多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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よし、久しぶりの一日二話投稿に成功した!

この落ちにするかどうかとても悩んだけど、スパロボらしさを追求したらこうなりました。
いや、このままじゃ連邦負けるからしょうがなく出したって訳じゃないヨ?

後半の艦隊部分に加筆修正しました。


第20話 ワーストコンタクト

 新西暦179年、12月31日、午前9時25分 

 

 戦闘開始から2時間半が経過してもなお、地球連邦軍は7倍以上の戦力で攻め寄せてなお、ア・バオア・クーを攻め落とすだけの切っ掛けを掴めずにいた。

 7倍、或いは8倍にも至る数的不利を崩せるだけの積み重ねを、これまでギレンは行っていた。

 統合整備計画による兵站の見直し。

 地上戦線へのエース級パイロットの投入の禁止。

 数的不利を覆すための簡易量産兵器や新兵器の投入。

 地上はキシリアに任せていたが、こと宇宙においてスペースノイドがアースノイドに負ける謂れは無い。

 地上では確実に負ける。

 だからこそ、最初から決戦は乾坤一擲、得意とする宇宙にて行う予定だった。

 

 「この程度か…。」

 

 要塞司令室にて、押される連邦軍を見てギレンは呟いた。

 結局、地球人類は「彼女ら」無しでは自分の頭脳の上を行く事はないのだと。

 ギレンは彼女らが身を削って守り続ける人類が、この程度でしかない事に落胆していた。

 成長し、経験を積めば見込みはあるだろう。

 しかし、今この瞬間に成長しなければ、この程度の障害を乗り越えられなければ、人類はこの残酷で凄惨な銀河を生きていく事など決して出来はしない。

 

 「この程度で終わるのか、地球連邦は?」

 

 ギレンは、彼なりに期待していた。

 彼女らが守る地球人類に、自分を生み出した地球人類に。

 しかし、この程度で終わると言うのなら、残念ながら本当に自分が頂点に立ち、人々を従えて立たざるを得なくなる。

 その独白に、知らず応える者がいた。

 

 「そこだ。」

 

 一隻のチベ級がブリッジを射抜かれ、誘爆が広がり、轟沈していく。

 それを成したのは一機のジム・スナイパーカスタム。

 

 「やはりこの宙域の指揮担当だったか。よし、次だ。」

 

 彼の名はテネス・A・ユング少佐。

 史実の一年戦争においてはアムロを凌ぐMS撃墜数149機・艦船撃沈数3隻という記録を残したトップエースだ。

 そのムーミン谷の白い死神染みた射撃の腕前は正に神業を誇り、今も有効射程ギリギリの位置にいたチベ級を落として見せた。

 更にそのチベ級はそのブロックの指揮を担当していた事もあり、僅かにそのブロックの動きが乱れる。

 

 『くそぉ…!』

 「………。」

 

 そして、そことは異なるフィールドでまた一機、ジオン側の指揮官機が落とされた。

 やったのは胸部を青く塗装したジム・コマンド宇宙仕様。

 一見高性能だがジムの派生型に過ぎない機体だが、乗っているパイロットは連邦内でも五指に入るとされるスーパーエースの一人。

 

 「………。」

 

 無口でお馴染みのユウ・カジマだ。

 嘗て駆ったジム・ドミナンスやブルーディスティニーよりも性能が劣る機体でありながら、それでも打ち取った敵MSの数はこの戦闘だけで既に10を超えている。

 

 彼らが行っているのは、斬首戦術だ。

 敵の指揮官機並びに指揮を執る艦を落とす事で指揮系統を混乱させる。

 数で劣りながらもジオンが優勢に状況を進めているのは、この一戦のみのためにギレンがコツコツと貯め込んだ戦力を、その類稀な頭脳から来る神懸った戦闘指揮で運用しているからに他ならない。

