多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦179年、12月31日、午前1時17分、ア・バオア・クー内部にて
「わが忠勇なるジオン軍兵士達よ。今、地球連邦軍艦隊が我らの悲願を絶やさんと此処ア・バオア・クーに向かっている。」
「しかし、奴らの無謀なる行動こそが、我らジオンの勝利の証である。」
「地球連邦軍に如何程の戦力があろうと、諸君らの奮闘によりそれは既に中身の無い形骸である。」
「敢えて言おう、カスであると!!」
「人類は我ら選ばれたジオン国国民によって管理運営され、初めて永久に生き永らえる事が出来るのである!」
「地球連邦の無能なる者共に思い知らせ、明日の未来のために!我がジオン国国民は立たねばならんのである!」
「ジーク・ジオンッ!!」
「「「「「「「「「「ジーク・ジオン!!」」」」」」」」」」
この演説により、ア・バオア・クーに配置された将兵らの士気は極一部を除いて最高潮に高まっていた。
極一部?戦争嫌いなジョニーさんとか付いてきてくれた部下達と自分の身の安全を考えて胃が痛いシーマ様とか…
(ふぅ、やはりヒトラー風演説は効くが疲れるな。マントでも羽織ればもう少し外連味も出て良かったか。)
ご本人のギレン君と+αだよ。
……………
同日、午前7時00分より、地球連邦軍はア・バオア・クー攻略作戦を開始した。
既に対サイド3本国艦隊からは通信によって降伏勧告が成され、本国防衛戦力を指揮するキシリア・ザビ並びサイド3首相たるダルシア・バハロ氏の連名で受託された。
艦隊到着を確認次第、武装解除する予定となっている。
が、サイド3は兎も角として、問題はこの戦争の実質的指導者であり続けたギレン・ザビである。
コロニー落としやコロニー救助中の連邦軍艦艇への攻撃、そしてコロニーそのものへのNBC兵器使用を命じた彼を放置すれば、必ずや再び連邦に牙を剥くと考えられた。
そのため、ギレンの排除は決定事項であり、地球連邦政府としてもジオンの実働戦力のほぼ全てが集まったア・バオア・クーはジオン軍が残党化するのを防ぐためにも必ずや撃滅・占領する必要があった。
本来の予定ならば、ソーラ・システムによって先制攻撃を加える予定だったのだが、そちらはジオンの別動隊(極めて強力な少数戦力)によるコントロール艦並びソーラーレイ輸送艦への奇襲があって実現しなかった。
そのため、連邦艦隊は通常のミサイルによる準備攻撃並びにパブリク突撃艇によるビーム攪乱幕の展開から開始した。
しかし、それは初手で躓く事となる。
「敵艦隊よりミサイル攻撃来ます!反応多数!100を超えます!」
「マルチロック…完了!」
「よし、拡散メガ粒子砲、撃てぇい!」
砲塔等の数を減らした戦時量産仕様だったムサイの艦首から放たれた巨大な拡散メガ粒子砲が、迫り来る大量のミサイルを一気に薙ぎ払い、撃滅した。
残りのミサイルは他の艦艇並びMS群が撃滅し、かかった費用に比して要塞や艦艇・MSへと着弾・撃破せしめたのは全体の1割にも満たなかった。
「な、何だアレは!?」
「お、恐らくは拡散式のメガ粒子砲でマルチロックしたのかと…。」
その光景を観測していた連邦艦隊からして、余りに異質な光景だった。
別に多数の高機動目標への迎撃は、ミノフスキー粒子散布下でなければ連邦艦隊も得意とする所だが、重散布下にある戦場でこんな事が出来るとは思えなかった。
無論、種はあるのだが。
「急ぎ攪乱幕を展開させろ!」
次いで、パブリク突撃艇が前に出てビーム攪乱幕入りのミサイルを放つ。
先程の拡散ビームではなく通常の射撃でその多くが撃墜されたが、しかし攪乱幕の展開には成功する。
「よし、各艦は前に出るぞ。敵戦力を排除した後、ア・バオア・クーへと取り付く!」
しかし、この艦長がそれを行う事は無かった。
ア・バオア・クー表面から放たれた巨大なビーム砲撃によって、乗艦のサラミスごと一撃で消滅したのだ。
