多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
戦闘終了後、イデオン封印計画は後の事を考えて改められた。
先ず岩塊だけでなく機体全面に対してナノマシンを散布、戦艦の装甲表面等に用いられる対光学・エネルギー兵器用コーティングを施す事で外部へのエネルギーの漏出を抑え、センサー類で観測される事を防ぐ。
更に覆い隠すように接着された岩塊を更に二重三重に接着、木星の強大な重力に圧縮された際に完全にイデオンを覆い隠せるように計算して接着する。
発見される可能性を少しでも低くし、更に見つかってもただの岩塊か何かとスルーされ、もし罷り間違ってそうだと気付かれても高密度に圧縮された岩塊によって掘り出すにはかなりの時間が掛かる。
その様な工程を経る事2週間。
漸くイデオン入りの巨大隕石となった岩塊を木星の海へと沈める事に成功した。
イデオン内部に無人作業機械で設置したビーコンはしっかりと沈み行く伝説巨人の位置を送り続け、遂には海底へ沈んだ事を報告した。
「あのイデオンが最後の一体だとは思えない。」
「フラグ乙。今後は如何に?」
「ヴァルチャー隊一個小隊を常に監視に。接触しようとする存在に対しては無警告での撃沈を許可。」
「了解です。それで、彼らはどうしましょうか?」
「……見送るしか、ないね。」
武蔵クローンと赤城、そしてゲッター戦艦こと一号艦。
現在、太陽系で最も多量にゲッター線を保有するゲッター戦艦、その乗り手と妻にして従者。
ゲッター戦艦は既に修理完了であり、G.G.もまた実戦証明済みとなった。
だが、ゲッター線研究によりインベーダーが太陽系へと目を向けてしまった。
今回撃滅に成功したのは、一体太陽系に来た奴らの何%だったのか…。
今はまだ人類は漸く地球を巣立った若鳥に過ぎない。
そんな彼らに、彼らに配慮しなければならない自分達にはインベーダーの相手は厳しい。
だからこそ、ゲッター線研究は入念にエネルギー漏出対策をした上で縮小しなければならない。
それは無論、ゲッター戦艦にも言える。
心残りは互いにあるし、情もあるが、それでもそろそろ彼らは戻らねばならない。
ゲッターと共に、大いなる戦いへと。
「送別会を開きましょう。賢君も呼んで。」
「はい。せめて笑って別れましょう。」
イデオン封印計画終了から一週間、ゲッター戦艦の諸々の手続きと入念な整備、補給物資その他の積載を終えた後、関係者一同と大宴会をした。
「わははは!飯が美味い!酒が美味い!嫁が可愛い!最高だな!」
「もー武蔵さんったら本当のこと言ってもおかわりしか出ませんよ~。」
早まったかな???
大宴会でカオス極まる会場で、トレミィは挨拶回りに訪れたクローン武蔵と赤城のテーブルに来た早々、そんな事を思った。
いや、嫁入りしたての自動人形とか程度の差はあれど大体こんな感じだったな、うん。
そして大体が煽ってくるもんだからイラッ★と来たもんだ。
「あ、お母様。ご無沙汰してます。」
「おぅトレミィの嬢ちゃん!楽しませてもらってるぜ!」
「二人とも、楽しんでくださってるようで安心しました。」
何せ二人とはもう会えないかもしれない。
否、高確率でそうなるのだ。
だからこそ、どうかこの時ばかりは何の憂いもなく楽しんで欲しかった。
それが10年も一緒で、もう完全に身内だったゲッターパイロットへの、これから旅立つ戦士への感謝の示し方だった。
「赤城も、余り迷惑かけないようにね。貴女の人格面は多少の事でへこたれないように他の子達より頑丈になってる筈だけど、その分自己主張が強くなってるから。」
「大丈夫ですよ。武蔵さんも、そこが良いって言ってくれましたから!」
「わー赤城に惚気られる日が来るとは…。」
「わははは!子供の成長を、親は実感し辛いもんさ!」
お酒が入って上機嫌なクローン武蔵が爆笑する。
そんな感じで、送別会という名の大宴会は終始大賑わいで過ぎていった。
「さってと。」
宴会が終わり、お偉いさんだからと後片付けさせられる事もないトレミィは今、格納庫に来ていた。
今、彼女の目の前にあるのは火を落としたG.G.。
未だ正規のパイロットも、正式な名称も決まっていない、ゲッターにしてバスターマシンであるこの時代の徒花となる存在、技術上の特異点。
「ごめんね。作ったのに、ちゃんと専任のパイロットを用意できなくて。」
彼の中にある量子CPUには歴とした意思がある。
その最優先事項には「人類と地球並びにそれらと友好的存在の守護」が刻まれている。
だからこそ、これは必要な事だった。
斯く在れかしと作りながら、作り手の都合でそれを果たさずに死蔵されようとしているのだから。
「でも、ちゃんと何時か貴方にもパイロットが来るから。何年先になるか分からないけど、それだけは約束するから。」
二基の縮退炉、一組のゲッター炉と増幅装置、そしてメタトロンとサイコ・ナノマシン。
