多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第75話 ズール銀河帝国その3

 新西暦186年10月10日 現地時間で04:00。

 遂に土星圏へと到着したズール銀河帝国軍先遣艦隊が、グランドキャノンの有効射程内へと入った。

 同時、耐用限界ギリギリの140%までチャージしたグランドキャノンが先遣艦隊へ向けて発射された。

 

 『か、艦隊正面より高エネルギー反応来ます!』

 『全艦回避運動!』

 『ダメです、間に合いまs』

 

 事前の工作でリアルタイムに相手の位置情報を確認した状態で、尚且つ効果範囲の広い戦略兵器で外す事は難しく。

 狙い澄まして放たれたグランドキャノンの一射は嘗ての一年戦争時代よりも遥かに強化されていた事もあり、たった30秒間放たれただけでズール銀河帝国軍先遣艦隊の約4割を飲み込んでいった。

 

 「グランドキャノン、敵艦隊中央を貫通!被害甚大!」

 「よぉぉぉし!これより掃討作戦に移行!各員、所定の作戦を実行せよ!」

 

 その光景を見ていた土星基地総司令部に詰めるドズル中将は即座に追撃を命じた。

 敵は指揮系統が乱れに乱れ、混乱の真っただ中だ。

 如何に太陽系外の優れた技術を持った軍勢であろうと、烏合の衆となればその力を十全に振るう事は出来ない。

 斯くして、先遣艦隊は哀れにもスコアを献上するだけの存在に…

 

 『こちらはベガ星連合軍所属、ベガ大王である。艦隊司令官であったジャネラが死亡した故、一時的にワシが指揮権を預かる。戦闘終了後、生き延びておったら改めて正当な者に指揮権を返す故、今は堪えてほしい。』

 

 ならなかった。

 この艦隊はズール銀河帝国軍の内、被植民星出身者らのみで構成されている。

 中には自分の星では頂点に君臨する者も当然ながらいた。

 そして、この先遣艦隊において実質的なNo.2、艦隊副指令とも言える男が彼ベガ大王であった。

 なお、本来の副司令官はジャネラと同じ旗艦セント・マグマに搭乗していたダンゲル将軍であったが、ジャネラ共々蒸発済みである。

 嘗て優れた科学技術を以て繁栄していたフリード星の侵略に成功したベガ星の王であるベガ大王の手腕は確かなもので知られており、現在他の各指揮官が指揮権の掌握に動けていない現状、彼が暫定的な指揮官になったのは自然な流れだった。

 

 『全艦は艦載機を発艦しつつ、迎撃態勢を取れ!敵の攻撃はこれからが本番である!』

 

 ベガ大王の通信の直ぐ後、先遣艦隊目掛けて飛来するものがあった。

 

 『接近する反応多数!これは…隕石群です!』

 

 隕石群にブースターをポン付けし、質量兵器として使用する。

 嘗てア・バオア・クー攻防戦でも用いたジオンでは馴染みの戦法である。

 しかもここは土星圏、土星の環には使い道のない岩石なんて無数に存在する。

 軽く100を超える隕石群の雨に、未だ混乱から立ち直っていない先遣艦隊は轟沈する艦こそ出なかったものの、その混乱に拍車を掛けられた。

 突然の事態に効果的な迎撃を行えた艦は殆どおらず、少なくない艦が隕石に命中して小破、一部では無理な回避運動によって味方艦と衝突する事すらあった。

 それでも恒星間文明の軍艦なだけあって頑丈で、完全に戦闘力を喪失する事は無かった。

 これだけならばまだ何とか建て直せたのだが…これはまだまだ序の口でしかなかった。

 

 『ッ!?隕石の中にミサイルが紛れているぞ!』

 

 飛来する隕石群、その一部は旧式ながらも大型対艦ミサイルが幾つも混ざっていたのだ。

 その多くは外れるか、途中で隕石と衝突して爆発してしまったものの、運よく命中したものは見事に敵艦を撃破する事に成功していた。

 だが、土星基地の面々はその多くが一年戦争を戦い抜いたベテランのジオン兵である。

 彼らの真に得意とする戦術はそれではない。

 