……………
「ふぅ、何とか対応出来てるな。」
MS隊を出撃させ、今も砲撃を続ける中、先程の奇妙なムサイの艦長が呟く。
彼の乗艦を始め、20隻程の戦時量産型ムサイはここア・バオア・クーにて改装を受け、艦隊防空仕様とも言える状態になっていた。
(ギニアス技術少将の作品と聞いて、どんなものかと危惧していたのだが…。)
マルチロック可能な拡散メガ粒子砲による艦隊・要塞防空並び敵艦載機の効率的な撃滅。
そんなもん不可能だろう!と聞いた時は思ったが、現実になっている所を見ると、本当に驚きだ。
ロックに必要な情報は主に事前に散布された数m大のレーザー通信のみ可能な無人センサー群であり、その小ささと数(何と本国で数千は作って周辺宙域に撒いたらしい)から連邦側も見つけていながら排除し切れていないのだとか。
それらから貰った情報とコムサイを下ろして代わりに積んだ各種電子装備と大型拡散粒子砲、そしてムサイの特徴とも言える艦橋の真下かつ二つのエンジンブロックの間にある空間にドム用の核融合炉を直列で三つ繋げたジェネレーターを設置する事で、このムサイは成り立っていた。
なお、態々戦時量産仕様のムサイを選んだのは、通常版のムサイよりも艦内スペースに余裕があり、出力も砲塔が少ないだけ余裕があったからだ。
その装備と性質故に敵MSからの攻撃が集中すると思われるため、対空砲の増設や装甲の強化も提案されたが、接近した敵機への対応は艦隊を組む僚艦と協同する形となっている。
(加えて、あの要塞砲も凄いな。)
通常の要塞砲の多くはムサイやチベ、グワジン級の主砲を改装したものなのだが、一つだけとんでもないものが混じっていた。
有効射程距離300km・最大射程距離2000kmを誇り、通常のメガ粒子砲よりも強力な核融合プラズマビームを発射する元試作艦隊決戦砲にして現要塞特装砲ヨルムンガンド。
かつては一発につきザク3機とされた劣悪なコストも改善に改善を重ねて1機分になり、要塞側からの索敵データとリンクして放つ砲撃は精度も高く、一撃でマゼラン級戦艦すら消滅させる威力を持つ。
間違いなく条約に抵触しない範囲では、両軍共に最大の火力であろう。
(それにMSの数合わせと思っていたアレも役立っている。)
視線を横に向ければ、そこには艦を守るために展開した敵軍のボールにも似た足の無い機体が浮かんでいた。
MPー02A 試作型艦隊防衛用モビルポッド オッゴ
「練度や適性の低い兵士でも扱える艦載機」として開発され、旧型ながらも未だ数が多く2線級の部隊では現役のザクⅡF型や使い先の無くなったJ型、G型のパーツや装備を主な材料とした機体だ。
開発完了・生産開始は連邦の重力戦線での反撃開始とほぼ同時期であり、主に志願した学生らが乗っているが、その操縦性の高さとコストの低さから艦隊防空用にと大量に生産された。
艦隊防空なのは、逆に熟練兵の様に敵艦隊や部隊へと突入するには技量や適性が低い者が乗るためのものであり、少しでも生存率を上げるために艦隊の援護を受けられる配置にしてあるからだ。
両腕部では連邦のMSとほぼ同じ大きさのシールドを保持して防御力の向上ともしもの時の艦の盾としても機能し、両横にある回転可能なハードポイントには主にザクの武装を装備している。
現在は前衛のMS部隊を抜いてきた敵MSや航宙機、ミサイルの迎撃をしている。
「このまま勝てれば良いのだが…。」
艦長の呟きは、しかし叶う事は無かった。
……………
「6つ!」
アムロの駆るガンダムは、敵指揮官が搭乗しているであろうMSの6機目を撃破した。
『隊長!?おのれェ!』
「7つ!」
そして、怒りから動きが単調になった敵をまた一体撃破する。
この戦闘で、既に23機も落としていたアムロの駆るガンダムはジャブローで父と共に数々の改修や強化、追加装備を施した事で、以前よりも格段に使いやすく、強くなっていた。
以前、強化されたガンダムを外伝に登場する七号機と称したが、それは偽りではない。
