多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
でも分割するにも中途半端なのでこのまま投稿。
地球人類の黄金期、太陽系の開拓期は新西暦130年代まで続いた。
金星、そして土星。
どちらも火星や木星に匹敵する資源地帯であり、移住先だから。
地球人類はそれまで無かった豊富な資源とエネルギー、優れた技術と人材を増え続ける人口に衣食住を与えるため、地球の自然環境回復のために全力で使用した。
人類史上かつてない繁栄。
しかし、それは唐突に終わりを告げた。
有史以来幾度もあったパンデミック。
S2型インフルエンザの大流行である。
旧中華地域を発生源として地球全土へと流行したこの新型のインフルエンザは従来型のワクチンでは殆ど効果がなく、地球連邦政府の非常事態宣言と迅速な行動にも関わらず、一部初動の遅れたコロニー側にすら感染者・死亡者が出る事態となった。
当時90億人だった地球人類の内、1億人が感染し、最終的に20万人を超える死亡者を出す大惨事となった。
この事態に対し、A.I.M.グループは対ウイルス用医療ナノマシンを世界で初めて実用化、一か月の臨床試験の後、地球連邦政府の許可の上、異例の速さで認可された。
これを地球連邦政府は一括で購入した後、地球並び感染者が出たコロニーに無償で配布した事で、事態は漸く沈静化を見せた。
パンデミックが終息を見たのは2年後、被害者への補償等の問題が解決したのは更に1年後の事だった。
そして、この事態の後からが本格的な混乱の始まりだった。
パンデミック終息後、地球連邦政府は事態の解決に多くのリソースを割いてしまったため、太陽系開発が大幅に停滞する事となる。
更に今後この様な事態にならぬための対策について、連邦政府内でも大いに意見が別れ、荒れる事となる。
A.I.M.グループは得意とするナノマシンによる更なる医療分野への躍進(それまでは医療では殆どの地域で認可されていなかった)を提案し、製薬業界からは多様な新型ワクチン・予防薬の開発が提案されたが、そうした多くの意見の中で一際異彩を放っていたのが「遺伝子調整による免疫機能の強化」である。
前者二つは兎も角、遺伝子操作に関しては倫理的に問題ありとして紛糾し、とてもではないが認可が下りるとは思われなかった。
これに対して研究者らは何を考えたのか、医療以外を目的とし始めたのだ。
「免疫強化だけじゃ認可下りない?んじゃそれ以外の能力も上げれれば許可下りるでしょ!」
これに対し、各方面から反対の声が上がり、A.I.M.グループからも「新たな人種差別の原因となる」として反対の声が上がった。
だが、不断の努力でこれを実用段階まで持っていった企業側はこれに反対、連邦政府に対して大規模な政治工作を仕掛け、遂には臨床試験にまで持ち込んだ。
この臨床試験が曲者で、試験参加者の上限が設定されていなかったのだ。
患者側からの要望次第で遺伝子調整の範囲並びに内容を決定、優れた能力と容姿を持って生まれてくる事がお金次第で可能になる。
我が子に優れた能力と美しい容姿をあげたいとは、親なら誰もが一度は思う事。
未だ臨床試験段階と言えど、裕福な家からはそれなり以上の参加者が出た。
しかも、内政に関しては自治が進んでいた地球の外、コロニー側でも行う者が出始めた。
この遺伝子操作はS2型インフルエンザにトラウマを持つ多くの地球在住の富裕層の中でも既存医療やナノマシンへ忌避感を持つ者を中心に歓迎され、倫理的な問題を孕みながらも行われ続け、ノウハウの蓄積と技術的成熟が成されていった。
が、初期の頃は技術的に未成熟であり、多くの悲劇が生まれ、更には当局に隠れて非人道的な実験を行う者すら出始めた。
しかし、遺伝疾患の治療に関してはこれを契機にノウハウが蓄積されたために劇的に改善した事もあり、決して負の側面ばかりではなかった事を言っておく。
だが、余りに倫理的に問題があるという世論の高まりから、地球連邦政府は漸く重い腰を上げた。
遺伝疾患等の治療を除いた目的の遺伝子操作、これを全面的に禁止した。
ここにガンダムSEEDにおけるトリノ議定書、即ち遺伝子改変禁止に関する協定等が採択されたのだった。
この禁止措置は遺伝子調整が広まってから2年後に行われた。
しかし、その技術は太陽系全土に広まっており、完全な規制は不可能と言って良かった。
それでも表向き、遺伝子調整を医療目的以外に使用される事はなくなった。
念のため、通常の遺伝子治療を受けた者には政府からIDが配られ、遺伝調整者とは区別された。
しかし、肝心の遺伝子調整者への対処は差別や迫害に至る可能性があるとして見送られた。
これがやはりというか、大問題になった。