 ならば、それを伝達する役目であるN・E・W・Sの各フィールド内の指揮担当艦やMS部隊の隊長機を落とせば上からの指揮は滞り、戦線は破綻する。

 幸いにも敵指揮官機はゲルググや最低でもザクⅡF2型の指揮官仕様に乗っているため、二人の様な一部のエースにとっては実に分かりやすい。

 連邦の抱える多くのエース達は一様に味方を励ますように指揮官狩りに精を出し、少しでも戦況を好転させんと奮戦していた。

 そして何よりも、この戦場には本物のNTがいた。

 

 「これで17!」

 

 また一機、アムロが指揮官機を落とした。

 彼がさっきから落としているのはどれも指揮官機であり、それ以外のMPやMS、艦艇だけでも既に50を超え、100に迫ろうとしている。

 この戦闘に限って言えば、既に彼は間違いなくトップエースだった。

 

 「中々やるのもいる。だが、その程度ではな。」

 

 ギレンの指揮は揺るがない。

 何せ多少目減りしているとは言え、本戦闘に参加しているジオン側の戦力は戦艦5隻、空母2隻、巡洋艦41隻、MS4000機(MP含む)、MA20数機、ジッコ46隻となっている。

 既に撃破されたMSは全フィールドで500に近いが、その程度でしかない。

 少なくとも、この戦闘に限って言えば連邦に勝ちの目は薄い。

 だが、連邦は例えこの戦闘に負けても次があり、ジオンには無い。

 両軍の違いと言えば、やはりその国力だろう。

 まぁ要塞攻めとなれば一日で終わる事も少ない。

 今日の所は連邦側が退くだろう、というのが両軍首脳部の考えだった。

 これでもし、事前に互いがソーラーレイやソーラシステムの撃ち合いをしていたのなら、地球にそれが撃たれぬように是が非でも陥落させねばならなかったのだが、この世界線ではそうならなかった。

 故にこその膠着状態とも言えた。

 

 だから、この状態を崩すのは、第三者からの横槍に他ならない。

 

 ガチャリ、とギレンの背後から銃口が突き付けられた。

 

 「何のつもりだ、と聞いた方が良いかね?」

 「御冗談を。分かってらっしゃるくせに。」

 

 後ろにはジオン軍の制服を着ながら、しかしジオン軍人ではないものがいた。

 その言葉にも独特の訛りはなく、司令室に音もなく侵入、或いは入れ替わっていた人員らがサイド3の生まれでない事が分かる。

 司令室にいた他の人員は次々と撃たれ、やがて静かになっていった。

 今生きているのはギレンと、プラントからの諜報員達のみだった。

 

 「君達はもう少し賢いタイミングで来ると思っていたのだがね。」

 「私共としてはこのタイミングがベストと判断しました。」 

 

 ここでギレン他司令室の要員を殺傷すれば、指揮系統を失えば、それだけでこのア・バオア・クーは落ちる。

 だが、それだけでは彼ら諜報員らの所属するプラントの利益にはならない。

 

 「このままこの場を制圧するだけで、連邦はこの要塞に取り付いてくれるでしょう。その後は私共は花火を点けるだけ点けてトンズラすれば良い。」

 「核融合炉か。成程、この宙域には腐る程あるな。」

 

 ミノフスキー粒子の登場で驚く程に小型化が進んだとは言え、核は核だ。

 大気圏内程ではないとは言え、その威力は目を見張るものがある。

 それを点けるだけ点けてからの逃走となると少々難しいだろうが、この連中の事だ、その位の用意は出来ているのだろう。

 

 「その後は弱り切った連邦とジオン双方を君らの艦隊が叩き、地球圏に覇を唱える、で合っているかね?」

 「えぇその通り。流石の慧眼ですよギレン総帥。いや実に惜しい、貴方程の人材をここで失ってしまうのは本当に残念です。」

 「滑稽だな。」

 「は?」

 

 はぁ…と、心底の失望を形にしたようにギレンは深々とため息をついた。

 

 「滑稽だと言ったのだよ、改造人間共。」

 

 諜報員らが、プラントに住むコーディネーター達が唖然とする中、ギレンは堂々と宣った。

 

 「この太陽系の真実を知らず、自らの先行きの無さから目を逸らし、剰え改造された身で進化した等と欺瞞を吐いて全人類を支配しようとしている貴様らコーディネーターを、滑稽だと言ったのだ。」

