多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第17話 反撃開始と親子の交流

 新西暦179年、9月20日

 

 辛うじてサイド7を脱出したホワイトベース一行は、ルナ2へと逃げ込む事に成功した。

 しかし、ルナ2は地球防衛のための最前線基地であり、とてもではないが逃げ込んだ民間人を全て収容する事は出来なかった。

 幸いにも完全な補給を受けられた上、大気圏突入を支援するための小艦隊並びに艦載機による護衛を受けられる事になり、アムロはその間ルナ2から来たとある男の薫陶と訓練を受ける事となる。

 

 宇宙世紀にて最強のオールドタイプと名高いパイロット、「野獣」ヤザン・ゲーブル中尉である。

 

 この間、シャア少佐もまたパプアにて補給を受け、万全の態勢で大気圏へと突入するホワイトベースを追撃に臨んだ。

 しかし、ヤザン率いる手練れのクラウドブレイカー隊の攻撃を受けて参加したザクⅡF型3機を失い、自身もまた重傷を負った上、ホワイトベースが予定通りジャブローへと降下に成功する惨敗となった。

 ジオンは国民的エースパイロットが乗る最新の高機動MSが負けた事に衝撃を受け、ギレンを除く上層部にあった楽観が消し飛ぶ事となる。

 また、ヤザンはこの一件で勲章の授与が考えられたが、これまでの素行不良と戦時下である事から見送りとなった。

 なお、普段この問題児の面倒を見ているワッケイン司令の胃は束の間の休息を得て少しだけ休まった。

 

 

 ……………

 

 

 所で皆さん、テム・レイ氏をご存知だろうか。

 媒体や作品によって変動もあるが、大凡RX計画又はV作戦の中心的人物であり、ガンダムを作った技術者であり、アムロ・レイの父親である事は共通している。

 この世界線では基本はTHE ORIGIN仕様なので、その来歴はミノフスキー博士の直弟子の一人であり、アナハイムエレクトロニクス社のMS開発部長であり、連邦軍へ出向中の身となっている。

 この人物、後に酸素欠乏症で頭が残念な事になった後、ガンダムの活躍をテレビで見て「連邦バンザーイ!」と叫んでたら階段から足を滑らせて後頭部強打して死亡してしまった。

 その末路こそ残念なものだが、しかしその知性は本物であり、後の連邦側MS開発の基礎を築いた極めて優秀な人物である。

 なので、彼を失う事はとてもではないが許容できないと、A.I.M.グループは判断した。

 

 『テム博士を保護致しました。スーツ内のエアはまだ十分ある模様。』

 『了解。予定通りサイド7の支社へと移動してください。こちらは引き続き民間人の保護を行います。』

 『了解。』

 

 テム・レイ博士を保護したアーハンは素早く移動を開始する。

 今後、彼は通常の民間ルートでジャブローへと向かい、息子と再会する事となる。

 また幸いと言うべきか、アムロ達の住むサイド7・1番地は穴こそ開いたものの完全には破壊される事は無かった。

 それはつまり、未だ救助を待つ民間人が大量に存在するという事だ。

 連邦もコロニー側も中立違反であるため、シャアも表向きは非難される事は無いだろうが、それでも後ろ指を指される事にはなるだろう。

 それはさておき、サイド7の支社から戦闘終了を知って駆け付けたA.I.M.グループ所属アーハン隊並び医療用艦艇が駆けつけ、迅速な救助活動とコロニー内に仮設テントや医療用車両を運び込むのだった。

 

 「皆さん、散かすだけ散かして片付けないとは子供なのでしょうか?」

 「いいえ、違います。子供は注意すれば分かってくれますが、分かっててもそうするだけの余裕が無いのだから、余計質が悪いのですよ。」

 

 これ以降、一年戦争の間はサイド7には平和が訪れるのだった。

 

 

 ………………

 

 

 これ以降、地球連邦軍は自軍製では初の量産型MSであるRGM-79ジム(ジム改とⅡの相の子)を正式に量産開始、十分な数を配備したと判断すると、補給線が伸び切り各地で攻勢限界を迎えていたジオン軍を包囲・撃破していった。

 ジオン地上攻撃軍副司令であるマ・クベ大佐の指示の下、各地に散らばったジオン兵の内の未だ戦意ある者はアフリカへと集結、HLVにて脱出を試みるも、既に彼らの真上である軌道上には漸く駆け付けた地球連邦宇宙軍木星方面軍の艦隊が展開、ジオンは空へと帰る道を失い、また宙対地爆撃の可能性から全滅を避けるために全軍武装解除の後に降伏した。

 また、マ・クベ大佐自身も自身の指揮下にあった兵達と共にエルラン中将へと組織的に降伏した。

 これは戦後に少しでも国力を残しておくための方策であり、繋がりのあるエルラン中将の功績を作り、少しでも戦後に向けた交渉をするためのものだった。

 一連の事態を受けて本国のキシリア・ザビは責任を追及されて失脚したものの、処刑もされずに公王デギンの元に保護された。

 これにより、戦場は本格的に宇宙へと移っていく事となる。

 なお、北米を統治下に置いたガルマ率いる講和派のジオン軍将兵は本国に対して交渉の席に着くべきだと上申し続けているが、未だに成果は上がっていない。

 

 こうした事態の移り変わりが起こる前、ジャブローではホワイトベースから漸く民間人一同が降りる事を許可された。

 また、アムロは志願兵として正式に連邦軍に所属しようとしたのだが、此処で待ったが掛かった。

 誰あろう、ほぼ同時期にやってきたテム・レイが異を唱えたのだ。

 