後の調査で発覚したのだが、規制にまで2年あったため、富裕層(の中でも比較的新興の層)を中心に1億人近い人間が遺伝子操作を受けていた。
この10年後から始まるのは、遺伝子操作に手を出した者と手を出さなかった者との格差だ。
無論、マジモンの天才とか天災にはそんなん関係なかったのだが、気にする者はとことん気にした。
そして発生したのは、予想通りの非調整者による遺伝子調整者コーディネーター達への迫害だった。
何せ彼らは齢10となる前に難解な数式や化学式を理解し、分りやすく優秀さを示したのだ。
しかもそれを隠す事もなく、その多くはまるで誇示するかの様に。
そうなれば、当たり前の様に迫害が発生した。
それは政府広報や警察側の巡回程度では留まる事を知らず、一部では暴動となり、更には無関係な一般市民や通常の遺伝治療をした者にすら被害が出始めた。
この事態に対して地球連邦政府は暴動の鎮圧並びに遺伝子調整者とその家族を新型コロニーへ避難させ始めた。
この避難は希望者のみであり、生まれ育った地球やコロニーに残留した者もいたが、遺伝子調整者と分かっている者とその家族の多くが悲惨な末路を辿る事となり、バレていない者は目立たぬように注意を払いながら暮らす事となる。
有力者の身内で匿われた者も僅かながらいたが、その存在はスキャンダルになるとして隠された。
多くのコーディネーターは新型コロニーへと移住し、そこで連邦政府の厳重な監視下で暮らす事となる。
これは彼らの身の安全のためだったが、彼らコーディネーターからは自分達を抑圧する者としか見られず、両者の間の無理解は更に広がっていった。
事態が沈静化し、対コーディネーター過激派は取り敢えず沈静化したものの、密かに自然保護団体ブルーコスモスを設立し、反遺伝子調整・コーディネーター排斥のための行動を続けていく。
火種は燻ったまま、コーディネーターらは与えられた新型コロニーにて監視も緩和され、自治を許された。
彼らの存在は第一世代とされ、その高い能力を示し、第一世代同士の子供である第二世代もそれは変わらなかった。
新型のコロニーはその後工業用として増産、高精度の工業製品を生産して利益を上げ、居住者の生活は軌道に乗っていった。
更に居住性の高い完全新規設計のコロニー、プラント型を開発、多くのコーディネーターが居住した。
だが、第三世代になると調整され、通常の人類から乖離した遺伝子同士では受精・着床にまで至らない、異種と判断されて子供が出来ない事例が多発するという致命的な問題が発覚した。
これを解決するために誕生時の遺伝子から適合性を見出しての婚姻統制を始め、更なる遺伝子調整によって乗り切ろうとしたが、解決の目途は立っていない。
この問題に対してはA.I.M.グループから技術協力の提案もあったが、自治政府は「ナチュラル(非調整者への蔑称)の手は借りん」として断られた。
A.I.M.グループの正体や人類全体の地道な強化措置等の内実を知る者からすれば噴飯物なのだが、それは兎も角。
こうした解決の困難な問題に対し、プラント自治政府は歴史上多くの権力者が行ってきた実にナチュラル的な手法で乗り切ろうとした。
即ち、外に敵を作り、一致団結を促したのだ。
彼らコーディネーターにとってプラントこそが天国であり、楽園である。
そこにある問題は外から、つまりナチュラルが原因であり、奴らは敵である。
この思想とも言えないコーディネーター優越論はプラント内でのみ広まり、第三世代においては殆ど常識として語られるようになり、後の大惨事へと繋がる事となる。
……………
翻ってA.I.M.グループだが、一連の事件に対しては殆ど政治的な関与はしなかった。
やった事と言えば、精々が秘匿していた医療用ナノマシンを公開した事位だ。
何せ下手に介入し、遺伝子調整に関して色々やってしまったら、後のブルーコスモスに自分達が生体式自動人形を用いて行った人類の地力底上げのためにゆっくりと行ってきた遺伝子調整(勿論そう簡単にバレる様なやり方ではなかったが)がバレるかも知れないと判断したからだ。
人類の技術は日進月歩、油断は出来ない故に。
それは兎も角として、彼女らは太陽系開拓において、新たな作業用機械を発表した。
その名もアーハン。
球体状の待機形態から、人型の稼働形態へと変形するという今までにない特徴を有した多目的機動外骨格である。
その癖に操縦系は従来のスペースポッドを下地にしたもので、スペースポッド乗りなら比較的短期間の機種転換訓練で操縦可能となる。
動力はバッテリー式だが、A.I.M.グループの高い技術力のためか、同時代の一般的な船外作業用スペースポッドよりもあらゆる面で高性能・高精度・長時間稼働を可能にしている。
その分、お値段に関しては3倍近い数字になっているが、多数のオプションを持ち、使う環境を選ばない程の汎用性・信頼性を持つ。