可動部のマグネットコーティングによる反応速度の向上ならび出力のロスの軽減。
OS、特にFCSの調整によるロックオンの高速化。
ジェネレーターの最新型への交換に加え、内臓武装の一部(ショルダーバルカン)の撤廃とハードポイントの増設、武装レイアウトの変更(サーベルがランドセルから手首に移動)だ。
加えて、最も分かりやすいのはまるで鎧の様にガンダムの全身を覆うスラスターを内蔵した装甲と追加武装だ。
全身を覆う装甲はジオン軍が遅れて実戦投入したビーム兵器対策に表面をビームコーティングが覆い、重量増加を打ち消す所か更なる高機動化を実現する程のスラスター群を備え、更に各部に奥の手としてミサイルランチャーを備えている。
ランドセルには大型の武装付きバックパックが接続され、大出力のブースターとプロペラント、右上方に120mmロングレールガン、左上方に6連装ミサイルランチャーを備える。
右腕部には既存シールドとその裏に連装ビームライフル、左腕部にはシールドとその裏に4連装ロケット弾ポッドを備える。
要は、サンダーボルト版フルアーマーガンダム(サブアームやEパック無し)である。
そんな一年戦争でも屈指の高性能MSと化したガンダムを駆るのは、促成だが正規訓練を受け、ヤザンの薫陶と父テムの愛情を貰い、ジオン滅ぼすべしと覚悟を決めたアムロである。
Q つまり?
A 名無しのモブジオン兵はガンダム無双状態になります。
艦艇・MSを問わず、次々とアムロの撃墜スコアとなって真空の闇へと消えていく。
彼が突入した宙域は前述の防空仕様のムサイと護衛のオッゴ部隊すら撃破されており、その防空・戦闘能力をたかだMS一機に大きく削られつつあった。
「はっはぁ!足元がお留守なんだよぉ!」
そして、この男も忘れてはいけない。
120mmレールガンの一撃によりチベ級の艦橋を爆砕し、ついでとばかりに対艦ミサイルを叩き込んで止めを刺して次の獲物へと向かう。
野獣ヤザン・ゲーブルは絶好調で戦場を楽しんでいた。
現在、彼の乗機はジムではなくクラウドブレイカーのままだ。
接近戦時の動きが硬いからとジムではなく敢えてクラウドブレイカーに搭乗している辺り、やはり慣れた愛機の方が馴染むのだろう。
「そこぉ!」
『う、うわぁ!?』
彼のクラウドブレイカーは取り回しの良さを重視した120mmレールガンと80mmガトリング砲、そして対艦ミサイルを装備している。
部下は皆ノーマル仕様のロングビームライフル装備に対艦ミサイルかロケット弾ポッドだが、高速を生かしての通り魔染みた戦いを好むヤザンには弾数や連射速度の勝るレールガンの方が好みだった。
『隊長、こっちは終わりました!』
「よぉし、一旦補給に戻るぞ!この戦闘、まだまだ終わらんからな!」
ア・バオア・クーを巡る戦いは、未だ序盤であった。
……………
「ふん、粘るじゃないかジオンも。」
「えぇ。流石はギレン閣下と言うべきかと。」
「こちらの艦隊の用意はどうか?不備は無いだろうな?」
「予定通り順調です。戦いの趨勢が決まり次第、介入する予定です。」
「まさかナチュラル共も我々がここまでの艦隊を用意しているとは思うまい。」
「奴らは奴ら同士で殺し合っている。我々の動きには気づけんよ。」
「では、このまま予定通りという事で。」
今日のギレン様
「何?ゲルググの腕にジェットエンジン補助推進システム?宇宙では重石にしかならんだろう。外せ。載せるならグレネードかバルカンにしておけ。」
「アプサラスか…。ギニアス少将、コンセプトは兎も角、マルチロックオンは素晴らしい。」
「では…。」
「だが、無理に小型化してMAに全てを組み込む必要はない。」
「と、おっしゃいますと?」
「うむ。実は数的不利な状況での艦隊防空について計画中でな…。」
「やはりドズルの言う通り数は正義だな。では以前から設計していたオッゴの大量生産を許可する。が、可能な限り生存性を優先せよ。若者は将来の宝だからな。」