 「アムロ、何もお前が軍人になる必要なんて無いんだ。」

 「だって父さん、あいつらは、ジオンは、フラウの両親を、おじさんやおばさん達を皆殺したんだ!生き残った誰かが敵を討たなけりゃならないんだ!」

 「確かに。だが、それはお前の役目じゃない。軍人の役目だ。お前じゃなくても良いんだ。フラウ君だって幸いにも生きてる。他の友達もだ。ここまで頑張ってきたんだから、いい加減休むべきなんだ。」

 「でも……忘れられないんだ。皆の事が。あんな、生きてたのに皆一瞬で…。悪い人なんかいなかったのに…。」

 

 未だ16歳のアムロにとって、あの日起きた出来事はそれだけ衝撃的だったのだ。

 典型的なPTSD、より正確に言えばサバイバーズギルト、即ち生き残ってしまったが故の罪悪感である。

 繊細で多感な年頃、そしてNTの資質を持った少年は顔見知りの人々の死の間際の念を未だ開花しないその感覚で感じ取ってしまっていた。

 

 「良いか、アムロ。敵を取ろう、ジオンをやっつけよう。それは軍人になって、戦争に参加するだけが方法じゃない。」

 「父さん、それって…。」

 「私だって元々アナハイムの所属だ。今は連邦軍に出向して、大尉待遇だがね。それでも私の仕事はとても大事な事は分かるな?」

 「うん。父さん達がガンダムを作ってくれたお陰で、僕らはシャアを相手に生き延びる事が出来たんだ。」

 「そうか…少々複雑だが、とても嬉しいよアムロ。私の作ったものがお前達を守ってくれたんだから。」

 

 そもそもサイド7で秘密裏に開発なんてやってなかったら襲われなかったのでは?とは突っ込んではいけない。

 

 「何も前線で銃を使うのだけが戦いじゃない。先ずは私の手伝いを、ガンダムの完成を手伝ってみないか?」

 「ガンダムの?あれってまだ未完成だったの?」

 「その通り。ガンダムに搭載された教育型CPU。あれに運用データを蓄積すればする程、動作プログラムを洗練してくれる。要は無駄を消し、効率よく、素早い動作を可能にしてくれる訳なんだが…。」

 

 ガンダムやガンキャノン、ガンタンクがコアファイターを持っているのはこの教育型CPUをより確実に回収し、他の機体にそのデータを反映するためでもある。

 まぁお陰でコストがとんでもない事になった一因でもあるのだが。

 

 「お前達が持ち帰ってくれたお陰で、ガンダムの動作プログラムを他の機体に反映できる。特に格闘戦のデータはまだまだ貴重だからな。これがあれば、格闘戦になった時も大分助かる筈だ。」

 「そんな機能があったんだ…。」

 「それ以外にもジムの開発で色々面白い機能やプログラムも出来た。ガンダムは確かにハード面では最高峰と言っても良いが、ソフトに関してはまだまだ荒もある。ガンダムとジム、両方の長所を分け合う作業が必要なんだが、どうしてもパイロットの協力が不可欠なんだ。」

 「ジム……ここで作ってる量産型MSだよね?」

 「そうだ。そっちは部下任せで余り絡まなかったんだが、良いものを作ってくれたものだ。きっとお前も気に入るだろう。」

 

 こうして、何とかテムは息子を前線で戦うパイロットから自分の視界内にいてくれるテストパイロットとする事が出来た。

 アムロとテム、二人と開発チームの奮闘によりジムは当初の予定よりも遥かに滑らかな動作を可能とし、MSに関しては熟練兵の多いジオンを相手に接近戦になった際の生還率上昇に大きく寄与するのだった。

 ガンダムもまた、ジムの開発・生産・運用によって得られたノウハウを生かして改修を進め、その性能を向上させた(ガンダム7号機相当)。

 しかし、二人がここジャブローで父子の共同作業をしていたのも束の間の事。

 宇宙艦隊再建に使用する造船・打ち上げ施設破壊のために秘密裡にジャブローを襲撃するためにやってきたサイクロプス隊並び特殊工作部隊(ズゴック・アッガイの混成大隊)に遭遇したアムロは再びガンダムを駆り、この殆どを撃破した。

 が、この際に父親との交流で心を癒したアムロは可能な限りコクピットを避けて攻撃したため、多くの捕虜を得る事となった。

 同時に、このままではまたジオンの攻撃で家族や友人を殺されかねないとも悟った。

 故にアムロは再び戦場へと舞い戻る事を決意した。

 

 時は12月2日、アムロ・レイとガンダム他を乗せ、改修を経たホワイトベースは再び宇宙へと飛び立つのだった。

 

 

 ……………

 

 

 今日のギレンさん

 

 「ゲルググは良い。ビーム兵器搭載かつ高い基本性能、兵站にも優しい。」

 「しかしだな…」

 「このビームナギナタは何だ!?何故こんな使いにくいものを採用しようとする!?」

 「おまけにこれ一本でビームサーベル2本以上のコストがかかるだと!?」

 「普通の、ふ・つ・う・の!ビームサーベルにするんだ!何だったら一機につき2本でも構わん!」

 「どうしてもと言うのなら連結できるようにしろ!条件として模擬戦で各テストパイロットに意見を聞いて、半数以上から高評価であったら許可してやろう。」

 「無理だったら?普通のサーベルを作れ。」

 

 今日もギレンさんはキレッキレです。

 

 

 

 

 

 

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