例えば、球体状態から腕部のみを展開してスペースポッドとして、高重力・圧力下でも球体状態で移動手段として、無重力空間ならAMBACを生かして稼働形態と、1G下なら歩行もスラスターを吹かして飛行も可能と、宇宙だろうが重力下だろうが水中だろうが大気圏だろうが使用できる。
更にオプションは作業用だけでなく、地球連邦共通規格の各種兵装も装備可能になっている。
ビーム・レーザー兵器等は追加のバッテリーが無いと稼働時間を削るが、使用自体は可能である。
この機体は太陽系開拓が進むにつれ、従来のスペースポッドでは過酷な環境に耐えられないとされたため、新たな作業用機械が求められたからだ。
各社がこれまで以上の頑強さを追求したスペースポットを販売する中、A.I.M.グループのみがこの異常にまで高性能なスペースポットならぬ強化外骨格を提出してきて人々の注目を浚った。
そのお値段に関しては確かに高く、民間用としては躊躇われたものの、コロニー駐留軍は採用、購入に踏み切った。
と言うのも、コロニー内ではそれまで主流だった機甲戦力の多くが使用に向かず、航空機も使えない。
一応戦車や武装車両は火力を落とせば使用できるが、どうしても地球上に比べれば火力・機動力不足だった。
それ以外は歩兵かパワードスーツに重火器を持たせた程度だった。
そこに戦車砲以上の威力のエネルギー・レーザー兵器を使用可能かつ場所を選ばず運用可能で、航空支援もできる5m程の強化外骨格が現れた。
駐留軍はかねてからのコロニー内戦闘においてこうした地上における航空支援を担当できる兵器を求めていたのだが、スラスターを内蔵して多少柔軟に動けるパワードスーツ位しかなかった。
本当はコロニー向け機甲戦力とか欲しかったのだが、予算がつかなかったので今まで諦めていたのだ。
なんせずっと平和だったから。
平和な時代に、軍に余計な予算がつく訳がない。
幸いにも過剰に減らされる事は無かったが新規開発、それもコロニー内でのみの装備なんて無理な訳で。
そこに唐突に現れた多用途かつ高機動な強化外骨格(全長約5m)とか、彼らコロニー駐留軍にとっては正に福音だった。
折しもコーディネーター排斥運動で治安が悪化、一部で暴動すら起こったとなれば、こうしたコロニー内で迅速に動ける戦力はどうしても欲しかったからだ。
早速上申し、許可が下りると半年の試験運用を経た後に正式採用となった。
AMPS-01A アーハン
AMPSはA.I.M.グループ製のモビル・パワード・スーツの略である。
初期型のA型、民間向けのB型、軍用のC型、そして後にアビオニクスの更新や新型バッテリーへの交換を行ったC2型と、多数のバリエーションや各種オプション装備型が存在する。
その汎用性からMS登場以降もコロニー内の手頃な機動戦力にして高級作業用機として長く愛用されていく事となる。
後に後継機のAMPS-02 アーハンⅡが登場すると、全機がこれに更新されたが、アーハンはその後もコロニー自治体の警備用として払い下げられ、50年以上に渡って使用され続けたベストセラー機となる。
だが、アーハンの歴史上最大の役目はそこではない。
機動外骨格を操縦するためのOSや蓄積された運用・稼働データ。
今までにない人体に酷似した作業機械・軍事兵器としての性質は、後のMSや各種特機等の人型兵器を運用するための下地となったのだ。
地球圏の他の勢力がMS登場前後に大急ぎで開発に着手し、積み重ねてきたデータを、A.I.M.グループは誰よりも早く、長く積み重ね続けていたのだ。
このデータは後に各種ロボットの開発のための基礎となり、アーハンの存在はロボット工学上の歴史に大きくその名を刻む事となる。
「ま、実際は今後の言い訳のためと連邦軍にロボット兵器に慣れてもらうための実質練習機なんだけどね。」
「台無しですね。」
いきなり脈絡もなく巨大ロボットでござい!と言っても受け入れられないし、どうやって開発した!?と突っ込みを貰ってしまうだろう。
アーハンはそれを回避するためのものだった。
「まぁちょっと奮発しちゃったけど。」
「小さ過ぎて発展の余地が余りありませんけどね。」
「ナノマシン式じゃないとどうしてもねー。」
「しかし、これで連邦軍はヒト型兵器への偏見も消えました。」
「地上でも戦車相手に平野で余裕で勝利したしねぇ。」
最新鋭ジェット戦闘機に準ずる速度で戦闘機動を取り、戦車よりも強力な武装を持っているんだから当然である。
「しかし採用してくれたのはコロニー駐留軍のみですか。」
「高性能でも戦乱の時期じゃないし、地上なら普通の機甲戦力や航空戦力使えるからねー。」
「当初の目的は達成しましたし、今回はこれで良しとしましょう。」
こんな感じで新西暦130年代は過ぎ去っていくのだった。