多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
そしてシャアが何かジョグレス進化した
新西暦179年9月18日、サイド7・1バンチ周辺宙域にて
「何、コロニーに侵入された!?」
『確かな様です。今しがた敵の襲撃を受けたと通信が来ましたが、途切れました。」
小惑星に偽装された小型格納庫には、ASSー0正式名称ストライクスーツ・ゼロ(通称ゼロ戦)が3機一個小隊が格納されており、RX計画・V作戦が露見したもしもの時のためにと配置された虎の子の護衛だった。
少なくとも、未だ開発が完了していないRX-78や鈍足の77やそもそも陸戦兵器である75よりは既に実戦配備され、相応の戦果を上げているこの機体の方がパイロットからは信頼されていた。
贅沢を言えばASSー01クラウドブレイカーの方が嬉しかったが、あの機体は現在の連邦軍にとって正面からMSと相対、撃破可能な貴重かつ高価な戦力であり、そのパイロットも相応の腕利きや熟練兵が乗っているため、おいそれと引っ張ってこられなかったのだ。
なお、その内の3機はルナツーでヤザン率いる小隊が乗って仕掛けてくるジオンのMS部隊相手にロングビームライフルで狙撃したり逆に殲滅したりして満喫してる模様。
「すぐ出るぞ。RX計画は今後の連邦の反撃に必要だ。ここで潰えさせる訳にはいかん。」
『了解です。』
『全チェック項目、オールグリーン。いつでもどうぞ。』
「よし、出撃だ!」
本来なら中立のサイド7、その宙域に浮かぶ偽装格納庫から意気揚々と三機のゼロ戦が発進する。
味方を守るため、連邦の反撃の嚆矢を守るために。
だが、使命に燃える彼らの目の前に現れたのは、余りにも高い壁だった。
……………
「えぇい、ジーンの馬鹿者が!」
サイド7・1バンチの外にて、偵察任務の筈が内部で部下が暴走し、民間人にまで多大な被害を出したという報告に、ついついシャアは口汚く罵ってしまった。
だが事態は待ってくれず、部下のスレンダーを追って連邦の新型MSがコロニーの外に出て来ると、これは好都合と直ぐに意識を切り替える。
「スレンダー、奴を挟み撃ちにするぞ!私が前に出る、お前が回り込め!」
『了解です!』
「よし…!?」
スレンダーが実際に行動に移す寸前、シャアは直感に任せて機体を強引に加速、上昇させながら身を捻り、その場から離脱する。
ほぼ同時、4条のレーザーがシャアの高機動型ザクⅡ(R-1A型とオリジン仕様の相の子)のいた空間を貫く。
その傍らで二条のレーザーに気付く事なく貫かれたスレンダー機が爆散した。
次いでレーダーに感知された三つの光点が、敵の存在を知らせてくれる。
「ちぃ、増援か!」
恐らくは自分が追っていたV作戦の防衛用戦力なのだろう。
人型モドキが三機、巡航形態でこちらに向かってくる。
幸いにも鳥脚(クラウドブレイカーのジオン側の綽名)の姿はないが、アレらの厄介さはシャアはルウムで痛い程痛感している。
少なくとも、同時に配備されていたセイバーフィッシュとはまるで次元の違う機動性は厄介だった。
「避けたか…各機、射程内に入り次第ミサイル斉射!相手は赤い彗星だ、出し惜しむなよ!」
『『了解!!』』
そして、ゼロ戦に搭載されたミサイルは一機につき20発、三機一個小隊分のミサイルが一斉射されたとなれば、それは60発もの過剰火力となってシャアへと襲いかかった。
「えぇい!!」
だが、シャアは未だ未熟なれど、あのシャアなのだ。
宇宙世紀の数多いるNT達、その中で最もパイロットとしての実力を持った男、それがシャア・アズナブル。
シャアは愛機のスラスターを全開にすると急速に後退と上昇下降を乱数回避を行いながらミサイルの旋回半径の内側へと潜り込みつつ、胸部と左腕部(オプション)の合計4門のバルカン砲でミサイルを次々と迎撃していく。
その姿は正に板野サーカスと言っても良く、彼を始めとしたルウム戦役やブリティッシュ作戦を潜り抜けた猛者達ならば程度の差はあれど誰もが出来る対ミサイル機動でもあった。
(化け物が…!)
光速のレーザー砲を寸前に回避し、その直後に60発ものミサイルを前に一撃も命中させずに切り抜ける等、エースや熟練兵と呼ばれる者達の中でも一体どれ程の者が出来ると言うのか?
