多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第7話 木星圏開拓 そして伝説を見た

 新西暦80年代。

 A.I.M.グループが木星圏の大凡の探索を終え、やべーブツを隠蔽したり解析したり等が大体終わった後の時代。

 それは人類が太陽系の本格的な開拓に乗り出し始めた発展の時期だった。

 

 地球の自然環境回復をお題目とした宇宙移民の推進。

 行先は各ラグランジュポイントに急ピッチで建造されるスペースコロニー群、そして遂にテラフォーミングが完了して本格的な入植の始まった火星圏。

 地球では単なる貧民だった人々と宇宙での生活に必要不可欠な技術者や軍人、官僚らが次々と地球を離れ、住まいを宇宙へと移していく。

 だがしかし、それでも地球に溢れた200億の人口を地球環境を正常に運行するための人口50億まで減らすには、とてもではないが足りなかった。

 そこであのA.I.M.グループがまたやらかした。

 

 「我がグループは木星圏の開発を開始する。」

 

 木星、そこは新たなフロンティアとして目されている場所だった。

 多量に採取可能なヘリウム3は核融合炉の主な燃料として需要数多であり、現在は月面でも採掘されるが、とてもではないが需要に追い付いていない。

 故に地球とは現在片道5年はかかるが露天掘り状態の木星が次なる開拓先として見込まれていたのだ。

 現在は採掘用コロニーと研究用コロニーだけの木星圏。

 しかし、既に複数の居住用並び工業用コロニーが複数建造中である事が発表、更にはA.I.M.グループが「木星航路途中にマイクロウェーブを用いた送電システムにより大幅に増速し、片道1年で到達可能」と発表した事によって木星圏の開発・投資が加速した。

 このマイクロウェーブ送電システムは無数の太陽光発電パネルとマイクロウェーブ送信機、管理用コロニーにより構成され、補給対象の艦船の受信用大型リフレクターへと正確に照射、エネルギーを補給する。

 正確なデータさえあれば僅かな時間で莫大なエネルギーを充電可能であるにも関わらず、発電方法自体は太陽光によるものなので比較的低コストで済むという画期的なシステムだった。

 ならこれ地球でも使えば良いんじゃないの?と思われるかも知れないが、もし間違って水面に着弾しようものなら大規模な水蒸気爆発が起こるため、とてもではないが有人惑星上では使用できない(現段階では)とされ、専ら木星航路を運航する艦船向けのシステムだった。

 このシステムとヘリウム3の必要性から木星開発は半ばバブル化し、経済界からのせっつきで他のラグランジュポイントよりも大繁栄する事となる。

 そして、他のコロニー群が貧乏暮らしかと言うとそうではない。

 木星に行くには年単位の長期間運用に耐えて、安全に大量の物資を運搬できて、頑丈でなるべく高性能で、乗員がちゃんと長期間生活できる設備があって、最後に贅沢言えば安価な輸送船が望まれた。

 だからこそ、史実のジュピトリス級が全長2㎞を超える大型艦であり、必要な機能をブロック毎に組み合わせた単純な構造なのだ。

 しかし現在バブル景気に沸いている木星圏に輸送艦を送るには、とてもではないがそんな大型艦を普通に建造しているのでは時間がかかり過ぎる。

 そこで必要な機能を持ったブロックを別のコロニー、別の工場で作成し、繋ぎ合わせるブロック工法で早期建造を実現した。

 新西暦80年代現在、まだまだ各ラグランジュポイントのコロニー群は地球連邦共通の規格を使用しており、史実のジオンよろしく独自規格が横行する様な事態にはなっていないので、この方法でも精度が高ければ問題ないのだ。

 大気圏内での水上艦の造船(船体作ってから内部・上部と詰めたり載せたり)とは異なり、宇宙は無重力故に各ブロックを他の工場から運搬して接続するのも楽であり、好んでこのブロック工法が用いられた。

 多少スピードが遅かったり燃費が悪くとも、マイクロウェーブ受信システムを搭載して料金を支払えばその辺はやや強引だが解決できるため、多くの企業が我先にとこの方法で自社用の木星圏向け輸送艦を発注・建造し、木星航路へと旅立っていった。

 この建造需要により、移民したばかりの各コロニーでは工業労働者が引く手数多であり、働けば働く程に生活が楽になっていく状態だった。

 地球からの多くが強制移民だったが、ちゃんと働けば今まで以上に衣食住が満たせる環境だと分かればそこからは早かった。

 移民者はコロニーに定住を決めて労働に励み、軍は警察と共に荒っぽい労働者らに睨みを利かせて治安維持に励んでは時折事故に対応し、官僚らは行政機構を整備してコロニー全体を運営する。

 多くの人々が望んだ繁栄と平和が、この時代では確かに手に届く場所にあったのだ。

 

 問題が起こるのは新西暦100年代、この木星圏開発バブルが破裂する事なく落ち着き、各コロニーの主要な産業とされた造船業が冷え込み始めてからの事だった。

 

