多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年10月10日 現地時間で04:30。
『潮時だな。撤退するぞ。』
散々に暴れた後、突如巨大化して暴れ狂うジャネラを前にして、土星ジオン軍精鋭部隊はシン・マツナガ少佐の号令によりあっさりと撤退した。
既にしてグランドキャノンと隕石群、ミサイルにロケット、そして精鋭部隊による奇襲により、ズール銀河帝国先遣艦隊に対して十分な戦果を挙げていた。
これ以上欲をかいて手痛い反撃を貰い、敵を勢いづかせる事をマツナガ少佐は良しとしなかった。
『ま、こんだけやれば十分か。』
『だな。これ以上は欲張り過ぎだ。』
『了解。こちらも撤退する。』
黒い三連星、キマイラ隊、元サイコザクことサイコMS隊もそれにあっさりと同意する。
『各自、10カウント後に残った射撃兵装を一斉射。後に最大加速で離脱する。担当者は置き土産を忘れるなよ。』
対艦戦闘を前提とした装備であったが故に、その総弾数は少ない。
マシンガンやビームライフルを殆どの機体が装備しておらず、ミサイルやバズーカ、ロケット砲等を除けばマシンキャノンやバルカン、ビームガン兼サーベルが精々とあってこれ以上の戦闘継続は聊かきついものがあった。
(なんかバーサーカー染みたデカいのが出て来て同士討ちしてる。異星人版強化人間かな?面倒だな。弾も残り少ないし戦果も十分だし帰るか。)
大体そんな思考回路の末、土星ジオン軍精鋭部隊はあっさりと残った弾薬を景気よく撃ち尽くし、最後に殿をした部隊がコンテナに入れていた機雷をありったけ撒き散らして撤退していった。
残ったのは壊滅状態の先遣艦隊と、巨大化して暴走を続ける女帝ジャネラだけだった。
そりゃースパロボプレイヤーでもないのに敵の全滅を目標にするわきゃーないのでしたとさ。
『えぇい、何たる失態か!各員は負傷した味方を回収しつつ、巨大化したジャネラを攻撃!最早味方等と思うな!』
ヤケクソになったベガ大王の命令を、先遣艦隊は実行する他になかった。
……………
同時刻、土星基地司令部
「奇襲部隊、当初の目標を達成したため撤退を開始。追撃は無い模様。」
「よし、先ずは成功だな。戦闘データは直ぐに全て友軍に送れ。値千金だからな。」
幸い、グランドキャノン及び精鋭部隊による奇襲は大成功に終わった。
詳細は未だ分からないが、敵先遣艦隊の半数近く(ジャネラが暴れた分合わせて6割)をも撃破しており、これ以上ない結果と言えた。
「まだ気を緩めるなよ。正念場はここからだ。」
「分かっております。何せ我が艦隊は…。」
「弱いからな。ここまでやっても気が抜けん。」
旧式、そう旧式である。
旗艦であるエクセリオン級、先日追加されたるくしおん級を除き、主力艦艇は全て旧ジオン公国製の艦艇を改修して何とか使えるようにしただけの旧式艦ばかりのお寒い限りだった。
この土星基地にまともな旧ジオン兵達が送られた際、先ず真っ先に取り掛かったのが土星圏の開発、次に対異星人用の装備の確保であった。
で、いきなり問題にぶち当たった。
どう考えても土星圏の旧ジオン戦力だけでは勝てない。
彼らがその結論を出すのに、三日もかからなかった。
それを薄々気付いていたドズルは、その事実を青い顔して進言した参謀陣に寧ろ労りの言葉をかけた程には当然の事実であった。
何せア・バオア・クー攻防戦で現れたゼントラーディ艦隊、それも一つの基幹艦隊の極々一部でしかないそれにボコボコにされたのだ。
基幹艦隊一つ来ても人類全てが簡単に殲滅されて終わるだろう。
そんな連中を相手に太陽系を守り切る?無理だろ(マジレス)。
「兄貴が言っていた。こういう時はA.I.M.に頼れと。」
そういう訳で、安心と驚愕のA.I.M.(土星支店)の出番である。
そして、駆け付けた彼女らが真っ先に行ったのは、既存艦艇の大規模改修であった。
「ムサイ級…設計元は民間輸送船?ダメでしょう。」
「チベ級…旧式の連邦軍戦艦の改修型。まぁいけますね。」
「グワジン級…元は豪華客船?無駄が多過ぎますね。」
ムサイ級は主砲が正面にしか向けない&構造的に脆弱。
チベ級は問題らしい問題が無いが、一年戦争時既に旧式。
グワジン級はもう、ツッコミ所しかない。
「無駄に広い謁見の間、使い辛い第二砲塔、碌についてない近接防御兵器。」
「映画館に音楽ホールとは…米帝の原子力空母ですか?」
「この羽と空力的形状は…大気圏突入のため?なのに強度不足でできない?は???」
正直、全部解体したくなったが、それは政治的問題によって出来なかった。
あんまり艦隊が強化された場合、アホが欲を出して「一年戦争再び!」な事態になる可能性があるので、連邦政府への配慮もあって新型艦艇は基本的に作成・保有共に禁止されていたのだ。
そのため、既存艦艇を強化するしかなかったのだ。
「無いものねだりをしても仕方ありません。早速改装を始めましょう。」
