多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第23話 巨人族

 ここでこの世界におけるコーディネーター居住コロニー、通称「プラント」についてお浚いしておこう。

 

 彼らが住むのは地球圏での暴動や迫害を加味して、地球から最も遠いLPに建設されている。

 そう、ジオン公国と同じLP2にだ。

 ジオンとプラント側は地球憎しの方針で同じだったが、その余りに近い立ち位置から、互いに刺される事を警戒せねばならなかった。

 それを防ぐための秘密条約であり、技術協力だった。

 人間、どんなに時代が下っても利益の方が大きければ多少の軍事・政治的問題は飲み込めるからだ。

 だが、ジオンもプラントももしもの時の備えを一切怠っていなかった。

 だからこそ、本国艦隊とキシリアが残されていたし、プラントも趨勢が固まるまでは静観に徹した。

 しかし、それは破られた。

 他ならぬプラントの軽挙妄動と、異星人の侵略によって。

 

 故に、キシリア率いるジオン本国艦隊もまた、決断を迫られていた。

 

 「デラーズ、そちらの準備はどうか?」

 『ソーラ・レイは万全です。いつでも発射可能です。』

 「よし、私はバハロ首相と共にこちらに向かっている連邦艦隊と交渉する。そちらも指示通り上手くやってみせよ。」

 

 この時、ジオンの名は本来よりも歴史に大きく刻まれる事となる。

 

 

 ……………

 

 

 「発射準備完了しました。…ですが、よろしいのですか?」

 「うむ。」 

 

 オペレーターの言葉に、エギーユ・デラーズは頷いた。

 

 「これで良い。ギレン閣下からの指示通りだ。」

 「了解しました。ではプラント本国への通信を送ります。通信への返答内容に依らずカウント60でソーラ・レイ発射します。」

 

 ソーラ・レイとはジオンがこの戦争の切り札として開発した、超巨大な戦略級レーザー砲だ。

 廃棄予定だった最初期型の密閉式コロニーを丸々一個レーザー砲として加工した代物で、無数の核融合炉と周辺に設置された太陽光発電パネルを動力源としている。

 10秒程度の照射が可能で、移動すれば地球さえ焼く事も可能だが、完全冷却には一週間もかかる難物だ。

 しかし、威力に関しては問題ない。

 それこそ異星人の艦隊であっても命中すれば一撃で撃滅可能だ。 

 

 「通信繋げます。プラント方面へ向け、各種チャンネルで送信します。」

 

 突然の通信に応答が返ってくる事は無い。

 プラント本国はジオン側が紛れ込ませていた諜報員によって異星人からの攻撃を受けている最中だと判明している。

 下手すると組織的反撃すらもう出来ていないのかもしれない。

 

 「私はジオン公国軍大佐、エギーユ・デラーズである。この通信はプラント在住の地球人類全員に向け放送されている。只今よりこちらの戦略兵器たるコロニーレーザーによる照射を実施、プラントを襲撃中の異星人艦隊を撃滅する。この通信が終了してからカウント60後に照射が開始される。こちらの送信する予測照射宙域から一切の所属問わず急ぎ退避されたし。また、現在サイド3に向け移動中の地球連邦軍艦隊並びジオン本国防衛艦隊がそちらに急行している。後少しで良い、持ち堪えてほしい。」

 「カウント開始。59・58・57・56……。」

 

 だが、返答は来ない。

 もうプラントは壊滅したのか、通信機器が全て破壊されたのか、広大なジャミングがされているのかすら分からない。

 確かなのは、デラーズはギレンの想定した状況ごとの指示通りに行動したという事だった。

 

 (これで良かったのですか、ギレン閣下?)

 

 デラーズとしては、コロニーレーザーはア・バオア・クー攻略に参加している連邦軍艦隊にこそ使いたかったし、何故あんなこちらを見下す(どっこいどっこいだが)改造人間共を助けねばならないのかと思う。

 しかし、ギレンたっての指示となれば従う他ない。

 デラーズにしても、これがコーディネーターらによる反乱防止のためだとは分かっている。

 自分達以上に選民思想を尖らせ、しかし種としての先行きがない者達など、一体どんな事をしでかすか分かったものではない。

 その心配を無くすため、本来ならばア・バオア・クーへと向かったプラント艦隊またはプラント本国をコロニーレーザーで撃滅する予定だった。

 しかし、異星人の出現によって状況が変化した。

 最早彼らには種としての単独での存続は不可能であり、国家としての体面を保つだけの人口も失われた。

 プラントがもう敵になれないこの状況になって初めてジオンは、より正確に言えばギレンはプラントへと手を差し伸べる事が出来たのだ。

 

 「……10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・発射。」

 

 そして、巨大な光の柱がプラント方向へ向けて放たれた。

 

 

 ……………

 

 

 プラント側も、その通信を聞いていた。

 しかし、既に戦艦はどれも落とされ、民間の艦艇が脱出しようとプラントを出た途端に撃墜され、既に降伏も何も出来ずに滅亡を待つ状態だった。

 プラント評議会のある各政府機能を持ったコロニーも破壊され、議員らにも被害が出ており、プラントという国家?とコーディネーターという種の存続は最早絶望的な状況だった。

