多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年10月10日 現地時間約06:00
『敵勢、指揮系統は回復した模様。陣形を整え、向かって来ます。』
「よし、全軍作戦開始!我々を舐め腐っている異星人共に目に物見せてやれい!」
ここに人類史上二回目となる対異星人相手の大規模会戦、即ち第一次土星沖会戦が火蓋を切った。
とは言え、先遣艦隊の末路は最早見えていたが。
『やはりか。全艦、戦闘開始!後ろを見せるな、狙われるぞ!』
どの道、奴隷未満の敗北者達で構成された先遣艦隊に生き残りの目は無かった。
唯一勝ちの目があったであろう巨大化した女帝ジャネラも、自分達の手で討つ羽目になった。
もし彼らが出血覚悟で土星艦隊まで誘因したのならまだ分からなかったが…そんなIFに意味は無い。
『各砲座は任意のタイミングで撃ち方始め!』
『了解!うちーかたーはじめー!』
神経を擦り減らされ続けた長い航海。
グランドキャノンによる戦略級砲撃。
精鋭部隊による奇襲。
そして女帝ジャネラの暴走。
それら諸々を合わせ、既に先遣艦隊の数は当初の3割、即ち150隻程度にまで減っていた。
『各艦は密集陣形にて射撃を一点に合わせよ!散開すれば狙い撃ちされるぞ!』
そんな逆境の中、先遣艦隊はよく頑張った。
既に頼みの物量すら負け、万全の状態で待ち構える土星艦隊を前にして、彼らは決して逃げなかった。
逃げて味方に殺される位なら、戦場で敵を殺し、殺される形で果てたい。
そんな捨て鉢な願いを抱えて、彼らは前に進んだ。
『各衛星の砲台群、順調に稼働中です。』
『指定の小艦隊を除いて決して突出するなよ!性能はこちらが下なのだ、常に数的優位を取って確実に撃破しろ!』
だが、土星艦隊にとって彼らの存在は侵略者以外の何物でもない。
或いはNTやエスパー達ならば彼らに対して手を差し伸べたかも知れないが、今ここに彼らはいない。
その素養を持つ者達は僅かながらいるが、そんな事をする権限も理由も余裕も無い。
『へ!このジガンスクードがその程度で落ちるかよ!』
『量産型だって、特機は特機なんだよ!』
敵を誘因する囮として意図的に突出した小艦隊だが、彼らも何の策も無く前に出ている訳ではない。
彼らと共にに配備されたジガンスクードⅡとグラビリオンを盾として利用する事によりその被害は大きく限定される。
そして、目の前の敵に集中している先遣艦隊に対し、残りの土星艦隊が攻撃を加える。
しかもやたらめったらに攻撃するのではなく、複数の艦が一つの敵艦に攻撃を集中し、確実に撃破していくのだ。
単艦の戦力で劣るなら、戦術と物量で勝つ。
嘗て地球連邦軍にそれをやられ、遂には敗北した旧ジオン軍だからこそ、その戦術に対する研究は特に念入りに行われていた。
まぁ一年戦争当時のジオン軍では、どう足掻いても数を用意できないので再現するのは諦めていたのだが…それは兎も角。
現在は補給は潤沢、装備も豪華、人員も充足。
そして何よりも指揮系統が統一している(=内ゲバの心配が無い)!
敵は強大だが、十二分に勝てるだけの状況は揃っていた。
『…艦隊直掩の機動兵器部隊はまだ温存せよ。』
『し、しかしそれでは!?』
不利を覆すために機動兵器部隊による敵艦隊への打撃は常套手段である。
しかし、先の奇襲によって機動兵器母艦を多く撃沈された結果、艦隊直掩機位しかまともに残っていない。
この極めて不利な状況の中で、ベガ大王は一縷の希望を目指して覚悟を決めた。
『このままでは磨り潰される。本艦隊はこれより敵陣中央へと突撃する。』
『な!?』
『敵陣中央を突破し、敵の大型旗艦を討つ!それしか我らの生き残る見込みは無い!復唱!』
『り、了解!敵陣中央へと突撃します!』
『機動兵器部隊は敵陣への突入と同時に攻撃開始!可能な限り暴れて敵を混乱させよ!』
『ははぁ!』
限られた手札の中、ベガ大王の指揮は的確だった。
このまま平押しでは物量と戦術の差で全滅する。
ならば、手遅れになる前に賭けに出る。
多くの衛星に配置された砲台群を除けば、土星艦隊の陣形は立体的になった鶴翼である。
即ち、陣形そのものは薄く、中央突破或いは打撃を与える事が出来れば生き残る目も出て来る。
無論、とてつもなく分の悪い賭けではあるが。
『艦隊各位へ。これより一分後に当艦隊は敵陣中央に対し突撃を行う。敵陣突破後は各自の判断で行動されたし。全ての責任は指揮官であるこのベガ大王にある事を明言しておく。』
これは事実上の特攻に近かった。
勝機なんてほぼ0なのは分かり切っている。
そしてベガ大王はどの道敗戦の責任から処刑される事は確定している。
突撃の命令に動揺していた艦隊も、その言葉の裏側を察して落ち着きを取り戻し、突撃に備える。
『よし、全艦突撃ぃッ!!』
こうして、先遣艦隊最初にして最後の攻勢が始まった。
