多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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GW?
サービス業にそんなものがあるとお思いか?(一週間前に死んだ魚アイ)


第78話 寸暇

 第一次土星沖会戦は、地球連邦軍(より正確に言えば旧ジオン軍で構成された土星駐留軍)の勝利に終わった。

 以前からの入念な備えが功を奏した結果に、関係者は胸を撫で下ろした。

 

 とは言え、最後の敵方の突撃によって鶴翼陣形を突破された際、少ないながらも被害が発生した事は土星駐留軍首脳部に重く受け止められた。

 十数隻の敵艦艇を逃がしてしまった事も含めて、戦闘詳報はしっかり地球の連邦軍本部及び各大企業群、そして共和連合らにも届けられた。

 それらの結果、地球連邦首脳部は意見を同じくした。

 

 「このままでは勝てない」と。

 

 旧式兵器の改修型が主体であったとは言え、その戦術ドクトリンは寧ろ先鋭化され、兵士個人の練度もかなりのものだったのが土星駐留軍、旧ジオン軍であった。

 特に機動兵器の運用に関しては現状の連邦軍の平均値を上回っており、実際敵先遣艦隊を相手に多大な戦果を上げた。

 だが、それを考慮しても尚、地球連邦では勝ち切れないという結論は揺るがなかった。

 現在、地球・月・ルナ2・各サイドに火星・木星・土星に駐留艦隊と防衛軍が存在し、地球と月を除けばその戦力は総合的にはほぼ横並びとなっている。

 勿論この全てが一年戦争当時よりも遥かに強化された軍勢であり、それを支える兵站に関して言えば比べるのも烏滸がましいレベルである。

 そんな中に現れた二回目の異星人艦隊は丹念に磨り潰され、消耗した状態で尚且つ地の利はこちらにある状態でこちらの艦隊に打撃を与え、一部は敗残なれど逃げ遂せたのだ。

 これは戦闘後に回収した捕虜や残骸から入手した情報を分析した結果、機動兵器は兎も角として現在数的主力となっている艦艇では異星人の艦隊相手では火力・装甲の双方が不足しているが故に起きた事だった。

 数はしっかり用意したし、火力・装甲不足も戦術によってある程度カバーできた。

 しかし、それが余り有効じゃない状況になると、途端に押されてしまった。

 そんな状況で、次に来るのは本隊である。

 士気の低い寄せ集めの植民地兵ではなく、ズール皇帝が直接率いる兵達である。

 士気・装備・練度・物量の全てで今回の先遣艦隊の全てを上回る強敵だ。

 物量だけ見ても約3千隻であり、更にはそれら全てを合わせても勝てないと断言される個人武力を有するズール皇帝の存在。

 どう考えても土星駐留軍のみでの勝利は不可能だった。

 なお、反対意見を述べた極一部の空気を読めない連中、具体的に言えば職務放棄して避難しようとしてた連中は現在発見され次第拘束されている。

 何故って?

 問題発生時に最もドッシリと腰を据えて職務を果たすべき連中が逃げ出した挙句妄言吐いて仕事の邪魔しようとしてるんだからそりゃそうよ。

 

 「遺憾ながら土星基地を放棄する。段階的に木星方面へと撤退する。」

 「それしかありませんな。このままでは兵を死なせるだけでしょう。」

 

 駐留軍司令官であるドズル中将の宣言に、艦隊司令官であるデラーズが続いた。

 

 「それでは早速準備に取り掛かりましょう。」

 「人員の脱出が最優先で、次に兵器と物資ですな。」

 

 戦える人を残す事。

 これこそが地球連邦軍の一年戦争当時からの一貫したドクトリンの一つであり、

 

 「修理不可能な艦艇や機動兵器は置いていきましょう。」

 「勿論置き土産にしてです。」

 「グランドキャノンはどうします?もう一つの方も…。」

 「グランドキャノンと基地施設はトラップと連動した自爆装置をセットしろ。アレに関しては…惜しいが同じ様にしろ。異星人共に奪われるのが一番危険だ。」

 

 こうして、土星駐留軍の戦いは終わり、次のステージへ向けて動き出すのだった。

 

 

 …………

 

 

 『報告は以上となります。』

 『そう、先陣は凌いだ訳か。』

 

 そして太陽系内の何処かの電脳空間にて

 A.I.M.トップとその従者が土星沖会戦の詳報を受け取った所だった。

 

 『やはり地球製の艦、それも一年戦争前に設計された旧型の改装では限度があった模様です。』

 『火力・装甲・出力・耐久力・運用思想…何もかにも時代遅れの兵器でよくやったものね。』

 

 主力艦艇の性能面において、現在の地球連邦で運用されている艦艇の殆どは異星人のものと比較してその性能で劣っていると断言できる。

 例外はISA戦隊所属の艦や一部のワンオフなスーパー系母艦にナデシコ級砲艦、そしてA.I.M.製のエクセリオン級やマクロス級等の大型艦位だろう。

 るくしおん級?あれは西暦2000年代初期の設計を手直ししたものなので、機動性を除いたら特筆すべき所は無いので除外。

 

 『艦艇の更新を急ぎたい所だけど…。』

 『現状ではこれ以上の生産ラインの増設は不可能かと。』

 『dsyn~。』

 

 現状、A.I.M.の太陽系最大の生産能力は限界に達しようとしていた。

 各種兵器や物資類をガンガン製造しているのに作った傍から消費しているのだから、艦艇更新に回すリソースが足りないのだ。

 また、艦艇類は機種転換訓練も機動兵器のそれよりも長くかかるので、生産し過ぎても乗り手不足でどうにもならない。

 

 『折角コツコツ作って来た無人兵器艦隊もZEROのせいで消し飛んだし…。』

 『あの一件で当初予定していた整備計画が完全に破綻しましたからね…。』

 

 事実である。

 もしZERO覚醒事件が無ければ、あの一件で消滅した無人艦隊や工廠艦ドゥーベ、OF部隊が無事ならば、どれ程余裕を捻出できただろうか?