乗り手次第では無限に戦い進化し続ける、人類の守り手たる鋼の戦士。
彼が相応しい乗り手と出会うのは、一世紀近い時間が過ぎてからの事となる。
この二日後、武蔵クローンと自動人形赤城を乗せたゲッター戦艦はこの宇宙を旅立っていった。
「またな!次は出来れば平和な時代で!」
「行ってきます!お達者で!」
「また会いましょう!それまでお元気で!」
こうして、新西暦89年は幕を閉じ、新西暦90年が始まった。
……………
「もう猶予は消えました。本格的な艦隊建造に踏み切ります。」
A.I.M.グループ、正確には改エルトリウム級プトレマイオス並び古参自動人形とグループ内で真実を知っている人間のグループ内の重役らによる会議にて。
何時になく厳めしい雰囲気で、新年度の重役会議は始まった。
「やはり昨年暮れのインベーダーの件ですか…。」
「報告は聞いています。何千億といる宇宙怪獣に匹敵、或いは凌駕する生命体と。」
「むぅ…。」
軍備増強による太陽系防衛戦力の拡充。
必要だと分かってはいるが、一企業グループのする範疇を飛び出ているのは今更だった。
「ですが、具体的にどう動きますか?銀河全体は今、戦国時代なのでしょう?」
「確かに。我々地球人類が軍備増強をすれば、どこかの勢力が気付き、介入を企むでしょうな。」
「そのための艦隊建造です。いえ、正確に言えば謀略用と言えばそうなのですが。」
モニターに表示されたのは、一見極普通の宇宙戦艦の姿。
サイズは1㎞にも満たず、武装も改トンボ級と最小限だ。
だが、注目すべきはそこではない。
「主機関をアイス・セカンドと相転移エンジンにゲッター炉?加えてワープ機能はエーテル式と通常式の並列搭載?」
「これは…あ(察し)」
疑問符が飛び交う中、幾人かの察しの良い面々が呆れた顔をした。
「私らが苦労してるんだから、他所の勢力にも頑張ってほしいと思わない?」
トレミィが似合わぬ悪どい笑みを浮かべる。
要はこの妙な戦艦を用いて、モンスタートレインをやろうと言うのだ。
「この艦を太陽系外部、銀河の各領域へと派遣して大まかな勢力を把握させます。終わり次第、或いは任務続行不可能と判断した際には各機関を暴走、自爆します。」
「悪辣ですね。太陽系へ出入りする際は通常式のワープで、後はずっとエーテル式にする事で宇宙怪獣を誘導。同様にアイス・セカンドとゲッター炉でインベーダーを誘導する訳ですか。」
「無論、証拠は残さずに、ね?」
「だから構造も地球人類のそれと分からぬようにTF基準となっている訳ですか。」
「あー、巨人族みたいに遺物があっちこっちふらついてる様にしか見えませんね、これ。」
無論、これで終わりな訳がない。
これは一の矢であり、これで終わっては片手落ち。
二の矢、三の矢もしっかり用意してある。
「木星の遺跡プラントの修復と改造が漸く終わりました。製造可能な艦艇も、この改エルトリウム級を始め、多数建造可能になりました。」
どよ、と会議室の空気が変わる(地球や月、火星の担当もいるのでビデオ通信だが)。
今まで完全にオーバーテクノロジーであり、修理は兎も角生産ラインで建造するのが無理ゲー過ぎた超大型宇宙戦艦を、遂に安定して建造可能となる。
これは余りに大きかった。
まぁ資材量やどう隠して運用するかとか色々別の心配も増えるが。
「加えて、長年の地球外生命体への対応に関する工作について報告です。政府筋の方は未だ芳しくありませんが、ネルガル重工・クリムゾングループ・マオインダストリー・イスルギ重工がこちらとの提携を打診しています。」
「今まで散々融資してきた割には遅いな。」
「まぁ彼らも木星圏のバブルが無事終息したかを見計らっていたのでしょう。」
木星圏のバブルは、辛うじて破裂する事なく終息を迎え、経済は落ち着きを見せ始めた。
これまでの様な大型輸送艦の建造は減少するだろうが、地球・月・火星・木星・各ラグランジュポイントのコロニーが結ばれて生まれた太陽系の大商業圏全体はまだまだ開発途上であり、雇用はマイナスどころか常に上向きである。
大型艦艇についても常に整備や保守点検は必要不可欠であり、損傷した部位は修理できねばブロックごと取り換えたりと、決して需要が消える事はない。
「アナハイムがいないのは少し気になりますが…。」
「あそこは民需優先ですからね。地球圏では我々を除いて第一位ですから、おいそれと動けないのかと。」
「まぁこれまで通りという事で。」
「他の企業は…まぁ今まで通り、ここで食い付かないと置いてかれるという恐怖でしょうな。」
事実、こうしたA.I.M.の技術提供を拒んだ企業の多くは、時代の波に飲まれて消えていった。
アナハイムも民需優先とは言え、技術提供に関しては受け入れている。
が、異星人由来の技術という眉唾ものとなると、今回は流石に及び腰になってしまった。
「彼らには今後どうするべきか、皆は何か意見ありますか?」
こうして、以降の太陽系全体に大影響を与えるA.I.M.の重役会議は進むのだった。