 

 ……………

 

 

 現在、A.I.M.グループ内にて保有されている技術は、大別して三つある。

 一つ目は惑星間航行どころか時空間・世界間移動可能なTF由来の技術。

 二つ目はエーテル宇宙由来のエーテルやアイスセカンド使用技術。

 三つ目は漸く大体の解析が終わったゲッター由来の技術だが…こちらは進化し始めてからが本番なのでまだまだこれからである。

 

 「現状持ってる技術の限界点を見極めてみない?具体的には各種技術てんこ盛りしたスーパーロボット作ろう!」

 「寝言は寝て言ってください。」

 

 新西暦80年代、木星圏の開発が本格化したこの時代、太陽系最大の企業群であるA.I.M.グループはその宇宙開発能力をフルに発揮して木星圏開発に参加していたので、とてもではないが余力は無かった。

 無論、各種研究は人手も予算も惜しまず続けていた。

 だが、あれやこれやと足を引っ張ってくる輩に対してはその手を掴んで「おら!お前らも働くんだよ!」といった具合に無理矢理融資と技術提供を受けさせて立ち直らせ、死ぬまで扱き使ったりしてもなお過熱している木星圏開発バブルには足りないのだ。

 そんな状況下でスーパーロボット?寝言は寝て言え!(自動人形勢を最大速度で増産&雇用マシマシなのに連日デスマーチなう)

 

 「いや、開発陣からそろそろ一度ちゃんと形にして実地試験とか色々したいって言われててさぁ。」

 「だとしても今じゃなくて良いじゃないですか…。」

 

 自動人形組すら過労になりかける現在、とてもではないがそんなリソースはない。

 

 「いや、許可だけ欲しいって。」

 「監視付けましょう。」

 

 Sfは言い切った。

 自分の主を通じて技術者という生き物を知るが故に、手綱無しにしたらどんな酷い事になるか目に見えていたからだ。

 しかも今回作るのはコンコルドとか鼻くそに見える様な代物である。

 必要とは分かるが、どれ程の開発費用が消し飛ぶのか怖くて計算したくもなかった。

 加えて、ここでダメと言っても現場で勝手にやりだされては進捗情報すら掴めない。

 

 「どの道、メタトロンと試験型サイコ・ナノマシンはもう実地しないと必要なデータは取れない。ゲッター炉と増幅装置もブツは作れても十分な強度と出力が確保されてるか実際に載せて試さないといけない。そして……。」

 「我々の存在によって、何時この太陽系に外敵が現れるか定かではない、ですか。」

 

 一応、木星圏にも緊急用の地球連邦駐留艦隊は存在する。

 だが、それは殆どお飾りであり、装備も貧弱で、事故や災害時への対処を主眼に置いた装備なのだ。

 とてもではないが、太陽系外から飛来する敵勢力を相手取るのは不可能だった。

 無論、改エルトリウム級と搭載された武装と艦載機ならば大抵の相手は対処できる。

 しかし、被害なく守り切れるかとなれば話は別なのだ。

 でも大艦隊とか今の時期に作っても怪しまれるし、建造・維持費用も莫大なものになるだろう。

 だからこそ、木星圏どころか太陽系をカバーできるだけの性能を持ったスーパーロボットが必要なのだ。

 

 「…一応重役会議にかけます。」

 「それで良いよ。根回しはするから。」

 

 こうして、各種技術てんこ盛りスーパーロボット建造計画、通称「三本の矢」計画はスタートした。

 

 

 だが、この計画の成果が思わぬ方向へと事態を動かしていく。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦89年末、木星圏 改エクセリオン級プトレマイオスにて

 

 「は?木星圏全域でNT適正持ちが増えてる?」

 「はい。極僅かながらずっと微増しています。」

 

 改エクセリオン級プトレマイオスが木星圏を探索し、そこで発見した古代遺跡等を隠蔽・解析したり、ちょっと利用するにはまだ技術的習熟が不可欠なエネルギーを発見した後、A.I.M.グループとして改めて木星圏に進出して現在までに既に30年近くが経過している。

 その当時無かったデータとして移住してきた地球人類のその後のデータが挙げられる。

 地球から木星という現在の人類にとっては最果てと言えるこの場所で生まれ、一生を終える。

 これは彼女らからしても未知であり、どのような変化が出るのか地球連邦政府共々今後の宇宙開発に必要なデータとして関心を向けている。

 そうして集められたデータの中に、極めて重要な数値があった。

 

 「所謂宇宙世紀のNT用サイコミュ兵器を運用できる数値ではないです。しかし、地球在住の人類とは誤差の範囲ですが反応速度や空間認識、コミュニケーション能力が向上している傾向にあります。」

 

 あくまで誤差の範囲、或いは人類が宇宙に適応したのか。

 そう言ってしまえば済む話だが、人類以上に人類を知り尽くしていると言える彼女らはこのデータを最高機密に指定、警戒度を大幅に引き上げた。

 