『て、敵艦隊が突撃してきます! 目標は艦隊中央!』
『敵は腹を括ったか…。全艦、攻撃を密にせよ!陣形左右の艦は予定通り翼を閉じて挟撃せよ!』
土星艦隊にとって、この展開は予想の一つだった。
古来の戦場でも鶴翼陣形を破るのは敵陣中央突破か…或いは現代戦よろしく火力の集中である。
ベガ大王は長くベガ星を治める王であるが故に、即座にこの陣形の弱点と性質を見破っていた。
『全艦、生き延びたくば前に進め!死力を尽くせ!』
大きく数を減らし、傷だらけになって半ば死ぬために戦っていた先遣艦隊は此処に来て生き残るため、明日への希望を求めて突撃を開始した。
『全艦に通達。光子魚雷の使用を許可する。カウント15にて一斉射せよ。』
不幸にも、彼らの想像以上に土星艦隊の軍備は万全だった。
今まで使用せずに温存していた万を超える光子魚雷の封が解かれ、次々装填されていく。
突撃のために密集陣形となり、我先にと前へ進んでいく先遣艦隊では最早何処にも回避するための場所は無かった。
『全艦、撃てぇい!』
放たれた無数の光子魚雷、もう間も無く目視距離と言える程の至近距離で回避できるだけの運動性能を持つ艦は先遣艦隊にはいなかった。
発生する無数の小型ブラックホールが、先遣艦隊をまるで穴空きチーズの様な有様にし、そして消滅させていく。
だが、それでも僅かな撃ち漏らしが陣形に食い込み、兵装を限界以上に酷使しながら艦隊陣形を食い破る。
撃ち漏らし達はそこで足を止めなかった。
止めて戦っても無意味だと悟っていたからだ。
突撃の勢いのまま、土星圏すら超えて何処かへと逃れていく。
最早故郷に帰る事も出来ない彼らは何処へと向かうのか、それは分からない。
しかし、不確定要素が増えた事だけは確かだった。
『やはりか…。まぁよくぞここまで来れたと言うべきか…?』
ベガ大王の乗艦、巨大な葉巻型戦艦であるキング・オブ・ベガもまた、土星艦隊の砲火によって穴だらけにされ、完全に機能を停止していた。
最早轟沈まで秒読みであり、クルーも死んでブリッジでただ一人致命傷を受けながらも未だ息のある状態で、ベガ大王は一人呟いた。
『すまぬなルビーナ…最早会う事は』
最後は戦士としての矜持でも王としての誇りでもなく、ただ一人残してしまった愛娘の事だけを胸に、ベガ大王は爆炎に呑まれて散っていった。
『被害状況知らせ!』
『本艦の被害状況は17%。ですが、一部突破した敵艦により被害が出ています!』
『逃げる敵への追撃は無用!負傷者の救助を急がせい!機体や艦よりも将兵を優先せよ!』
土星防衛艦隊旗艦のエクセリオン級に座する艦隊司令官エギーユ・デラーズ中将はそう命じて腰を下ろした。
(最後に意地を見せられたか…。)
既にズール銀河帝国の内情を、土星防衛艦隊は把握していた。
今回やってきた先遣艦隊が植民星から徴兵された捨て駒である事も含めて。
(これ程の戦力を、玩具の様に使い捨てるよう命じられるだけの武力を持った圧制者だと?)
デラーズは思う。
そんな相手がやってきたら、自分達もまた藁の様に吹き飛ばされて死ぬだろう、と。
そして、それは極めて正確な予想だった。
(我々のすべき事は、優れた人員を温存する事だ。時代遅れの旧式で死なせず、戦い続けるために。)
地球圏を混乱に陥れた大罪人であるジオン。
彼らが再び地球人類に受け入れられるには、侵略者を相手に血を流して戦う必要がある。
それをして漸く人類は怒りと憎悪を飲み下して、彼らを仲間だと受け入れる事が出来る。
本来ならば異星人同様に不倶戴天の怨敵と看做すのだろうが、地球人類を取り巻く過酷な環境が妥協を生み出した。
そして、デラーズ達土星防衛軍の上層部は血を流した上で一人でも多くの正規の軍人を生き残らせる事を目的としていた。
(如何に兵器があろうと、人がいなくては意味が無いのだ。)
それはア・バオア・クー攻防戦での末期戦で彼が痛烈に感じた事だった。
A.I.M.ならば、その裏にいるU.T.F.ならば、人類よりも優れた無人兵器を開発・生産・運用できるかもしれない。
しかし、彼女らに頼り切ってしまえば、地球人類は衰退するだろう。
安全な揺り籠の中で穏やかに繁栄し、永劫の微睡に沈む事だろう。
それではいけない。
それとほぼ同じ領域にいたプロトカルチャーは全銀河規模にまで版図を広げるも、滅んでしまったのだ。
彼らの二の轍を踏む訳にはいかない。
故に人類は戦い続けなればならない。
生き残るため、繁栄のため、進化の果てを目指していかねばならない。
『救助活動が完了次第、敵の残骸を回収するのだ。また、捕虜がいたならば必ず生かして捕らえよ。敵の情報は今後の勝利へと繋がる。全艦に徹底せよ。』
自らが仕える主君ギレン・ザビの理想を胸に、デラーズは己の成すべき事をしていくのだった。
一部用語が抜けてきてる(汗
あれ、主人公率いる無人兵器部隊の名前ってU.T.F.で合ってたっけ?