 特にドゥーベの消滅が痛かった。

 ナノマシン系兵器の製造能力はあの艦が最大であり、おかげでOF部隊は解散し、そのナノマシンを全てヴァルチャー部隊に割り振る羽目になった。

 

 『で、第二プランの進捗はどう?』

 『はい。現在冥王星から位相空間へと移設した巨人族向け兵器プラントの稼働は順調。一般的な地球人類向け改装も既に完了しています。』

 

 一部は既に特務部隊等で試験的に運用されていた地球人類向け巨人族製艦艇類。

 それを此処に来て一般の部隊でも大々的に運用するプランがセカンドプランであった。

 本来のプラン、即ち通常の地球人類が開発した艦艇への更新が間に合わない場合の予備だったが、此処に来てそれが日の目を見る形となった。

 

 『巨人族の兵器は兎に角頑丈で扱いやすいですからね。機種転換訓練も短く済むかと。』

 『デザインも生物的なのからメカっぽくしたし、多少は受け入れやすくなったと思うんだけどなぁ。』

 

 とは言え、一年戦争最後に大々的に人類と敵対した勢力と同系統の艦艇を使用する点については、一部で忌避されるのは簡単に予想できた。

 更に言えば大企業群にとっては地球圏の経済に寄与しない≒自分達のお金にならないU.T.F.が改装した巨人族の艦艇の採用等、絶対に反対する事は目に見えている。

 

 『反対するならするで他の代替案出してほしーんだけどなー。』

 『仕方ありません。人類は感情と理性の生き物ですから。』

 

 時に驚く程理性的で、かと思ったらまるで子供の様に感情的になる。

 そんな人類に彼女らは何時も振り回されている気がする。

 こんな事を思っているが、客観的に見ると実際は彼女の方も理性が先行し過ぎてどっこいどっこいだったりする。

 

 『場繋ぎにしても機種転換訓練や兵站への影響を考えると…採用はもう暫く先にした方が良いかしら?』

 『その方がよろしいかと。』

 

 実際、漸く各種新型艦艇へと更新が始まったばかりだ。

 今この時に更に安価で操作が容易い巨人族製艦艇の採用は混乱を生み出しかねない。

 やるとしたら、もう少し戦線が落ち着いてからになるだろう。

 

 『機動兵器類は…順調ね。これなら今以上の梃入れはいらないわね。』

 『しかし、当初の予想通りパイロットが、特に腕利きが不足気味ですね。』

 

 一方、機動兵器類の量産はまぁ安定しているが、パイロット不足が目立ち始めていた。

 まぁ、太陽系各地に艦隊や防衛部隊を設置している上に母星である地球で侵略者に圧されたりしているのだから、そりゃパイロットの損耗は大きいし、補充も低迷するだろう。

 

 『やっぱり無人機の採用しかないかぁ…。』

 『努力はしましたが、如何せん時間が足りません。ここはやはり当初の予定通り有人機と無人機のミックス構想で行くべきかと。』

 『最良なのは少数の有人機で多数の無人機を指揮する形態だけど…軍が納得すると思う?』

 『するしかないかと。現状、質は兎も角数で圧されている事は確かです。』

 

 ここで地球連邦所属の戦力を簡単に見ておこう。

 質…ISA戦隊他主人公チーム&U.T.F.

 量…旧式と最新艦艇全部集めてもギリギリ4千いけるかどうか。機動兵器は十分。

 これだけである。

 そりゃー3千程度のズール銀河帝国艦隊の来襲で大慌てにもなろう。

 相手は乾坤一擲()の戦力の集中を行い、こちらは何時何処からか現れる侵略者のせいでどう足掻いてもそれをする訳にはいかないのだから。

 現在、地球圏の一般市民の安全に関する認識はかなりシビアだ。

 地球連邦軍が一年戦争以前より頑張って蓄積してきた信頼によって余程のやらかしでもしない限りは大丈夫だろうが、それでも市民の安全を無視する様な事は決して出来ない。

 地球連邦政府は民主政治であり、選挙権を持つ市民を蔑ろには出来ない。少なくとも表向きは。

 

 『んん?』

 『緊急入電。火星沖宙域で大規模なデフォールド反応を確認。空間歪曲パターンから、ワープアウトした勢力はゼ・バルマリィ帝国かと。』

 『次から次へと…。』

 

 トレミィが頭痛を堪える様に右掌で目元を覆った。

 息つく暇もないまま、次の侵略者へと対応すべく彼女らはそれぞれの職務へと移るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『所で火星って…。』

 『シロッコ所長の管轄下でしたね。』

 『あ(察し)』

 

 

 

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