多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
次は一年戦争前夜位かな。
新西暦140年代から150年代は、嵐の様だった。
景気こそ何とかS2インフルエンザ以前の様相を取り戻したものの、その後の遺伝子調整にまつわるコーディネーター迫害により、地球圏の治安は乱れた。
幸いにも地球上の暴動並び紛争に対しては、今まで蓄積してきたノウハウや戦術、多数の航空戦力の投入により早期に鎮圧されたものの、コロニーという閉鎖かつ一つの事故が1万人以上の市民の生活を危険に晒す特殊な環境での戦闘は経験・ノウハウの蓄積が少なく、鎮圧は地球上に比べて長引く結果となってしまった。
この結果を受け、今まで脆弱と言っても良かったコロニー駐留軍は先に発表されたAMPS-01 アーハンを始めとしてその戦力の質的向上・規模拡大へと踏み込み、人類史上初となる大規模宇宙艦隊整備計画が実行される事となる。
こうして生まれたのがサラミス級宇宙巡洋艦とレパント級宇宙駆逐艦であり、それらを統率するために高度な指揮管制能力と艦砲射撃能力を持ったマゼラン級宇宙戦艦が生まれた。
これらの設計・開発・生産は全て地球連邦軍直轄の軍事工廠で行われており、徹底的な情報の秘匿が行われ、各企業群は関わる事が出来なかった。
但し、艦載機に限っては各企業のコンペとなり、熾烈な争いの果てに最終的に既存機よりも高性能かつ信頼性の高いハービック社製のセイバーフィッシュが採用された。
艦載機運用は頑丈かつ単純な構造の軍用輸送艦として開発されていたコロンブス級輸送艦を改装した改コロンブス級空母にて運用された。
宇宙開発のために培った高性能なレーダー・センサー群と連携した大型艦載メガ粒子砲やミサイルと連動した統制射撃は外宇宙から飛来する隕石やデブリ迎撃にて実戦証明され、その性能を遺憾なく発揮した。
これに対し、コロニー側の独立派・過激派は地球連邦政府の弾圧の象徴として忌々しさを露わにし、反地球連邦の感情を助長する結果となってしまった。
新西暦140年代から160年代、それはコロニー側に反地球連邦感情を芽生えさせ、育ませてしまった時代だった。
無論、全てのコロニー住民がそうだった訳ではない。
コロニー内の事は殆ど自治体に任せられ、完全循環型コロニーの存在で水・空気税も課せられず、景気は一時落ち込んだが、現在は回復している。
そして宇宙空間は兎も角、コロニー内に限って言えばアーハンの存在により、例えまた暴動が起きても十分治安を維持できる戦力があった。
問題が深刻化したのは、コロニー住民に独立を熱心に説いた人物がいたからだ。
しかも頭に「カルト的人気を持った」と付く類の。
彼の名はジオン・ズム・ダイクン。
ジオニズム思想の提唱者にして強烈な選民思想を抱いた扇動者、そして公式には初のニュータイプ思想を唱えた人物として歴史にその名を刻まれた男。
知る者から言わせれば「よりにもよってTHE ORIGIN仕様かよ」と言われる人物である。
つまりタカ派で極右派で超過激派なのである。
味方であり盟友でもあったデギン・ソド・ザビよりも遥かに。
事実新西暦153年、サイド3の首相に選出された後もその路線は変わらず、新西暦158年には突然地球連邦政府からの独立を宣言、ジオン共和国の樹立と設立を宣言した。
これには地球連邦政府のみならず、各サイド並び各惑星圏からも驚愕され、波紋を呼んだ。
これに対しては地球連邦政府は宇宙軍の更なる拡大と枯渇した資源採掘用小惑星基地を軍事基地化する事で返答とした。
返す刀でジオン共和国はミノフスキー博士を筆頭とした熱核融合炉の開発に踏み切り、軍備増強に邁進していく事となる。
しかも、地球連邦政府から独立した事で、A.I.M.グループ所有の完全循環型コロニーから供給される清浄な水・空気の安定供給を受けられなくなり、生活用の水・空気のコストが急騰、水・空気税が課される事態となり、ジオン側はこれを地球連邦政府の謀略だとして国民の一致団結を叫び、敵意を地球連邦へと向けさせた。
なおこの当時、A.I.M.グループは公共事業として地球連邦政府からの受注を受けて水・空気の浄化処理を請け負っていただけで、再契約の交渉時にジオン側と値段交渉で合意できなかったのでこの事態になったのだと明記しておく。
そんな訳で、宇宙における緊張感は日増しに強くなっていった。
そんな状態だったので、新西暦160年代は、正に戦争準備期間という有様だった。
ジオンと地球連邦は互いに軍備増強を続けていたが、それでもまだ戦争にはならないのでは、という意見もあった。
しかし新西暦165年、これまで自治の範囲は内政のみだったコロニーの権利拡大を認める自治権整備法案が棄却された事で、導火線に火が付いた。
最早地球連邦とジオンの間ではどうしようもない隔意と敵意が生まれていた。
そして新西暦168年、ジオン・ズム・ダイクンが死亡した事によって、事態は更に動いていく。
何と翌年の新西暦169年、ジオン共和国はジオン公国へと改められ、初代公王にデギン元首相が就いた。
これにより所謂ダイクン派が失脚する等、政治的混乱が発生するものの、ジオン側はミノフスキー粒子技術を用いて更に軍備増強を推し進めていく事となる。
……………
さて、どうしてこの時期の一コロニー群であるサイド3がここまで軍備拡張できたのか、疑問に思っている者もいただろう。
その解答に実に簡単、技術力を持った者達から援助があったのだ。
その名をプラント、ジオン以上に選民思想を拗らせたコーディネーター達だ。
彼らもジオンも共にコロニーに居住する身だが、互いに選民思想を持った者達であり、普通の地球連邦所属のコロニー住民達からは無法者扱いされている。
しかし、他のコロニーよりも高い工業生産力・技術力を持っていた。
とは言え、プラント側はジオン側に立って参戦する予定は無かったし、ジオンも期待していなかった。
互いに相手を否定する選民思想を打ち出しているのだから当然だった。
「何故あんな改造人間共と手を取り合わねばならん。ビジネスライクで十分だとも。」
「野蛮で下等なナチュラルと手を取り合って戦う?有り得んな。」
大体こんな感じだったりする。
とは言え、限られた資源と時間での軍備増強となれば、目指す方向は似通ってくる。
こうして誕生したのがMS並びにその効率的運用を前提とした軍備だった。
しかし、ジオン側はミノフスキー核融合炉に関してはある時期までは秘匿し、プラント側もNジャマーを始め一部技術に関しては秘匿した。
結局、両者が後に一年戦争と言われる時代に共同戦線を構築する事はなかった。