 『な、隕石の中にロボットがいr』

 

 先遣艦隊の中の一隻が何かに気付き、通信を繋げるが一手遅かった。

 偽装用のダミーバルーンの排除と同時、この日のためにカスタムされたゲシュペンストmk-Ⅱがジェネレーターと直結した有線式大型ロシュセイバーを振るい、真っ先に気付いた艦のブリッジを両断した。

 次いで、僚機が止めとばかりに反応弾頭のバズーカを破壊されたブリッジ跡から艦内へと直に叩き込み、轟沈させた。

 

 『ハッハァ!これだけ混乱してたら食い放題だな!』

 『全機、敵艦隊へ攻撃開始!母艦を優先して狙えよ!』

 『つってもおかしな形の艦ばっかで分かんねぇぞガイア!』

 

 一年戦争時代のジオン軍エース達に率いられた、ベテランパイロット達の駆る機動兵器部隊による奇襲である。

 彼らは隕石に偽装したダミーバルーンを纏ったSFS(足りない場合は大型ロケット)を足として、先遣艦隊へと奇襲を仕掛けてきたのだ。

 こんな出鱈目な作戦、連邦軍では一部の例外を除いて絶対やらないだろうが…彼らはMSでミノフスキー粒子とNジャマーで混乱した連邦の艦隊を蹴散らしたジオン軍だった。

 高機動・格闘戦の得意なジオン系エースパイロット達はゲシュペンスト系を好む者が多く、彼らもまたその例に漏れない。

 ゲシュペンストmkーⅡ(ジオン共和国仕様)スーパーフルアーマー

 全機がオプションパーツマシマシの豪華仕様であり、殆どの機体が通常のフルアーマーに加えて反応弾或いは光子弾頭を装備した対艦戦闘を念頭に置いた特別仕様であった。

 その分バランスや汎用性は死んでいるが、その程度苦も無く乗りこなすからこそ彼らはエースであり、ベテランだった。

 黒い三連星もまた、黒と紫で塗装された三機のゲシュペンストmkーⅡ(ジオン共和国仕様)スーパーフルアーマーを駆り、戦場へとやってきた。

 

 『異星人の艦隊…これ以上好き勝手はさせない。』

 『全機、敵艦隊は混乱している!今の内に落とせるだけ落とすぞ!』

 

 『異星人とかさぁ…やだやだ、もっと平和に出来ないのかねぇ。』

 『言っても仕方あるまい。』

 『降り掛かるなら払うしかないですよ、隊長。』

 『しゃーねーなっと!キマイラ隊、出るぞ!他に遅れを取るなよ!』

 

 『ここで戦果を上げねばエースの名折れだ。行くぞ!』

 『『『『『『『『了解!』』』』』』』

 

 旧リビングデッド師団所属サイコザク大隊。

 キシリア旗下精鋭キマイラ隊。

 そして白狼シン・マツナガ少佐率いるベテラン部隊。

 土星基地守備隊を除いた土星方面軍の中でも上澄みも上澄みのパイロット達が、先遣艦隊へと襲い掛かった。

 

 

 ……………

 

 

 (ぅ……。)

 

 

 音の無い宇宙空間、旗艦であったセントマグマの僅かな残骸と共に、先遣艦隊司令官であった女帝ジャネラは未だ息があった。

 と言っても、幾ら地球人類よりも頑丈なキャンベル星人と言えども、もう数分程で死体となるだろうが。

 

 (あぁ…妾の艦隊が…。)

 

 烏合の衆だ何だと言えどもそれなりに長く苦楽を共にしてきた同胞達の艦が、次々と落とされていく。

 特に円盤獣やベガ獣、マグマ獣を多数運用可能な母艦であるマザーバーンやブランブルが集中して狙われており、その内部の艦載機の殆どと共に沈められていった。

 出撃に成功した機体は何とか奮戦しているが、未だ奇襲の利が消えていない上に相手側が相当な練度を持っているのか、攻撃が殆ど命中しておらず、反撃で逆に沈められていく始末。

