第70話 皇帝VS皇帝その9

 新西暦186年9月28日 極東方面 旧光子力研究所跡地

 

 『いくぜ!グレート…!』

 【なんの!ファイヤー…!】

 

 空で相対する二機の魔神皇帝。

 その対決の始まりは、互いの最強武装の撃ち合いからだった。

 

 『【ブラスターッ!!】』

 

 両者の胸部の放熱板から発射された熱線。

 それは地表に命中すれば、容易く大地を蒸発させ、地殻を露出させ、島国程度ならば消し飛ばす威力を誇る。

 間違っても有人の可住惑星で使用すべき兵器ではない。

 それが真っ向から激突した場合、周囲は一体どうなるだろうか?

 

 『グギャアアアアアア!?』

 『総員耐衝撃・閃光防御ッ!』

 『うわああああああああ!?』

 『ひぎゃあああああああっ!』

 『へ、陛下!?お止めくださ…!?』

 『離脱しろ!急げェー!』

 

 敵も味方も巻き込まれちゃ堪らないと戦闘なんて放り出し、少しでも距離を置こうと全速で離脱を開始した。

 動けない者は防御を固め、可能な限り非戦闘員を逃しつつ、バリアやシールド等を構えて暴虐の嵐を耐え忍ぶ。

 現状公式に確認されている中では最上位の特機同士の戦闘は、その余波だけで他の全てを圧倒し、地形を変え、敵味方の残骸を消し飛ばし、あらゆるものを薙ぎ払った。

 

 【ちぃ、場所を変えるぞ兜甲児!】

 『合点!』

 

 このまま此処で衝突しては地球が滅びかねない。

 それを正確に理解した両雄はそれぞれの思惑(野望と理想)から地球上での戦闘は避けるべきだと考え、地表より離脱すべく垂直方向に飛び立った。

 

 『甲児君、グレートマジンカイザーはあくまで応急処置に過ぎないわ!10分もすれば機体が過剰なエネルギーに耐えられずに崩壊してしまう!だから!』

 『分かったぜさやかさん!10分でケリをつける!』

 

 移動の最中、甲児はこの機体最大の欠陥を知らされた。

 最初に言っとけよと思うが、言う暇なんてありゃしなかったし元は緊急避難のためだったので許してほしい。

 まぁグレートマジンガ―とは言え大破寸前の未完成かつ量産型の機体を、超高出力のゲッター線と光子力をかけ合わせてブッ込んで作った急造の魔神皇帝とかそりゃー機体の寿命短いのも当然の話ではある。

 

 【ここらで良いか。】

 

 両雄が止まったのは、その眼下に青く美しい地球を湛えた宇宙空間。

 月と地球近傍の哨戒艦隊のコースの隙間であり、人工衛星すら存在しない。

 正にここは打って付けとも言える場所。

 邪魔となる物が何もないこの宙域に到達するまで、最新鋭のVFでも数分はかかる所を、この二機は一分もかからず到達していた。

 これで両者とも急造の機体だと言うのだから末恐ろしい。

 

 【では、最後の勝負と往こうか!】

 『応!』

 

 何もないこの場所でこそ、二機の魔神皇帝は漸く全力を出す事が許される。

 今度こそ何の邪魔も横槍もなく、互いの因縁に漸く決着を付けるべく、両者は闘気を漲らせてていた。

 

 【勝つのはこの儂、Drヘル!】

 『いいや、このオレ兜甲児と!』

 『弓さやかよ!』

 【ならば最早問答無用!このヘルカイザーの前に消えて失せよ!】

 『へ!テメェこそこのグレートマジンカイザーに勝てるとでも思ってるのかよ!』

 

 そして、両雄は同時に相手へ向けて全力で加速した。

 

 『ッ!』

 【ッ!】

 

 音速など遥か彼方に追い遣った二機は、亜光速の世界にてその拳を振るう。

 並の宇宙戦艦程度なら一撃で木端微塵となる打撃に、空間そのものがギシリと過負荷で軋む。

 しかし、その程度など序の口だと言わんばかりに、両雄は打撃の応酬へと移る。

 亜光速で巧みに場所を入れ替え、拳を、足を、拳撃を、蹴撃を交わす両雄に、遂に空間そのものが付いていけなくなっていく。

 

 『空間変動を感知!甲児君、気を付けて!何処かに跳ばされるわ!』

 

 同時、グレートマジンカイザーとヘルカイザーはこの宇宙から消失した。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 大気もなく、赤茶けて荒涼とした大地。

 何処かの小惑星か衛星だろうその場に降り立ったグレートマジンカイザーはしきりに周囲を伺い、仇敵の姿を探す。

 

