多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
流石に一日に二話は無理だったかー。
新西暦170年代に入り、遂に地球連邦首脳部はジオン公国との開戦も止むを得ないとの判断を下した。
それに伴い緊急予算案を可決、以前から続けていた宇宙軍艦艇の増産を追加で決定し、更にはセイバーフィッシュのみならず新型航宙戦闘機の配備を決定した。
その名をストライクスーツ・ゼロ。
ご存じA.I.M.グループ設計・開発の最新鋭機である。
ストライクスーツ・ゼロは通常は左右の双発ブースターユニット二基と機体本体の双発のブースターを主推進機関とした機体で、その出力・推力重量比はセイバーフィッシュと比して倍以上を誇る。
更に驚きなのが簡易的でマニュピレーターもないが、四肢を持った人型形態へと変形する。
その変形機構は単純で、武器を内蔵した腕部は折り畳み、下半身は後方へ向けて各部をロックするだけ。
既に人型兵器を開発・生産・運用する実績を持つA.I.M.グループらしい特異な機体だ。
戦闘機形態では機動性、特に加速性能と航続距離に優れ、人型なら戦闘機では出来ないAMBACや旋回、全方位への柔軟な攻撃を可能としており、変形機構自体も単純な事から僅か1秒未満で完了できる。
セイバーフィッシュより一回り大きいサイズでありながら、最小旋回範囲はどの形態でもセイバーフィッシュよりも小さく早い。
これはブースターユニットと脚部をそれぞれ可動できるがためのもので、ジャミングのない万全の状態であろうとも純粋な機動性でセイバーフィッシュのミサイル全弾発射を幾度も回避し切った。
更に、コンペ中に行われた対艦戦を想定した模擬戦ではゼロ三機でマゼラン級1隻、サラミス級3隻の小艦隊を被撃墜無しで全艦撃沈した(他の機種では20機で漸くだった)。
基本武装は腕部内臓式のレーザー砲×2、機首の60mm連装機関砲、ブースターユニット内臓の5連装多目的誘導ミサイル×4となっている。
オプションで対艦ミサイル4発、7連装ロケット弾ポッドを追加、腕部レーザー砲を75mmレールガンまたは100mm機関砲に換装できる。
尚、この機体の採用・配備に関しては大揉めした。
ゼロのオプション含むコストはセイバーフィッシュの3倍を超え、整備性もまたその構造の複雑さ(セイバーフィッシュに比して)から時間がかかるという欠点があった。
既に運用実績を十分に積み、信頼性も高いセイバーフィッシュの高性能化の方が良いと現場や開発元のハービック社から意見が上がったのだ。
「なら実際に試しましょう?」
偉い人からの声で、セイバーフィッシュの改修型とのコンペ開催が決まった。
これには更にイスルギ重工製のYF-32シュヴェールトの空間戦闘仕様も参加した。
しかし結果は残酷なもので、ストライクスーツと他二機種のキルレシオは1:200を記録、戦闘データの蓄積で1:150まで改善されたものの、それでも歴然とした差だった。
なお、宇宙空間におけるシュヴェールトとセイバーフィッシュのキルレシオは2:3だったが、逆に大気圏内では逆転している。
こうして、ストライクスーツ・ゼロはその圧倒的な性能差で採用を勝ち取った。
しかし、そのコストとセイバーフィッシュの良好な性能からあくまで少数生産、ハイローミックスのハイとなるのだった。
本格的に宇宙で配備され始めたのは77年からで、それから一年戦争終了までゼロはジオン軍MSへと対抗できる数少ない機動兵器の一つとして運用され続けた。
後にその構造からミノフスキー式核融合炉を搭載するには内部スペースがない事からレーザー兵器の出力も低く、またより低コストなMSの配備が本格化していくと、徐々にその数を減らしていく事となる。
だが、ゼロのデータはその後のMS運用や各種可変MS・VFの開発・運用へと生かされ、後継機こそ作られなかったもののその系譜を繋いでいく事となる。
そして、地球とコロニー間の輸送事故が不自然な程に頻発するにつれ、地球連邦政府は宇宙艦隊のみならずコロニー駐留部隊を増員していく。
遂には新西暦178年、月面においてジオンからの亡命科学者(ミノフスキー博士の弟子)を保護しようとする連邦軍MS試験運用部隊と亡命科学者を排除せんとするジオン側のMS部隊が非公式ながら交戦、連邦軍MS部隊が惨敗を喫した。
幸いにもパトロール中に駆け付けたストライクスーツ・ゼロの活躍により部隊の消滅こそ免れたものの、MS関連技術と運用ノウハウ、個々の操縦技術の圧倒的な差に連邦軍は大きな衝撃を受けた(後に連邦はスミス海の戦い・ジオンは雨の海海戦と呼称)。