全ての艦種に共通した改装としてエンジンブロックを相転移エンジンと最新のミノフスキー式大型融合炉の併用式へと換装、そして貧弱な構造を補強すべくスペースチタニウム製の装甲で表面を覆い、索敵系を対亜光速戦闘対応仕様へと更新し、更にはテスラドライブとDFまで追加した。
これらの改装は地球連邦宇宙軍でも行われている一般的なものであり、大量のパーツもあるので比較的早く済んだ。
「先ずは数的主力であるムサイからですね。」
このムサイ、勿論ながら問題山積みである。
元の設計が民間輸送船であり、軍艦として再設計された際に多少は強化されたが、そもそも構造が脆弱であり、砲塔配置も死角が多く、何よりMS運用を前提にした軽空母的性質が強い癖にカタパルトや飛行甲板の類が無いのだ。
一応改良された後期型もあったのだが本格的な改修ではなく、カタパルトも折り畳み式の簡易的なものであり、使い勝手が悪かった。
加えて、細い上部と下部の船体を繋ぐ部分=主砲塔の設置場所が細く、その中にMSや物資の運搬通路があるためにやたら脆い。
それでも本格的に一からノウハウ無しで設計するよりはマシとされ、コスト面は優秀だったので運用され続けた。
「ほぼほぼ新造になりそうですね。」
「パーツ類は連邦のサラミス級のものを使って費用を浮かせましょう。」
「パーツの規格合わせが大変ですが…まぁ我々なら出来ます。」
現状、ムサイに必要な性能は純粋な戦闘力と母艦機能である。
よって、それに不必要な機能は徹底的に削られた。
艦首のコムサイは撤廃され、代わりに格納庫と直通の甲板付きカタパルトを設置した。
また、エンジンブロックとブリッジに挟まれた空間(元は大気圏突入カプセル等の設置場所)は装甲で覆って密閉し、艦の一部とした。
これにより艦内の容量が大幅に増加し、搭載可能な物資やMS数の増加(7→10機)を実現した。
また、船体各部にサラミス級に採用されているミサイル砲台や単装式メガ粒子砲、レーザー機銃等を追加して死角を潰し、艦体側面には簡易版Dブレードも追加してDFの出力・安定性双方を強化した。
従来の三つの主砲は他が増えた分二つに減らしたものの、連邦式の採用済みメガ粒子連装砲へと交換し、射撃精度・射程距離だけでなくジェネレーター出力の劇的な向上により威力も含めたあらゆる性能が強化された。
外見だけを見れば、艦体下部のデッドスペースの消えたムサイ級後期型とドズルの乗ったワルキューレ(オリジン仕様)、ムサカの相の子とも言うべき代物であった。
「次はチベ級ですか。」
「こちらは後期型のティベ級を参考にするから楽ですね。」
「ですがあの機銃の配置は頂けません。」
全てのチベ級は艦をティベ級に準ずる形へと大幅改装、その上で艦首MSカタパルトに甲板を追加した。
艦内容量やMS搭載数(10機)も十分であった事から、後は武装をムサイ改と同様にサラミス級の既存武装へと交換、各部に追加した。
元となったティベ級が次世代艦艇の先駆けとも言われる完成度を誇っていた事から、こちらは予想通りあっさりと終わった。
「問題はグワジン級ですか。」
「ザビ家関係者や将官の脱出用だったり、艦隊旗艦だったり、地球圏~火星間航行が可能だからか装備や艦内施設がホテルが如きですね。」
「元が豪華客船の設計を流用していますからね、仕方ありません。」
「この各部の羽、実は大気圏内飛行のためだそうですよ?大気圏突入時に強度不足で壊れるから無しになったそうですが。」
艦首にブリッジがあるわ、大会議室は兎も角音楽ホールや映画館に謁見の間や広過ぎる執務室があるわ、第二砲塔が正面に撃てないわ、下部の副砲類が役立たずだわで問題が多過ぎた。
長期間の航海を考えれば、確かに娯楽施設の設置は必須だが、各種技術発展により余程の拘りが無ければそこまで大仰な設備は不要であり、その殆どが撤去された。
が、娯楽設備の質自体は良いものだったので、後に土星基地へと移設された。
第二砲塔は撤去された後に上部に突き出る形で新しいブリッジ(塔型)を設置し、空き容量に艦隊指揮所が追加され、その艦隊指揮能力を大幅に向上させた。
更に下部の副砲類の配置見直しとマゼラン級向けの武装類の追加、更にDブレードを側面に4枚設置する事でグワジン改は完成した。
これら一連の改装が全て終わるまで約2年間が経過しており、その間に主力機たるMS類もほぼ新型に刷新されていた。
この作業の速さは何だかんだで連邦がしっかりと出資(A.I.M.提供とは言え)していたためであり、市民感情とは逆に冷静な判断が出来ていた証でもあった。
だが、ここまでやってもなお、ドズルら土星基地司令部は一切の楽観を捨てていた。
「相手は遠い宇宙の彼方から態々やってきたんだ。辺境の田舎者である我々相手に降伏する事なんざ有り得ん。決して索敵を怠るなよ!確実に次がいるからな!」
こうして、土星駐留艦隊とズール銀河帝国先遣艦隊の戦いは次の段階へと移っていった。
よくジオンはあんな艦艇で戦争しようと思ったよマジで…。
翻って連邦軍の箱型船体に武装ガッツリがどれだけ効率的かがよく分かる。