 「進化だとしても早過ぎる。これは明らかに異常だ。」

 「現在、木星圏内のゲッター線量は規定値に収まっています。とてもではないですが恐竜を絶滅させたり、人類を急激に進化させたりする程の出力には到底足りません。」

 「寧ろ線量だけなら火星圏の方が多いです。一号艦に三本の矢計画とゲッター線関連は全部あっちでやってますから。」

 「こちらでやってるのは非アイスセカンド・非エーテル式無人艦隊による太陽系初期防衛計画ですし…。」

 

 太陽系初期防衛計画。

 それは来る宇宙怪獣の襲来に対して、人類が十分な戦力を整備する前に木星の遺跡、即ちプラント並びに解析された技術群によって新造した無人艦隊によって防衛線を構築する計画だ。

 とは言え、生産予定の艦艇はワープ機能(太陽系内限定)搭載かつ亜光速戦闘対応と大幅な強化が施されているものの、史実のトンボ級や昆虫型無人兵器(所謂バッタ型)の発展形と元の設計が貧弱であり、あくまで時間稼ぎが目的である。

 しかし、これらでさえ現在の地球圏の軍事力からすれば過剰も過剰であり、見つかる訳にもいかないので生産したものからステルスで身を隠し、太陽系外縁部の警戒・防衛へと出発している。

 主機関は相転移エンジン並びに核融合炉であり、無人兵器故に人員に気遣う事なく運用できるのが強みだ。

 主構造材はナノマシンなので基本的にメンテナンスフリーでありながら、破壊されても二個一・三個一が可能で、時間さえあれば増殖すら可能。

 防御装備としてイナーシャルキャンセラーとディストーションフィールドを持ち、比較的低コストかつナノマシン式なので必要な時は割と簡単に更新できるのも強みだ。

 主武装はビーム砲・ミサイル・レールガン・レーザー機銃・自爆と面白味は無いが堅実な構成となっている。

 が、グループ内の生産リソースの多くが木星圏の民需へと振り分けられている現状、その数はまだまだ少ない。

 

 なお、初期と謳っている通りにこれらが突破された場合、絶賛アステロイドベルトにてゆっくりとだが増産中のヴァルチャー軍団が出撃する手筈となっている。

 

 

 「なら私達がまだ見つけていない何かが存在するという事でしょう。」

 「NT適正持ちを強弱ごとに色分けして分布図を作成します。……こちらを。」

 「成程、やはり一か所が妙に濃い。」

 

 作成された分布図、そこは一か所のみ明らかに他の宙域よりも強いNT適正持ちが多く存在した。

 

 「これ、一部の例外は?」

 「該当する宙域に滞在した経験のある方達ですね。一部は偶然か才能か…。」

 「天然ものは兎も角、この宙域の再調査を。それとヴァルチャー型を一個大隊派遣。」

 「過剰戦力では?」

 「間違いなく鬼か蛇がいるんだから、この位の警戒は必要。他のヴァルチャー隊も暇してるんだから、もしもの時は駆けつけるように通達を。」

 「了解。調査船団の派遣を通達……受託されました。48時間以内に開始するそうです。」

 「それと、念のためにG.G.を出せるようにしておいて。もしもが有り得る相手よ、これ。」

 

 G.G.とは三本の矢計画の成果たる特機の秘匿名称であり、開発開始から5年、現在は試作一号機が完成し、各種環境下でのテストを行っている。

 現在はワープにより木星圏へ来訪、各種試験を行う予定だった。

 未だ操縦性に難があるものの、その性能は本物であり、未来の可能性を知るA.I.M.グループの上役や自動人形達からは期待の眼差しを送られていた。

 

 「宜しいのですか?」

 「重役会議も招集。コードREDも発令して。手抜きなんてしてられない。」

 

 コードRED。

 それは人類存亡を懸けた事態が発生、或いは発生する可能性がある場合にA.I.M.グループ内にて発令される緊急コード。

 嘗てゲッター戦艦を発見した際の経験から必要とされた指令コードであり、あれ以来幸運にも今日まで発令された事のないものだった。

 しかし今、それが破られた。

 それを指示したトレミィの表情は蒼褪め、内心は不安と恐怖でいっぱいだった。

 だって、このデータが本当なら、それは最悪の事実を意味するのだから。

 

 

 (木星圏にある人類のNT適正を花開かせる存在?そんなもの、一つしかいない。)

 

 

 

 

 

 

 

 4日後、彼女達は調査船団から一つの報告を受け取った。

 

 曰く、「岩塊の中から巨大な赤い巨人を見つけた」と。

 

 トレミィは全身からあらゆる液体を漏らしながら卒倒した。

 その一時間後に身支度を整えられた状態で叩き起こされ、現場へ向かう事となる。

 




さぁ皆、ついに次回は待望のジム神様が登場だよ!(震え声)
今作では知らない人もいるだろうけど「逆襲のギガンテス」仕様だよ!(白目)
次回をお楽しみに!(失踪)
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