 『此処は…何処だ?』

 『観測される天体の座標から推測…地球から数百光年は離れてるわね。』

 

 その結果に顔が引きつる二人。

 時間制限があるグレートマジンカイザーにとって、このまま遭難は最悪の未来だった。

 が、そんな心配はする暇も無かった。

 

 『超高熱源反応探知!』

 『ッ!?』

 

 さやかの警告よりも僅かに早く、甲児はその場から機体を飛翔させた。

 その直後、彼らのいた場所に地殻どころかコアにすら届き得る程の超高音の熱線が降り注いだ。

 そんなものが直撃した結果、名も無き小さな星は呆気なく滅び去っていく。

 名も無き星の残骸が飛び散る中、仇敵の姿を見つけたグレートマジンカイザーは一歩間違えれば無数のスペースデブリに激突する状況にも関わらず、一切減速する事なく突き進む。

 

 『Dr.ヘル!』

 【ははははは!やはりこのヘルカイザーこそ最強よ!】

 『黙れ!ターボスマッシャー…!』

 【ふん!ターボスマッシャー…!】

 

 『【パンチッ!!】』

 

 マジンガー系ロボットの代名詞の一つ。

 強化に強化を重ねたロケットパンチが放たれ、両雄の中間地点で衝突する。

 またも打撃の影響で空間が歪曲して揺らぐ中、両雄はそんな事を一切勘定せずに自身も突撃する。

 そして発射した互いの右手を加速そのままに再接続、そのまま互いに互いを打撃する。

 

 【ぐおお!】

 『ぐああ!』

 

 ヘルカイザーが左頬を、グレートマジンカイザーが腹部を殴られ、その超合金ニューZαの装甲に亀裂が入る。

 

 『再び空間変動を感知!』

 

 そして、打撃の余波によって発生した空間変動に、両雄は再び呑み込まれた。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 二度三度と繰り返せば、どんな事にも慣れが生じ、ルーチン化する。

 ヘルカイザーとグレートマジンカイザーと言う超高出力の光子力のぶつかり合いは幾度もの空間変動を発生させ、その度に何処かの時代、何時かの場所へと両雄を跳ばし、再会しては再びぶつかり合う。

 幾度も幾度も幾度も、時間も空間も世界も飛び越えて。

 無限に続く闘争と跳躍の輪廻、エンドレスワルツ。

 互いの認識すら曖昧模糊となりかけながら、それでも両雄は決して互いへの必殺の意思を無くさず、胸に抱える熱き野望/理想の意志を捨てず。

 過ぎ去った時を数える事すら意味を成さなくなった果てに、両雄は元いた世界、生まれ育った母星の下へと帰還した。

 

 『っづぁ…さやか、さん!聞こえてるか!』

 『えぇ大丈夫…!聞こえてるわ甲児君!』

 

 ボロボロだった。

 装甲の多くが罅割れ、欠け、剥離していた。

 五体こそ未だ繋がっているものの、誕生したその時より滅びを定められた魔神皇帝は正しく満身創痍だった。

 

 【ぐ、漸く戻って来たか…!】

 

 だが、それはこのヘルカイザーもまた同様だった。

 五体満足、しかしなれども満身創痍。

 しかも、今両雄は地球への帰還の最中、即ち大気圏突入の真っ最中であった。

 分厚い大気の層との摩擦で動きが鈍り、全身を赤熱させながらも、しかし両雄に戦闘停止と言う思考は無い。

 この戦闘が終わる理由はただ一つ、どちらかが負け、どちらかが勝つかしか無い。

 そして、両雄は己こそが勝つ方なのだと信じて止まない。

 故にこそ、この戦闘は未だ終わらない。

 

 【カイザーブレード!】

 『カイザーソード!』

 

 ヘルカイザーが胸部のエンブレムから剣を引き抜き、応じる形でグレートマジンカイザーが胸の放熱板を鍔とする剣を引き抜く。

 

 『【オオオオオオオオオッ!】』

 

 最早数える事すら馬鹿馬鹿しい剣撃の応酬。

 大気圏への突入速度を一切減速する事なく、寧ろ更に加速しながら、両雄はその手に握る剣を振るい続ける。

 

 『甲児君、地表へ着弾するわ!』

 

 さやかの声とほぼ同時、両雄はマッハ50と言う大型隕石の落下みたいな質量と速度で極めて迷惑な地球へのWダイナミックただいまを果たしたのだった。

 

 

 

 




地球「グワー!」
日本「…」←へんじがない。ただのしばかねのようだ。
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