 辛うじて一部のMSが未だ奮闘しているが、それも自身が僅かでも死ぬまでの時間を遅らせているに過ぎない。

 そんな状態で、その通信を聞いた者達はそれを信じる事ができなかった……訳ではなかった。

 

 『連邦とジオンから援軍だと!?』

 『何だって良い!誰か、助けてくれェ!』

 

 既に彼らは目の前の迫った死に対して、いつもの傲慢さはすっかり消し飛ばされ、漂白されていた。

 まぁ、そんな傲慢とかプライドの高い者は既に死亡し、この場に残っているのはどんなものでも使えるなら使う柔軟な思考の持ち主しか残っていなかった。

 

 『急げ!移動しろ!カウントまでもう時間が無い!』

 『くそ、間に合わn』

 

 そして、巨大な光の柱が宙域を貫いた。

 その一撃は1500m級砲艦一隻、400m級斥候艦が7隻沈み、機動兵器の半数以上が巻き込まれ、一瞬で消滅していった。

 極一部のザフト兵がそれに巻き込まれたが、それでもジオン側はこの状況で最大限の配慮をした形となり、恨みを買う恐れは殆どない。

 

 『うおおおおおおおおおお!!』

 『やった、やったぁ!』

 『ざまぁみろエイリアンめ!』

 『浮足立つな!これを機に態勢を整えろ!数はまだ向こうが上だ!』

 

 動揺する異星人を相手に、歓喜の声を上げながら弱弱しいながらも反撃を開始するも、既に組織的戦闘能力を喪失し、元々個々人の技量をこそ頼みとするザフト軍パイロットらは迂闊な行動から反撃で撃破される事例が多発した。

 それでも、彼らは最後の仕事を成したのだ。

 時間稼ぎという、値千金の時の砂粒を稼いでみせた。

 

 『来た!連邦とジオンの艦隊だ!』

 『すげぇ数だ!MSもたんまりだ!』

 

 『こちら地球連邦軍第9艦隊、グリーン・ワイアット大将だ。ジオン本国防衛艦隊と共に、プラントの救援に来た。お互い言いたい事はあるだろうが、先ずは無粋な客人に退場してもらってからとしよう。』

 

 こうして、史実の世界線からすれば驚天動地の連合軍は、怒りのままにゼントラーディ分艦隊へと襲い掛かった。

 

 

 ……………

  

 

 同時刻、4000m級中型艦隊指揮用戦艦内部にて

 

 「こ、これは……。」

 

 敵旗艦の内部に侵入したアムロは、度肝を抜かれていた。

 人類からすれば余りにも巨大な異星人の戦艦、その内部には彼の想像していない光景があった。

 

 「巨人?異星人は全員巨人なのか?」

 

 身長約10mの地球人類の男性に似た知的生命体。

 それが地球人類に牙を向いた異星人の姿だった。

 

 「っ!」

 

 驚きも冷めぬ間に、当然ながら向こうは反撃してきた。

 真空状態のハズなのに碌にパイロットスーツも付けず、手に外で出会った人型兵器(というよりもバトルスーツ)と同じ銃火器を手に侵入者であるアムロへと射撃を加える。

 

 「このぉ!」

 

 結局やる事は変わらないと自分に言い聞かせ、素早く連装ビームライフルを三点射。

 それだけで瞬く間に撃破され、倒れていく巨人族。

 MSよりも遥かに分かりやすい人を殺したという感覚に、いつものアムロなら恐怖を抱く筈だった。

 しかし、彼らからは地球人類の様な恐怖や苦痛を余り感じなかった。

 それを不思議に思いつつ、動力炉を探すべく移動を開始する。

 

 『無事か、ガンダム!』

 「シャアか!?」

 

 そこに、突入時に一緒だったシャアの駆る高機動型ゲルググが追いついた。

 

 『これは、巨人か?』

 「この船だけじゃない。皆こいつらが乗ってるんだ。」

 『流石は異星人。我々とはかけ離れた大きさだ。』

 

 シャアと共に驚きながらも移動を開始する。

 すると、途中からガクンと機体の挙動が重くなった。

 

 『何と!?』

 「これは、コロニーに似てる。艦内に重力があるのか?」

 『ガンダム、シールドを一つこちらに渡せ。その重さじゃ早く動けん。私が前に出る。』

 「わ、分かった。頼む。」

 

 そう言って、アムロは右のシールドを渡す。

 接続部位は合わないだろうが、手に持って使う分には大丈夫だった。

 シャアはそれを疑う事なく受け取ると、迷いなくアムロに背を向けて前に出て進んでいく。

 

 『よし、行くぞ!』

 「ああ!」

 

 言い様のない奇妙な連帯感。

 言葉にしなくとも互いの言いたい事が何となく伝わる不思議な感覚を、二人は抱いていた。

 

 

 

 

 この10分後、突入に成功した両軍のエース達の乗るMS部隊は動力炉の破壊に成功、この戦闘の勝利の立役者となるのだった。

 

 

 

 

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