 先のグランドキャノンの一撃もあり、最早先遣艦隊はその戦力の半分以上を失っている状態だった。

 歴戦のベガ大王が無事ならば、何とか艦隊を立て直せるだろうが、それでもこれ程の損害を負ってしまったら最早趨勢は決しただろう。

 

 (何故…こんな事に…。)

 

 何度目かも分からない意味の無い自問自答。

 かと言って、降伏は即ち死だ。

 敵に正面から殺されるか、支配者に背後から殺されるかの違いでしかない。

 そして、ズール皇帝には誰も勝てない。

 もう何十年と前、ズール銀河帝国に屈して以来、キャンベル星も多くの星々と同様に隷従の日々を過ごしている。

 まるで猫がネズミを甚振るが如く、遊び半分で嬲り殺される人々。

 反乱は幾度も起き、しかし当然の如く鎮圧され、降伏すれども処刑されていく。

 絶望しかない、ただ息をする事さえ難しい日々。

 そんな中、唐突に始まったのが今回の遠征だった。

 支配領域のほぼ全ての戦力をつぎ込んだ、余りにも無茶な遠征に流石に反対の声も上がったが…結果は言うまでもない。

 外されたのは余りにも旧式でとても付いてこれない様なオンボロ兵器や老兵、訓練兵達だけ。

 今、自分達の母星がどうなっているのか知る事も出来ない。

 そして、分かっていた事だが、無茶な遠征は余りにも過酷だった。

 ゼ・バルマリィ帝国、共和連合、破壊者、巨人族、インベーダー、バッフクラン、その他多数。

 この銀河系に住まうあらゆる敵対勢力からの攻撃を受けながらの強行軍。

 寄せ集めとは言え一億に達した大艦隊の威容も過去の話であり、残ったのは半数未満1割の約3000隻と自分達非支配領域出身者の寄せ集めの500隻。

 そして、当然の様に敵の情報収集と露払いのために使い潰される自分達。

 

 (だが…もうこれで…。)

 

 これ以上苦しむ事は無い。

 薄れ行く意識の中、ジャネラは僅かにほほ笑んだ。

 

 『ほう?何処へ行こうと言うのだジャネラよ?』

 

 だが、邪悪は未だ彼女を見放していなかった。

 

 『どうやら死にかけておる様だな。今までワシによく仕えてきた褒美だ。最後にもう一働きする栄誉をやろう。』

 『何、結果はどうあっても変わらん。今一度、ワシを楽しませるが良い。』

 

 (ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?)

 

 もう終わる筈だったジャネラの身体に、何処から情勢を監視していたズール皇帝から力が流れ込んでいく。

 それは古い壊れかけの玩具を子供が無理矢理もう一度動かそうとするが如く。

 キャンベル星の司令官、女帝ジャネラの身体が暗黒のエネルギーを過剰なまでに注がれ、絶望と苦痛と共に不気味に膨れ上がっていった。

 

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 やがて旗艦セントマグマと比肩する程に巨大化させられたジャネラはその口から炎を、目からは光線を放ちながら、苦痛を紛らわす様に周辺の目に付くもの全てへと攻撃し始めた。

 

 

 ……………

 

 

 「マスター、一大事です。」

 「どったん?もう大概の事じゃ驚かなくなった自信あるけど。」

 「ズール銀河帝国本艦隊を追跡させていた回天が全て撃沈されました。現在、本艦隊の位置情報を見失っております。」

 「…コードRED・パターンG発令。地球連邦政府にも直ぐに警告を。」

 

 

 …………

 

 

 「機は熟したか。」

 「では、こちらも動こう。」

 「第七艦隊は全艦ワープ準備。目標は火星圏近傍。」

 

 事態は予想以上の速さで深刻に、しかし着実に動いていた。

 

 

 

 




先遣艦隊壊滅&ジャネラ怪獣化。
パターンGはギシン帝国のG。
そしてコードレッド発令と忘れられてたあの連中が…。

回天=第二章10話に登場。無人外宇宙調査用航宙艦「回天」型。銀河中に派遣されてる情報収集用。普段は位相空間に隠れてる。
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