その位には常軌を逸した操縦センスだった。
「全機散開!的を絞らせず撃ちまくれ!敵は一機だ、焦らずかかれ!」
この三機のゼロ戦を駆る名も無きパイロット達。
彼らはシャアというジオン切ってのエースパイロットを相手に時間稼ぎを成功、辛うじて戦死する事なく、ガンダムを守り切り、以後ホワイトベースがルナ2に行くまで行動を共にする事となる。
……………
(失態だな。)
ホワイトベース追撃を決定した後、シャアは言いようのない苛立ちを感じていた。
いや、それはこの戦争が始まった頃からずっと感じていた事だった。
(宇宙移民の独立か…大義名分など既に無いだろうに。)
戦争序盤のNBC兵器の乱れ撃ち、ミノフスキー粒子の散布とプラントのNジャマーによる旧型コロニーのインフラ破壊、そしてインフラ破壊されたコロニーを救援する連邦軍艦艇へのコロニーごと核弾頭による攻撃。
既に宇宙移民の独立という大義は、消えて久しかった。
それでもジオンが戦うのは、ギレン総帥というカリスマが存在するからだった。
ジオン国民こそが優良種であるとする優性人類生存説を唱え、極めて優れたアジテーターとしての手腕で国民と軍の多くは極めて巧妙に扇動されている。
今現在の戦争指導に一切の疑問を抱かせず、重力戦線へと注力する祖国と民衆の姿に、シャアは忸怩たる思いを抱いていた。
冷静に互いの国力の差を、技術力の差を見れば、結果は分かっているだろうに。
(例え勝ったとしても無茶を通したツケは必ず来る。何より、コロニー住民からの悪感情をどう抑えるというのだ?)
それこそ、序盤の様にNBC兵器を盾に弾圧するか?
否、それは何れ破綻する事が目に見えている。
そもそも、あのギレンにそんな事が分かっていない筈がない。
では、一体どんな目的で……
(まさか、最初からジオンを残すつもりが無い?)
そんな、ゾッとする可能性に行き着いた。
シャアは、キャスバルは元より聡明な人間だ。
復讐のために恩人の息子や同期の人間を生贄にする様な冷酷さも持ち合わせるが、それは身内への情の深さと冷徹な判断力故だ。
史実では仮にも一軍の長であり、宇宙世紀でも有数のNTたるシャアはギレンの思考の核心へと手をかけていた。
(コロニーへの非道も、連邦への敵対も、重力戦線での無為な消耗も……全てに意味があるのだとすれば、それは一体…。)
知らず背筋が泡立ち、冷や汗が流れ、寒気を感じる。
これがシャアという男の本当の資質。
パイロットにして指揮官、NTにして指導者としての才を全て持ち合わせるが故の資質。
直感的にあらゆる戦場における指し手の思考を見抜き、最善手を打つ無比の資質。
それが今、一年戦争という人類の今後のための試金石となる時代に開花しようとしていた
(この戦争、間違いなく裏がある。それを見つけ出さねば…。)
それがこの戦争を始める一助となった男の息子の、人生を変える決断だった。
……………
雷王星宙域にて
「敵、第五波確認。反応は宇宙怪獣、巡洋艦型を中心に約20万体。」
「シリウス方面より異星人の艦隊襲来。数は約2万。尚も増加中。」
「フォールド反応確認。メルトランディです、数は3千。艦載機の発艦を確認。」
改エルトリウム級を旗艦としたA.I.M.グループ所属艦隊は、その死力を尽くして太陽系防衛戦線を展開していた。
あらゆる勢力からの侵攻に、これまで生産・貯蓄していた戦力の全てを吐き尽くす勢いで辛うじて防衛に成功していた。
「第14ヴァルチャー大隊は宇宙怪獣第五波へ。デストロイヤーガンの制限解除。これ以上の侵入を阻止せよ。」
「第491から512ゴースト部隊は異星人艦隊を迎撃。ヴァルチャー隊来援までの時間を稼げ。」
「第8から19クラウドブレイカー隊はメルトランディ艦隊を迎撃。可能な限り時間を稼いで下さい。」
「光子魚雷発射管1番から27番まで装填、宇宙怪獣先頭集団へ放て。」
「空間破砕砲チャージ開始。終了までカウント20。」
「各砲座並び各銃座は照準付き次第順次射撃せよ。敵を近づけるな。」
「艦表面に展開中のアーハン部隊は対空射撃。取り付いた敵を優先して排除せよ。」
「宇宙怪獣からの砲撃来ます。着弾まで2・1・着弾確認。フィールド損耗率17%。」
正に死力を尽くしていた。
一体何故これ程の敵が地球に来襲してくるのか、彼女らにすら分からない。
ここ20年から襲撃の頻度が上昇していたのは分かっていたが、これ程の大戦力が来る理由は……まぁ一部想像がつくが、それでも可笑しい程の物量に圧倒されていた。
だが、地球人類が立ち上がり、種としての生存領域を確保するまで、彼女達は身命を賭して時間を稼ぐつもりだった。
彼らが自分達無しで立ち上がれるようになり、自分達が母星へと帰還できるようになるまでは。
だがまぁ、自分達の同胞が嫁入りしたり家族になったりしてる地球人類と関係を切るつもりは更々無いので、今後も交流は続くだろうが。
「インベーダーの襲来を確認。数は7万。」
「空間破砕砲をインベーダーへ。距離70万kmまで引き付けてから発射。」
「了解。発射予定地点までカウント7・6・5・4・3・2・1・発射。」
艦隊まるまる一つを消し飛ばす程広域の一撃が、宙域を割る様に放たれる。
その渦中にいたインベーダーは来襲早々にその9割以上を空間ごとミキサーにかけられた様に消滅した。
「異星人艦隊、今の一撃に動揺して撤退を開始。」
「追撃は無用。宇宙怪獣並びインベーダー掃討を優先。」
「破損した機体は直ぐに後退。補給・修理を急げ。」
人類の殆どが知らぬまま、彼女らは今日も太陽系を守っていた。