多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第2話 紫宇宙ゴリラ

 ソレはタイタンの王族の末裔にして、この宇宙でも最強の戦士にして最高の頭脳を持つサノスにしても、途方もない存在だった。

 なにせ、単体で大型惑星サイズの生命体など、彼の知識にすら存在しない。

 無論、可能性自体はあるが、それはあくまでロボット等であり、生命体としてではない。

 そんな存在が艦隊を率いて、自分達の前に現れる。

 サノスは勝ち目はあると判断しつつも、自分以外の配下は死ぬだろうとも予測した。

 だが、至上命題である宇宙の調和のための全生命体の半減は、既に完了した。

 後は自分の持つストーンを破壊すれば完全に達成となる。

 最悪、それさえ出来れば良い。

 サノスは瞬時にそう判断すると、部下達に攻撃を命じようとした。

 

 

 『待ちなさい、タイタンの末裔よ。』

 

 

 だが、それは当の本人に遮られた。

 巨大な惑星サイズの金属にして電子生命体。

 ソレから全方位へと放たれる津波の様なテレパシーに、サノスと言えども気圧される。

 だがそれはサノスだからその程度で済んでいるのであり、周囲の部下達は圧倒的な威圧感に戦わずしてその膝を屈していた。

 それだけ存在そのものの規格が異なるのだ。

 

 「何かな、異世界からの客人よ。」

 『勘違いをしているようですが、我々は貴男方と戦いに来た訳ではありません。』

 

 何を馬鹿な、とサノスは思ったが、ここで戦っても敗色は濃厚だ。

 無論、ストーンの力でどうとでもなるが、全てのストーンの力を使えるのは後一度だけ。

 二度目は自分の死を意味する。

 最後の一回はストーンそのものの破壊に使うので、出来れば戦わないで済ませたいのはサノスもだった。

 

 「話を聞こう。」

 『感謝します、タイタンの末裔よ。』

 

 一応の対話は成立した。

 その事実に一触即発だった両勢力の艦隊は、ホッと胸を撫で下ろした。

 

 『現在、我々はこの世界・この宇宙にやってきたばかりです。先程の急なワープアウトは初の世界に到来したが故の座標のブレであり、貴男方に危害を加えるためのものではありません。』

 「ふむ…。」

 

 辻褄はあう。

 如何にサノスでも、初の世界間移動の時はどうやっても多少の座標のブレは出る。

 それも大型惑星一つの質量並び大艦隊規模となれば、下手しなくても数光年のズレは発生してしまうだろう。

 

 「そうまでして、何故この世界にやってきたのだ?この世界は先程、全生命体の半数が消滅した。見るべきものはあるものの、他の世界よりは少ない筈だが。」

 『例え衰退期にあろうとも、その宇宙にて暮らしていた人々の歴史が消える訳ではないのです。』

 

 訥々と、老人とも幼子ともつかないが、しかし素朴で純朴な精神波が語り掛けてくる。

 

 『我々の至上命題はあらゆる知識の収集です。発展している種族の歴史や文化、技術だけでなく、他愛もない思い出や誰もが忘れてしまった物語等。滅びに瀕した種族、或いは滅んでしまった種族の情報やそれぞれの宇宙に起こる様々な自然現象も含まれます。』

 「成程、ではお前達の目的は…。」

 『誰もが見向きもしない存在であっても、確かに存在したのだと記録し、後世に残し、伝えていく。私達は、いえ、私ことユニクロンは永劫に泳ぎ続ける巨大なライブラリーなのです。』

 

 それこそがこの巨大惑星サイズの生命体の、至上の命題。

 世界を、宇宙を泳ぐ図書館。

 叡智、文化、他愛もない思い出、美醜も貴賤も関係ない。

 過ぎ去った栄華も、今まさに謳歌されている繁栄も、いずれ花咲く萌芽も、宇宙のあらゆる煌めきの欠片を集めて、漂う宝石箱。

 例え滅んでも、無意味な終末であったとしても、彼はずっと覚えてくれる。

 

 「お前の目的は、この宇宙に遍く存在するあらゆる者達の生み出した情報か。」

 『その通りです。それを収集し、記録し、伝承していく事が目的です。』

 「つまり、私もか…。」

 