 「貴っ様ぁぁぁ…ッ!!」

 

 諜報員の一人が殺気混じりで小銃を向ける。

 しかし、その程度の事でギレンは動じない。

 元より死を覚悟してこの場にいる彼は、そんなものでは動じない。

 何より、この茶番ももう終わる事が分かっていた。

 

 「どうやら時間切れらしい。彼女らもまだ持ち堪えられると思っていたのだがね。」

 

 モニターの一つ、周辺宙域のミノフスキー粒子を始めとする各物質の分布や重力波等を示す数値が、異常な値を示し始めていた。

 

 

 ……………

 

 

 同時刻 太陽系外縁部にて

 

 「メタルビースト艦隊、第19波から24波来ます!更にワープ反応を多数確認!」

 「ダメです!敵物量、こちらの処理能力を超えます!」

 「ヴァルチャー全部隊損耗率4割を超過、稼働戦力が半数を切ります!」

 「プトレマイオス、フィールド出力68%にまで低下!」

 

 この一年、彼女らはよく戦った。

 各工廠は連邦が本格的にMSを配備するまでは全力で量産型ヴァルチャーを構成するナノマシン群の製造に振り、旗艦プトレマイオスもまた全力で戦闘行動を続け、碌に補給・修理の時間も取れなかった。

 それでもこの船が一年間も戦い続けられたのは、各員の努力と奮闘、これまで積み重ねたものがあった故だった。

 

 「トレミィ様!ご指示を!」

 

 太陽系防衛の最大戦力たる旗艦プトレマイオスにて、遂に決断が下された。

 

 「木星・火星行政府に通達、コードRED発令。繰り返す、コードRED発令。」

 

 それは彼女らの事実上の敗北だった。

 地球圏を、太陽系を、人類を、彼らが何れ巣立つ日まで守り続ける事を自らに課した彼女らにとって、それは間違いなく敗北だった。

 地球圏の守護を、太陽系の守りを、人類の存続を彼ら自身の手に託す事になるのだから。

 

 「太陽系内部方面にワープ反応を二か所で確認!」

 「これは…小規模ですが艦隊規模、ゼントラーディです!」

 「地球圏防衛用OF部隊は全力出撃。あらゆる手段を以て人類を存続させなさい。」

 

 こうして、人類は強制的に次のステップへと移る事となった。

 

 

 ……………

 

 

 「何だ、こいつらは!?」

 「敵なのか!?」

 

 現れたのは、見た事のないデザインやレイアウトの艦で構成された艦隊だった。

 数は20程度と少ないが、何処か生物的な見た目をし、緑と白、一部黄色で構成されたそれらは多くが500m級だが、その内の三隻は地球圏の基準では超大型に分類される程のサイズを持っている。

 二隻は1500m級の艦であり、更に一隻だけ現在の地球人類からすれば途方もなく巨大な艦があった。

 全長4000mを誇るその艦は、明らかにこの正体不明の艦隊の旗艦であり、表面を見るに数え切れぬ程大量の武装を搭載し、装甲に大小無数の傷がついている事から、明らかに「現役の軍艦」である事が分かる。

 どう見ても友好的な存在とは思えなかった。

 しかし、連邦もジオンも所属は違えど軍人である。

 命令ある限り、迂闊な行動は取れない。

 だから、火蓋を切ったのは向こうの方だった。

 

 『う、撃ってきやがった!』

 『くそ、撃て!撃ちまくれぇ!』

 

 不明艦隊の内、1500m級の二隻が艦体の前半分以上が上下に分割・展開し、数秒のチャージの後にア・バオア・クーの表面に設置された特装砲を超える威力で放たれ、ア・バオア・クーへと着弾した。

 同時、多数の艦載機の出撃と各艦が連邦・ジオン両軍へと射撃を開始する事で、戦闘は三つ巴の形となって再開した。

 

 

 

 これが公式における地球人類と異星人のファーストコンタクトとなった。

 余りに最悪な出会いだったため、以降の歴史書ではワーストコンタクトとも呼ばれるようになる事件の幕開けだった。

 

 

 

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