これを受け、連邦軍は対ジオンを目的としたRX計画を始動、これには新機軸のMS開発も含まれていた。
更にRX計画にて開発したMSを運用するための新型宇宙空母の開発・配備計画であるV作戦も連動して始動する。
時は新西暦179年、遂にジオンと連邦の戦争が始まろうとしていた。
……………
ミノフスキー粒子、そしてNジャマー。
後の太陽系において混乱の主な原因となったこの二つには、共通の特徴があった。
Nジャマーは核分裂を抑止し、その副作用として電波の伝達が阻害されるため、それを利用した長距離通信は使用不可能となり、レーダーも撹乱される。
ミノフスキー粒子はマイクロ波から超長波までの電磁波を最大で99%減衰させる性質があり、常導電性物質を透過するという性質により電子回路の機能障害を起こす効果を持ち、それを利用して核融合炉のプラズマの安定や放射線の遮断を行っている。
この二つを併用した場合、現状の人類の誘導兵器やレーダー・センサー群の殆どを無力化できる。
また、対策の施されていない太陽系地球人類の用いる多くの発電・送電システムを無効化する。
前者は兎も角、後者に対しては疑問符がつく事だろう。
エーテル機関やメタトロンによるエネルギー生産施設。
通常の核融合炉よりも、それこそ桁が二つや三つ異なる程に膨大なエネルギーを生産する事が可能なそれらがあるのではないか、と。
実はこの二つ、地球連邦軍の軍事艦艇には使用されていなかったのだ。
エーテル機関においては未だ小型化が可能になっておらず、大気圏内においては実用的な出力が出せない。
また、暴走時の被害もそのエネルギー量からこれまでの原子力発電所等の比ではないため(比喩抜きで島国等は地図から消える)、この当時は専ら1km以上の超大型の宇宙用艦艇専用(大抵は木星航路向けの超大型輸送船)となっていた。
そしてメタトロンはその精神汚染の詳細が明らかになるにつれてその使用に忌避感が多く、また対策も難しいため、軍民共に使用が難しく、どうしても無人の施設でしか使用できないでいた。
罷り間違ってエネルギー生産施設で自爆テロとか、軍艦で暴走とかされたくはないから仕方ない。
とは言え、ミノフスキー粒子とNジャマー。
これらを併用してジオンとプラントが想定する有視界戦闘に持ち込んだとしても、勝ち目は薄い。
それだけ地球連邦宇宙軍は大勢であり、十分に訓練された職業軍人は例えパートタイマー軍人だろうと、腕っ節は兎も角それ以外では素人同然の者が多い両者に対して圧倒的有利だった。
では、何故地球連邦軍は緒戦において圧倒的不利だったのか?
それは彼らがコロニー防衛のためにその総戦力の実に4割近くを分散させねばならなかったからだ。
地球圏の各ラグランジュポイントのコロニーではジオン・プラントの扱いは乱暴者、無法者、選民思想を拗らせた連中と多くがマイナスの印象であり、味方は殆どいないと言って良かった。
なら、地球圏に存在する殆どのコロニーは敵であると、彼らは判断した。
この当時、地球圏にあるコロニーの多くは建造当時では最新の核分裂炉を使用したものが殆どで、その多くが未だ耐用年数を超えていないからと現役で運用されていたのだ。
勿論、電磁パルス対策等はしていたが、当時未発見だったミノフスキー粒子や新開発のNジャマーへ対策している訳もなかった。
エネルギーを得られず、多くの電子機器も使えず、途方に暮れるコロニーの住民を地球連邦宇宙軍は見捨てる事は出来ず、艦艇の核融合炉から電力を供給して支援する事を選び、多くが戦線に参加する事が出来なくなった。
その数は最大時には宇宙軍の戦闘艦艇の実に4割にまで達し、緒戦の苦境を招く原因となった。
なお、こうして足も止まり、無防備になった艦艇を攻撃しようとしたジオン軍だったが、幸いにも新型の航宙戦闘機ストライクスーツ・ゼロの活躍により、効果は限定的なものとなった。
しかし、こうした戦闘により少なくない数の損害を被った事で、コロニー市民の対ジオン感情は致命的なまでに悪化する事となる。
こうしたコロニー群は大戦中に急ピッチで大型のエーテル機関へと次々と交換され、エネルギー事情は大幅に改善されていった。
そして、この大量のエーテル機関の導入により開発に弾みが付き、A.I.M.グループからの技術提供もあってブレイクスルーに成功する。
遂にはアイス・セカンドを用いた縮退炉の開発・実用化に成功、太陽系はエネルギー問題を恒久的に解決する事となった。
しかし、この極めて膨大なエネルギーはエーテルを用いたワープ航法へと利用され、外宇宙から侵略者を呼び込む原因にもなるのだった。