 サノスはブリッジ内の自分の椅子に、どっしりと体を沈めた。

 サノスはその至上命題である宇宙の調和を保つ事、そのために多くの生命を殺害する事を公言し、容赦なく実行してきた。

 一見すれば、サノスの行いは正に悪逆非道にして冷酷無比だろう。

 だがしかし、この宇宙に存在する幾柱かのコズミック・ビーイングもまた同じ様な行動原理をしており、正に天災として宇宙を騒がせている。

 そうした全宇宙的なマクロの視点から見れば、サノスの行動は確かに正しいのだ。

 無論、正しければ良いという訳ではないし、もっと別の道を模索するべきだとも言えるのだが。

 方法の是非は兎も角、サノスは自分の傘下に下った者には名君であったし、その行動の目的自体は善良なものだった。

 だが、それは彼の行いを客観的に判断するだけの情報と視点が必要であり、彼の被害に会った者達ではそれは持ち得ない。

 そして、この機を逃せばこの世界のサノスの情報を記録する機会は永久に失われかねない。

 

 『はい。特にこの後に予想される貴男の行動は、私から貴男を記録する機会が無くなりかねないものですから。』

 

 サノスはぐうの音も出なかった。

 彼のこの後の予定は宇宙の中心近くで全てのストーンの力でストーンの存在そのものを消滅させる事だ。

 その後に生きていれば艦隊を解散させ、自身は辺境の惑星で隠居する。

 だが、二度も全てのストーンを使うのは、サノスをして余りにも死亡率が高過ぎる。

 一応、後一度だけなら死なずに済む可能性の方が高いが、決してその後の生存を確約できる確率ではない。

 負けるつもりはないが、無用なリスクと多少の手間を天秤に掛けた結果、サノスは決断した。

 

 「良かろう。私の持つ全ての情報をお前に渡そう。但し…。」

 『貴男が生きている限り、私達は貴男の邪魔をしません。また、貴男の敵対勢力から協力を要請された場合も中立を貫きます。』

 「よろしい。交渉成立だ。」

 

 こうして、辛うじてサノスとユニクロン大艦隊は全面衝突を免れた。

 

 

 ……………

 

 

 「宜しかったのですか、ユニクロン様。」

 

 互いの情報を交換し、代価としてサノスらに各種補給物資を渡してから、ユニクロン艦隊の多くは通常空間から異相空間に潜航、取得した情報の解析・整理・分類を行い、残りはこの宇宙の情報を収集すべく旅立っていった。

 戻ってくるのは何年後かは分からないが、きっと多くの成果を持ち帰ってくるだろう。

 そんな頃、超大型惑星型電子・金属生命体ユニクロン、その核とも言える最奥部の一角にある庭園に声が響いた。

 創造主に問いを投げかけたのはユニクロンに仕えるトランスフォーマー達の中でも特に古株の個体の一つ、統率兼技術担当でもあるセンチネルという個体だ。

 彼は嘗てはユニクロン地表の防衛部隊として辣腕を奮っていたが、後進の増加・成長と共に科学者に本腰を入れ、他の古株と同様に時折こうしてユニクロンに謁見しにやってくる。

 

 「彼の艦隊は特に問題ありません。我々なら一個艦隊もあれば多少手古摺りはしても問題なく殲滅可能でしょう。」

 

 ユニクロンと思われるその声は、しかし今は肉声だった。

 話しているのは人間に酷似したボディを持ちつつも、同時に人工物を多く取り入れたデザインの女性ヒューマノイド型の端末だった。

 宙域全体に響き渡ったテレパシーは今は鳴りを潜め、ユニクロンの持つ幾つもの端末の一つがセンチネルと会話していた。

 

 「しかし、彼らの主であるサノスはこの宇宙でも特に危険な物質である6つのインフィニティストーンを全て集め、運用可能な存在です。それらを用いれば、我々を道連れにする程度の事は可能です。」

 「…………。」

 「無論、私達ならば生き残る事は可能でしょうが、そうなった場合は貴方達まではそうはいかないでしょう。」

 

 超ド級の危険物であるインフィニティストーン。

 あの指パッチンは三度も出来るものではないが、僅かでも可能性があるのなら回避するにこした事はない。

 元よりユニクロンとその旗下のトランスフォーマー達は覇権も富も栄誉も余り興味はない。

 彼らの暮らしは基本的に自分達で完結しているし、他種族も敵対的なら無理して付き合う事はせず、友好的な種族に対しても互いに無理のない範囲で付き合うだけ。

 時折身内になったりもするが、それは全体としてはレアケースに過ぎない。

 無論、至上命題であるあらゆる情報の収集は怠りはしないが、それさえ出来れば無理に戦う必要はない。

 そして、今回は無用なリスクは避け、話し合いで利益を得る事が出来た。

 

 「今回は誰も傷つかずに収集が出来る。それで良いのです。あくまで私の趣味なのですから、ね?」

 「仰せのままに。」

 

 聞き分けのない子供に言い聞かせるような言葉と笑みに、センチネルは苦笑と共に頷いた。

 

 

 

 

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